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19、雪遊び


 修学旅行が終わって、あっという間に期末考査も終わった。

三者面談期間が始まると、部活のない生徒は学校に行かなくなる。

最近まで茉優と俺が付き合ったという噂が流れては真実を確認されていたので、学校に行かなくていいのは嬉しい。

まあ、今日は三者面談で学校に行くけど。


高校2年の2学期末。

そろそろ志望校が決定する時期だけど、俺はまだ迷っている。

三者面談の順番がきて、教室に入った。

担任の先生と向かい合って座ると、早速今学期の成績表が返ってきた。


「変わってない………」

「英語以外は5だから十分だろ」

「ここまで来たらオール5がいいじゃん」


茉優もオール5だったって言ってたし。


「じゃあ、3学期に期待だな」

「うん」


成績表を閉じて進路の話が始まった。

うちの高校は一応進学校と言われていて、生徒のほとんどが進学をする。

だから、3ヶ月に1回進路説明会があって1年の冬の進路説明会で薬学部に進学したいと決めている。

そして、2年の春からずっと同じ2校で迷っている。

両方、オープンキャンパスには行った。

そこですごく惹かれた方に決めればいいのだろうけど、どうしても決めきれない理由があった。


「流石に家からは通えない、ですよね」

「往復16時間だから、流石に無理がありますね交通費もかかりますし」

「ですよね」


俺が通いたいと思った方の大学はここから新幹線で3時間、夜行バスだと8時間はかかる。

もう1校も家から通うには少し遠い。

どっちにしろ、この2校だと一人暮らしは確定だろう。

それなら遠い方でもいいのかもしれない。

けど、茉優と離れるのかと思うとあまり進んで決められない。

かと言って誰かに相談して茉優に伝わるのは困る。


多分、こういうときは大学を選ぶのが正しい選択なんだろう。

けど、もう少し考える時間というか決意するための時間がほしい。


「志望校、絶対に3学期には決めます」

「焦らなくても大丈夫ですよ。けれど、原田くんの成績なら推薦も目指せるのでその場合はなるべく早く言ってください」

「はい。ありがとうございます」


学校を出て家まで歩いて帰った。

迷えるうちに迷っておけ、と父さんは笑っている。


迷っている理由が茉優と離れたくないって知ったら、父さんに叱られてしまうだろうか。

茉優に会いたいなと思いながら歩いていると、茉優と昊さんがコンビニから出てきた。


「颯真!三者面談終わったの?」

「うん」

「大学決めた?」

「まだ迷ってる」

「私も迷ってたんだけど、隣の県の大学を第一志望にしたよ。まあ、家から通えるところだけどね」


茉優も隣の県か。

けど、やっぱり家から通えるところか。

俺も家から通えるところのほうがいいのかな。


茉優たちと分かれて、家に帰った。



一週間後、終業式が終わって12月25日。

茉優とクリスマスデートだ。

昼過ぎに集合して近くのショッピングモールにある映画館で映画を見て、カフェにやって来た。


「颯真?大丈夫?体調悪い?」

「え、ごめん。なに?」

「颯真が無視するとか珍しいから」

「無視したつもりはないよ。ちょっと、大学のこと考えてて」


もし受かったら茉優と遠距離になってしまうことを伝えた。

茉優はそっか、と笑ってココアを飲んだ。

そして、俺の方を見て笑った。


「颯真はその大学に行きたいんだよね?」

「それは、そうだけど」

「じゃあ、行きなよ。てか、行かなきゃ別れる」

「え、」

「だって、遠距離になるくらいで別れるなら、どうせ別れる運命だったってことじゃない?」

「いや、けど、遠距離で別れるカップルは多いし」


茉優はわざとらしくため息を吐いた。

呆れたとでも言いたげな顔でこっちを見てくる。

え、俺が言ってることがおかしいの?

いや、でも、実際に遠距離恋愛は難しいって書いてたし。


「別れる理由って、別に好きな人ができたり、不安になったり、めんどくさくなったりでしょ?大丈夫だよ。私、颯真以外好きになることないし、不安になったらすぐ言うし、颯真元々ちょっとめんどくさいから今さらだし」

「俺、めんどくさい?」

「遠距離になるからって理由でそんなに悩んでるのが既にめんどくさい。颯真、私のこと信用してないの?」


慌てて首を振ると、茉優は楽しそうに笑った。

冗談だよ、許してと少し首を傾げた。

そんな可愛い仕草されたら、許さないわけがない。

でも、そっか。自覚はなかったけど、俺ってめんどくさいんだ。

気をつけないと。


「茉優、あのさ、もしも受験落ちて行けなかったとしても別れる?」

「今から落ちる前提?」

「いや、そうじゃなくて」

「………受かってね」


これは、何がなんでも受からないといけない。

新学期に入ったらすぐに先生に推薦の話聞きに行こう。



外が薄暗くなってきて、駅前のイルミネーションを見に行った。

クリスマスツリーをバックに写真を撮った。

茉優は撮った写真を確認して満足そうに笑っている。


「茉優」

「なに?」


茉優は声にすぐに反応するように俺の方を見た。

去年、お互いに渡したマフラーを今年も愛用してくれている。

何も言わず茉優の顔を見つめていると、不思議そうに首を傾げる。

雪だるまのイヤリングが揺れて、そのイヤリングにそっと触れた。


「ど、うしたの?」

「可愛いなって思って」

「ありがとう」


茉優は少し照れたように笑って俺から視線を逸らした。

カバンから細長い箱を取り出して渡した。


「メリークリスマス、茉優」


茉優はありがとうと笑ってそっと箱の蓋を開けた。

細いチェーンのブレスレットに誕生石であるスピネルが小さいけれど付いている。

茉優に似合いそうなのを、写真を見せてお店の人に選ぶのを手伝ってもらった。

箱からブレスレットを取り出して、茉優の手首につけた。


「似合うよ。可愛い」

「一生大事にする、」

「気に入ってくれたみたいで良かった」


茉優は嬉しそうに右の手首を見てはふふっと笑っている。

ここまで喜んでもらえるとは思ってなかったから、俺も嬉しい。


「あ、私のプレゼントは家に置いてあるから帰りに渡すね」

「うん。楽しみ」

「ハードル上げないでよ」


笑って手を握ってイルミネーションを見て歩いた。

1年前の俺に言ってやりたい。

来年のクリスマスは服部さんを茉優と呼んで恋人繋ぎで隣に並んでるんだよって。

多分、信じてもらえないけど。


「寒いね」

「そうだね。そろそろ帰る?」

「うん」


電車に乗って駅まで帰ってそこからは茉優の家に向かって歩いた。

本当に今日は寒いなと思って空を見上げると、鼻に冷たい何かが落ちてきた。

通りで寒いと思った。

茉優の肩を軽く叩いて笑って空を指した。


茉優は空を見上げてハァ〜と息を吐いた。


「あ、雪」

「明日積もるかな」

「積もったら、朝一で颯真のこと呼びに行くね」

「積もらなかったら?」

「颯真が会いに来て」

「うん」


茉優の家に着く頃には結構降ってきて、家にお邪魔する前に軽く雪を払った。

誰もいないリビングで茉優がプレゼントを持ってきてくれるのを待った。


お待たせ、と大きな袋の入った紙袋を持って戻ってきた。


「メリークリスマス、颯真」

「ありがとう」

「開けてみて」


言われるがまま、リボンを解いて袋を開けるとシンプルな黒いパーカーが入っていた。

左胸には白い猫のワンポイントが入っている。


「可愛い。着てみてもいい?」

「うん。あ、後ろ向いとく?」

「ありがとう」


茉優に貰ったばかりのパーカーに着替えて、着ていたニットを畳んで紙袋に入れた。


「着替え終わったよ。どう?」

「すごい似合ってるよ!」

「ありがとう。これ、いいね。合わせやすそうだしあったかい」


そうなの?と笑って、茉優が抱きついてきた。

ゆっくり抱き返すと茉優は俺を抱きしめる腕に力を込めた。

外だと甘えにくいからって、俺の家か茉優の家にいるときはこうしていつも甘えてくる。

こういうところを見てると末っ子なんだなって実感する。


雪が少し落ち着くまで茉優の家に居ようと思って、カーペットに座った。

茉優は俺の座っている後ろにあるソファに座って俺の髪を触っている。


「長いよね」

「新学期までには切ろうかなって思ってるけど」

「え〜、長いままでいいじゃん」

「髪乾かすのがめんどくさい」

「それは分かる。私も切ろうかな」

「見てみたいかも」

「ショート好き?」

「特別好きじゃないけど、茉優なら絶対似合うと思うよ」


嬉々として美容院を予約しようとしている。

俺も今年中には髪切ろう。


スマホで美容院を探していると、茉優が俺の髪を編み込み始めた。

少しして、出来た!と言って写真を撮ると解いて他のヘアアレンジを始めた。


「ちょんまげ?」

「ボンパだよ。え、可愛い」


茉優は笑って写真を撮った。

そして、どこからか髪を巻くアイロン?コテ?を持ってきて俺の髪を巻き始めた。


「くるくるにするの?」

「なみなみかな」


茉優はフフンと笑いながら髪を巻いていく。

ヘアセットが終わると茉優はまた写真を撮った。

鏡を借りて俺も自分の髪型を見てみた。

なんか、垢抜けたって感じがする。


「やっぱり髪切らずにこれで学校行こうかな」

「切らなくてもいいけどこの髪型はダメ。颯真もっとモテちゃう」

「茉優にもモテるんでしょ?」

「それは今さらだよ」


上を向くと少し真っ赤な顔で茉優が俺の顔を見ていた。


「下から見ないで。下から見る顔って可愛くないんだよ」

「どこが?めちゃくちゃ可愛いけど」

「颯真はフィルター掛かってるから」


ムッと頬を膨らませた顔まで可愛い。


結局、雪は止む気配がなくどんどんと積もってきた。

俺は茉優の傘を借りて家に帰ることにした。


「バイバイ、茉優。また明日」

「うん。颯真、7時には起きてね」

「いつも起きてるから安心して」


茉優に手を振って家に帰った。



翌朝、雪はしっかり積もって銀世界だ。

父さんは電車が止まった!と嬉しそうに言ってゲームの準備を始めていると電話が鳴って肩を落としながら家のパソコンで仕事を始めていた。


8時を過ぎた頃、インターホンが鳴って出ると茉優が来ていた。

急いでアウターを着て、家を出た。

一度、茉優の家に傘を返しに行ってから近くの公園に行くと小さい子たちが遊んでいた。


俺たちも早速隅で雪だるまを作り始めた。


「私、頭作る」

「じゃあ俺は胴体作る」


小さい雪玉を転がしながらどんどんと大きくしていく。

高校生のくせにはしゃぎ過ぎかもしれないけど、この地域でこんなに積もるのは小学校低学年以来なのだ。

そのせいか、雪が大量に積もっているというのに遊んでる子供も大人も多い。


「頭できたよ」

「こっちもできたよ」


茉優の方に転がしていって、一緒に頭を持ち上げて胴体に乗せた。

そこからは木の枝や石で顔を作って自撮りで茉優と雪だるまとのスリーショットを撮った。


「どうする?これ。置いとく?」

「そうだね」

「寒いし私の家くる?お母さんとお父さん、仕事休みでお汁粉作ってくれてるから一緒に食べよ」

「うん」


大人になっても雪が積もったらこうやって茉優と遊びたいな。

ひんやり冷えた茉優の手を握りながらそう思った。

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