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創造主様とお友達になりました【7】

第三部 第一話 再びクレセント・ルーバインという男


ここの所3日と開けずクレセントから通信が来る。やる気になっていて…毎日、村や街に出かけるのは帝国にとっては良いことなのだろうが訪問される方は迎える準備に緊張している。食料難は各国からの救援物資も継続的に送られているし…財政難についても王国で取り入れた国営の商会が大成功して通貨の循環も良くなった。この国営商会に関しては共和国にも公国にも同じシステムの国営商会が存在し…収入源を失っていたフォレストの工房、農業は一気に息を吹き返した。その国営商会のシステムにより自然に各国の貿易は強化され大陸全土に広がった市場経済が各国の屋台骨を支えていた。その為各国は独自の産業や特産品を他国にアピールしたいため、国家運営側の陣営が、内需拡大と治安維持に関して国内全域に浸透させるべく動き回っていた


まあ今の世情を考えると…クレセントから頻繁に連絡あるのもわかるんだけど…


「わーはっはっはっは!パインズか!今日はなぁ西の外れの方の村に来ておるんじゃが…雨不足でのう!ちょーと手を貸してくれんか!」


「わかったよ…また通信で連絡する!少し待て」


俺も3カ国同盟のしわ寄せで帝国の侯爵、議員民主制の共和国からは名誉官房の立場を与えられていて帝都にも首都にもフォレスト邸をもらっている。内需拡大も治安維持も俺の仕事ではあるのだが…


王都パインズ邸


「また帝国の農村に呼ばれたよ。クレセントも頑張ってるから手を貸すのは嫌じゃないけど…多いなぁ」


「せっかくあなたが繋いだ架け橋なのだから…もっと強固で団結のある架け橋にしなきゃ」


「まぁそうなんだけどな…所で言ってなかったがフォレスト家は帝国にも共和国にも市民権も権力も屋敷もあるから…チカラを行使する事はないけど子供達の学校はどこの国でも良いよ。ついて行ってあげられないけど…ティファが子供達と見て良いと思う所を自由に決めてね」


「そんな出世してたの?あんなに国に利用されないようにって言ってたのに…」


「そうなんだけど…魔王が復活しない限りこっちの世界では戦争はなくなったし…どこかの国に偏るよりは何事も3カ国が共有した方が良いじゃん…俺は3カ国同盟の外交官って所さ」


「なるほどね!わかるわかる!」


そのあとメルとレント達の所へ遊びに行き、妖精達にお菓子をあげたり、精霊に魔力をあげたり、フライにエサをあげたりして、クレセントに連絡した


今はフライと空の上である


「クレセント!西の外れの村ってどこだよ!」


「帝都から見ると海側に出る手前にひとつ低い山脈があるのじゃがその山脈の東側の麓じゃ」


「あー!広がる農村地帯があるなぁ…それのどこにいる?空に向かって手を振ってくれ!」


「なんじゃぁ!」


でっかいおっさんが手をふっている


「フライ!確認できたか!あそこだ」


「このまま降りて良いですか?」


「いまは、はじめて行く所も多いし…俺が空を飛べる事を隠すと動きにくいから。着陸しちゃえ!」


バサッ!バサッ!バサッ!


「クレセント!元気かい!」


「元気かい!じゃねぇよ!お前空も飛べるのか!」


「ゲートは1回行って地理を把握しとかなきゃダメだから…クレセントははじめて行く所が多いからさ」


「だけど…それなら魔道飛行船を爆破しなくとも太刀打ち出来たじゃないか…」


「いやそれも可能だけど魔導飛行船があの時王国に向かって飛んで来たら途中で引き返すようにしたよ!見ておいてね!」


刀を真っ直ぐに天に向かって掲げる!トルネード!風邪の渦が上空数百mにも伸びた


「な…来たらこれで混乱させて逃げるように仕向けたさ!」


「相変わらず規格外じゃな!」


「所で日照りが続いてるのはこの村かい?」


「うーん…良い土だね!村長さん」


村長や村民はフライに手を合わせている


「そいつはフライ!大空の覇者だ!俺の友達だから村の人もみんなよろしくね」


「なんと神々しい…」


「所で雨はどれくらい欲しいの!そうですなここ1ヶ月日照り続きで…土の表面に水たまりが出来るくらいが…」


「それなら畑の水源の湖なり川なりも干上がってるよね?それはどこだい?」


「はい!山の中腹にある湖から川を流れこの村に注ぎます」


「わかった!先にそっちをやるから村人全員に家に入るように伝えて!大雨がくるよ!」


「クレセントは高い所は苦手か?」


「そんな事ないぞ」


「んじゃ、連れて来た兵士達も民家に避難させろ!クレセントは俺に付き合え」


村人と護衛兵の全員に家に入るように伝えクレセントを乗せ湖に向かった


「あの湖か…やぱ干上がってんな」


「周りの森も枯れておるのぉ」


「まあ見てな!それもこれもすぐに生き返る」


空から干上がった湖に三本の世界樹の滴をまいた。少し息を取り戻した森にむかってサイクロンと唱える。


「フライ!この雨の上を飛ぶのは難しいか?」


「この程度なら問題ありません」


「この豪雨が10分続くから世界樹の滴も入れたし…この湖ならいっぱいになるだろ?」


「はい!主!見事な判断です」


「とりあえず…飛びながら話すか…クレセントこの山脈の向こうに見える港町は漁獲量とかどんな感じなんだ?」


「豊富に取れる!豊富に取れるのだが流通が出来ないんじゃ…残念ながら海に囲まれている」


「確かに難しいなぁ…護衛兵達がこの村からあの港町に行こうとしたらどれくらいかかる?」


「今出ても途中で1泊して明日の夕刻じゃな」


「んじゃ…護衛兵は先に帝都に帰らそう!んで…土地がしっとりしたら2人であの漁港へ行こうよ」


「わかったぞ!」


湖はたっぷりと水量を取り戻した。農村地帯に戻りストロングレインで少し強めの雨をふらし…村長が言ったように少し水たまりができる程度の潤いを与え終え村長の家の前に着陸した


「クレセント!空は良いだろ!」


「ああ!気持ち良いのう!」


「皇帝様!こんな辺境の地に足を運んで頂き、その上日照り続きで困っていると言えば雨までもたらしてくれ…なんと感謝を申し上げて良いか…」


「村長!気にするな!帝国はひとつじゃ!たくさん収穫して…たくさん出荷して裕福な村を作るんだぞ!」


子供達が走りよってきた…皇帝様!僕たちも空を飛びたい!クレセントは困っている


「良し!毎日畑の手伝いやお父さん、お母さんの言う事をよく聞いて家の手伝いもするなら乗せてやるぞ!だけど…俺には嘘は付けないから今だけ調子のいい事を言ってもダメだぞ」


子供達は考えた!そして3人だけ名乗りを上げた


「うん!君達は普段からお手伝いしてるようだね。少しだけだが空から世界を眺めてみろ!そしてもう少し大きくなったら広い世界に飛び出すんだ!」


フライは子供を乗せて飛び立った


「クレセントさぁ…ここから1番近い街に学校を作ろうよ。子供達に文字や算術を教えるのは将来とても良い事だ!あの子らの可能性は無限にあるんだから」


「わかった議会で検討しよう」


しばらくしてフライが降りてきた


「お空凄かった!」「空から見たら村長も皇帝さんもお父さんお母さんもみんな小さくみえた!」


「良かっただろ!算術でも読み書きでも魔法でもなんでも良いから…自分の得意な物を見つけて一生懸命学ぶといいぞ!」


「お父さん、お母さんもこの子がもう少し大きくなって学校に行きたいと言えば行かせてあげてくださいね。学費の大半は帝国が出す事になるので家計への負担はありませんから!」


「はい!この子が学ぶ喜びを覚えたら必ず」


「将来楽しみですよ。普段からコツコツ同じくらいの歳の子が嫌がるような手伝いも進んで手伝い…今、空を見た!大きく世界が広がったと思いますよ!」


「クレセント!行こう!フライ頼む!」


「皆の者!収穫を楽しみにしておるぞ!」


そして村を離れて山を越えた港町に向かった。道中クレセントと話をした


「魔道飛行船を開発したのは誰なんだ?」


「帝都の誇る天才化学者じゃ!少し変わりもんじゃが魔道具の第一人者じゃ」


「性格に問題は無いの?」


「飛行船を兵器利用すると言ったら投獄覚悟で反対したり魔石をはめられなくしたり軍に抵抗したようなやつじゃから…お前が心配するような性格では無いとおもうぞ!」


「良いなぁ!港町を出たら帝都まで送るから合わせてくれよ!」


「あぁ構わんが…魔道飛行船が爆破されてから職を失ってな。家柄も良くなかったからスラムに居るかもしれんぞ!」


「なんと勿体ない!なんなら月に金貨1000枚払ってでも俺が雇うよ!」


「そんな価値があるのか!」


「さっきの女の子もきっと時が経てば何かしらの形で国に貢献してくれる人になるだろう…要するに人材は宝なんだよ!国庫をからにしてでも研究はさせるべきさ!」


「そんなもんかのう!」


「そうさ!まぁ見てな…今日は帝都に戻ったら軍隊総動員で探し出してくれよ。明日会いに行く!」


「良かろう!手配しよう」


港町に着いた…漁港に向かう


「漁師さん今日は大漁かい!」


「残念な事に大量なんだよ!廃棄処分が増える」


「それなら廃棄処分になりそうなやつを全部集めてくれ!俺が買うよ!」


「あんた良いのかい?腐らせちまうぞ!」


「大丈夫だよ!腐っても漁師さんの責任にはしないから…漁師さんの取ったぶんだけじゃなくて全部の船の分だよ!あと少し皇帝陛下と散歩してるから組合長も読んできてくれよ」


「こ、皇帝陛下!わ、わかりました!ただちに!」


「フライさぁ…下世話な質問をして申し訳ないんだけど…例えば水鳥が魚を餌にするように、フライが魚を獲物にする事はあるの?」


「主様!相変わらず好奇心旺盛ですね。そうですね…フェアリーに進化する前なら海を見れば小魚を食したかもしれませんが…今は主様の従者にございます。同じものを口に致します」


「そうか!だけど海は広くて良いなぁ!」


「海の上を舞いましょうか?」


「今度頼むよ!だけどこの海をずーっと真っ直ぐ西に飛べば共和国の漁港に着くんだよな!どれくらい離れてんのかなぁ」


「海に見るロマンでありますね。今度飛んで確かめてみましょう!主様!」


「パインズはいつも不思議な事を考えておるのう!組合長らしき者が走ってきよるぞ」


「サモンゲート!フライ今日はありがとう!戻ってゆっくりしてくれ!あとはゲートで移動する」


「いえ主とのひと時、私も大変楽しくございました」


「皇帝陛下!」と膝をつく


「本日は何用でいらっしゃったのでしょうか?税なら春に徴収に来られたお役人様にお渡ししましたが」


「いや…我も来た理由はわからんのじゃ…隣におる者フォレスト侯爵…我の友でな。来たいと言うので来たのじゃ」


「組合長さん、さっきお願いしたとれ過ぎた魚は用意できましたか?あと組合に倉庫はありますか?」


豊漁でも東への道は山脈に塞がれ流通出来ないため廃棄処分するしか無い魚がいっぱい集められていた


「この魚は何人の漁師でとったんだい?」


「今日は8人です!」


「そうかそれなら8人並んで…はい!1人帝国金貨3枚づつな!それで良いか?」


「そんなに頂いても良いのですか?買って貰えなければ廃棄するだけだったものそれにこのような高額を」


「買ってくれたんだ…素直に閉まっておけ!家族に美味いものでも食べさせてやれ!」


「そこのまな板を貸してくれ」


パインズは自前の包丁を出し…その中でハマチのような油の乗った魚を捌いた。まな板に切り身が並ぶ


「小皿ないか?」


「クレセント!帝都にいては生で魚を食べる事は無いだろう!この醤油を少し付けて食べて見ろ」


「あとこっちはわさびと言って少しピリッとからいが醤油とセットで刺身によく合うんだよ。漁師のみなさんも組合長も食べていいぞ」


みんなが絶句した美味過ぎたのである…刺身を食べる風習はあったがたまに食べる程度で大体は煮たり焼いたりするのが定番だったらしい


「この醤油とわさびという調味料はなんですか?」


「これはイースト共和国で作ってる物なんだよ」


「なんと生の魚に良く合いますなぁ」


「美味い!パインズよ!美味いではないか?このわさびもピリッと鼻に抜ける刺激がたまらんのう」


「漁師さん達も家族に食べさせたいなら家から皿を持っておいで生で食べるのは手際良く捌かないと手の熱で美味しく無くなるんだよ。たっぷり作っといてやる。あと醤油とわさびもちゃんと人数分あげるから取って戻っておいで捌き方が見たいならみんな揃ったらはじめるよ」


「んで…その間に組合長!倉庫はそっちに先に行こう。クレセントも後でまた食べれるからそっちへ行こう」


組合の倉庫に行き中を確認した当然魚を冷やす機能は無く干物のような加工食品は並んでいたがガラガラの状態だった。組合長に話してその3分の1くらいのスペースをもらってコンクリートグラウンドで床を固め、コンクリートウォールで四方に壁を作り…更にコンクリートグラウンドで天井を作った。入口は分厚い鉄の二重扉にした。中に入り分厚い氷を床に敷き詰め壁を覆った


「組合長!今度からとれ過ぎた分はここに保管すれば良いよ。今ならすぐに腐るもんでも1週間は持つだろう」


「なんとこんな巨大な氷を敷き詰めて」


「そうだなぁ…魔法士を派遣してこの氷を維持する事も皇帝陛下と考えて見るよ」


漁師達の元へ戻った…子供や奥さんもついてきている。さすがの皇帝陛下…みな1目見ようとの好奇心と旦那に言われた刺身や醤油にも興味が尽きなかったようだ。まず、醤油とわさびを各家に渡し…捌き方身の取り方を実演して見せた。中骨を抜いたり皮を剥ぐ所は特に珍しかったようだ。そしてどんどん刺身を作りみんなに持ったせた


「せっかくだから皇帝から一言!」


「みな帝国の為によくやってくれている。感謝するぞ!フォレスト卿からは何かあるか?」


「刺身は新鮮な方が美味しいから真っ直ぐ帰って早く食べてね。最後にね、今はまだ信じられないと思うけど…山脈を抜けるのに穴を掘ってトンネルが通り馬車の何倍も早い輸送手段ができてこの海で取れた魚が帝都にも届くようになるから…そんなに時間はかからないから期待するように!そうなれば漁獲高は普段の何十倍になるだろうし…輸送手段にお金を使ってまた帝国に貢献して欲しい。信じられないと思うけどその時は来るからね」


信じられない話ではあったが夢があってみんな高揚した。そんな未来があるならさらに頑張ろうと決意した


解散したあと俺とクレセントは刺身を食べながら海を眺めていた


「パインズよ!ほんとにあんな夢物語が実現するのか?」


「するよ!必ず!あ、酒呑むか?」


「欲しいのう…あれじゃぞ!あれ!」


「わかってるって!乾杯するか!」


「美味いのぉ…この生の魚に合うのう!」


「魔道飛行船を作った天才化学者がいるって言っただろ?飛行船の運用は危険だ、空は何かあれば墜落するしな…だけど飛行船を浮かせて飛ばしたという事実もあればそれの動力源は出来上がってると思うんだよ」


「まあそうじゃなぁ…おかわり」


「置いとくから自分でついで…その動力源をさ汽車に転用するんだよ」


「汽車ってなんだ?」


「専用の道の上を馬車の5倍ぐらいのスピードで走る。それを帝国だけでなく大陸中に走らせるんだよ。飛躍的に移動手段に革命が起こって…世界は発展していく」


「お前が言うならできるんだろうな」


「今日帝都を出発した人が夕方には王都に居るんだぞ!凄いだろう!」


「夢があるのう!」


「人々の生活は便利になり世界が広がるぞ。そして流通は活発になり民は潤う!汽車は各国の国営として物流や人が乗る時に乗車料金をとれば税を下げても国も潤う!3カ国同盟あってこそ実現出来るじゃないか」


「お前と話をしているとわしは歳をとりすぎたなぁと思うけど…共に夢をみさせてもらえるか!」


「当たり前じゃないか!もっともっと頑張って貰わなきゃ」


「今日もいい一日じゃった!」


そう言ってクレセントは遠くを眺めていた。2人で刺身を食べながら飲む目の前を夕日が照らした



第二話 ビッツバーグという男


レントの神殿


「みんなおはよう!」


いつものようにお供え物やエサを置き精霊達にも魔力を与え雑談していた


「父上は下かなぁ」


「松様…もうおみえになりますよ」


「なんじゃ松!早いのう」


「あ!父上!」


「父上…地上の環境の事なんですが…」


「なんじゃ?」


「3カ国同盟も強固な物になってきました。魔道飛行船は爆破しましたがそれを開発した天才化学者を見つけたのです」


「それで汽車を大陸中に張り巡らそうと思っているのですが…1部山をくり抜いてトンネルを作ったり。森林を伐採する事になると思うんです。そういう事は問題無いのでしょうか?」


「そうじゃのぉ…度合いにもよるが…元々各種族が家を建てたり家具を作ったりするのに木は伐採するからのどこかの森を丸裸にするような事がなければ問題ないじゃろ。山をくり抜くのも特に問題はないぞ」


「そっか…んじゃ実現に向けて頑張るよ」


「その汽車とはなんじゃ」


「魔石を動力源にしてレールの上を高速で走る乗り物だよ。それが出来れば辺境の村で取れた農作物でも…山脈に閉ざされて流通出来なかった海産物でも…なんでもその日のうちに人口の多い街に運べるようになる。暮らしが豊かになれば教育も行き届くし何より幸せな暮らしが出来るようになる」


「凄いな…夢のような話ではないか!」


「各国が辺境の土地であっても豊作になる対策などは頑張っているし…戦争がなくなった事で軍隊は犯罪が無くなるように治安維持に務めている。ここで流通が活発になれば民も国も潤う…潤えばさらに犯罪も減ると思うんだよ」


「確かにそうじゃな…不幸な所から穢れは貯まっていくからな…」


「いつもの事だけど…俺がどこまで出来るかわからないけど…豊かな心を育てる事で美しい星になるのなら…限界まで頑張りたいんだよ」


「なにがあってもここのみんなはお前の味方じゃ」


「いつでも私達も見守っていますよ」


「みんなありがとう!」


帝都王宮


「おーい!クレセントー!どこだー!」


「ビッツバーグが逃げ回りよるんじゃ!お前との約束を果たさんと軍も総出でわしも街で追いかけておる」


「それは心配だったんだよなー。本人は罪人として追われてると勘違いしてるんだよ」


「そっか…やつの中では帝国はまだ軍事国家なんじゃな!もう少し待っていろ!」


「そうはいっても待ってるのも暇だし、フライに乗って探すか…」


「こそこそ逃げ回ってる人は…お!あの人が怪しいな…」


「フライ!ゲートで降りたら…下からサモンゲート開くからそのまま空から帰ってくれ!ありがとう」


「いえ…主…お気をつけて」


こっそり近づいていく…そぉーと…捕まえた!


「あなたがビッツバーグさんですか?」


「あわわわわわわ…ぼ、ぼくは何も知りません…なにもやってません…」


「落ち着いて!心配しないでください…軍はあなたを裁く為に追いかけてるんじゃありませんよ」


「そ、そうなんですか…捕まったら処刑されるのかと…よ、良かったです」


「ビッツバーグさんはルーバイン皇帝をご存知ですか?」


「お会いした事はありませんが…遠くから見た事はありますよ」


「危害を加えない事は僕が保証します!今後の事を話し合いたいので王宮に行きましょう」


「そ、そういう事であれば…はい…わかりました」


「クレセント!ビッツバーグさんは見つけた!」


「おー!そうか!なら、我らは解散する!」


「それが…本人はとても怯えてるし、安心させてあげたい。何よりボロボロだし何日も飯を食って無さそうだ。お前ら帝国の責任だからな!王宮に連れていくから風呂と最高の食事でもてなせ」


「お前も来るんだな…パインズ!」


「当たり前じゃないか…大事なビッツバーグさんを怖い顔したおっさんに預けられるか!」


「わかった待っておるぞ」


「い、いま…皇帝と話してたんですよね…その魔道具はなんですか?」


「話はあとあと!とりあえず風呂だ!」


王宮内皇帝専用大浴場


「はぁー!やぱ風呂は良いなぁ。てかこれが皇帝専用大浴場ってどんだけ贅沢やねん」


「ビッツバーグさんもさっぱりした?」


「は、はい…ただ…男の人の裸になれてなくて…」


「え?ビッツバーグさんて女の子なの!」


「は、はい…すみません」


「んじゃ…俺はあがるからゆっくりひとりで入ってください!」


「ま、待ってください。私は平気なので…さっきの魔道具の話とか…なぜ私を探してたのか…すぐに聞きたいです」


「がっはっはっはっはっ!我専用の風呂はどうじゃ!パインズもビッツバーグも堪能しておるか!」


そして邪魔が入りじっくり話は出来なかったが、皇帝になったばかりの頃は街から沢山の娘が押しかけて来て風呂に入る時は最低10人は伴っていたと言うようなどうでもいい話を聞かされたが…帝国では女性の身分は低く研究者になるには男である必要があった事や研究者として俺に協力して欲しい事…ペンダントの機能を説明して…気が済むまで分解しても壊しても良いよ。と…現物を渡して、風呂はお開きになった


王宮内貴賓室


「なんじゃ!ビッツバーグは女だったのか…誰もわからんかったのー」


「わ、私は…い、色気とか…無いですから…子供の頃から兄達と男の子のように育ちましたし…」


「おい!クレセント!バーディさんが怖がるから大声で話さないで落ち着け!それに魔道飛行船の件でも大功労者なのに研究所を破壊されたからって無職のまま放置するなんて…まず謝罪だろ!」


「そうじゃった…本名はバーディと申すか…苦労をかけ怖い思いもさせて本当にすまなかった。許してくれ」


「こ、皇帝陛下!あ、頭をあげてください。僕が怒っているとかないですから」


「ひとりで飲まず食わずで逃げ回ってたようだけど…家族は居ないのかい?」


「実家に逃げれば家族も軍に追われると思って帝都で残飯をあさり野宿して過ごしたのです」


「それは大変でしたね…ゆっくりお腹を満たしてください。食べながら聞いてくれたら良いですから」


「それではお言葉に甘えて…」


バーディは片っ端から貪った。凄まじい勢いで耳を占有するのは少し気が引けたが…基地の爆破をきっかけに帝国は王国に敗北し3カ国で同盟を結んだ事や皇帝と俺が友達になった事…平和になった社会で農業、産業問わず3カ国間に技術交流が始まっている事など話をした。中でも興味を示したのは、俺が出したガラスのコップやエルフの工房で作る製品は技術の高さに感心していた


「落ち着いたかい?」


「ふぅー!食べた!食べたー!しかも皇帝陛下と同席出来るなんて夢のようです!」


「それで大事な話なのだが…君の才能を俺の為に使って欲しいんだ。君の家族も君自身も生涯面倒をみる!ダメか?」


バーディは赤くなった


「それは僕を妾にしたいと…言う事ですか?」


嬉しそうだ…


「いや…そうじゃなくて…」


「違うんですかー!」残念そうだ


「君が望むならそれも良いのかもしれないけど…俺は伴侶は1人と決めて居るから…側室以上の待遇を約束しよう。1人の人として大切にする」


「わかりました…そういう事なら…だけど死ぬまで研究に没頭できる事は幸せだし…設備も整えてくれて家族の面倒も見てくれるなら私の一生はあなたに捧げます。ですが私も年頃の女の子ですから…1度くらいは男性と交わってみたいなーって最近夢見て居たんです」


「街でゴミのように生活してると…目の前を幸せそうな男女が手を繋いだり肩を組んだり…夜は離れ際にキスをしたり…ずーっと見てると憧れちゃって」


「わかった。その望みは責任を持って叶えよう」


「まてパインズ!お前は奥さん1人と決めているんだろ!俺が教えても良いんだぞ!」


「クレセントはダメだ…そんな事をするとバーディのなにかが壊れそうだ」


「はっはっはっはっ!たしかにのー!」


「あの魔道飛行船を作った君の頭は世界の財産だ…家族が王宮使えしたいなら出来るようにするし…帝都にある俺の屋敷に離れを作ってそこに住んでもいい…準男爵で良ければ爵位を渡して…我がフォレスト侯爵家の遠縁と言う事にしてもいいぞ」


「実家は隣の町で農業をしています。母と兄が2人…兄の家族も近くに居てみんな幸せに暮らして居ます」


「そんな家庭に良くバーディが育ったね」


「兄達と走り回って遊ぶのも楽しかったのですが…ある時本に出会って…はじめは何が書いてあるのかわからなかったのですが、毎日めくって遊んでいる間に読めるようになったんです。きっかけは魔法の法則が書かれた本で、図と文字を照らし合わせる事で意味がわかるようになっていきました。わかるようになると楽しくて仕方無くて…本を見つけると手当り次第に読みました。それである日この魔法陣をこうしたら…とか…この魔法陣とこの魔法陣を繋いだら…とか色々やるうちに…物体を浮遊させるのでは無いか?と仮説を立てたのです。それが魔道飛行船の始まりです」


「なるほどな…バーディはエルフ族の国…と言っても今は国交を開いてるから割合が多いだけで人族もドワーフも獣人族も住んでるけど…フォレスト公国って国があるんだけど…そこに移住してもいいかい?」


「はい!そこがパインズ様の領地なのですね」


「そうだよ。それに研究所もその国に作る…実験場は外れの平原にでも作ろうか…設備も薬品もなんでも揃えてあげるよ。調べ物をしたくて専門的な事を知りたければ…その事に関する書物を用意しよう」


「なんでも!ですか…」


「全てだ!」


クレセントが退屈しだしたから酒を渡して…暗黙の待て!をした


「それなら…魔道飛行船とは関係ないのですが世界のどこかに世界樹の滴という物があって…魔力や生命力に大きな影響を与える生命の水のような物があると古い本で読んだのですが…魔法士団長と話しても…そんなものあるわけないよって笑われて…」


「そっか…化学者なんだから研究、開発するのに素材を確認したり…鑑定スキルの高度なやつは持ってるよな?」


「もちろんありますよ」


「なら…これを鑑定してみろ」


世界樹の滴 最古の世界樹の恩恵によりできた溜まり水。全ての生命に再生や増幅の効果をもたらす


「あ、あったんだ!あったんですね!」


「やるよ。飲んでも病気も治れば身体能力も上がるぞ…俺はいくらでも持ってるから好きに使え」


「そんな貴重な物を」


「気にするな…一生大事にすると言っただろ」


「はい!これからパインズ様がなにをなさろうとしているのかわかりませんが…必ずお役に立ってみせます!」


バーディを王都の我が家へ連れて帰る為ここでお開きになったのだが…飲み足りないクレセントは護衛兵を連れて商館をハシゴしたらしい…若いなー!


王都に移動し少し街を歩きながら家路に着いた。帝都しか知らないバーディは人の雰囲気や活気の違い、王都の発展の様を見て感動していた


フォレスト公爵邸


「おかえりなさいませ、ご主人様!」


門番が俺に挨拶する。騎士団から派遣されている人達だ


「毎日…申し訳なく思うんだが…マリアはここの門番の任務を解除する気はないのか?」


「いえ!我らの誇りをかけてパインズ様やご家族をお守りしております!」


「お前達も知っての通り…俺もティファも騎士団総出でかかって来ても返り討ちなのは知ってるだろ」


「ですが…フォレスト卿…公爵邸に門番が居なければ王国が軽く見られます。それにここの任務は奥様が出してくれるお茶やお茶菓子が王都のどんな人気店よりも珍しく美味な為…」


おい!お前…今兜の中でよだれすすったよな


「失礼しました。そういうお気遣いも含んでフォレスト公爵邸門番という任務が騎士団の1番人気なのであります」


「そうか…それなら良いが…平和な世の中になったし考えにくいが…万が一賊が大勢で来たらまず合図だけ送ってお前達は逃げるんだぞ…騎士の誇りとやらでお前達が傷ついたり…もし万が一って事になれば…俺はそれが一番悲しいからな。あと渡してある合図用の魔道具もたまには起動確認しておくんだぞ」


「いつも優しいお心遣い感謝いたします!」


「ここが俺の王都の家、帝都にも、共和国の首都にもあるぞ」


「パインズ様はいったい何者なのですか?皇帝陛下を呼び捨てにし…王都にこんな大邸宅をもち…驚きなのは皇帝陛下がパインズ様と居る時は子供のように無邪気にしてらっしゃる。私の知る皇帝陛下は独裁者そのもので異議のある者は斬り捨てよ!って感じの人だったのですが」


「バーディがみて良い皇帝にみえたならそれでいいじゃないか!」


「ただいまー!今日はお客さんを連れてきたよ。みんなせいれーつ!」


フォレスト家の来客時の恒例行事だ


「左から妻のティファ!ティファの妹という事になってるけどエルフ族の古の巫女メル!上の子のマイク!妹のウィンク!執事のセバス!メイド長はエルフのパレット!獣人族のメイド、ガイヤ!ドワーフ族のメイド、マナティ!最後に人族のメイド、セシルだ」


「この人はバーディと言って帝国の研究所だった。例の魔道飛行船の開発者だ!クレセントに言って貰ってきた!これから俺と一緒に便利な社会を作ってくれる大事な人だ!みんなよろしくな!」


「よろしくお願いします!」どもっていたのも治ったな


「帝都の王宮で食事はして来たから…お茶とデザートでも出してあげて」「かしこまりました!」


「あと客室の泊まる用意とな…あと似合う服も適当に見繕って…女の子らしくアクセサリーも…メイド全員で着せ替えして遊べる準備をしておいて」


「おまかせください!ご主人様!」


それからティファを呼んで2人には思い出の深いニューリゾートの風呂に来た。湖を眺め星空を眺め…今はビアノの音はしないが…とても懐かしい感じがする。ティファは既に大事な話がある事はわかっている。それからバーディの事を生い立ちや帝国で置かれていた立場、逃げ回って居た事などを話た。最後に研究者として一生を俺に捧げる覚悟はできたが…街で見た同年代の女の子のように男と遊んで見たいらしい事を話した。その上で俺は誰に任せるじゃなく自分でもてなしてあげたい事、本人は一生の思い出にと言ったが…もしもバーディが俺を好きになった時には自分もバーディを愛してあげたい事を話した


「なーんだ!こんな所までわざわざ来て…そんな事?私もっと大変な話があると思って構えたじゃん」


「そんな…か、簡単な話なの?」


「そんなの思い通りにしていいに決まってるじゃん。私は生まれてすぐにあなたと感覚も共有してたのよ。あなたの透明な所、誠実な所、優しい所…全部知ってる。オートマタでも気に入らない主には逆らえるんだよ」


「そんな機能もあるのか?」


「抵抗するには少しコツというか…見えないチカラに抗う必要はあるけどね」


「ふ~ん…」


「あなたの事を全部理解した上で感動した恋をした。オートマタには無い感情なのに…切なくなったり悲しくなったりした。それはあなたの大きな愛情を知ったから…恋愛とか…そういう言葉では語れないような深い優しい温かい愛情を…だから進化できたんだよ」


「そっか…進化の裏にはそんなに重なり合った奇跡があったのか…」


「そうだよ…そんなあなたがその愛情をあげたいと言う気持ちになるとすれば…それはあのバーディさんがあなたと同じくらい純粋で綺麗な人だと言う事だもん」


「あの娘ならここに来れる気がするんだよね…試しに明日神殿に行ってみようと思うんだけど…」


「いいじゃないー!」


「なんかゴメンな…あの娘に俺を見せようと思うとティファと2人で歩いた道をなぞる様になるからさ。ティファにはちゃんと話して喜んで貰えたらそうしようと思ったんだよ」


「多分…あの娘がパインズのそばにいれば…あれこれ夢に近付くでしょ…嬉しくない訳がないよ」


そっか…と言いながらティファに対する気持ちが溢れた。久しぶりに来た風呂…懐かしい香りに包まれながらずーっと抱きしめた手をほどく事が出来なかった


あとは…みなさんのご想像におまかせします




第三話 バーディ


「おはよう!」


「パインズ様!バーディ様のコーディネートですがこのような感じでいかがでしょうか?」


「おぉぉ…!美しいなぁ」


「ぼ、僕なんかがこんな姿になっておかしくないかな…少し…は、恥ずかしいし」


「もし街を歩いていてはぐれたらダメだからネックレスはこっちにしょう。普段は緑の魔石の通信機なんだけど…今日の服装だと赤が合うかな!魔石の部分を握って俺を思い浮かべたら…俺と交信出来るからな」


「とても似合ってるよ…バーディ…素敵だ」


「そ、そうですか?喜んでいただけるなら…わ、わたしも嬉しいです」


「恥ずかしがらずに自信持って…わざわざ僕って言わなくても女の子らしく振る舞えばいいんだよ」


「これからどちらへ…そうだなぁ色々考えてるんだけど…とりあえず1番に行きたい所があるんだよ。一応俺は帯剣もしているし中に防具もつけてあるけど…お出かけ用の服装だしな…あとはのんびり考えよう」


「今から行く所は普通の人は生存できない場所だからもし頭が痛くなったり…気持ちが悪くなったらすぐに言ってくれ!もどってくるから」


「はい!わかりました」


「んじゃ…目を瞑って…」


レントの神殿


いつになく精霊が湧いている。レントもしっかり起きていて…父上もいる…妖精もとてもたくさん集まっている。


「さ…目を開けて良いよ…」


「なんですか!ここは!こんな美しい場所があったのですか?ここはパインズ様の精神世界ですか!」


「落ち着けバーディ!身体に異変は無いか?大丈夫か?」


「うん大丈夫だよ!」


「紹介するな…この人は俺の父上!今日は人型を取っているけどこの星の創造主様だ…何億年も昔この星が創造された時より星の真ん中で魔力を供給し続けている…父上!この娘はとても大切な娘だから本来の姿を見せてやってよ」


「お前はバーディと言うのか…松の大切な娘と言う事は我の娘みたいなものよのぉ…驚くなよ!」


と言って上空まで上がり漆黒のドラゴンの姿をとった


「どうじゃ!バーディ我を見てどう思う!」


「美しい!美しいってもんじゃない!神!まさに神だ!」


「我は創造主!神など我の足元にも及ばん!」


「し、失礼しました。私の読んだおとぎ話ではいつも最高の存在として神様が出てきたので…創造主様!お会いできて光栄です!」


「ほっほっほっ!可愛い娘じゃの」


と言ってにこやかに人型で戻ってきた


「そして…この気が最古の世界樹!レントと言う」


「松様がこれからお世話になるようじゃなわしからもよろしく頼んだぞ…娘よ」


「それからあの鳥がグリフォンフェアリーのフライ!大空の覇者だよ。父上の眷属。あとで乗せてやるからな」


「バーディ様…主共々よろしくお願いします」


「触っても良いですか?黄金に輝く羽…綺麗」


「バーディ!私はウンディーネ!水の精霊…よろしくね」


「私は風精霊のシルフィード!」


「私は火精霊のサラマンダー!」


「私は地精霊のノームと言います」


「最後に私が光精霊にして元素霊のエレメンタルと申します。みんなあなたを歓迎しますよ」


「バーディです!みなさんこちらこそよろしくお願いします!」


「バーディ…両手を広げて斜め上にあげて少し肩を触るぞ…魔力解放って唱えてみろ」


「魔力解放!」淀みのない透明の魔力が解放される


「松様が連れてきた理由が良くわかりましたよ。松様同様に穢れのない透明の魔力…これほどに濁らない魔力を松様以外にも持つものが居るとは…松様が犯罪を減らし戦争を無くし…平和の為に走り回って来た甲斐がありますね」


「この娘は…その辺の経緯はなにも知らないし…むしろ自分で開発した魔道飛行船を壊した人だからさ」


「その者が魔道飛行船の開発者か…帝国が松に負けて良かったのぉ…せっかくの研究が殺戮の道具にされてはかなわんもんな」


「はい…その事はとても感謝しているのです。あのまま魔道飛行船が軍部に実用されたら私は生きたまま死人になっていました。これからパインズ様の手足になって平和の為に便利な社会を作ろうと頑張ります」


「いい娘じゃ」「いい娘じゃな」


「私達も応援しますよ」


その場に集った皆がバーディに加護を与えた。幾重にも重なり合う光に包まれ色んな色の魔力に包まれバーディもしばらく輝いていた


「凄いなぁバーディ…みんなお前を認めてくれたみたいだな。そのチカラはこの星にある穢れや汚染された魔力に対抗する為のチカラだ。決しておごるなよ」


「わかりました…パインズ様の言う事を良く聞き…自分で判断せず…皆様の期待に必ずお応えします!これからもよろしくお願いします」


「今日は、バーディとデートなんだよ。帝国軍から逃げ回って居る時に街で見た同世代のカップルが眩しくみえたらしい」


「パ、パインズ様~」


「そんなに照れなくて良いよ。まずは空の旅と行こうか!フライ!」


「はい!主!」


大空を舞う…ゆっくり…優雅に…


「怖くないか?手を離しても落ちないからな」


「パインズ!怖くないよ」


「はは…だんだん砕けてきたな…デートしたいんだろ?それで良いからな」


「わかった!パインズ!後ろから腰に手を回して抱きしめて!」


「こうか…悪いな俺もこういうの慣れてなくてな」


「多分…正解なんだと思う!そうやって抱きしめられると心が満たされる!」


「バーディは経験無い割に大胆だよな」


「だって限られた時間の中でデートしてるんだから…遠慮してる時間が勿体ないもん」


「バーディには妖精は見えて居るか?」


「あの色んな色に輝いているのは妖精なんだ!」


「そうだよ…妖精も歓迎してるようだな」


空を飛びながら色んな話をした。エルフの街跡や父上の神殿…俺の家や自慢のお風呂…上空から案内した。俺が松と呼ばれている事も違う世界から転生して来た事も話した。魔道飛行船に使った動力源を回転するチカラに変えて列車を大陸中に張り巡らせる構想も話した。異世界の文化ではもっと便利な物がある事をバーディに話した。時折…子供のように目を丸くして驚く姿はとても可愛らしかった。


「ぼちぼち降りるかい?」


「んとね…もう少し、お願い!この光景をもっと目に焼き付けたい!それにもっと抱かれていたい」


「いいぞぉ…だけど地上でも飛べるし…フライに2人で乗る機会はまだあるぞ」


「それでも…今日は特別だから…ねぇパインズ…キスして…」


後ろに顔を向けるバーディをとても愛おしく思った


「ねぇパインズ…私…なんか…身体の奥から切ない感じになっちゃう。変なのかなぁ」


「バ、バーディさん?少し落ち着こうか」


「はぁ…しあわせ」


口を離したら少し落ち着いた


「そうか…幸せか…ありがとうな!」


「なんでパインズがありがとうなの?」


「バーディを大好きだからだよ。バーディだって母親が病気になれば心配するしあんまり苦しそうにしてると変わってあげたいと思うだろ?」


「そうだねぇ」


「同じ気持ちだよ…バーディが幸せを感じたら俺もとても嬉しい気持ちになる」


「そうだ…キスしてたらパインズが私を大切に思ってくれる気持ちが伝わってきて…幸せと思ったんだ」


「ぼちぼち…お腹も空いてきたし…街にいこうか」


「そうだね…くっついて歩くからね」


ニューリゾートを解散し街に出た


「食べたい物はあるかい?」


「食べた事が無いものを食べたいかなぁ」


「帝都の隣の街で育ってずーっと帝都にいたんだよな?魚って食べられるか?」


「魚を食べた事はないけど…好き嫌いはないよ」


夕方の海が見せたくてとりあえず…王都を歩いた左腕にしがみついて離れないバーディだったがその姿もとても可愛く思えた。ランチを食べアクセサリーを買ったり…屋台のおばさんと話をしたりしているうちにあっという間に時間は過ぎていった。途中マイスターに連絡を取り王宮で1番良い客室を貸すように言った。警備などについて聞かれたので、女性と2人で行くからそれ以上野暮な事は聞くなと説明した。酒は手土産に持っていくから客室への案内と挨拶をよろしく…と頼んだ。夕方になって共和国の海へ行き海沿いの漁港近くに即席の席を作った。魚を裁き…生から焼き物、煮物と楽しんだ。バーディは飲めるらしく共和国ではスタンダードな米から作ったお酒をとても気に入って飲んでいた。夜になり静かに海を眺めていた。


「もう終わっちゃった。朝、創造主様達と会った時はずーっとある時間に思えたのに…」


「そうだな…あっという間だな」


側室は取らない方針のパインズだがバーディは家族にしようと決めていた。だが、あくまでも本人が強く希望した場合に限ると決めていた。


「ねぇパインズ…キスしていい?」


「何度も聞かせてごめんな…こっちにおいで…」


「もう二度と言わないし…パインズが作ろうとしている汽車も必ず開発するから…」


「まだ離れなくない!今日だけ…ダメ?」


「わかった…俺も離れたくないし…わがままはお互い様だな」


にっこり笑う俺にバーディはしがみついた


王宮マイスターの部屋


「よぉ!マイスター!」


「これはこれはパインズ殿おまちしておりましたよ。そちらの女性はどなたですかな?」


「この娘はバーディ帝国の魔道飛行船の開発者だ!」


「こんなに美しい娘が開発者だったのですか?」


「ああ…軍もクレセントも男だと思ってたらしいし本人も男と偽って居たらしいからな」


「そうでしたか…面白いですなぁ…それがなぜパインズ殿と?」


「3カ国同盟がなった今、バーディの頭脳と俺の能力を結集して世の中に変革をもたらす。今まで考えられなかったような便利な世の中にするつもりだ」


「なるほど…世界の救世主様はまた面白い事をなさるのですな」


「バーディ…少し列車などの構想をマイスターにも話しとこうと思うのだが…ここには図書館があるからバーディは少しそこに行ってみるかい?」


「パインズと離れたくないけど…図書館にも興味があるなぁ…所でここはどこでそちらの方はどなたなの?」


「レディ!申し遅れました…私はシュテルン王国国王マイスター・シュテルンと申します。ここは王宮の中ですよ」


「え!え!あ!あの!わ、わたしは!ば!バーディと申します。」


「ふふふっ!パインズ殿は我が友にして世界の救世主です。その方がお連れした方…なにもお気になさらず」


「シュテルン王国図書館へ参りますかな…」


「はい…よろしくお願いします」


衛兵に案内させ俺はマイスターに、これからの変革と言う夢物語を聞かせた。マイスターは全面的に協力し土地の利用も図書館な閲覧権限も開発費に関しても必ず3カ国が協力するように手配すると盛り上がっていた


「父上!父上ー!父上ー!」


「なんじゃ?相変わらず騒がしいのぉ」


「図書館にこのような者が!あれ!パインズ様」


「図書館に居たので…誰だと聞いたら…パインズ様の彼女で父上に図書館を案内してもらったと言うもので…そんな事が信じられるか!と」


「マリア…ほんとの事だよ」


「でも側室も取らぬと私には言ったではありませんか!」


「その娘は俺の分身のような娘でなこれから研究者として色気のない一生を迎えようとしている。今日は最後の思い出に街で見た男女のデートをしたいという事でな。こんな風になっているんだよ。まだ途中だけどな」


「バーディ…面白そうな本はあったか?」


「見た事も無い本ばっかり…」


「国王の許可は取ってあるから1週間ほど図書館に籠るか?書物については俺のスキルでなんでも形にしてやれるのだが…具体的にこういう事が知りたいっていわれないと形に出来ないんだよ。スキルとしては世界図書って言うんだけど…世界中の知識は詰まっているのだが呼び出す俺に世界の知識はないからさ」


「え!そんな便利なスキルあるの?あるよ…んじゃ…魔石にジャンルを絞って出せる?」


「それは大丈夫…魔石…なるべく詳しく…世界生産…書物…」


「はい」


「凄い!パインズ!見ていい…あげるあげる」


パラパラ…パラパラ…パラパラ…


「凄い!こんなに詳しく書いてあるんだ。魔石の事だけでも動力源に関して一気に研究が加速するよ」


「あとなマイスターとクレセントにしか見せた事が無いが…俺はこんな魔石も持ってるぞ」


「なに?この大きな魔石!私の作った魔道飛行船もこの魔石があれば大空を自由に羽ばたいたよ!」


「実は魔道飛行船なこっちにも共和国にも情報が漏れていたんだよ。だから大きな魔石は帝国に渡らないようにしていたんだ」


「そのおかげで兵器にならずに済んだんだから私は感謝しかないけど…パインズがそんな高濃度の魔石を持ってるなら…汽車は意外と早く完成するかもしれないよ!」


「さっきまで…泣きそうな顔をしながら離れたくないって抱きついて来てたのに…やぱ一流の研究者だな」


「それもほんとだけど…パインズの夢を私が実現できるならそんなに幸せな事もないんだよ!」


「ともかくフォレスト公国とシュテルン王国、ルーバイン帝国の中間地点に列車の開発基地を作って運用が始まったらそこを点検場所兼大陸中を駆け回る予定の車庫にしていくつもりだから…」


「研究所を作る時間や…様々な分野をわけて開発した方が良いだろ…陣容が何人必要か?とか…深く掘り下げた事はさっきみたいに書物にして出してあげるから…きっかけを見つけたり、人数を考えたり、必要な設備を考えたり…そういう事にちょうどいいからしばらく王国図書館にこもればいいよ」


「そうさせてもらう…それで思いついた事はパインズに通信すればいいね」


「それでいこう…マリアも賊あつかいしないように頼むな…マイスターは専属のメイドを1人頼む…のめり込んだら時間も関係なく突っ走ると思うから適度に休憩させてくれ、飯や寝る所の準備も頼むな!」


「それなら今日は休もうか…行くぞバーディ」


「マイスター…案内をお願いします」


「マリア…色々言いたい事はあるかも知れないが…お前も大事な友である事は間違いない…人それぞれ立ち位置もあれば与えられた使命も違う。マリアはマリアの進むべき道を行け」


そして最高級の客室へ案内された。護衛は外してあるが部屋中を結界でおおった


「凄い部屋だねぇー」


「他国の最重要人物を泊める部屋らしいからな装飾品が下品だけど…この高級感は国の全力で作った部屋。というのはわかるなぁ」


「パインズはなんでもできるんだね…いま結界をはったよね」


「よくわかったな…」


「多分…朝…加護を貰ったからだと思う」


「そっか…そうだったな…少し今の感覚に慣れてきたらゲートはあげられると思うよ」


「そうなの?パインズと繋がってると色んな恩恵があるんだね」


「俺のチカラなんて…なにもないよ。全部この星の創造主やそれを守護するもの達が俺を気に入って与えてくれた物ばかりだもん」


「それも含んでパインズのチカラなんだよ。私も好き…パインズが居ないと研究も手につかないくらい好き」


「おいで…ベッドから月明かりが見えるようになってるんだな…」


「ねぇ…上に乗っていい?」


「良いよ」


静かに流れる時を感じながら何回も唇を重ね…パインズとバーディは愛し合った。朝になった


「ねぇ…もう離れなきゃダメなんだよね」


「バーディは俺には特別なんだよ。側室にはしないけど家族にはするぞ…ティファにも了解は取ってあるよ」


「そうなの?昨日が最初で最後だと思ってたから…今朝、目が覚めたら涙が止まらなかった」


「意地悪した訳じゃないんだよ。バーディが強く望んだら…って言う条件を自分でつけていたんだよ」


「ぐすっ…強く希望する!希望する!」


「昨日のマリアの反応を見てわかると思うけど…一応活躍してきたからさ…娘を側室にとか…我が種族から好きな娘を数人妾にとか…今までそういう話は何度もあったんだけど…ずーっと断っててな」


「それはなんとなくわかるよ」


「だからティファ以外の女の子と交わった事は無かったんだ…あ…たまにエレメンタルがキスするからキスはした事あるけど…」


「だけど…バーディがデートしたりしたい…女の子として男と抱かれてみたいって言うような話をした時に…誰かをあてがうのは嫌だと思ったんだ」


「だからあの日…ティファと話してさ…そしたら、わざわざそんな事って笑ってた」


「バーディ…大好きだよ。世界の変革の同志として俺の唯一の女の子として…これからもそばに居てね」


しばらくじゃれあったあと…バーディを王宮に残し…日常に戻っていった




第四話 フォレスト研究所


鉄道を大陸中に整備するべくパインズとバーディの二人三脚が始まった。帝国、王国からは広大な土地も借り受けフォレスト研究所が建設された。共和国も協力したいとの申し出はあったものの都合の良い土地もなく開発を優先する形となった。事前に3カ国協議は行われ鉄道の整備に入った段階で土魔法の得意な魔法士と職人は各国で出し合い…自分の国土の開発に囚われず3カ国の共同開発としてフォレスト研究所が一手に行う事となった。フォレスト研究所は四部署で形成されており。研究所統括にパインズ、研究所所長にバーディ、その元にある動力源課、魔法課、環境開発課、躯体整備課の各四部門には3カ国からも優秀な研究者や魔法士が参加した。環境開発課は事前に国土を調査して線路をひけるかどうかの下調べを行う為…各国の重要人物もサポートに付いた。


一方パインズは研究所が出来ると同時に研究所前に実物大の線路と列車の模型を作り…研究所を訪れる者、みなに説明していた。皇帝、国王、首相は一大プロジェクトに大いに歓喜し…その噂は既に大陸全土へと繋がっていた


「バーディ!どうだい進行具合は?」


「順調だよ!2人っきりになりたい!」


この頃からバーディは煮詰まってくるとパインズを呼び出しニューリゾートを散歩するようになっていた。

躯体の強化と強化魔法。鉄道路線の場所の選定などはバーディの思い付きと図書で調べた知識によって完璧に軌道に乗っていた。だが、長時間の運用や魔法を使えない運転手がブレーキをかけるにはどうするか…等、安全な心臓部を作るという最後の壁にぶち当たっていた


「俺が発案するのはいつも独り言みたいなものでさ、

寝言くらいに聞いてくれたら良いのだけど…」


「パインズの思い付きを聞くのは好きよ!」


「まだ昼だけど…バーディは何日も泊まり込みだろう!昼間だけど風呂に使ってのんびり話するか?」


「えっち!だけどその方が嬉しい!」


「バーディのがえっちじゃん…」


「うん…話の前にまたがっていい?我慢出来なくなっちゃった」


天才ゆえの独特のストレスの解消方法なのだろうか…買い物も豪華な食事もさほど興味なく…一心に新しい物を生み出そうとするバーディが唯一自分から求めるものだった


「スッキリしたか?」


「うん…気持ちよくなって何も考えられなくなって…これが1番リフレッシュ出来るの…そんな女きらい?」


「んにゃ!大好き…それに愛してなければ求めないしな。たまにそうやって研究以外の所に自分の居場所を確認する事は良いことだと思うよ」


「ふふっ!話を聞くから前に座らせて…パインズにもたれかかって聞く」


「研究所で見る時はとても優秀な研究者なのに…あまえただな!」


「だからだよ…普段から無理してる訳じゃないけど…素の自分で居られる場所って無いもんだよ。私にとってはパインズが居るところってだけ!今や、母親と居ても気を使って疲れるもん」


「そっか…そんなに好かれているなら仕方ないですねぇ…」


「なによー!所でさっき言ってた思い付きは?」


「いや…動力の発想が魔道飛行船に始まったじゃん…だから大きな魔石で大出力を出してみたいなさ…」


「うんうん…それが2人の共通認識だねぇ」


「それを一旦リセットしてさ…レールを引くから摩擦はかなり軽減する設計になってるし…少し車輪を大きくしただけでも…左右に繋いだ1組の車輪なら割と小さい魔力で走ると思うんだよ。それでその小さい動力を一括で制御する為に大きな魔石を使う。逆転させて考えて見てはどうだ」


「うん…それは面白いね。研究所入りしてからずっと巨大な動力をどう制御してどう安全に運用するかを考えて来たから…」


「1番良いのは各車両に係員は前後に最低2人付けるとしてもさ…操縦はしなくても予め走行区間、停車区間、停車時間、というふうにプログラムさせるために大型の魔石を使ったらどうだろうか…」


「それは大きく近づくかもしれないな!パインズ行くよ!また連絡する!」


「ちゃんと服着ろよー!」


バーディってイチャつくの好きだし…甘えただし…時間がある時は離れないんだけど…こういう時はとても気ままなのよねー もう少しのんびり風呂入ってよ


数日して一睡もしないで魔法式といプログラムを完成させた。バーディから連絡が来た


「パインズ!出来たよ!出来たよ!」


「早かったな…」


「全部署総動員で変更作業とかやったから…パインズが作った模型の線路も少し拡大して駅を作ったりしてたんだよ。環境開発課もとても頑張ったから見学に来た時に全職員に臨時ボーナスお願い」


「わかったよ!明日は急かなぁ…そうだなぁ明後日!明後日にクレセントもマイスターもフランベル首相も連れて試運転の見学に行くよ。明日は予備日にして軽い確認作業だけするようにしてさ…今日はもう早くてもみんな帰してやりな」


「そうだね!そうする…他の職員は大部分が併設の社宅だろうけど…バーディはちゃんと家に帰るんだぞ」


「パインズは居てくれないの?ん?いいよ…久しぶりに帝都のフォレスト邸に行くか?」


「そうだね!見たい景色も行きたい所もあるけど…のんびりするのが1番だね」


「んじゃ…明後日の段取りをして落ち着いたら行っとくよ」


「あとでね!あ、な、た…」


それから各国へ連絡を取り試運転の見学会を準備した。フォレスト公国からもプリシアを代表に数名呼んでおいた。そしてニューリゾートに完成の報告に行き環境に極力やさしく運用するように再度確認した。それと同時に帝国の海岸線から共和国の海岸線を繋ぎながら帝都、王都、首都を結びながら効率よく途中の街を網羅出来るように線を引いた。少し辺境の村や町は支線をつなげるように設計した。


その日が来た。一応挨拶しておくか


「皆様…遠い所より我がフォレスト研究所の発表式に参加頂きありがとうございます。横にいるのが本日まで開発チームの指揮を取ってきたバーディでございます。その隣で並びます者たちが各国よりお借りした天才のみなさんです。研究所所長は夜と言わず朝と言わず、おかまいなしに指示が来た事でしょう…ある時は食堂にいてもトイレにいても指示が来た事でしょう。これから見せる研究成果はこの者達の血と汗と涙の結晶でございます。どうかご覧下さい」


研究所員がまずは走らせる。バーディは俺の顔を見て満足そうだから頭を撫でた


「おー!」「パインズ!凄いのぉ!」「パインズ殿これが夢の乗り物ですかな?」「どうなっているんだ!」


方々から完成が上がるなか…スピードをあげる。レールを広げる時に速さに耐えられるように環境開発課が総出で計算したそうだ。どんどんスピードが上がる。時速で言えば80kmくらいだろうか…到達し原則する…安全に駅を模したポイントで止まった。運転についてバーディから発表する


「この列車の運転はほぼ自動的にプログラムされている為、乗組員はお客様案内が主な役割になります。安全装置は設置しておりますので緊急停車した場合でも少しの魔力を流す事で再開できます」


「なんと素晴らしいですな」「技術的にも少し魔力を持っていれば可能とは…感心しますな」


「では!みなさん実際にのってみましょう!」


全員で乗り込んだ!参加者は度肝を抜かれ、バーディは誇らしげな顔になった。せっかくだからみんなが慣れるまで走ろうと言う事になって各国の代表するおじさん達が遊園地の乗り物にでも乗っているような顔をしながらもう一周!もう一周!と無邪気に笑っていた


「ではみなさん…研究所内の会議室へ移動しましょう!」


路線図を広げた


「このように最終的には帝都~王都~首都イースト~フォレストのセンターシティ~帝都…というように各国の主要都市を繋ぐ中央線を軸に中央線では通れない町や村にまで支線を伸ばします。これをする事で人を運ぶのみでなく…現在流通ができず過疎化に悩む辺境地域からも主要都市に向け出荷が可能となりす。また帝国と共和国、王国と帝国と言うような国家を超えた取引が可能になり今も国営商会で行われている取引が個人商店の規模で可能になるでしょう。また移動手段の確率により今は誰も来ないような辺境の地にリゾート地を開発し…観光の名所を作ることも可能になるでしょう。そうやって…未だかつて無い流通と、交流の時代に突入すれば国土は潤い!民は大喜びする事でしょう!どうですか本日お集まりの国家を代表する皆様!」


盛大な拍手に包まれて賛同を得る事ができた。


「まず試験運転の地と私が決めているのはまず帝国の西の漁師町~帝都間…あと王国の王都から南の森の開発地までの区間をと思っていますがどうでしょうか?」


「ルーバイン帝国は支持する!」


「シュテルン王国は選ばれた事を国民一同を代表し感謝の念を捧げます」


「共和国もイーストから南の山岳地帯の手前にある農村へ向けお願い出来ませんか?この度国内でこの辺りを大農場地帯に開拓しようと計画が持ち上がっております!」


「では環境開発課の代表!この後3カ国の代表の方と協議してください。あと帝国の路線は山脈を越えるため大きなトンネルを作る計画になっています。」


「トンネルは掘った所を山崩れしないように固めながら進まなければなりません。その作業については私の全魔力をかけて成し遂げましょう」


「最後に生態系をあまり変えたくありません。線路に魔物が出るような危険な場合を除いて森の中を通すのもなるべく伐採が減らせるような配慮もお願いします」


「パインズ統括!私が環境開発課課長のシモンズです。今後ともよろしくお願いします。」


「バーディのわがままに付き合ってくれてありがとう。こちらこそお願いしますね」


「統括! 私が動力源課課長のサイモンです。よろしくお願いします」


「よろしくな!いつもありがとう」


「統括!魔法課課長ナタリーです!お願いします」


「ありがとう!」


「統括!躯体整備課課長のガレットです!よろしくお願いします」


「躯体整備課は運用が始まったあとも車輪の緩みや魔力伝達の確認を毎日行う必要があるから頼むよ。人員が欲しい時はバーディに伝えてくれ」


「はい!ありがとうございます」


「あとみんな作業や打ち合わせをしながらで良いから聞いてくれ!今日の成功で少し人の余る部署も出てくるだろう。足りない所には確実に補充するが…これを見てくれ!」


「俺が作った魔石を媒体にしたランタンという魔道具だ!まだ辺境の村や町の明かりはロウソクや薪に頼っている…魔力が無くても灯りをともせる。フォレスト研究所はより安価で魔力が無くても手軽に使える魔道具を開発し世の中に広めて行きたいんだ!」


「はい!」「はい!」


「ちなみにこれは所長に渡しておくから時間に余裕が出来た人から分解するなり叩き割るなりして開発して欲しい」


「パインズ!大成功だったね」


「天才科学者バーディ様のおかげです!」


「パインズ…お前の夢物語が実現しそうじゃのぉ…」


「クレセント…みんなの協力があってこそだよ」


「そうじゃがな…こういう技術と言うのは使うやつによって薬にも毒にもなるもんじゃ」


「クレセント!それをお前が言うのか?」


「そ、そうじゃの…いつぞやは飛行船を兵器にしようと考えていたヤツもおったのぉ…」


「ははははははっ!パインズ殿!皇帝陛下を虐めてはいけませんよ!」


「何にしても歴史に刻まれる1日になったな」


マリアが膝を付いている


「パインズ様のなさる事にはいつも心が揺さぶられます。まだまだパインズ様の足跡を遠くからでも眺めたいと…本日も実感いたしました」


「マリア…南の森から海までの開拓は冒険者と軍で何とかなりそうか?帝国の軍隊なら多分応援頼めるぞ。帝国の治安はかなり安定している。無理せずにクレセントに連絡して頼めば良いからな」


「マリア殿か…その時は気兼ねなく…わしも持っておるからのぉ!」


「あっそうだ!マリア鞘ごと剣をみせてくれよ」


「バーディみてみ。この剣も俺が作ったんだよ」


「綺麗な剣だねぇ」


「鞘と持ち手はレントに作ってもらってさ…刃はダイヤを使ってあるんだよ」


「ダイヤってニューリゾートでキラキラしてるやつ?」


「そうそう…バーディは戦う術を持たないから少し心配なんだけどさ」


「何言ってんの?体術や剣術はパインズに貰ったけど鍛えて無いから一般兵士並だと思うけど…元々得意な攻撃魔法はめちゃくちゃ威力あるよ」


「そうなのか?」


「だって…パインズが可愛がってくれる時にいっぱい魔法陣をもらうもの…」


「そ、そうか…わかった。マリア…これ返しておく」


「今日も各国首脳のみなさんが帰ったら終わりだから…遊びに連れて行ってね。マリアさんも来る?」


「え!いいの…」


「それなら帝国の海に行こうよ。クレセントも来るから…マリアとクレセントが仲良くなれば…森の開発も楽になるだろうし…」


「パインズ殿…今日は私もお共させて頂きますぞ」


「そうだな!んじゃ…みんなで行こう。その漁港を見て今回の列車を思いついたんだよ。トンネル掘らなきゃいけないしな…下見がてら行こ」


色々あったが…成功に終わった。革命の鐘が鳴り響いた!しかし…まだまだこれからである!




第五話 鉄道開通と南の森侵攻作戦


漁師町に着くなり手厚い歓迎を受けた…倉庫の使い易い事や醤油が好評な事など様々報告を受けた後、追加を渡しておいた。列車の構想も話…トンネルを作る時に拠点に使う了承も得た…その後は身内で遊びたい胸を伝え…一番広くて綺麗に海が見える場所を借りた


「バーディ…ティファとメルと子供も呼んでいいか?嫌か?」


「嫌なわけないじゃん…家族以外の人に誘惑されてたら拗ねるかもしれないけど…パインズの家族は私の家族だよ。ティファさんが右腕を取ったら私は左腕に抱きつくよ」


交信して空いているのは確認できたのでティファとメルと子供達…あとプリシアを呼んだ。一通り挨拶が終わり着席した


まずは魚の裁き方を披露した。みんなこの作業を見るのは大好きなようで子供達も喜んでいる


みんなで横一線に並ぶ形で海を眺めながらのんびり過ごしていた


「そうだ!プリシア!フォレストの軍からも王国の南の森の開発に人を出して欲しいんだよ」


「お申し付けとあらばいかようにも」


「いや…どうしてもって時は俺がお願いするけど…もうお前達も自分で他種族の人とも友達になって自分達で判断して大陸中を駆け回る時期に来てるんだよ。今日の鉄道計画も面白かっただろ?」


「はい…水面下であんなに広大な計画が進んで居たとは夢にも思いませんでした」


「バーディにも紹介しとくよ。この人はプリシア…フォレストの戦士長だよ」


「ニューリゾートに住んでた方々の1人なのね」


「そうそう」


「南の森の開発はマイスターがやってるの?マリアがやってるの?」


「父上が行くとおっしゃいましたが…そこは私に行かせて欲しいと…志願しました」


「あの…マリアももうそんなにかしこまらなくても良いと思うよ。地位も立場も王女殿下のが上なんだし」


「そういって頂けるなら…少しづつ…」


「あと俺のそばに来た時に膝をつくのも辞めようね」


「マリア…エルフは元々森の生態をよく知ってから協力をお願いするといいぞ」


「それに…開発するのは大賛成だけど、丸裸にされるのは少し不味いんだよ。まず道を開いて、森を抜けてから森と海の間に開発地を作って欲しいんだ」


「そうなのですね」


「また途中で迷ったら見に行くけど…特に南の海は観光地になるからな…鉄道も必ず伸びる。国をあげたプロジェクトだもんな」


「第1王女がやり遂げたら国民に良いアピールになる。プリシアはウィンドソードって言う剣技を持っているからな。森を切り開くなら木こりを100人連れて行くより早く進む」


「プリシア殿…是非ご尽力頂きたい!」


「今や私も立派な王国民ですから…お手伝いさせて頂きますよ」


「帝国軍も屈強でたくましいから荷運びは便利なんだが…少し下品だからなぁ…皇帝と同じで」


「がっーっ!はっはー!そう言うなよ。応援に行くならわしも行って手網を閉める。どうせ帝都に居ても暇なんじゃよ」


「ルーバイン皇帝陛下までお越し頂けるなら100人力でございます。」


「まあ何にしてもみんな仲間だ…いちいち俺に確認取らなくて良いから…各々仲良くやってくれ」


「マイク!ウィンク!まだ明るいから空飛ぼうか!」


「うん!飛びたい!」


「んじゃ…初めにマイクとウインクとメル、2番目にティファとバーディな!」


「フライ!いつも急にすまん!来てくれ!」


プリシアが来てフライに挨拶をした。フライも久しぶりにプリシアに会えて嬉しそうだった


子供達を乗せたフライはどこまでも高く飛んだ…ゆっくり優雅に…マイクもウィンクもメルもはしゃいでいる。高く上がった時に陸地が見えた。この星は大陸がひとつなのは父上に聞いているが島があるのだろうか…距離にすると随分向こうだから共和国が見えているのだろうか。どちらにしても大型船舶を作って観光の目玉にしようと計画するパインズだった。


次はティファとバーディな…フライにめいいっぱい高く飛んで貰った。


「凄いなこんなに高く上がると昼と夜の境目になるんだな!ティファ!向こうに陸が見えるか?」


「見えてるけど…あれは共和国かな…途中に大きな島でもあるのかな…そこまではわからないね。だけどこの昼と夜の狭間のような幻想的な空間は良いね」


「バーディ!」


「なぁに?」


「決めたぞ…向こうに見えてる大陸が共和国の港かどうかは後日調査するけど…両方の港を繋ぐ大きな船を作るぞ」


「共和国って反対側じゃん」


「あ…バーディは星が丸い事を知らないのか…」


「え!星って丸いの?海の向こうは切れて無くなるんじゃないの?」


「丸いんだよ!ほら…空も…昼と夜の境目の遠くをみてごらん…丸くなってるだろ?」


「うんうん!丸い!」


「地面もあのまま丸いんだよ!」


「ティファもバーディもいつもありがとうな…俺は本当に2人を愛している」


そして交互にキスを繰り返していた。


「あの…主様…もう戻って良いでしょうか」


3人してフライにお詫びをして戻った


「クレセントはどこだー!」


「ここにいるぞ」


「クレセント!今度はこの港と共和国の東の港を繋ぐ大型船舶を航行するぞ!」


「なんとまたスケールの大きい話じゃな…」


「5000人でも乗れるような大型の客船を作ってさ。船の中でしか買えないような珍しい商品が売っている服屋、カバン屋、アクセサリー、小物、雑貨、たくさんの商店を置いてさ、娯楽施設も作って…船の中に1ヶ月生活しても飽きないような街を作るんだよ」


「それは凄い話じゃが…可能なのか?」


「簡単じゃないさ…汽車の話をした時と同じだよ。あの時話した事が列車となり鉄道となって現実になった!この話もおんなじさ!」


「そうじゃの!帝国は全面的に協力するぞ!」


「それならこの港の北側に大きな造船所を作りたいから…また相談に乗って欲しいな」


「わかった!」


みんな夢の中に居た…新たな時代の到来を誰もが実感していた。熱気が冷めやらぬ中…キリが無いから解散した。


王都の家に帰るなり疲れた子供達もメルも寝たので…どうしてもわがままを言いたくなってニューリゾートの風呂に3人で入りに行った


「2人共なんか?ごめんね。離れたくなくなっちゃって」


「私もパインズともバーディとも離れたくなかったからちょうど良かったよ」


「私もー!パインズとも離れたくなかったけど…ティファさんとも離れたくなかった」


「バーディ…ティファでいいわよ。私とあなたは世界でただ2人のパインズの愛する女なんだから…」


「そう言ってくれてありがとう!それでも申し訳ないけど…今日は2人とも可愛がりたかった」


その後…あんな事やこんな事や…


文章にはできません!作者より


ともあれ第1歩を踏み出し2ヶ月後には3路線の運用が始まった。特に大きな問題も起こらず…全民衆に、列車の速度や危険を周知した為、事故もおこらなかった。そして1年後には森の開発も終わり王国には港町ができた。2年後完全に世界を繋ぐ路線は完成し…パインズが書いた絵図通り…港町、辺境の農村、辺境の街でも人口も増え、大きな収入に湧いた。鉄道整備が終わる頃には大型客船も完成し…帝国~共和国というルートと帝国~王国~共和国という2ルートが航行され…収入が増えた庶民もこぞって申し込むようになっていた。パインズが目指した産業革命が魔法という便利なチカラを背景に2年で現実のものとなった。


ボデッド魔国を除いた他種族の地域はそれにより潤い、犯罪もほとんどなくなった。孤児も減り、失業者もほとんど無くなった。その為、孤児や病気の者にも手厚く国庫からお金を出せるようになり…各国が特別収容施設を作って寝る所も食べる所も学校通いも不自由なく提供した。その裏で穢れや汚染魔力はボデッド魔国に蓄積されて行き…この一年後魔王が誕生するのである。



第七巻 完


第八巻に続く







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