表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

第11話 森。

「ふええええ、さすがに暑いよ。少し休もう?」


一緒に仕事していたクルトに、思わず声をかける。

森の中はひんやりとはしているが、木を掘り出す仕事はやはり重労働。少し休ませて!

「ああ。水、飲むか?」

その辺に湧いている泉の水を、クルトが持ってきた木のカップで掬ってくれる。ほれ、と言って差し出されたカップをありがたく頂戴する。すごく冷たい。はあああ、生き返るね。


苔むした切り株に座って、小休憩。

このところ肉体労働が続くので、パン売りのおばちゃんの息子のズボンを貰って履いている。断然、動きやすいし。


いやあ、私はほんのちょっと前までお屋敷の侍女とかやっていた気がする。ついこの前のような気もするし、もう何年も前のような気もする。

その前は…窮屈なドレスを着て、婚約者殿の顔色を窺ってお茶も飲めない令嬢だった。もう…何十年も前のことみたいだ。まあ、もちろん、そんなに生きてないけど。


木漏れ日がきらきらしてきれいだ。

静かだ。遠くで鳥のさえずりが聞こえる。

空気が美味い。体中が浄化される気分?


「年取ったらさあ、こんな森の中で暮らすのもありかなあ。最初はどうなるかと思ったけど。うふふっ。意外とあってんのかもなあ。私。」

「・・・そう?退屈じゃない?」


私が独り言のようにそうつぶやくと、隣の切り株に座っていたクルトが不思議そうに聞いてくる。


「やることがいっぱいあって、退屈する暇もないよね。今度は畑もやるんでしょ?」

「畑って言うか、放牧場ね。馬の気晴らしにいいかと思って。」

「そうかあ、馬も大変だもんね。ここで王都までの道のりの半分なんでしょう?ちょっと休ませろや、って思うわね。あははっ。」

「・・・今回、また12本分増やすだろう?トイレも増設するだろう?レンガは間に合うかな?あと、放牧場用の杭に柵用の板。ひと段落したら、冬用の薪を用意しなくちゃな。」

「薪?ああ。木を切るの?」

「切って、積んで、干して…人手が欲しいな。」

「ありゃあ、忙しいなあ!あははっ。」

「・・・お前は、帰りたくないのか?もう日に焼けて田舎の子みたいだぞ?本当はお嬢様なんだろう?」

「うーーーーーん。こんな生活知らなかったから、新鮮?」

「すぐ飽きるさ。」

「そう?」

「・・・・・」


クルトは私が返したカップにもう一度水を掬って、ゆっくり飲んでいる。

シャツの袖をまくって、首にタオル。

あんただって、騎士って言うより、木こりみたいよ?

北部の出だって言ってた。銀色の髪に、綺麗な紫の瞳。

北の人は色素が薄いのかな。


「ところで、そろそろお坊ちゃまが夏休みで帰ってくるよね?お嬢様はどうするのかな?婚約。今のところ、保留、でしょう?あ、でも家賃払ったか。」

「何かあったのか?あの二人、仲良かったんだけど?」

「うーーーーーん。仲良しと結婚は違う、と気が付いた、とか?」

「・・・・・」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ