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創造主様とお友達になりました【6】

第六話 集う精霊


王都の掃討作戦も落ち着き王都は平穏を取り戻していた。懸念していた帝国の秘密兵器魔道飛行船はついに完成しエルフの国フォレスト、イースト共和国、シュテルン王国はそれぞれ緊張状態にあった。イースト共和国からは何度も使節団が派遣され今後の動向によっては強固な盟を結びたいと申し出があった為、王宮と使節団は内容の検討に入っていた


ニューリゾートパインズの家


「ティファ…子供達は王国の学校に入れるのか?」


「う~ん…まだ迷ってるけど行かせた方が良いかなぁとは思っているよ」


「行くならやぱ魔法学校だよね?」


「適正を考えたらそうなるよね」


「備えて置くのに越したことはないから…可能性があるなら魔法の訓練と剣技をぼちぼち教えていくか」


「剣技も教えるの?」


「そうだなぁ…魔法にいくら適正があって大魔法を放てるだけの魔力と素質があったとしても…実践になると多分それだけでは足りないと思うよ。普通の魔法士は部隊の最後尾で剣士隊や騎馬隊に守られながら戦うものだけど…それだと、相手に強力な魔法士団が構えていたり、トリフのような遠距離攻撃や魔法飛行船のような空からの攻撃もある。そういうものを相手にする時には、魔法だけでは太刀打ちできない。いつでも戦場を凌駕するには、瞬時に判断して敵をかき分けてでも有利な場所に陣を置き、有効な一手を打てなければ被害を大きくしてしまうよ」


「王都の学校に行かせたら戦争にも参加しなければ行けないの?」


「本人が望む可能性もあるじゃないか…学校に行けば仲間もでき、友達もでき、恋もするかもしれない。そんな時に敵が攻め込んで来たら、大事な者を守る為に戦場に立とうとするかもしれないよ」


「そっか…パインズはそれでも良いの?」


「そういう事にならないように頑張るのが俺の仕事だけどさ。なんでもできる訳じゃないからな。そうなった時に子供達が何を選択したとしても、それは正しいとか間違えてるとかそういう次元で片づく問題じゃないからな。」


「確かにそうよね。そういう時に正解も不正解も無いと思う」


「子供達は子供達の道を行くのが1番良いからな。俺達にできる事は育てる事しかないさ」


「メルも学校行きたいなぁ」


「メルもかよ!と言うかメルは子供が学校に行くようになって王都に住むようになったら着いてくるのか?」


「当たり前じゃん!」


「古の巫女は?」


「大丈夫だよ」


「それならあと何年か経ってマイクが入学する時にまだ行きたかったら考えるてやるから、一緒に体術も訓練するんだよ」


「はーい!」


最下層 クールの住処


「なんか久しぶりだね!元気だった?上に居てくれよ。子供達もメルも寂しいじゃん」


「お前が知らんだけでしょっちゅう行っとるぞ」


「そうなのかい?」


「今日はどうした?」


「戦争がはじまるかもしれない」


「今更驚く事でもあるまい。数億年という年月の中には何度も魔王や悪魔が誕生した。その他の種族は蹂躙され絶滅の危機になる事も1度や2度ではなかった」


「悪魔がいる時もあるのか…種族で言えばバンパイヤ族も巨人族も居たぞ」


「それらは絶滅したの?」


「いや少数じゃがどこかにおるの。絶滅しそうでしないのもまた生態系の面白いところじゃ」


「創造主様はいつも静観なんだな」


「それが我の役目じゃからの」


「はいはい!わかったよ!父上!」


「なんじゃ松!我を父上と言うか…」


「いやか?父上!」


「良い響じゃの?父上と呼ぶ事を許すぞ」


「また道に迷ったら父上に会いに来るよ」


「迷わなくても来ていいのじゃぞ」


「普段は上にいてくれよ」


「そうじゃの…ただな上に思念体を持っていくだけでも地上の魔力が少し強くなるんじゃ、それに伴い魔人が出現しそうなんじゃよ」


「お前の友のガンツと言ったかの?あぁいう普段からダンジョンに潜っていて強い冒険者がなりやすい。少し警戒するのじゃ。普通の人がレベルをあげた程度の強さでは100人かかっても太刀打ちできん」


「元に戻す方法はないの?」


「ホーリーライトとマジックドレインの重ねがけじゃな。ホーリーライトはメルから、マジックドレインはレントから教わると良い」


「わかったー!」


「あとウンディーネのような存在の他の妖精も目覚めておる。挨拶しておけ」


レントの神殿


「レント!フライ!久しぶり!」


「松様!お元気ですかな」


「主様!ご機嫌麗しゅう」


「2人共元気そうだね」


「松だー!」「松や!」「松様!」


「あなたが松ですか?」


「凄いな父上が言っていたように精霊がみんな人型になってる」


水精霊 ウンディーネ


風精霊 シルフィード


火精霊 サラマンダー


地精霊 ノーム


光精霊にして元素霊 エレメンタル


「ウンディーネ以外ははじめまして!俺が松ですよ」


「レントやフライの遊び相手になってくれてありがとう。お供え物で欲しい物があればティファにわがまま言ってくださいね」


「私が光を司り他の4精霊の元素霊であるエレメンタルです。お見知り置きを」


王族や貴族の女性がするように服の端を引っぱり右足を後ろに下げながらお辞儀をした。その姿はとても様になっていて目を奪われるようだった


「こちらこそエレメンタルさん。それにシルフィードさんもサラマンダーさんもノームさんもよろしくお願いします」


「あなたの魔力は透き通って居ますね。長い長い年月の中でこんなに透明な魔力を見た事がありませんよ」


「自分ではわからないから」


「創造主様を父上と呼び、レント様からは松様と呼ばれグリフォンフェアリーをも従える…なんとも不思議な存在ですね」


「握手しよう!」


とシルフィード、サラマンダー、ノームが寄ってきた


「はい!よろしくね!」


握手をする事に力が漲るのがわかった。そういえばはじめてウンディーネと会った時も握手した気がする


「私からはこちらを」


と言ってエレメンタルはキスをした。とろけるように甘く幸せに思う瞬間だった


「ありがとう!」


「あなたの透明な魔力に魅せられた私達からの贈り物ですよ」


「そうなんですか?ほんとにありがとう」


「あなたの魔法はその気になれば天災をも引き起こすでしょう。心配はしていませんが使い方を誤らないようにお願いしますね」


「わかりました!ところで皆さんはここは居心地が良いですか?少しでも希望があれば言ってください」


「誰1人環境には不満はないですよ。強いて言えばあなたが頻繁に遊びに来れば…甘いお菓子のお供えがくもるくらいに満足できるでしょう。綺麗な魔力は精霊の大好物なのです」


「そうなんだ。それならなるべく毎日のように来るよ。フライにも最近乗ってないから…遅くなっても遊びに来るね」


そしてパインズの家と風呂をレントの神殿の隣に移した


「そうだ!ひとつ忘れてたレント!マジックドレインを教えて!」


「我に触れてください」


レントに手をつく。


「どうですか?松様…魔法陣が浮かびましたかな?」


「うん!多分大丈夫」


メルが来た


「精霊さん達ー!みんな居たの?」


「巫女様…みんなパインズ様に興味があったのと綺麗な魔力を味わいたく揃ったのですよ」


「へぇーパインズはやぱ凄いねぇ」


「凄いがわからないけど…メル!ホーリーライトを俺に教えてくれ」


「いいよー!」メルはおでこをつけるように言った


「どう?感じた?」


「そうだな…ホーリーライトとマジックドレインと単体ではわかった。どうやって重ねがけするんだ?」


「そんな難しい事をしたいの?」


「父上の話だとさ…魔人が出現しそうなんだって。元に戻すにはこの2つを重ねがけしろって」


「そもそもホーリーライトが光魔法なのはわかるけど…マジックドレインは何魔法なの?」


「ちょうど良い機会です。我らが教えましょう。ノームこちらへ」


エレメンタルとノームが抱きついてきた


「目を閉じて頭を空っぽにしてください。ゆっくり…チカラを抜いて…深く…ゆっくり…」


心地よい無限に思えるような時間が過ぎていった


「複合魔法!シークエンシング!」


「習得されましたね。私達はいつもそばにいて穢れのないあなたをいつも見守っていますよ」


「ありがとう!とてもありがとう!」


マジックドレインは土魔法なのか…それでノームもチカラを貸してくれたんだな


「みんなまた明日遊ぼーねー!」


ここまで数々の恩恵や加護を受けて来たパインズだがなるべくチカラを行使すること無く平和で優しい星にしたいと願う気持ちは日に日に強くなるのだった




第七話 魔人襲来


久しぶりにニューリゾートでのんびり過ごしたパインズだっが、妖精達に魔力が透明で大好物と言われた事が嬉しかった事もあり、朝から深層の番人を数体仕留めた後は必ずレントの神殿に来るようになっていた


「みんなおはよう!」


「メルも最近良くここにいるなぁ…」


「そらそうだよ。パインズのせいで私が来なかったら忘れられちゃう」


「忘れられないだろう!」


「忘れられないにしても私の魔力よりも透明だって言われたのを聞いてたから…来たくなるの!」


「松様よ!メルは巫女だから妖精とは一番の仲良しなんじゃが…みんな松様の魔力が好きじゃから少しだけヤキモチを妬いているのじゃよ」


「ははは!そうなのか?」


「フライ!教えて欲しいのだけど」


「なんでございますか?主様!」


「この前話したようにさぁ魔人が現れたら近くまではゲートで移動したとしても街の被害を最小限に抑えるには空からの対応が重要だと思うんだよ」


「状況掌握と言う事ですか?」


「それもあるし…数カ所に同時に火事がおこったりするとさ。空から水を撒いて消火活動するとかさ」


「充分に考えられる事でございますね」


「そこでさぁ、聞いておきたいのだけど…フライは魔法が使えるの?」


「風は操れますが攻撃魔法と言うよりは、強風により砂煙をあげるとか…木々を揺らすとか…翼を羽ばたかせる事で強い風を作れるといった所でしょうか」


「なるほどな…わかった認識しておくよ」


しばらく妖精達やレント、フライと歓談した。子供もティファも外で遊ぶ時は必ず来てるらしい。


※パインズ様!


※どうした?ブロイか?


※助けてください!


※何があった?


※王都近くのダンジョンに魔人が出ました。逃げ帰ってきた冒険者が知らせてきたのですが…ガンツのパーティが交戦中ですが数分とは持たないだろうと


※ダンジョン何階だ?


※2階です!あとたまたま近くに居た王女殿下の部隊が入口の閉鎖と応援に降りたらしいのですが…


※まずいな!直接行く!報告を待て!


ダンジョン2階層


「わぁー!」「きゃー!」「ひるむなー!」


「逃げろー!」「ぐわっ!」


様々な悲鳴や怒号がこだまする。最前線には片腕を落とされたガンツと何とかまだ踏ん張っては居るが防戦一方の騎士団がいた


「障壁!」


「お前ら!大丈夫か!」


「パインズ様!」


「くっ!話は後だ!障壁もいくらも持たん!ガンツの腕を持って下がれ!」


ガン!ガン!深層のゴーレムでもビクともしない障壁も同じ場所を続けて攻撃されるとヒビが入る!


「とにかく怪我人を回収して下がれ!あとは何とかする!」


「はい!」


障壁を叩いた後、振り上げるタイミングでもう一度障壁を貼る後ろに向かって「エリアヒール!」


魔人をはじめて目の前にしたがパインズですら足がすくむ。元は人だったはずだが体調も3mくらいありチカラも強く早い。心眼で見極めながら振り回す剣を弾き、かわし、滑らせていなすが、反撃の糸口は見えない。人知を超えた存在と過信していた訳では無い。だが…これ程の強敵を前に苦戦を余儀なくされていた


「くそ!このままではジリ貧だな!障壁!」


障壁を展開し一瞬の時間を稼ぐ刀と身体に風を纏う「ウィンド!」


障壁を消し相手の振り降ろした剣をかわす!右側に回り込み相手の左側を駆け抜ける!神速の一撃切った腹からは大量の血が噴き出している。人間に戻す事を優先しているパインズが近寄る。魔人は最後のチカラを振り絞りパインズを掴み振り上げ地面に叩きつけた!大きく弾む!自動治癒が発動する!油断したとばかりに次に右足を狙う!弱った魔人に抗う術はなく…パインズの神速斬りが右足を飛ばす


拘束魔法「レストエイント!」


魔人は身動きが取れず横たわる


「シークエンシング!」


レントとメルと妖精に教わった複合魔法!


魔人は人の姿に戻った。


切った足を繋ぎ、腹を修復した。息はある。これで一安心だ


「マリア!大丈夫か?ガンツは!」


腕を切られ出血も多く意識も虚ろになっている


「腕は!」


「こちらに」


世界樹の滴をふりかけさらにハイヒールをかける!応急処置は大丈夫だ。


「騎士団の負傷者は?」


「先程のエリアヒールでほとんどの者は回復しましたが1人だけ…重傷者が…」


マリアは既に泣いている。顔は潰れ、骨折も多く腕や足はぶらぶらしている。かろうじて息はある物の虫の息である


「マリア!諦めるな!」


世界樹の滴をふりかけるがすぐに吸収される。やった事もないがリカバリーを使いたいが本人がこの状態では自分の魔力を使えるかどうか…


ある時メルは言っていたリカバリーはきっかけを術者が与えるだけで基本的に自分の魔力で回復するのだと


「回復した他の騎士団はマリアの元へ来い!魔力の強いものからこの団員を囲め!」


「成功するか?わからんがやるぞ!」


マリアを含み6人が左右に別れて重傷者に触れる。世界樹の滴を渡し一気に飲ませる


「この団員に触れた手に魔力を流し込むイメージをしろ!やり方がわからなくともとにかくやれ!」


潰れた顔が致命傷なのだろう。顔にリカバリーをかける。世界樹の滴をかける。リカバリーをかける。世界樹の滴をかける。


「戻れ!戻って来い!」


「みんな魔力をそそげ!」


「戻れ!戻れ!」


さらにリカバリーをかける。世界樹の滴をかける。手足や傷口にハイヒールをかける。骨は繋がり傷も塞がった。顔を見た


若い女団員だったようだ


「ふぅ!なんとか助かったな。ハイヒール!」


「パインズ様…」


「泣くな!みんな無事だったじゃないか」


「怖かったんですー」号泣してしがみつく


「ガンツはどうだ?腕は繋がってるだろ?」


「助かったぜ!もうここに居た全員が死を覚悟してたんだよ。俺はせめてはじめに散ろうと思ってさ」


「そんなものは美学でもなんでもない!他の冒険者が避難したならお前達も入口付近まで下がりながら戦って時間稼ぎすれば良かっただろうが!」


「確かに今聞けばそうだと思うが…あまりに必死でそんな余裕無かったんだよ」


「それもそうか…あの魔人は誰か?わかるか?」


「こいつは…いつか話した白銀剣士団の幹部だ」


「帝都を根城にしてるんじゃないのか?」


「その後の噂は聞いてないが多分…」


「とにかくこいつはギルドで預かって意識が回復したら聞き込みしようじゃないか」


※ブロイ!なんとかいま終わった


※ありがとうごさいました


※謎もあってな…ガンツと一旦戻る


「ガンツ!身体はどうだ!もうめんどくさいから呼び捨てするよ!」


「お…おぉ…身体はおかげで大丈夫だぞ」


「それならそこの魔人だったヤツを抱えてギルドに頼む!」


「わかった!お前は?」シッ!シッ!と追い払う


「騎士団のみなさんマリア将軍の元へ集合!」


「これで全員か?かけてないな?」


「パインズ様…全員です」


「リラックス!」そこに居た騎士団を光が包み落ち着いて行く


「落ち着いたか!あとマリア王女殿下…気が動転してたとはいえ…騎士団のいる所でパインズ様はダメだよ!」


副隊長が突っ込んで来る!


「いえ!パインズ様!将軍は私達にいつもパインズ様パインズ様と言っておられます!」


「まてまてまてまて…それは俺が恥ずかしいわ!」


「何にしてもみんな無事で良かったな。マリアあとはギルドに投げるからブロイからあとは聞いてくれ」


「ありがとうございました!」


団員の揃った挨拶がダンジョンに響いた!



第八話 帝国の闇


最下層 父上の住処


「父上!父上!」


「どうした松よ…レントの所に居たのに…」


「そっか、ごめん、ごめん」


「いや、構わんよ。お前が父上と呼ぶのも板についてきたのー」


「魔人が出たんだよ」


「んで…どうじゃった?」


「強いなんてもんじゃなかったな…」


「どうなった?」


「もちろん無力化してから拘束してシークエンシングで人間に戻したよ」


「さすがじゃな」


「向こうは生命を狩に来てる。こちらは殺さないってハンデがとても大きく感じたよ」


「そうじゃなぁ」


「以前さ…賊を捕らえるのに幹部の首をはねたんだよ。数分で戦闘が終わってくっつけたんだけど…廃人みたいになってさぁ」


「死の恐怖と刹那に魂が壊れたのか」


「そんな感じだった」


「それでその事を悔いておるのか?」


「全然!俺が人と戦う時は理由がある。その理由は怒りや憎しみじゃなくて、とても冷静に判断して刀を抜くからさ」


「そらそうじゃな」


「だけどさ…俺は人であって人を捌く権利はないからさ。悪党だろうと魔人だろうとなるべく生かしたいと思ってるだけさ」


「相変わらず松らしいな。お前自身に課せたルールってやつか」


「そんな感じ!ところで魔人はなぜ生まれるの?不思議な事がひとつあって…魔人化したのが帝都の冒険者だったのだが…出現したのは王都近くのダンジョンの低層だったんだよ」


「細かい所まではわからんが穢れ、闇、汚染された魔力…そういった物が蓄積された結果ではあろうな」


「ふむ…わかった。原因があるなら今の話を参考にして調べてみるよ」


パインズの家


「ティファ!王都のダンジョンに魔人が出た!」


「どうだったの?」


「強い!あの強さなら間違ってここに辿り着く可能性はゼロじゃないな」


「パインズは討ち取ったんでしょ?」


「もちろん勝ったが…強く速い、それからしぶとい。もしもここに来るような事があれば遠距離から大魔法でもぶっぱなして仕留めて欲しい。接近戦はなるべく避けた方がいいよ」


「わかった!子供達も居るし警戒しとく」


ギルド長室


「ブロイ!なんかわかった?」


「まだ話をできる状態にありません」


「ガンツの話だと…元いた白銀剣士団の幹部だとか」


「そうですね、私にも馴染みのある顔です」


「他のメンバーはもっと下の層であいつにやられてるって事か…そんな可能性もあるんかな?」


「魔人出現など滅多にない事ですからね」


「わかった。取り調べと今後のギルドの対応が決まったら教えてくれ」


「ステファニー久しぶりー♪元気だった?」


「パインズ様♪お久しぶりです。少し気になる事があるのですけど…」


「ん?俺で乗れる相談なら乗るよ」


「いや…それがプリシアさんとトリフさんと思われる人をここの所ちょくちょく見かけるのですよ」


「話しかけて来ないのか?」


「はい…ギルドの中をみて、居なくなります。だから…パインズ様を探してるのでは無いかと…」


「まあ…わかった。そういう事がここの所あるって事ね。ありがとう」


「パインズ!いつも助けてもらってすまん!」


「いいよ、別に…気にすんなよ」


「魔人は強えーなー。なんども覚悟したよ」


「それでも生き残った…悪運が強いのも冒険者の強さだろ!」


「まあな…今日も1杯奢らせろ!」


「まあ…付き合うけど今日は静かな店が良いなぁ…どうせ王都で飲むなら呼びたいヤツがいる」


「それならここにも特別な時だけ使える個室があるぞ。言ってこようか?」


「役者が揃ったら結界をはるが大丈夫か?さすがにギルド内で魔法を行使すればばれるだろ?」


「それも許可を取るよ」


「さすがに入り浸ってるだけあるねぇ。それなら早速移動するぞ」


ギルド酒場の個室


「ガンツ任せるから5人分料理を適当に頼んでくれ。あと申し訳ないが飲み物ははじめの1杯であとは自分達で用意すると…」


「わかった。そのようにする」


※マリア!聞こえるか?


※パインズ様!昨日は助けていただき…


※そういうの良いから…時間が無い。いま動けるか?


※はい!


※なら、ギルド長室でブロイと合流して酒場の個室に2人で来い


※承知!


※ダーク聞こえるか?


※はい!主様!


※対応中だとは思うが…誰かとかわり王都ギルドの酒場の個室に来てくれ…なるべく早くな


※かしこまりました


「ガンツ!少し調べたい事があるから準備だけ頼む」


そう言い残してダンジョンを確認しに行った。白銀剣士団の他のメンバーの死体があるかどうか…


「戻った!」


戻ると全員揃っていた。軽く飲みながら歓談している…ダークも酒は嫌いじゃないので普段は見せない顔をして打ち解けていた


「結界をはった。みんなこの話が終わるまでは出入りできないがいいな?」


「みんなを集めてどうしたのですか?」


「まずはみんな聞いてくれ!」


「詳しくは白銀剣士団の幹部から取り調べができるようになって本人に聞くのが一番だが…色々と時間が無い!俺の予想から話す」


「ブロイ!ギルドとしての対策はどうなった?魔人の出現は3カ国で共有するのだろ?」


「はい!来週ギルド本部に全ギルドマスターが招集されました」


「今のギルド本部はどこだ?」


「帝都です…あとパインズ様も呼べと」


「帝都かちょうどいいな…場合に寄ってはギルド本部を壊滅させるかもしれんがな」


「俺から情報を整理するぞ…まず、魔人になったのが帝都の冒険者だった。2つ目にダンジョンを20階層辺りまで捜索したが他の白銀剣士団らしき死体はなかった。3つ目に魔人は穢れ、闇、汚染された魔力…そういった物が蓄積された結果生まれる」


「これだけ聞いてなにか想像できないか?」


「まさか…人体実験ですか?」


「俺はそう睨んでいる。多分…帝都内で人体実験を行い。魔人化する寸前だったのかもしくは頑丈なオリの中で魔人化させて見張りの居ない深夜にあのダンジョンに放したんだろ」


「パインズ様…帝都がそんな非道な事を…」


「マリア…まだ真実はわからんが…各地の領主から選ばれて王になる王族と…武力で領土内の小国家を全て滅ぼして帝国を作った皇帝とは根本的な姿勢が違う」


「確かに充分に有り得ますね。元々ギルド本部総帥は全ギルド長と役員の投票によって選出されますが…ここ数十年本部が帝都にあるのは現総帥が勝ち続けて居るのです。人望もなく金にも卑しい人物ですが…不思議と勝つのです」


「買収と…それがダメなら帝都の軍を背景に脅し確実な票を取るのか…」


「おそらくは…我が王国は元々ギルド支部も少なく役員も少ないので…狙われませんが。帝都国内をまとめあげプラスアルファを共和国の1部や王国の地方ギルドからと言ったところでしょうね」


「ダーク!影の全勢力を持って人体実験場を探せ!少し危険な任務になる。潜入する人員はレベルも高く最悪見つかった時には基地を殲滅できるヤツにしろ!」


「かしこまりました!」


「あと来週には俺も帝都に行く。場所が特定できたらまずは監視!」


「はい!」


「なるべく悟られないようにしギルド本部の会議の流れで魔法飛行船の破壊、人体実験場の破壊。一応備えておけ!ダークが現場から離れられないならダフネスでも他の者でも誰でもかまわん!帝都ギルド本部に連絡係と情報伝達の為に待機させよ!」


「仰せのままに」


「ん?ダーク少し待て。みんな状況はわかったな」


「パインズなんで俺は呼ばれたんだ?」


「ダンジョンの入口警備を24時間するなら人が要るだろ。マリアと連携とって手分けして頼みたいんだよ」


「それにギルド本部も噛んでるならブロイが表立って動くのはまずい」


「了解だ!」「パインズ様!かしこまりました」


「では結界をとく、みんなも緊張をといて少し楽にしてくれ」


「俺のビールは?おいおいマリア俺が話してる間にお前が飲んだのか!」


「いえ!目の前にあったもので…」


「ダーク受付付近にプリシアとトリフが来てるんじゃないか?居たらよんでこい!ここ数日何度も来てるらしいんだよ」


「はい!見てまいります」


「あとガンツまさか将軍様に余計なちょっかいは出さないと思うが…マリアは王女様だからな…不敬罪で斬首にならないように気をつけろよー!」


「マリア!俺のビールたのんでよ!」


「だけど王女殿下を見た事があるけど少し雰囲気が違った気がしたけど…」


「ガンツ!王女殿下はパインズ様の魔道具で変装しておられるのですよ」


ダークがプリシアとトリフを連れてきた


「やっぱり来てたのか…お前ら冒険者資格を剥奪されたのに何の用だったんだ?」


プリシアとトリフは土下座したまま顔をあげない。2人とも涙が止まらず顔をあげられないようだ


「泣いてちゃわからないぞ。何かあるなら話してみろよ。」


「あるじ!私は任務に…」


「ダーク!少し待て」


「パインズ様…お話を聞いて頂けるのですか?」


「まあだいたいの内容は想像がつくが話してみろ!それに地べたに座ってたんでは話を聞けないから2人とも座れ」


「ダークも同族のよしみだ。こっちに来て聞いてやれ」


「あとこの2人をマリアだけ知らないな…この2人はフォレストの戦士長と副戦士長だ!」


「パインズ様…私達ではもうどうしていいかわからなくて…」


「具体的には…ダンジョンからの魔石収入は無くなりエルフ商会も全店撤退…唯一の恵も世界樹の苗木を枯らしてしまい不作になり…」


「それで泣きついて来たのか…ふざけるな!お前達が少しチカラを持ったからと傲慢に立ち居振る舞った結果だろうが!」


「一族全員が反省しております」


「嘘をつくな。お前達の情報を俺が知らないとでも思っているのか…言葉で反省してるなど片腹痛いわ!」


「いえ…長老会議もパインズ様がもたらした繁栄を自分達の手柄と勘違いしてしまったと」


「それならなぜ商会に便乗して私服を肥やした者を投獄しない!権力を利用して住民を虐げた者を処罰しない。お前達は希少種族として少人数だった頃は一族の誇りや伝統を忘れないと…閉鎖的でもそれなりに頑張って居たが…世帯が大きくなると単に他種族を認めない天狗になっただけじゃないか!」


「マリアもブロイもガンツも悪いな…関係ない話を耳に入れて…ほんと申し訳ない」


「私はパインズ様のそういうお姿や考え方を聞くのが好きですからむしろずーっと横で聞いていたいです」


「姫様もまた大変なのに惚れたんだなぁ気持ちはわかるがな」


「パインズ様お気になさらず…ギルド長としては反省してるなら許してあげて欲しいと思いますが我々では知り得ない深い話があるのでしょう」


「とりあえずお前達2人がここに来た理由はわかった」


「では!」


「勘違いするなお前達を許す気もなければエルフが全滅しようと俺には痛くも痒くもない」


「そ、そうですよね。裏切ったのは我ら一族です」


「それでもなお前ら2人の顔を見ると…毎日ホコリにまみれて走り回ってた時の事を思い出すんだよ」


「4人で風呂に入った事もあったなとか…ダンジョンで少しとろくさいトリフを無理やり鍛えたなとか」


「華麗なる森の住人に人が増えた時は嬉しかったな。とか、精霊と遊んでるとあいつらどうしてるかなぁとか思い出すんだよ。厳しい事を言わないで甘やかしても良かったんじゃないか?とかさ」


「ただな…俺はそうでもあの時お前達の魂が汚れたせいでクールもレントも弱ってたんだよ。2人とも俺を気遣って黙ってたんだが…」


号泣しながら二人は言った


「そんな事もあったのですか…そんな事にも気づけない程我ら一族は俗世間にかぶれてしまったんですね」


「チャンスをやる!とにかくお前ら2人は心を鬼にしても同族をさばけ!それが出来なければ俺の庇護が戻ると思うな…あと軍隊はちゃんと人選と選別をしろ、お前達はずーっと俺の横にいたのだからできるだろ」


「あとなこれはすぐに決定出来ないが…フォレストという国家は終わりだ。王国内にある1つの公国か?領地に格下げする。全てが整ったら考えてやる…期待しているぞ」


「お任せください。パインズ様の命あらば、心無き長老を斬り伏せてでも整えて見せます」


「ダーク!」


「はい!今回の作戦は大掛かりだ…正直影だけでは荷が重いだろ?」


「いえ!我ら影全員の生命に変えてでも完遂してみせましょう」


「それは心配してないよ。ただな…俺としては無理をさせたくないんだよ。プリシアの部隊から精鋭100人だせ!精鋭と言うのは強い者そして口の固い者、最後にダークの指示に反論しない者だ…100人出せるか」


「パインズ様…申し訳ありません50が限界かと」


「ダーク!50でどうだ」


「お預かりしたならいかようにも役立てて見せます」


「なら特命にしたがい、見事完遂してみせよ!」


「プリシア!トリフ!失敗は許さんぞ!」


「機会を頂きありがとうございます。すぐに戻り取り組みます」


「やり方は任せるが罪人と言えどもなるべく切るな。切ればその家族や親族が敵にまわる。さばくのは当然だが生きていればまた活躍する時もあるという可能性を残すのだ」


「心得ました。戻りすぐに牢獄を作り。対処します」


「よし!それならいけ!」


「ダーク!渡す物がある。来い」


ダークのでこに触れる…アイテムボックス…


「どうだ?」


「はい…なにやら魔法陣が…」


「アイテムボックスと唱えてみろ」


「アイテムボックス!で、でました!」


「まず…エルフから来る応援部隊の変装用アイテム…通信機…そしてこれは火薬だ…火をつければ爆発する扱いに注意しろ。作戦自体はダークに任せるが基地にこの爆弾を仕掛けて帝都の外壁から狙い撃ちさせれば一斉に破壊できるだろう!あとなるべく敵の兵士も誘導して怪我人は最小限に頼むな」


「かしこまりました!」


「ちなみにその爆弾を周囲を取り巻くように60個並べれば王宮は粉々になり塵となる」


「理解しました。ちょうど良い破壊工作をお約束します」


「いけ!」


「王女殿下!ブロイ!ガンツ!お待たせ。疲れたね。ゆっくり飲もう」


「マリア!フォレストの件はマイスターと話してもらって良いか?」


「はい!いま聞いていた事を父上に伝えて準備しておきます。領土が広がる訳ですし…断る理由は無いと思いますがパインズ様に公爵になってフォレスト公国として王国に貢献して欲しい…のような事は言うかもしれませんよ」


「まあ…ここまで来たらそれも良いだろ。俺の子供達も王都の魔法学校に通うような事を言ってたしな。パインズ・フォレストかぁ…悪くないな」


「何にしても全ては魔人の問題とフォレストの問題と全てが解決してからの事だな」


「パインズよぉ…いま、マイスターって言ったのは…王様の事か?王女の事も呼び捨てだしよぉ」


「まあ…それは良いじゃないか!ガンツの知らない所で色々あるんだよ」


「そうだぞ!ガンツ!」


「ちっ!俺だけ避け物かよ」


「そうじゃないんだよ。男爵の俺でもわからないような…そういう話しさ」


「ブロイって男爵になったの?」


「そうだ!この前の王都の掃討作戦の時には結局6貴族を失ったからな!その時に俺は男爵…姫様は将軍になったのさ」


「俺は?」


「お前は報奨金をたんまり貰ったじゃないか」


「そ、そうだった」


「俺はただ働きだったぞ。一応、作戦参謀室長だったんだけどな」


「影も使ってあれだけ活躍したのに無しか?」


「作戦をするようにけしかけたのは俺だしな。それにマリアやマイスターという友の為に動く事に金をもらっては人が下がるってもんさ」


「姫様…俺の報奨金…お返しします」


「ガンツさん良いんですよ。冒険者があれだけ参加した裏にはガンツさんの功績が大きいのですから…それに父上はパインズ様が大好きでらっしゃるので金銭でまかなえないようなそういうプレゼントをしたいのですよ」


「ますますパインズが遠くになるなぁ」


「俺が公爵になったとしてもギルドであえば肩を組んできて…元気か!で良いんだよ。そういう付き合いもあるさ」


「あとマリア!王国の兵士を失うようなヘマはしないが…戦争になるかもしれないとは伝えてくれ。最悪ギルド会議のその足で皇帝まで拘束して王国が帝国を滅ぼした事にせざるを得ないかもしれない」


「伝えますが父上からしたら想定の範囲内だと思いますよ」


そうして作戦会議は終わった。ガンツは王女を王宮まで送ると申し出たが断られブロイに慰められていた


冒険者ってやつは…ふぅまったく



第九話 総ギルド代表者会議・帝都侵攻


ギルド会議の時は来たこちら王国側は準備は出来ているものの緊張に包まれていた


ギルド本部総帥から挨拶がある。小肥りで卑しい顔をしたいかにも…って感じのやつだ。


「これより王国でおこった魔人出現に関する緊急会議をはじめる!」


「まずはじめに発生したダンジョンの管轄ギルド長のブロイ殿…経緯を説明して頂きたい!」


帝国のギルド長が進行をする


「突然ダンジョンに現れ…」


ブロイが経緯を説明してる所にダークから報告が入る


※パインズ様、我ら滞りなく準備完了です


※わかった!あとお前はどこにいる


※会議室のローカに居ます。魔人にされた者も連れて来て居ます。あとパインズ様…高所からパインズ様を狙う物がおります。あと外は軍隊に囲まれております


※それは確認している。俺は心配するな!合図を送ったらそいつを連れて踏み込めそのあとは障壁を張って王国と共和国の役員を守れ


※了解しました


ブロイの説明が一通り終わる。総帥が再び話をする


「こちらが調べによると王国がなにやら兵器を開発してるらしいとの調査結果を得ている。ブロイお前何か知ってるんじゃないのか?」


「根も葉もない事を言わないで頂きたい!」


「しかも近頃エルフの国などと勝手に空いた土地を占有した民族と同盟を結んで帝国に対して宣戦布告するんじゃないかとみんな噂している」


「まぁ、それは良いだろう。それでその魔人とやらを討伐した冒険者はお前か!」


「総帥…あなたにお前呼ばわりされる言われはないですが…魔人を倒した者と言うなら俺ですよ」


「何を生意気に!」


「魔人が暴れ回る脅威から俺は街を救ったんだ!ギルド総帥の立場からすれば礼をするのが先ではないのかい?」


「貴様のような下賎な冒険者にわしが礼を言うなどない!今日呼んだのはどんなインチキをしたか聞く為である」


パインズは左右に別れ高所から狙う暗殺者2人をまず無力化した「サンダーアロー!」両手両足に1本づつ高電圧の矢を打ち込む動けなくなった輩はドサッと落ちてきた


「おいおい!まてよ、おっさん。平然と話しているがこいつらはなんだ!会議と言って暗殺者を隠しておくのが帝国のやり方か!」


「ま、待て…わしにはなんの話か…」


「おい!口の利き方に気をつけろよ!」


「お前が誰様など俺には関係ないんだよ!」


「何を勝手な事を言っている!貴様らなどわしがその気になれば生きてここを出れると思うなよ!」


「面白い…それはまあ後で相手してやる。まずは俺の知らない王国のギルド長も居れば…共和国の役員の人も居る…真実を明らかにする必要はあるだろう」


帝国のギルド長が走り出す!「レストエイント」拘束する


「なにを慌てているんだ!お前達に非がないなら、のんびり会議しようじゃないか」


※ダーク!連れて来い


「みなさんには理由を理解して頂きます。この者が魔人化し王国で暴れた者です」


「どういう事だ!魔人は討伐されたんじゃないのか!そんな茶番には騙されんぞ!」


「お前を茶番と言うんだよ!よく聞いておけ」


「私は白銀剣士団というパーティの冒険者です。私達は帝都をホームにしておりましたが…魔石の換金率や冒険者に対する待遇が王国に比べあまりに酷かった為ギルド長に良く進言していたのです」


「ある時そのギルド長から総帥が待遇改善に関して良い話をすると言われ私とリーダーが呼ばれたのです」


「2人は囚われ厳重な牢獄のような所に入れられ魔術師に囲まれ阻害魔法を浴び続け、魔物を次々牢に投入されリーダーは死にました」


「それでも総帥が毎日あと嫌らしい顔で罵声を浴びせ下民と蔑み…また阻害魔法を浴びては魔物を投入されるを繰り返されました」


「そうしているうちに意識がなくなり…目を覚ました時は王国のギルドに居ました」


「さぁ!総帥さんよぉ!この説明はどうするんだい」


「みなさん!騙されてはいけませんよ。こいつが勝手に言っている事でそんな事実はありませんよ」


帝国サイドの態度と証言を合わせて他派閥はこちらに付いている。ひとつ余興をするか


「では、総帥はそんな事実はないと?」


「あ、あたりまえじゃ…あるわけが無い」


「では、こちらで掴んでいる人体実験場はだだの原っぱという事でよろしいな」


「ま、待てなんの話しじゃ」


※人体実験場を爆破しろ!あと影とプリシア達と協力して外の軍隊を沈黙させておけ


爆発音がした!窓から煙が上がる姿が見える


「何をした!人体実験場を爆破したんですよ」


「お前達何をしたかわかっているのか!」


神速で総帥の近くまで駆け寄る。首根っこを捕まえひょいっと壁に向かってなげる「ロックアロー!」両手足に2本づつ計8本の氷の矢で服を固定し貼り付けにする。慌てて逃げようとする帝都職員達を全員拘束する


「心配するなお前達非道な帝国と違い俺達は命を大切にしている。一生鉱山暮らしになるかもしれないが…死にはしないから安心しろ」


「お、俺にこんな事をしてタダで済むと思っているのか!わしが声をかければ帝国は王国に宣戦布告するぞ!」


「お前…今更なにをいっているんだ。この建物を軍隊が取り巻いているじゃないか…はなからここの参加者を出すつもりはなかったんだろ?」


「どういう事だ!」共和国、王国の他のメンツが騒ぐ


「けっ!知っていたのか…くっくっくっ!だがなちょうど時間だ!今踏み込んでくる!」


「心配するなその軍隊なら俺の私兵が無力化している。それにここにいるブロイは男爵、俺は公爵なんだよ!王国の貴族に手を出して…戦争はもうはじまってるんだよ!」


※ダーク!魔道飛行船から順番に軍事基地の全てをやれ!


一瞬で終わった…帝国は奇襲をつかれ反撃も何もなかった。パインズは汚いやり方に覚えたが両軍の被害を最小限に留める処置として自分を納得させた


※プリシア!外の兵士を1人連れて来い!なるべく上のやつな


「パインズ様…この者が外の部隊を率いておりました」


「軍人さんよぉ!お前達が積み上げて来た非道はあまりに度をこしたんでな!帰って皇帝に言え!王国はいつでも相手をすると…あとここに居るギルド関連の帝国民は捕虜に連れて帰るからな…返して欲しくば堂々と王宮を訪ねて来いと言っておけ!」


拘束された兵士はうなだれた。


「あと…数十分で拘束は解けるようにしてあるからそれまではのんびり縛られておけ」


「ではみなさん一度王都のギルド支部へ帰りましょう。帝国のお前らはタダで済むと思うなよ」


※ダーク!プリシア!解散しろ!あとプリシアと数名は捕縛した捕虜を運ぶのについてきてくれ


ゲートを開きその場の全員を王都ギルドのギルド長室に連れ込んだ。


「誰か…ガンツを呼んで来てくれないか…この白銀剣士団の人はリーダーも死んだらしいしとりあえずガンツに預けて今後を決めよう。ブロイもそれでいいよな」


ブロイが頷く。共和国側から、話があった


「まさか帝国があの会議の裏であんな陰謀を企んで居たとは…ブロイさん!パインズ様…ほんとにどうお礼を申し上げて良いか…」


「その前にまだやる事がある。ここに居る王国と共和国のギルド職員で現総帥に投票した者正直に手を上げろ!」


沈黙している


「まったく舐めてるよな…正直に話せば罪を軽くしてやったものを…」


「エルフの兵士でまず帝国の奴らを拘束しろ俺の拘束は魔法だからぼちぼち切れる…あとこの人とこの人とこの人とこの人!4人拘束しろ」


「共和国さんとは同盟を締結するだけで…いま内容を吟味している所ですが…総帥派の2人はこちらに頂きますよ。この事に関しての国王よりの謝罪文は後日お届けいたします」


「いえ…国王の謝罪など無くとも我々が意義を言える立場にはないのに…細かな配慮痛み入ります」


「では首都イーストまで送りますね。私の知ってる所にしかいけませんので…そこからはご自分達で」


「はい首都に着きましたよ」


「パインズ様…本日は本当にありがとうございました。あとの事は全てお任せしますのでどうぞよろしくお願いします」


「あ!ひとつだけ。冒険者は命がけでダンジョンに潜って魔物と戦って暮らしてるからさ…ギルド職員は公平で居て欲しいんだよ。2人の代わりを決める時は少なくとも金で買収される事もなく依怙贔屓しない人選をお願いしたいですね」


「肝に銘じて起きます」


首都の商店街で置き去りにされた職員は、死地から戻った安堵感と王国の奇襲の華麗な事、危機管理の重要な事を実感し…平和ボケしていた自分達の反省会と銘打って夜通し宴会に明け暮れたらしい…やるな


「拘束はできたか?あとガンツにも渡せたか」


「はい全て滞りなく」


「それにしても準備しといて良かったなぁ。まさかこいつらがあそこまで本気で王国に宣戦布告するつもりだとはわからなかったよ」


「はい!私もパインズ様が私兵に指示を出すのを聞いていた時…そこまで準備が必要かなぁと思ってましたからね」


「まぁ…俺も思ってたんだけど最悪は想定しなきゃならんしな。ところでブロイ…こいつらどうする?」


「そうですねぇ…とりあえず地下牢獄ですね。王宮のじゃなくて…新しい方に」


「それが良いな…あと自由を奪うのはあたりまえだが飯も酒も与えてやれブロイの財布からな」


「わ…わかりました」


※マリア逮捕者が15名程居るギルドに誰かよこしてくれ。


「あとは騎士団とブロイに任せて俺達は行くよ」


レントの神殿


久しぶりにプリシア、トリフを連れダークを伴いレントの所に来た。妖精もメルもうちの家族もみんな居た


「ティファもマイクもウィンクも居たのかちょうど良いな。父上も居てくれたんですね」


「戻ってくると思ってみんなで待っていたんじゃよ」


「プリシアとトリフは初めてだから紹介しとくよ。水精霊のウンディーネ、風精霊のシルフィード、火精霊のサラマンダー、地精霊のノーム、光精霊にして元素霊のエレメンタル。よろしくな」


「パインズ様…以前に増して楽園と言う言葉が当てはまる土地になっているのですね」


「厳しい言い方をするけど…お前達を地上に出したからだよ。その意味をしっかり理解しろ」


「はい!返す言葉がありません」


「それにしても今回の作戦ではよくやってくれた。ありがとう!」


「期待に応えたい一心で作戦に参加しました」


「先に父上に報告しておこう。あの後色々調査した結果…帝国で人体実験をした為に生まれた魔人だと言う事がわかってさ。それからの経緯は省くけど…結局帝国内の軍事工場を全て壊滅させて来た」


「なんとなくは感じておったがそんな事をしたら王国や共和国が帝国にせまろうとしないのか?」


「絶対ではないけど…大丈夫でしょ。そんな事をすれば俺を敵に回す事も理解しているだろうし」


「それもそうじゃな。まあ掃除できたのなら良かったではないが松のような息子を持って誇らしいぞ」


「妖精達もありがとうな…みんなの加護で凄い精度も上がってさぁ…不用意に相手を傷つけないから戦いやすかったよ」


「私達は無邪気に喜ぶ松様のお顔が見れるだけで元気になりますよ」


「魔力放出!大したお礼はできないけど…どうぞ」


いつも喜んでるから良いかな(笑)


プリシアとトリフも久しぶりに会う面々を前に1人1人丁寧に挨拶をし…以前の姿を詫びた


「んで…俺が出した宿題はどうなった?」


「結局…長老については半分以上が処罰の対象になりました。兵士の中でも分隊長クラスは依怙贔屓、意味の無いしごき、セクハラなど多数発覚し2000人の軍部から200名の逮捕者を出しました」


「想像はしていたけどそんなに腐って居たのか…」


「あと工房等でも器用な新人に嫉妬した工場長や、自分の地位を守りたいが為に技術を教えないといった輩も多数みつけ…全員処分しました」


「それでその者達はどうしている…」


「殺人のような重罪では無い為…果樹園に高い柵を作り逃げられないようにして世話をさせています。宿代と食事代を天引きしますが、取れた果物で出た利益は出る時に渡すようにしています」


「それにしても…荒れたもんだなぁ。人族だろうとエルフ族だろうと人は変わらんな…どこまでも醜く弱い。仕方の無い事だがな」


「大変申し訳ありません」


「済んだ事はもういいよ…それから長老会議や主だった者達の意見はどうまとまった?」


「はい…虫のいい話ですが…全員一致で無条件でパインズ様に従うので戻って来て貰いたいと…」


「父上!レント!エレメンタル達!ティファ!メル!ダーク!良いかなぁ」


「もちろんじゃ!」「松様の心のままに」「私達はみなあなたの行く道を楽しみにして見ているだけですよ」「我ら妖精はここに居ますが毎日会いに来てくださいね」「メルはパインズ家の人だからね」「主様の心のままに」


「んじゃ今のエルフの国は解体…フォレスト公国とする!プリシアは騎士団長に任命するあと魔法士団を作り警備隊を編成しろその部隊に影を入れ…影の事は今後特殊兵団と名前を改めてダークが人選しろ。その3部隊を統括する国家軍師にダークを任命する。まだまだ炙り出せていない悪人も要るだろ…チカラを併せて徹底的にやるんだ。あとスイフのような年配者と心に濁りのない頭の切れる者を数名集めて法の整備と財務管理をするようにしてくれ。代表者は財務長とする。また法整備のあと行使する部隊も作りそれらを戒法者とし代表を法曹とする。長老制度は廃止1000人に1人の割合で組合長を選出、組合議会を新たに設立する」


「以上!戻って全員で取り組め!ダーク一族の住まいもなるべく中心近くに作ってやれ」


「あと世界樹の苗を植え直し…その周りを囲むように円形の建物を作り各部署の活動拠点にするように」


「わかりました!」「御意!」「すぐやります」


帝国を撃破した事で国に利用される懸念もなくなり子供の将来も考えた時に王国にしっかり足場を固め家庭環境の充実と再び何かの形で訪れるだろう危機に対し立ち向かおうと決意するパインズだった


1部始終を父上もレントも妖精もにこやかに眺めていてくれた事は大きな自信と喜びになったのだった




第十話 クレセント・ルーバインという男


後日マイスターから呼び出しがあった。一連の流れの再確認と俺の処遇に対しての話だった。俺は公爵となり王国内に領地を持つ…パインズ・フォレストと言う名前に改名し…王都の貴族街にある高台の1番良い場所にある1番いい屋敷を貰い受けた。メルを含んだ家族も全員家名を持ち新しい生活がはじまっていた。理由は良くわからないがその頃になるとマリアがよくティファを訪ねて来てメルや子供達と遊んで行くらしい。ついでに貴族らしい服装やテーブルマナーや作法なども教えて行くらしく1ヶ月もすると貴族夫人と貴族のおぼっちゃま、お嬢ちゃまになっていた。苦手なメルも流石に子供達には負けたくなかったらしく俺の妹と言う立場を取り、街に出ればフォレスト家のお嬢様ともてはやされていた


俺はと言うと相変わらず建国の準備に追われ…気疲れしたらレントや妖精、父上の所に遊びに行き…状況の報告や家族やメルの地上の暮らしを伝えていた


中でもメルの変化にはみんなが大笑いしからかいたくて仕方ないようだ


建国準備も建国祭を残すのみとなり貴族街の家でのんびりくつろいでいた。ふと窓の外を見ると門の前で大騒ぎしているヤツがいる


走ってきた


「パインズ様!パインズ様ー!」


「マリア…お前いつも登場の仕方が慌ただしいなぁ」


「大変です!ルーバイン皇帝から会見の申し込みが父上に届きました!」


「そら、捕虜取ってんだから来るだろうさ」


「あんまり驚かれないんですね」


「帝都で暴れた時からその会見申し込みまではデフォルトだろうが…」


「デフォルト?ですか?」


「あぁ…当然決まっていた事って事だ。んでいつ来るって」


「3日後に到着との話です」


「警備は騎士団で大丈夫か?相手の護衛も然る事乍ら、本人が無茶苦茶強いらしいぞ…建国に至るまでの戦場では大半の敵兵士をひとりで蹴散らしたらしいからな」


「そうなのですか…」


「なんだ不安そうだな。シュテルン将軍」


「そういう訳では無いのですが」


「まあ謁見室に来るまでは何も無いだろう。外とそこまでの道のりの警備を頼む。王は俺の方でやる」


「そうして頂けると心強い」


「あとなマイスターと話して外壁を越えたら案内を騎馬隊から付けてルーバイン帝国の旗を掲げさせろ。その上で王宮に近づいてからで良いから沿道に住民を配置して王国と帝国の旗を左右に持たせて歓迎ムードで王宮にお招きしろ」


「はい!父上も了承すると思います」


「先日してやられた相手の所に来るんだ。騎士達は緊張してるだろう。大歓迎してやれ」


たっぷり洒落も効かせて準備をした。謁見室はプリシアの部隊で固め殺気は放たぬように注意した。特殊兵団も所々の要所を抑え情報管理も警備体制も整った


マイスターはおろおろしている


「パインズ殿大丈夫かのぉ…うちが向こうにやった事を考えたら武闘派と名高いルーバイン皇帝の事…さぞや怒ってるのでは無いだろうか」


「そんなにバカじゃないと思いますよ。おそらく捕虜の引取りは便宜上の事でおそらくは何かを見極めに来るんじゃないかな」


「そうなのであろうか」


「まあ…いきなり王様に斬りかかって来るような事は無いよ。あっても俺が隣に居るし」


※まもなく到着です


謁見室のドアが空き連れて来た騎士が声をあげる


「クレセント・ルーバイン様ご到着です!」


マイスターも立ち上がり一礼する。これがルーバイン皇帝かぁ…なるほど武人だなしかも頭も切れる


「この度は我が呼びかけに応じて頂き感謝する」


「遠方よりご苦労さまでありました。私がマイスター・シュテルンです」


「また今は戦争中にありながら沿道に住民を配置し歓迎ムードで出迎えて頂いたその心遣いには感謝する」


「私は争いを望んでませんからな…捕虜の引渡しの話にまいりましょうか」


「待ってくだされ…その前にその隣にいる若き御仁と話してもよろしいかな」


「どうぞどうぞ」


「私はパインズ・フォレストと申します。お初にお目にかかります皇帝陛下!以後お見知り置きを」


「会談などという礼を取らずとも良いか?俺は戦場で大剣を振り回して走り回った…気がついたら俺に逆らうものはなく皇帝になっていた。元々国同士の

会談や肩のはった催しは苦手なんだ」


「私はいかようにも…皇帝陛下の思いのままでよろしいございます」


「では聞くがお主だな…魔人を倒しギルド会議で大暴れした挙句、我らの基地を一瞬で壊滅させたのは」


「そうです。情報を集め最悪の事態に備えたまでですよ。現に我々は帝国軍隊に包囲されていた…ギルド側が勝手にやった事等と言う言い訳を聞くつもりは無いですよ」


「ふん!そんな事はどうでもいい!戦争なんて物は強いやつが勝ち!弱いやつが負ける!時代が変わっても今の強者が次の時代の強者に討たれるのみじゃ」


「捕虜はどうされますか?」


「誰を捕虜に持って帰ったのか知らんが…処刑でも終身刑でも王国で捌いて構わん!ただ俺はお前と剣を交えたいのじゃ」


「わかりました!全身全霊でお相手致します。ですが今到着されお疲れでしょう。本日はゆっくり過ごされ休まれたあと明日朝からと言う事でどうですか」


「自分に有利な状況ではやらんか…面白いやつよな。だが聞くが今夜のうちに我らがそこの王様のクビをはねるとは思わんのか…」


「思いません。ただ皇帝はそうでも連れている者はわかりませんので私の私兵を隠してありますよ」


「なるほど…殺気は感じぬが王都入りしてから恐ろしく強い者どもの気配は感じておった。王国にもそれなりの兵士が居るのかと少し予想外ではあったのだが…あれはお前の私兵達か…」


「お誉め頂き光栄です。皇帝に挑むには役不足ですが…連れて居られる精鋭兵など相手になりませんよ」


「ますます面白いなぁ…パインズと言ったか…明日は生命のやり取りをするんだ。どちらかの冥土の土産になるだろう。会食はお前が相手をしろ」


と言って自分の連れてる護衛部隊に鎧を脱ぎ武器を預けるように指示をした。城を出る時に最終的に使って貰う更衣室を教え直前にそこに戻すよう騎士団が説明した。会食まで少し時間がある。騎士団が兵士と皇帝を案内する。俺はマイスターの部屋にいた


「パインズ殿…明日の試合は大丈夫ですかな」


「大丈夫だよ…皇帝も殺さないし俺も死なない」


「あんな武力の塊のような御仁相手にいくらパインズ殿でもそれは難しいのではないのか?」


「もちろん…簡単では無いよ。だけど必ずそういう結果になる。立ち会い人は頼んだよ。マリアも来るといいよ」


「ルーバイン皇帝と言う武の塊の戦い方を見るのも良いでしょう」


「あと今夜の会食はどうすれば良いのじゃ」


「護衛兵の相手は綺麗所を用意して酔った兵士の夜の世話までさせれば良いじゃないか。今から街で調達してくるか…そういう仕事の出来るメイドに多額の報酬とドレスを与えてあげてくれよ」


「皇帝と俺とマイスターとマリアは4人で…同室に少し離して席を作ろう。俺と皇帝が話しやすいように配置を頼む」


マイスターは武力もなければ決断力もないが外交戦略のみで王に選ばれただけありこういったリクエストの準備をする事には長けていた。マリアもくもるような美人を集め着飾った接待部隊はそれだけで同盟の行く末も左右できるのでは無いかと思えるくらいだった


王宮貴賓室マイスターから挨拶がある


「今宵は王都に参じて頂き大変感謝いたします。ささやかではございますが今宵はのんびりとご歓談ください。」


調子に乗ってマリアも挨拶する


「私はシュテルン王国第1王女マリア・シュテルンにございます。皇帝陛下のお相手は私が…護衛兵の皆様は我がシュテルン王国が誇る美女軍団がお相手します」


と、促された接待部隊が入場する


「おー!、何とも美美しい…」喜ぶ護衛


まあ…護衛兵と言えども人間だよな。宴が始まる前にパインズが護衛兵の元へ行き。耳打ちする


「表情を変えるなよ。この宴の間に見事に目の前の美人を射止める事ができたなら部屋へ連れて行っていいぞ。頑張れ!」


はじめから好きにできるよりも努力したあとの方が男は燃えるのである!!!女性読者の方…すみません


乾杯の音頭は皇帝に頼んだ


「この宴席がなんなのかよくわからんが手厚いおもてなしに感謝する!乾杯!」


景気よく宴席は始まった。帝国の皆は料理や酒の美味さに絶句する…そら俺もだいぶ取られたもんな…ここの王室は俺に何をさせても報酬とかくれないんだけど…必要な時が来たらマイスターが寝込むくらいの金を要求しようと決意するパインズだった


「パインズ!お前さんの事は呼び捨てでいいか!」


「どうぞどうぞ!」


「パインズ…お前ほどの強さがあれば王国や共和国を自分の物にする事も容易いだろう…なぜせんのじゃ」


「そういう事に興味がないからですよ」


「興味がないか…だが強き王がいなければ民の安寧は無いだろう」


「それはそうなのですが…あっそうだ!皇帝!俺が特別な人にだけ飲ませる酒があるんですが飲みますか」


「貰おう!わしを唸らせるような酒を出せるとは思わんがな!」


目の前にグラスを置き…氷を落とす


「なんじゃ!貴様!異空間収納も使えば魔法も使えるのか…」酒を注ぎながら


「魔法は妖精の加護のおかげで天災でも起こせますよ。剣技は人の目に止まらぬ速さで斬り伏せますよ」


「明日が楽しみじゃのー。わしの剣は聖剣エクスカリバーじゃ!その昔勇者が使ったとかなんとか言う大剣じゃ。主の獲物はなんじゃ」


「刀と言って東方の剣ですよ」


「明日は何時からどこでやるのじゃ」


「のんびり寝て…昼頃から王都を出た平原辺りでどうですか?」


「城に練兵場はないのか」


「ありますがそんな狭い場所で皇帝と戦うのは勿体ない。大魔法でも極大魔法でも撃ち合って思い切りやりましょう」


「良いのう。あと酒のおかわりをくれんか」


「唸ってんじゃん」


「この酒は美味いなぁ」


「パインズ様!」「パインズ殿!」お前らもかよ


「わしはお前を見た時甘いやつじゃと思ったんじゃ。帝国の軍事基地を一瞬で壊滅させたくせに城には来んかった。王都に入った瞬間…強者の群れを配置する程準備はするのに…無防備に俺の前に立った」


「しかも王の横にのほほんと居た。一連の行動が全てお前の物である事はすぐにわかった。どのお前がほんとのお前かわからなくなったんじゃよ」


「最終的な判断は明日剣を交えた時に…ただ俺は武力や恐怖で人を支配するのは限界があると思ってるんですよ」


「わしも若い時側近達から毎日のようにそう言われて来たが…ある時は獣人の国を滅ぼした。ある時は地方領主と呼ばれる貴族の兵を壊滅させた…帝国ができるまではそんな日々の連続じゃ」


「じゃがな…獣人達も城使えの者もいる…滅ぼされた領地から軍隊の隊長になったやつもいる。結局国は滅んでも安定した生活を送れるようになった国民も山ほどいるんだぞ」


「それはわかってるよ。帝国を調査しながら皇帝が意外といいおっさんだったって事はわかってるんだよ」


「だけど…それと今回の件は別だ。他国の脅威になるような魔道飛行船を作り。人体実験を行った。もしかすると皇帝の知らない所で軍部が手柄を立てたくてやった事なのかもしれないが…少なくとも捕虜にした奴らは腐ってたよな」


「そうなんじゃろうな…皇帝皇帝とゴマをすってくる輩に良いように使われたって事なんじゃろうな」


「いつでもやり直しは聞くさ。それに武力で国家を統一したといっても皇帝は人望も厚いじゃないか」


「そうなのかもしれんがわしはもうどうして良いのかわからんのじゃよ」


皇帝が漏らした本音である。建国までは無我夢中で剣を振り魔法を行使して大量の敵をほふり…ただ突っ走ればよかった。だが皇帝になり国の財政難や食料不足を目の当たりにした時結局そのまま進むしかないと自分を押し殺して居たのだろう。こんな皇帝を俺は好きになった。明日は生命のやり取りをするのだが楽しくも思えた


昨日の貴賓室に集合である


「おはよう!」


皇帝はまだ来てないがマイスターとマリアは早々と用意をしていて帝国の護衛兵は清々しい顔をして集まっていた


「帝国の兵士さん達は何やら充実した顔をしていますねぇ」少しからかった


「俺と皇帝の決闘には君達は来るのかい?」


「是非!」


「鎧も武器も置いていけよ。こっちは一応マリアには帯剣させるが危害を加える事はない」


「よく寝たのー!あの後これからの決闘が楽しみで少し目が冴えてしまってのぉ…明日楽しい事が待ってる子供のようになってしまったわ!」


護衛兵達は昨日から嬉しそうに笑い行動する皇帝を見た事がないとマリアやマイスターに漏らしていたらしい


「準備はいいか?」


「わしは大丈夫だぞ」


ゲートで移動して平原に来た


「お前はなんでもできるんじゃな」


「広さ的にはこのあたりでいいな。少しまてよー」


地面に両手を付け「コンクリートグラウンド!」ノームもらった地面を固める魔法だ100m四方にしっかりした足場の決闘場ができた


「ここなら魔法でも剣スキルでも使いたい放題だ」


「よし!行くぞ!パインズよ」


立会人のマイスターが中央に立つ


「はじめ!」


ブーストを効かせた皇帝の速攻…皇帝も様子見と行ったところか軽く大剣でなぎ払いをする。スキルだと後方は安全地帯じゃないので軽く飛び上がり剣を躱す。大剣と思えないほどのラッシュが始まる上段から下段から払った剣も着地を待たずに帰ってくる


「どうしたどうした!パインズこの程度か!」


「少し距離を取った。舐めてもらっては困りますよ皇帝…この程度の剣技なら目を瞑っててもかわせますよ」


皇帝が手をあげた…来る!「インフェルノ!」強大な魔法がパインズ目掛けて降り注ぐ!


「パインズ様ー!」


向こうでマリアが慌てているが降り注ぐ火の玉を刀に吸収し人の居ない方に捨てる


「面白い技もつかれるんじゃな」


「ふふっ…皇帝…まだ本気をみてませんよ」


実際この時皇帝はほぼ全力を出し切っていた。あとは意地である


「ロックバレット!」


ロックバレットを目くらましに突っ込んでくる。俺の心眼からはスローモーションに見える


飛んでくる岩のかたまりの全部を刀で順番に切っていく20…30…最後に高々とあげた大剣エクスカリバーが俺の頭に降り注ぐ…タイミングを併せ俺の放った神速斬りがエクスカリバーを縦方向に真っ二つにして皇帝の額ギリギリで止まった。さすがの皇帝もへたり込む。俺は右手を出した皇帝もつられて左手を出した


「皇帝…まだ終わってないですよ。2人とも装備を外し木剣で試合と行きましょう」


俺の武具をマリア…皇帝の鎧と割れたエクスカリバーを護衛兵に渡し、気で作った大剣と木刀の試合がはじまった。こういう試合には性格がとても良く出る。皇帝は攻め続ける


カン!カン!カン!俺は受け流す


「パインズよ!お前は面白いのぉ…若い頃戦場を共に駆け回りたかったぞ」


「皇帝…責め続けて大丈夫ですか?動けなくなった方の負けですよ」


息の上がってきた皇帝が渾身のなぎ払いをかける。木刀で受け止めた俺は固めた地面ギリギリまで飛ばされる。着地すると同時に皇帝のまじかまで神速で寄るそのまま胴に1太刀入れるがかろうじて皇帝は大剣で受け止める


「ぐっ!」受けた瞬間からラッシュ!振る!振る!振る!受ける!受ける!受ける!


一瞬大きく振りかぶった隙をみて皇帝の大剣を弾き返した


「わしの負けじゃ!もう動けん!」


「絶対的武勇で皇帝になったわしじゃ!軍事基地を先制で潰され…果たし合いで負けてはもう皇帝では居られぬ!わしの事も帝国の事もお前の好きにしろ!」


マリアとマイスター護衛兵が駆け寄ってきた。


「皇帝の処遇は俺に任されて居るから従って貰うよ」


「それで良いと言っておる」


「では…とりあえず帝都に戻って皇帝を続けてください。軍事にお金を使わずに治安維持や貧しい民を助ける為に使ってください。食料は王国からもフォレスト公国からもイースト共和国からも余るくらい届けます。そして帝国、王国、共和国3カ国同盟を締結しましょう!」


「皇帝がかつて見た夢をもう一度見てください」


子供の頃ルーバイン育った村は貧しかった。小さな村にも関わらず農作物のほとんどは当時の領主に取り上げられ紛争が起こると男手は連れて行かれた


ルーバインの父親は戦死…骸を運んで来た兵士は勝利に酔った状態だったらしい。民間兵を盾にして軍隊が戦ったそうだ。ルーバインの母親は女手ひとつでルーバインを育てる為近くの街に働きに行ったが1年もせずに戻って来なかったらしい。餓死をする同年代の子供も多く…いつか強くなって腐った国や領地を変えようと鍛えて居たのだった


「貧しく倒れる子供や都合良くかり出される民間人を無くしたかったんだろ?」


「お前…なぜその事を知っている」


「俺に知らない事はないのさ!あ…あと皇帝は負けたのだから今から俺はクレセントと呼ぶからな」


「ははははーっ!わしの負けじゃ格闘のみならず器量も全部わしの負けじゃー!」


「だが気持ち良いのー!こんなに気分爽快な気持ちはいつぶりかのー!」


とりあえず今日も宴会だ!とクレセントは盛り上がり昨日味をしめた護衛兵達も嬉しそうにしていた。


マリアの話では昨日つかせた美女軍団をもう一度手配しろうとしたが全員が報酬の増額があっても嫌だと断った為今日は無しと言う事になった


帝国でなんか?変わったプレイでも流行ってるか気になったパインズだったがとりあえず壊した大剣の代わりを作ろうと父上の元にもどった


最下層 父上の住処


「父上ー!帝国と王国と共和国の3カ国同盟が成立したよ!」


「ほー!よく頑張ったの」


「まぁそれは良いんだけど…今日皇帝と試合をした時に皇帝が持ってた聖剣エクスカリバーって言う大剣を割っちゃってさ。なんか代わりを作りたいんだけどいい案はない?あとマリアって将軍王女にも武器をやりたいんだよ」


「まて!エクスカリバーは地上にないぞ!」


「そうなの?皇帝が持ってたよ」


「それに黒竜の刀とて打ち負けはせぬが…流石にエクスカリバーを割るのは無理じゃ」


「確かに弱い武器だなぁとは思ったんだよ。なーんだ偽物か!魔王が復活したらその聖剣が要るんだよな」


「お前の黒竜の刀でも倒せるぞ。切り刻んで核をむき出しにしてから切ればな。聖剣じゃと一撃で済むってだけじゃ」


「耐性が魔王特化って事か…なるほど。んで聖剣はどこにあるの」


「我が持っておる」


「父上が持ってるって事は危険なの?」


「聖剣は人を選ぶのじゃが…お前が気に入った皇帝なら大丈夫じゃないかの?」


「貰ってっていい」


「ほれ!好きに使え。あと姫様の剣はニューリゾートのダイヤを使え!持ち手と鞘はレントに言えば良かろう。どんな魔法を使わせたいんじゃ」


「付与するなら剣を振りかざせばエリアハイヒールを使えたりキュアを使えたりすると良いなぁ」


「ならそれもエレメンタルに頼んでみよ」


エクスカリバーを貰いレントの所へ行った


「レント…これ今俺が作ったダイヤの剣なんだけど…持ち手と鞘を作ってくれないかな」


「わかった!台におけ!」


「あとエレメンタル!剣を掲げてエリアハイヒールと唱えたら魔法が発動してキュアも使えるようにしてくれないかなぁ」


「松様はいつも人の為に騒がしいですね」


「レント!エレメンタル!聞いてよ!今日さぁ帝国と共和国と王国の三国が同盟を結ぶ運びになったんだよ。ボデッド魔国は魔王が誕生してから会いに行かないとなんとも言えないけど…とりあえず人族の国から戦争はなくなったよ!」


「この星ができて数億年間誰もなし得なかった偉業じゃぞ。松様は頑張ったのぉ」


「俺はきっかけを作っただけだけどな」


「松様…松様のそういう所が人を惹き付け納得させていくのですよ」


「なんか元素霊のエレメンタルに言われると照れるなぁ」


「松様…ご褒美です」


エレメンタルのキスは甘くてとけそうになるんだよなー。美味しいっていいそうになる。まあティファが1番だけどな!………だけどな!


「できましたよ」「完成じゃ」


「魔力放出!ありがとうね!また明日ねー」


王宮貴賓室


「待たせたー!」


と元気に入ると綺麗所の居なくなった護衛兵達のテーブルはお通夜のようになっていた。可哀想に思った俺は武器だけ帯剣させ王国の金貨を10枚づつ渡した。


「おい!クレセント!こいつら退屈そうだから街に遊びに行かせるぞ」


「おー!おー!好きにさせろ!」


「夜中に帰ってくると迷惑だからもうお前ら今日は宿に泊まれよ。それだけあれば飲んで食って朝まで遊んでも充分たりるよ。なるべく固まって行動するのと…街には絶対迷惑をかけるなよ!」


「わかりました!パインズ様!ありがとうございます!ありがたくお言葉に甘えさせていただきます」


全く向かう時は俺と刺し違えるくらいの気構えで来てたのだろうが…調子のいいやつらだな(汗)


定位置につこうとするとマイスターがクレセントに絡まれていた


「マリア!これはどういう状況?」


「いやなんというか…父上と皇帝が隠居する時は跡取りをパインズ様にしようと盛り上がってるのです」


「まてまてまてまて!俺は跡取りなんてやらんぞ!」


「パインズよ!わしもお前同様このマイスター殿が気に入ったのじゃ…武は無いが才覚はある!みんな適材適所があるからのー!」


「ところでマリア…手を出せ…この一連の流れの中で将軍という外の位置から良く俺の心を読んで行動してくれた!これは俺からのお礼だ!」


出した手に先程の剣を渡す


「パインズ様!この剣はなんですか…この世の物とは思えないような輝き…それでいて試さずとも触れれば軽く斬り伏せるであろう刃…」


「おぉー!これから渡すクレセントの聖剣と同等か?それ以上の品だぞ!あとなさやから剣を出してエリアハイヒールと唱えてみろ」


シュッ!エリアハイヒール!癒しの光が部屋中を覆う


「凄い!一生の宝物にします」


「おー!国宝倉庫にもそれ以上の物はないからな大事に使えよ」


あとキュアが付属されている事や俺なら剣を通して光属性の魔法を全部使える事を実演して見せたあと…自分で訓練するようにいった。


「クレセントの聖剣エクスカリバーなぁ…偽物だったらしいぞ」


「わしはあの大剣で帝国の覇者となったんじゃぞ!」


「それでも偽物は偽物なんだってさ。本物なら俺の刀がどんなに性能が良くても真っ二つに割くことは流石に無理だってさ」


「んでお詫びの印にこれな!本物のエクスカリバー」


「ずーっと使ってきたんだどっちが本物か?くらいは握って構えればわかるだろ」


クレセントは構えた!あまりにしっくり来たのか払った!


「バカ!やめろ!」


カーテンが切り裂け壁に斬撃のあとがのこった


「やめろよ!危ないなぁ…そうなると思ったよ」


「まさしく聖剣エクスカリバーじゃな…この剣を握っただけで、いままでの大剣はなまくらだとわかる」


「良いのか?わしにこんな伝説の剣を渡して…」


「ちなみに俺の刀はもっと上なんだがな…マイスターもクレセントも耳にしているだろうが魔王の復活が近いかもしれんのだろ?俺は魔王とも友達になって戦う事なく平和な社会にしたいと思ってはいるが…相手のある事だからな」


「そらそうじゃの」


「その魔王を最悪、討伐する事になればそのエクスカリバーだと一撃でしとめられるらしい」


「それなら世界一強いお前が持った方が良いのじゃないか?」


「いや…クレセントにまだ現役で頑張って欲しい…ってのがひとつと…もうひとつは一応俺の刀でも討伐できるんだよ。芸を披露しようか」


刀を抜き…神速連撃!神速連撃!


「俺の剣技は人の目でとらえることすら出来ない。その上もっと早くすれば過去をも斬る!この連撃で魔王の核を出した後に核を壊せばいいらしい」


「なんだ今の人を超えた剣技は…」


「毎日鍛錬してるからな」


「そういう次元じゃねぇよ」


「ここだけの秘密だが…俺が毎日鍛錬に使っている魔物の魔石を見せてやるよ」


そして深層の番人の50cmの魔石を見せた


「おいおいおいおい…こんな魔石があるのか」


「あるんだよ毎日何個も拾うから俺の収納にはこれがもう何千とあるだろう」


「マイスターとクレセントとマリアと3人だからな少し俺の事を教えたまでだよ」


「パインズ!帝国に対して厚い温情で接してくれた事感謝する。俺の事も生きるように取り計らってくれた事感謝する。もっと帝国各地を回って夢みた帝国を作るように努力するわい」


「あとクレセントにもこの魔道具渡しておくからさ地方で不作で悩む土地があったり裏社会をぶっ潰すのに手を貸して欲しいとか…あれば協力は惜しまないから連絡してくれ」


「わかった!わしも楽しみじゃ!まだまだ玉座であぐらをかいておれんわ!頑張るからよく見ておけ!」


それから2週間後王都にて帝国と王国と共和国の3カ国同盟は締結した。その上でクレセントからの強い要望もありフォレスト公国は帝国にも共和国にも属するように提案され同盟と共に承認された…それによってフォレストは帝国内も共和国内も王国内も自由に行き来でき…他の3カ国が交流をはかる際にもフォレストが使われるようになったことで一大貿易大国となったのである。





第二部 第六巻 完結


第三部 第七巻 魔王復活編へ続く

























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