正体は?
山田太郎は蓮寺未華子の言われるままに公園の水道へと向かった。
とても自分の身体が錆…臭い。と山田太郎が顔を顰めた。
さっさと水で流してしまいたい。
ーー刹那、山田太郎は思考を張り巡らせた。
ーーこれは殺人か?いや違う…正当防衛?
ーー正当防衛でも無い。洗脳されたか何かの得体の知らない者など死んだって構わないだろう。もうすぐ警察も動きそうだ。
そして警察はもう二人を襲った現場へと到着し、現場検証していた。
二人は滴る紅い雫を地面に垂らさないようにそそくさと公園の水道が使えるところへ向かった。
生臭い臭いとは、こんなにも不快なのか。全身血みどろではないが、沢山の人でなしから飛び散ったBLOODはとても気分が悪かった。
恐らく、蓮寺未華子も同じーー。
「蓮寺未華子。」
あまりの美しさに山田太郎は蓮寺未華子の本名を口にした。
紅い血が絹のような黒髪に交じり合い、ハイライトとコントラストがとても美しい。それに加えて顔に付着した少し乾いた血痕が更に、山田太郎の倫理観を破壊させる。
「何かしら。早く洗い流しましょう。」
公園の水道が使用できるところに到着すると、蓮寺未華子は水道の蛇口を最大限に回し、自らに噴きかけた。
一瞬で蓮寺未華子の全身は水浸しになり、髪の毛と皮膚の血痕が綺麗になった。
「後は着替えるだけね、そこのトイレに行ってきますから、貴方も早く洗い流してください。警察も巡回しにくるでしょうから…」
あまりの手際の良さに山田太郎は暫し水道の前で突っ立っていたが、誰か来るとまずいと思い、蓮寺未華子と同じように水道の蛇口を最大限に回し、一番鉄臭くて不快に感じていた顔に噴きかけた。
ーーそれにしても、警察から逃げているように感じるが、事情を話せばわかってくれるのではないか?
包丁を持っていたのはアイツ(人外)らだったのだから…。
何か警察にバレてはまずいことでもあるのだろうか。
ーーまさか、俺を殺そうとした?
仕組んだのは…。蓮寺未華子?いやそんなことするわけがない。山田太郎は一瞬、蓮寺未華子の身体が震えていたことを見逃さなかった。
誰かに脅されているのか。俺の父親はguiltyだ。俺を狙うとしたら、父親関連としか思えない。