第02話「回復魔法」
見たことも聞いたこともないスキルだった。
スキルに詳しい筈の牧師も戸惑い顔だ。
「こ、これはユニークスキル!!」
ユニークスキルとは歴史上それぞれ一例しか確認されていない、唯一無二のスキルの事を指す。
しかし、これは大きな問題を孕む。
ユニークスキルには、大当たりか大外れしか存在しないのだ。
・2秒間時を遡る事の出来る「時の放浪者」
・魔法球を操り、触れたものを異次元に吸い込んだり戻したりできる「虚無」
この辺りは「大当たり」であるが…
・植物の成長を促進させる「緑化」
・水を3分で湯に変える「沸騰」
この辺りは「大外れ」とされている。
それぞれ、便利そうに思えるかもしれないが、効果が限定的であったり、他のスキルで代用が可能であったりしたことが大きな理由だ。
「ユアン様、『回復魔法』の効果は如何なるものでしょうか?プレートに魔力を込めれば使い方が頭に浮かび上がってくるはずです」
あまりの事に一瞬気持ちが遠いところに行っていた僕に牧師が促してくる。
「む、そうであった」」
その結果、浮かび上がってきたものは不思議と体の構造であった。
成程、筋肉と筋肉はこう繋がっているのか。
こことここをこう繋ぎ合わせれば傷が治ると言う事か…
僕はナイフを取り出すと、自分の腕を15㎝程切り裂いてみせた。
「ユアン様!何を!?」
「まぁ見ていろ」
僕が傷口に手をかざすと、ジワジワと傷口がふさがり始めた。
おおよそ3分程で傷口はすっかり綺麗に治癒した。
「今できるのはこの程度だ」
「・・・。」
ショーン牧師は正直微妙な顔をしていた。
確かに傷を治すスキルは史上初めてだろうが、15㎝の傷を治したければ縫えば済む話なのだ。
3分では縫えないかも知れないが、10分ぐらいかければ縫合出来る医者はこの国にも沢山いるはずだ。
しかし、僕には分かっていた。
このスキルは成長する。
極限成長を遂げた時、その時にはえげつないスキルになっていると言う事を。