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SEOULBOND  作者: 黒羽尊
第1話
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第1話

第一話

 信長の死後数百年後、地獄では

「そこの暴走バイク停まりなさい!てめえ前世でも迷惑かけといて地獄でもかけてんじゃねぇよ!!」

「地獄の間抜けな鬼どもが俺を捕まえられるなら捕まえてみろよ!」

 バイクを乗り回し、無数に地面に突き刺さっている針山から飛んできた針を華麗にかわしながら爆走するのは信長である。地獄に堕ちたことにより姿は若返っている。

「はぁー。地獄に堕ちて来た奴はだいたい前世の蛮行を反省してるんだがアイツは数百年以上も居るのに反省するどころか新しいものにはまって直ぐこれだ!」

「そもそもアイツは閻魔様からの出頭命令をここ五十年は無視して来てるからなそろそろ捕まえないと閻魔様にお仕置きされるかも。」

 頭のてっぺんからは角を生やし赤と青の鬼は顔を向かい合わせて冷や汗をかく。運転手の赤鬼はアクセルをおもいきり踏み込みスピードを上げる。

「へぇーいつもなら諦めて帰るってのに今日はしぶといんだな。」

 信長は余裕を見せるためにバイクのスピードを落としてパトカーと並走をし始めた。

「お前、閻魔様の出頭命令を五十年間無視してるだろ!そろそろ出頭させないと俺達もお仕置きされるんだよ!」

「お仕置きって言うのは地獄のぬるま湯に漬け込まれるのかい?」

「あぁそうだお前も地獄に来た時に経験しただろう。それに給料もカットだ。俺には食べ盛りの息子と娘が居るから大人しく捕まってくれよ。」

「じゃあ捕まえてみろよノロマ!!」

 鬼達を挑発するため中指を立ててバイクのスピードを上げ始める。

「あの野郎!もう勘弁ならねぇ。こうなったら血の池降らしてやる!!」

「おいおいそれは俺もかわす自信がないぞ!辞めてくれ!」

「バカ野郎!これ以上死んだ奴なんかにコケにされてたまるかってんだよ!!」

 助手席の赤鬼がスイッチを押すと空から巨大な赤い色の雨が降り始めてきた。

「はぁ!アイツ等血の池を降らしやがった。今回は本当にマジなんだな。」

 血の池は中は完全な水になっているが外見はゼリー状のようになっており外から池の中に入ることは可能だが中から出ることは自力では難しくなっている。それが普通に雨のように降る。

「まぁどんな事しようが捕まりはしないけどな。」

 アクセルを更に捻り上げてバイクのスピードが増していく。降り注ぐ血の池が突き刺さっている針に触れて切られて迫ってくるがそれすらも回避する。

「畜生!全然追い付かないじゃねぇか!もっとスピード出せよお前も!!」

「言うだけタダ!!こんなパトカーで血の池と針かわすのなんてシューマッハでも無理だよ!」

「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ!おい!マエマエマエマエ!!」

 パトカーの目の前に針がそびえており回避してホッとしたのも束の間既に血の池が迫っており二人は終わったと察した。

 信長は血の池に呑み込まれたパトカーを確認して通常運転に戻す。

「へっ!下手くそ共なんかに俺が捕まる分けねぇだろうがよ。さてと、このまま天国まで遊びに行きますかね。」

 完全に油断していた。気づいた時には後ろから血の池を投げ付けられており逃げようとしたがそれを読んでいたかのように別方向から血の池が飛んできた。

「全員包囲しなさい!」

 一人の男の号令により信長を取り込んだ血の池に何十台のパトカーが包囲した。信長は観念して逆さまになっている状態で両手を伸ばして降参のポーズをした。

 信長を捕まえた男は小野(たかむら)と言い平安時代の人間であり死んでから転生することなく閻魔大王に仕えている。

「閻魔様。大変お待たせして申し訳ありません。織田信長を捕縛して参りました。」

 信長は血の池に閉じ込められたまま連行された。ちなみに血の池の中では息はできないが死んでいるのでずっと息ができない生地獄であるが意地を張ってそれは表情に出さない。

「全くお主は(わらわ)の手を煩わせてばかり。この世界に来て四百三十二年が経過するのに転生する事なく地獄で悪さばかりどうしてくれようか。」

ガボガボガボガボ(黙れくそアマ)!!」

「何を言っておるか分かるぞ。麗しきお姉さま本日もお綺麗ですねと言っておるな。出してやれ。」

 配下の鬼は指示をされると長い棒を手に持ちそれを信長の腹の辺りに当ててそのまま突き出した。

「ぷはー!誰がお前のような性悪女なんかに綺麗って言うわけ無いだろ!歳考えろ糞ばばあ!」

 口の悪い発言に信長の後頭部に小野から拳骨が振り下ろされる。

「貴様。死人の分際で口には気を付けろよ。」

「へっ!死んでも尚誰かに仕えないと自分の仕事ができない愛玩(あいがん)野郎が調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

「口を慎めよ。私の判断で貴様を阿鼻地獄(あびじごく)に落としても良いのだぞ。貴様には前世での弟殺しの罪が有るからな阿鼻地獄に堕ちる資格は持っておる。」

 小野は信長の後頭部の髪の毛を掴み鋭い眼光で睨み付けるが閻魔が間に入る。

「篁よお主が怒っていたら妾がこやつを五十年間呼んでいた理由が話せんじゃろ。」

「そう言えば俺を最初に追い掛けてた鬼もそんなことを言ってたよな。俺を五十年間呼び続けたのは何だよ?そろそろ転生してってなら勘弁してくれよ俺は地獄(ここ)が気に入ってるから。」

「ここを気に入られても良いものではないんじゃがな。そもそも気に入ってるのではなく未練が有るから転生したくないと妾は思っておるのじゃが。」

「それで本題を早く言えよ。」

「お主には下界に降りて怨霊(おんれい)を討伐して貰いたい。」

「怨霊ってなんだよ?」

「お主は地獄におってそこから話さんといかんのか?前の()()は理解しておったのに。篁に説明させると喧嘩しそうじゃから妾が説明してやろう。

 よいか怨霊と言うのはお主と違って現世に留まっている霊の事じゃ。霊は現世に留まることにより憎悪と力を増幅させて人間に迷惑をかけておるから転生して討伐を依頼したい。」

「はぁ!転生?だったら断るぞ。俺は転生するつもりは無い。そんなことしたら俺と言う人間の記憶と存在が消えてしまうだろ。」

「お主は現世では偉人として学生の教科書に載っておるんじゃが転生と言ってもお主の記憶は持ったまま十七歳の年齢で現世に降りて貰うのじゃ。」

「霊退治なんて死神にでもやらせておけば良いじゃねぇかよ。居るんだろ死神って?」

「死神は魂をここに連れてくるのが仕事じゃ。霊というのはその魂からはみ出して留まっておるものが霊となっている。」

「いやいや俺の知ってる死神は刀とか持って「卍解(ばんかい)!」って言って戦うもんだろ。」

 閻魔大王・小野篁や周りの鬼達も完全に呆れてしまっている。

「何でお主は現世の漫画の事を知っておるんだ?まぁ、四百年も居たら漫画を持ったまま死んできた人間も居るじゃろが如何せん漫画の読みすぎじゃ。」

「兎に角だ。俺は現世に降りるなんてまっぴら御免だ!五十年間呼んでた理由がこれなら俺はもう帰らせて貰うぜ。」

 信長は帰ろうとして立ち上がり踵を返すと閻魔大王はとある書類を取り出した。

「お主が四百年もこの地獄に留まっておる理由(わけ)は知っておるぞ。それはとある人物と会いたいんじゃろ?

 その者が来た時はお主が罰を受けていた時に転生してしまいそれ以降は会うことは二度と不可能になった。」

「止めろ。もうそれ以上は言うんじゃねぇよ。」

「以外と女々しい男じゃのおもい人に会いたい一心で二度と会えぬ者を地獄で待つというのは健気と言うか何と言うか?」

「おい!それ以上言うとお前も道連れに阿鼻地獄に堕ちてやるぞ!」

 信長は怒りで頭に血が昇り閻魔大王のもとまで詰めよった。それをみた鬼達と小野は信長を取り囲んだ。

「貴様!態度に慎めよ。ボタン一つで今すぐにでも阿鼻地獄に落とせるぞ。」

「そんときゃこいつ(閻魔大王)の首根っこ締め上げて一緒に堕ちてやるよ。」

「止めろ篁。お主も最後まで話を聴くのじゃ。取引をしようではないかもし、現世で怨霊を討伐することができればお主の願いを何でも叶えてやろう。」

「願いを叶えるってここに魂を呼び出すことも可能なのか?」

「妾はここに来る魂を処理する者ぞ。魂の一つや二つを呼び出すこと等は赤子の手を捻るように簡単じゃ。」

 信長は数秒間目を瞑り考える。

「条件がある。一つ俺自身の記憶を残したまま現世に降ろすこと。二つ姿形は十七歳の体にしろ飛びっきりの男前にな。三つ現世では歳は取らずに自由に行動させろ。」

「こちら側がそれをのめば契約成立と言うか事になるのかの。」

 閻魔大王は机の引き出しから一枚の紙を取り出して判子を押した。

「契約成立。織田信長よ閻魔大王として命ずる。現世に降り立ち()()()怨霊を討伐する事。」

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