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創造主様とお友達になりました【5】

第二部 第一話 エルフ族という汚れた社会


マイクは5歳になった。妹のウィンクは2歳。家族4人平和に暮らしている。妻のティファはと言うとお母さんらしくはなったが美しさにも磨きがかかって体型が崩れる事もない。ウィンクを産む時に教育部門はエルフに任せ引退しているのだが、子供に手がかかる分だけ放置気味になるのが寂しいパインズだった。


惚気けです…てへっ


ニューリゾートの下。最深層クールの住処


「クール!起きてる?」


「なんじゃ松か!久しぶりじゃの」


「ここからレントは呼び出せる?」


「我と松のやり取りならやつも聞いておるじゃろ」


「気になってる事があるんだがいいかい?」


「話してみよ!」


「ニューリゾートの住人が大量に増えはじめた頃からクールはあまり来なくなってここにいる事が多くなった。レントも寝てる事が多くなり妖精は姿を見せなくなった。これには理由があるんだよな」


「理由などない!たまたまじゃろ。お主はお主の信じる道を行くのじゃ!のぅレントも同じ意見じゃろ?」


「創造主様!松!久しぶりですね。はい!私は創造主様の意思に従うのみです。創造主様が思うように進めと仰るならそれが神意でしょう」


「思うようにしていいなら、ここの住人を地上にもどして独立させようと思う。当然俺は加護しない」


「どうした?急に、考えがあるなら聞くぞ」


話は数日さかのぼる


「あいつらダンジョン探索は頑張ってるかなぁ」


たまには華麗なる森の住人の様子を見ようとダンジョン入口に来ていた。人数も増え、普通のダンジョン攻略や新人の育成は20人くらいの規模でやっているらしいが、どんな感じなのか久しぶりの訪問である


「お!あいつらか…」やぱ目立つなぁ


「君は新隊員かな?責任者はいるかい?」


「なんだ!貴様!人族の分際で!」


なんだこいつ!とは思った物のここは大人の対応を


「いや…だから隊長さんはどこかなぁって」


「貴様に教える義理も責任もない!」


といきなり斬りかかってきた!

軽く掌で受け止めて受け止めた剣をわる

「ちっ!」と腰に装着した短剣で斬りかかってくる。抜く暇も与えず軽く蹴る20m程吹っ飛ぶ。それを見ていた周りの隊員が誰かの「抜剣!」と言う合図に一斉に襲いかかってくる。少し痛い目を見せようと突進してきた剣士をかわし腕を掴んで折る!背後から横から3方からの同時攻撃!捌くのは余裕だが背後はあえて障壁にし左右の2人を1人は裏拳、反対側は回し蹴りで捌く…「もらった!」と背後の戦士…障壁に弾かれた所を胸ぐらを掴み。顔を潰した


すぐにポーションを出して手当しようとしている。そのポーションを全て取り上げた


そこにこの部隊の隊長だったメープルが来た


「何を騒いでいる!」俺の顔をみた


「パインズ様!パインズ様ではありませんか!」


と膝をつく。隊長の姿を見て隊員達もひざまずく


「なにがあったのですか?」


「今日は撤収しろ!プリシアに連絡を取り、末端隊員の1人も漏れることなく訓練場に集めろ!」


「理由を聞かせていただいても…」


「メープル!俺を怒らせたいのか…」


「いえ!仰せのままに!」


ニューリゾート訓練場


「パインズ様この度は隊員の不始末、誠に申し訳ございません!」


と土下座する


「プリシア!お前はなぜ謝っている」


「パインズ様に襲いかかった隊員が居たとメープルから報告を受け全員集合がかかったと…」


「まず当事者を前に来させろ!その上でもう一度聞く…お前はなぜ謝っている」


「我らはパインズ様の剣…何があろうと危害を加えるような事などあってはなりませぬ。今回の不始末、私の首を持って不問としてください!」


自らの剣を首にあてる


「プリシア!まぁ慌てなくていい…お前、何があろうと…と言ったな。どう報告を受けている」


「今、そこで正座をしている者達から、人族が因縁を付けてきたので我慢できず戦闘になって…それがパインズ様だったと…」


「お前はその報告を信じた訳か…」


「信じるも何も複数の隊員から個別に聞き取りした所…みな同じ証言でしたので」


「お前の中では俺が身内に因縁を付けるような。そういう人物に見えて居るんだな。わかった!本日は解散!プリシア…1週間後に長老会議を招集しておけ」


「全ての事はそこで通達する!」


「御意!」


「あと最前列でしおれているお前達、お前達がついた嘘に寄って一族が滅亡の危機になったと心得よ」


「俺はエルフ族の気高き誇りに投資してきた。街を潤わせ生きる術も与えて来た…それはお前達のような汚れたエルフを育てる為のものでは無い!」


再び最深層クールの住処


「と…言う事があったんだよ。それまではクールも住人と遊ぶのに飽きたかなぁとか…レントも良く寝る季節なのかなぁと思ってたんだけど」


「ニューリゾートに穢れが貯まった事でチカラが弱まったんじゃないのか?」


「流石に察しが良いのぉ。だがな松よ!貴様は既に神の領域に近い。我が創造主ならお前は守護者であり創造主の唯一無二の子供じゃ。お前がして来た事を否定などせんよ」


「松!いや松様!我も創造主様と同じ気持ちにございます。生態系がどう変わろうとまた眠りにつくのみにございます」


レントでさえ松様と呼ぶ存在になったのか…


「それならエルフの民を地上に住まわせるよ。俺の家族とメルはここに置くけどな!明日長老会議を招集してある!言い訳を聞く気もない」


「じゃがそれをすればお前が今まで作りあげてきた物は失うぞ」


「ははは!元々何も無かった物が元に戻るだけじゃないか!何の問題もないよ」


「我らはお前のする事を楽しみに見ているだけじゃ。これまで通り好きにすればよい!」


パインズの家


「ティファ…もう俺の中で決めちゃってるんだけど、話をしても良いか?」


「どうしたの?あらたまって」


「んと…今まで色んな事に付き合わせて来たからさ」


「メルも聞くー!」


子供達はいつもと違う父親の雰囲気を見て黙ってすがりついてくる


「マイク…ウィンク…なにも怖くないよ。抱っこしようか?」


「抱っこー!」と笑う


「明日、長老会議を招集してあるんだがそこで命令しようと思っている事がある」


「メルは何となくわかるよ。エルフ族を地上に戻すんでしょ?」


「ここまでやってきたのにパインズはそれでいいの?」


「確かに、エルフ族に戦闘力を与え、他の文化も理解させ、商業も産業も教育も与え…目まぐるしい発展を与えて来た。だがな、それはエルフ族の繁栄に繋がって来たけれど…元の理由はクールやレントのようなこの星を愛する者の為なんだよ」


「エルフもその想いに応えて努力してきたんじゃないの?」


「はじめはな…今は財を獲て、武力を持ち、他種族を蔑む者まで現れた。今のエルフ族をエルフ族とは言わんよ。姿形はエルフだけどな」


「私はあなたについて行くだけだよ。子供達は少し寂しくなるだろうけど…ゆっくり教えていくよ」



長老会議室


人口の増加に伴って長老も30人になっていた。軍隊からもプリシアとトリフに加え影の代表であるダークも参加するようになっていた


ダークはシャドーやダフネスの父親で索敵や隠密のスキルと共に看破のスキルを持っていて、近頃は商業部門からの依頼で取引先の情報収集や契約時の相手の心の中を探る事に従事していた


「今日集まったのは他でもない。お前らをこのニューリゾートから追放する!」


「お待ちくださいパインズ様」


「我らはパインズ様のてとなり足となり働いて参りました」


「せめて理由をお聞かせいただけませんか?」


「プリシア!説明してみろ」


プリシアは一部始終を説明した。俺の怒りに触れた事が隊員のついた嘘であった事もキチンと説明して見せた


「ようするにお前達は汚れてしまった。各部門にも各国から大金が入って来るようになり、お前達長老会議も地上で私服を肥やしているヤツをしっている」


「心配するな裸で掘り出す事はない。シュテルン王国と同盟を結び領地も確保してある。あとはこの中から王様でも決めて今まで通りやって行けばいい」


プリシアが立ち上がった


「パインズ様!この度の不始末…全て私の不徳の致すところ…ここは私の首で全てをお納めください」


「プリシア…お前は俺が愛した戦士長を俺の手で殺せと言うのか…事はそんな単純な話では無いんだよ。俺に対して人族と蔑み襲いかかって来た者、金を持つ事で私腹を肥やした者…他にも工房で働くエルフに身体を要求した者もいる。上手くいかないからと八つ当たりして下の者を虐めたヤツもいる」


「お前達は俺に知られる事は無いと思ったのかもしれないが…俺は創造主と世界樹がいつもそばにいる。変化を感じて確認する事は容易いんだよ」


「俺はお前達をエルフ族とは認めない。姿形がエルフなだけで私欲を貪る物…魔物とかわらん!」


「地上に住処は与えてやると言ってるんだ。これまでの努力はそれだけでも報われるだろう。帝国と共和国にある商会は撤退させるが他は今のままでいい。オマケに全ての加護は失えどお前達は自由だ」


そこまで話すると全員が諦めた。ただ1人を覗いて


「パインズ様、我ら影は元々、私の一族で構成されていてそれ以外は人族やドワーフ、獣人族と言った多種多様な部族からなっております」


「活躍は知っている」


「我ら影は主を失えば死があるのみです。ましてや他の主君に勤めるなど出来ようはずがございません」


「一括りに我らも地上で暮らせと言うのなら死ねと命令してください」


「そうだな…わかった影だけは俺が引き取る。プリシア!異論は無いな!」


「良し!では突然生まれるエルフの国、場所は魔国、帝国、共和国の全てと隣接する大陸中央北部の大地である!一族の繁栄の為に自分達のチカラで生き抜いて見せよ。今後俺に関わる事は許さん!接する事は許さん!ダーク達の事も裏切り者と広めるがいい!」


最深層クールの住処


「長老会議終わったよ」


「少し気になって我もトリフも聞いておったぞ」


「松様!なんとも思い切った采配ですね」


「まあ…1あれば100あるんだよ。ダーク達以外でも残してあげたいと思う者は居た。だけど…状況を知った上でその事と戦わないのは何もしてないのと同じだし、何もしないのは悪なんだよ」


「なるほどの」


「チカラなくとも声をあげればいい。非力でも立ち向かえばいい。その者の足元には俺が光をともすのだからさ」


「まあ…いいんじゃないか。我は、松が寂しくなるのが嫌でここに戻る時間を増やして居ただけじゃ」


「我もそういう理由で寝ておりました」


「2人が立場上何も言えないのはわかるけどさ、子供も親が幸せであって欲しいと思ってる事はわかっておいてね」


「今回の件で少しは理解したぞ。指示を出す事は出来んが考えておくよ」




第二話 シュテルン王国


ニューリゾートは俺達の家とダーク一族の家三世帯になった。ダークの弟家族も影として活動していたからだ。子供はうちの2人とチッタと3人しかいないがメルと妖精が遊び相手になってくれている


エルフを半ば強制的に地上に出し静かなものだが妖精は以前よりも増え、人型を取る妖精も出てくる程になっていた


「パインズ君!」


「なんだウンディーネか…どうした?」


「今年は雨が少なく地上は農作物が不作ですよ。こういう時は戦争が起こります。エルフの大地は世界樹様の苗木のおかげで食料難にはなりませんが…各国の侵攻が始まりそうですよ」


「教えてくれた事は感謝するが俺には関係ないよ」


「そうですか…それなら私には尚更に関係ないのですよ。」


「確かにな(汗)」


水を司る精霊ウンディーネ彼女が現れるようになって水魔法の規模は飛躍的に上がっている…場合によっては王国の農園には雨くらい振らしてやらざるを得ないかなぁ


「ダーク!来い!」


「はは!」


「とりあえず各国の情報を常に掴んでいて欲しい。ギルドが持ってないような深い所をな」


「御意!」


今日はブロイに呼ばれている。久しぶりに合うが何の用だろうか…


ギルド長室


「ブロイさんこんにちは!今日は何用ですか?」


「数点ありまして、この数年の間にバイルン公爵との間に起きた内紛については王家の大勝利に終わった事はご存知と思いますが…その功により私も王家に発言権を持てるようになりました。その為、条約を結べとの申し出に対して根回しし、成果を納めたのですが」


「あの時にいくつかの条件を付けられまして」


「聞こうか…ひとつにはパインズ様を我が王国の貴族として迎え入れたいと…ですがこれは受け入れるはずが無いと断りました」


「当然だな」


「そしたら王より華麗なる森の住人の冒険者資格の剥奪。エルフ商会の国内からの締め出し、あと魔石を提供して欲しい。と3点ございました」


「んーと…冒険者資格の剥奪はギルドに取って痛手じゃないのか?」


「実はパインズ様には話出来ずに居たのですが…言わば大軍勢ですからそのチカラを背景に、ダンジョン内だろうと街中であろうと我が物顔に振る舞う者も多く扱いに困って居たのですよ。この件は他国も足並みを揃えると思うというか…帝国、共和国のギルドも今日のパインズ様の返答待ちになっています」


「問題があるなら取り上げていいんじゃないか?エルフの国フォレストにはダンジョンは無いが仕方ないだろう。それに今年は不作になるらしいからダンジョン探索どころでは無いだろ。きっと」


「あと商会はどうでしょうか?」


「それは王国が関与するのは不味いんじゃないか?」


「と…言いますと」


「締め出す理由が無いだろ。相手は同盟国だよ」


「方法が無いわけじゃないけどな」


「方法と言うのは?」


「それは話が長くなるしブロイがかなり頑張る必要もある…あとでまとめて説明する」


「魔石はどうでしょうか」


「軍事利用だよな?」


「帝国が魔道飛行船の開発に成功したようなのです。その情報を掴み、我ら王国と共和国は秘密裏に同盟を結び、帝国に対抗する為に共同戦線を貼る事になっています」


「それでもダメだな。帝国にも民衆が居る、戦争を回避する為に共和国と同盟を結んだのなら協力もするが、戦争する為の協力はしない」


「そうですか…」


「そうだな、ブロイも立場があるだろうから…防衛に関しては協力しよう。帝国がせめて来た時は俺が盾になると言うのを約束してもいいぞ」


それから俺は逆に条件を出した。エルフ商会を追い出す為にスラム街の住人や孤児を使用人にして新たな商会を立ち上げる。その商会は国営とし、貴族階級や商会の参加に関して大小の分け隔てなく利権を分散する事。その代わり工芸品や武具、日用品と装飾品などはエルフ商会よりも高品質の物を約束する。そうやって得た利益を国庫に回し、スラム街を整備してスラム街その物を無くす。地方の農村部の税率を下げ適正価格で農作物を買い上げる。その代わり雨不足の今年も地方の豊作は約束する。等を提案した。教会からの反発や裏社会に関しては責任を持って騎士団で対応するように念を押した


「そんな感じでどうだ?」


「そこまで尽力して頂けるなら願っても無いですが。私が口約束で取り付けたと言っても信用してもらえるかどうか…」


「わかった。それはその通りだな、国王と謁見する気は無いが非公式な場所で会談するくらいなら協力しよう」


「では早速準備を」


「それならこうしよう、会談場所はスラム街の近くにある酒場、護衛の同行は認めない。ブロイともう1人王の跡取りなら同席を認めよう。王家の馬車も使うなよ」


「それは王が行くと言っても、貴族院が反対すると思います。」


「それならこの話は無くなるだけの事だ」


その後、ダークに指示を出した。帝国の軍事開発拠点をマークさせた。ひとつには危険の無いように潜入出来たら魔道飛行船の情報を持ち帰る。無理はせずそれが危険なら基地から魔道飛行船が飛び立ったらすぐに知らせる。の2点である



第三話 マイスター・シュテルンという男


ブロイから連絡が来た俺の提示した条件を全てのむから会談したいとの申し出だった


日時は1週間後場所は裏社会の人間のたまり場にもなってる酒場である


一応、王が王宮を出てから護衛しているが、騎士団はやはり数十名規模で隠れながら護衛をしている同行しているのはブロイとあれは王女だろうか…


※ブロイ!黙って聞け…取り巻きの騎士団に店の中で騒ぎがあっても決して動くなと伝えておけ。乱入されれば事が大袈裟になる。あと逃げて行く者があれば追いかけて場所が特定出来たら店に伝えに来るように。踏み込まずに場所の特定と包囲だけな。間違えるな!


俺は入口で待っていた。王と王女を俺に渡しブロイは騎士団の元へ走った


「では王様!はじめまして私がパインズにあります。本日はこのような場所にお運び頂きありがとうございます。お隣におわす方は王女殿下でありましょうか。このような汚れた街を視界に入れるのはいささかショックもありましょうが。少しの間お時間を頂きたく」


「貴殿がパインズ殿かブロイからいつも聞いています。わしとこんな所で会談したいとは、聞きしに勝る豪傑ですな」


「父上!なぜこのような平民の招待に応じてこんな所まで起こしになったのか!」


「マリアよ!自分の目でみよ。それから判断しなさい。このパインズと言う御仁は先入観で人を見る者、権力にあぐらをかく者を嫌う」


「ですが父上!私は王女として生まれ民の為に今までも剣技を鍛え、教育を受け、王女として恥じる事の無いように努力してきました」


「それはわかっている…だから先入観を持たずに自分の目でみよ!と申しておるのじゃ」


「お待たせしました。国王閣下!王女殿下!」


ブロイが合流した。王女は帯剣しているが、3人とも庶民の格好をしている。それでも内から溢れる気品は隠せない。事件の予感はしたがそのまま入店した


「いらっしゃいませー」


カウンターに陣取った。いかにもなヤツらが見ない顔だと噂している。危険を感じて壁際の席を取る


「とりあえず、ビールを4つで!」


カウンターのヤツらは店員に耳打ちしている。早速仕掛けてくるのか…


「おまたせしました」何気にぎこちない


「国王閣下、王女殿下、ブロイ…飲み物を口にしないで少し待ってください」


睡眠薬入のビールである。立ち上がった俺はカウンターの幹部らしきヤツにビールを投げつける


「随分な歓迎じゃないか!睡眠薬が入っている事くらいわからないと思ったのか!」


「なんだとー!」


「お前が指示したのは見てたんだよ!あとな俺には睡眠薬どころか毒薬も効かないぞ」


「くそ!眠らせて金だけ取るつもりだったが…めんどくせぇ!やっちまえ!」


店に居た全員が武器を取る。反射的に王女は剣に手をやるが制止する


「障壁!」3人を守ると同時に


即座に中央に陣取った。まず俺は幹部の元へ走り首を飛ばす!30人近く居た部下達も一瞬で怯む!あとは順番に顔面に膝を入れ腹を殴り強そうなヤツから無力化していく顔面を壁に打ち付け、蹴られて飛ばされた者は壁を貫き、肘鉄を背中や腹に入れられた者は呼吸も出来ずに倒れ込んだ。敵わないと思った雑魚達が店から出て走り出す。


「おい!首を切られてしんだか?仕方ないがつないでやろう…飛ばした頭と首を合わせ世界樹の滴を注ぐ。数分なら死ねないだろ!」


数秒するとガバッと起き上がる。首を抑え不思議な顔をしている。


「心配するな首は飛ばしたが付けてやった!」


「あ、あぅ、あぅ…」


言葉が出ないらしい。世界樹の滴をもって復活はしたものの首が飛び死の恐怖を味わった為に色んな物が壊れたようだ


「お店の人!あなたがここの店主かい?」


「そ、そうです。でもこいつらの仲間じゃありません。」


「でも薬を入れたのは君だよね」


「すいません。許してください」


「無理だな。ブロイ…悪い。ここにいるものをロープで縛って欲しい。マスターも抵抗しない方がいいよ」


ブロイに拘束を頼み、アジトを突き止めて騎士団が報告に来るのを待ちながら会談にはいった


「お騒がせして申し訳ありません。今日はスラムの現状を視察するだけのつもりでしたが手厚い出迎えを受けてしまいました」


「いや…パインズ殿!貴殿の意図は理解していました。それに何があってもパインズ殿が助けてくれると言う事も聞いておりました」


「父上!私は気が気じゃありませんでした」


「ほぉほぉほぉ!マリアには悪い事をしたな」


「とりあえず予定の会談を進めましょう。王女殿下もご機嫌を直してください」


俺は倉庫からガラスのグラスを4つと神様の涙それと料理やデザートを机に並べどうぞと促した


「これは各国より取り寄せた料理をレシピにして記録し再現した料理です。作りたてですので温かいうちにお召し上がりください。テーブルマナーもなく不慣れとは思いますが…好きな物から手をつけるのが庶民流です」


「なんと!パインズ殿…これは王宮でも出ない料理ですな」


「コック風に紹介するとまずこちらは共和国で食されている郷土料理のおひたしと漬物と言う食べ物であります」


「ほうこれが…馴染みの無い味ですが悪くありませんな」


「してこちらが世界樹の恵をふんだんに与えて育った野菜とその白い物はやはり共和国の最東で捕れるたいと言う魚にございます」


王女も食いついてきた


「パインズ殿!これは生ですが大丈夫なのですか」


「生で食べるのが美味にございます。とれたてを加工しましたので、産地で食べるのと同じ新鮮さですよ」


「確かに美味しい!」


オリーブオイルやしょうゆ、ブラックペッパーやマヨネーズといった調味料も並べた。


「これらは調味料にございます。お好みで」


「ほう!コショウには馴染みがありますがこれは混じり気のない、舌にピリッと刺激がくる。なんとも上品ですな」


「野菜とタイの切り身にオリーブオイルを軽くかけた後、そのコショウを適量振りかけるのがおすすめです」


「パインズ殿…私は剣技と政治に関する学問は努力してきたのですが料理や裁縫はからっきしでありまして、あの、そのおすすめをお願いしても良いですか」


「いいですよ。こうしてたくさん出ないように親指で栓をする。それから細く綺麗に光るように線を描くようにオイルをかける。それからコショウを全体的に適量ふれば…これがおすすめです」


「おぉー!パインズ殿この野菜もタイも美味しいですねぇ!こんなに美味しい物は生まれて初めてです」


「まだこっちもありますが…先にお酒を。これはブロイも大好きですが神様の涙というレベル100のお酒です。入手経路がモンスターのドロップである事とお酒に慣れていないと天国に行けますので市販はせず、もっぱら私が気に入った相手にだけ飲んでもらっています」


「氷も溶けて、飲み頃です」


「パインズ様私も頂いてよろしいですか」


「ブロイ!縛り終わった?ご苦労さま。残党を追いかけた騎士団の戻りが遅いな」


「指揮は騎士団長が取っていますので万が一にも危険は無いかと…」


「なんともパインズ殿、国王との会談の裏でそのような段取りを…それにしても美味い酒ですな。普段の日常を全て忘れて真っ白になっていきます」


「全部偶然ですよ。護衛をつけないようにブロイに言いましたので王様と王女様が城から出てすぐに私が遠巻きに護衛に着いたのですよ。所が騎士団の相当数が2人の通路を固めていた為、ついでに組織を壊滅するのもひとつの手だなと思いついたのですよ」


「それで到着するやいなやブロイが外したのですね。そうです。ブロイが下げているネックレスが私との通信アイテムになっていまして」


「パインズ殿は魔道具も作れるのですか!」


「まあ王女様…そんなに興奮なさらず、こちらがメインディッシュですよ。ダンジョンの深層で表れるエンシェントミノタウロスの肉のステーキです。少し赤身を残していますが問題ありません。このわさびを少し乗せて一口大に切りお召し上がりください」


「美味しい!パインズ殿の料理は毎日食べたいですねぇ!」


「場所をこんな所にして申し訳なかったのですが…私が定めたルールの中にスラム街を無くして街を整備してもらう。と言う項目があった為、お許し下さい」


「商会を国営にして出た利益で街を整備して地方の税率を下げるという事は何となくわかったのですが…今年は雨が降らず各国が不作になるのはわかっているのに我が国の豊作を約束するとはどういうことなのでしょう。」


「ひとつにはさっき賊の首を繋いだ時にかけたこの液体ですが…これは世界樹の滴です。大地に恵をもたらします。私の住む場所では果物も作物も年に2回収穫できます」


「あと雨を降らせる事など容易いのです」


レイン!と言って店の端に雨を降らせた


「それは水魔法ですか?」食いつく王女


「これは水魔法を自然現象に変えた魔法です。私の友人にウンディーネという妖精がいるもので使用可能になりました。地上が雨不足で不作になる事もウンディーネが教えてくれたのです」


「ウンディーネ…書物でしか読んだ事は無いのですが実在してるのですね」


「王様、王女様、ブロイ…しばらく歓談していてくれないか…騎士団が戻ってくる。ボスも捉えて壊滅してくる」


「パインズ様!どうかお気をつけて」女は現金である


騎士団の報告を受けアジトに合流した。騎士団長のヨハンが待っていた


「パインズ殿!この度は助力感謝いたします。先程の店に数名の団員を先に行かせました」


「店は一応縛ってあるし、みんな伸びてるから王様にも王女にも危険は無いだろ」


んじゃ踏み込むか…数分だった200人ほどが潜伏する最大の裏組織である。騎士団は前から目をつけて居たが手出し出来なかったらしい。あとは任せ店に戻った


王女はスイーツに入り顔を綻ばせている


「戻りました。無事一網打尽にしてきましたよ」


「ところで王女殿下!来た時は随分不機嫌でしたがとても楽しそうな表情になりましたね」


「パインズ様!いじわるです!」


「ブロイ!ここの者は騎士団が連れて行ったのか」


「はい!あの後数名来まして引き取って行きました」


歓談していると鎧を来た騎士が走り込んで来た。殺気


「ボスに逃げられました!」


すかさず拘束する。


「お前がボスか!そんな幼稚な手で王や王女に危害を加えられると思ったか」


「くそ!はなせ!」


「王様、王女様、この者をこれから尋問します。見るに絶えないでしょうから今日はお引取りを」


「いえ!パインズ様…私も立ち会います」


「マリアがそう言うならわしも付き合おう。だがパインズ殿、何故に尋問を」


「簡単な事です。この姿で王様と王女様に危害を加えようとしたという事は内通者がいます。いま炙り出さねば機会を失います」


それからボスを拷問したしぶとく粘って居たが指を1本1本おられ足の爪を剥がされした事で吐いた


「やはりヨハンか…この国は腐っているな…ヨハンもおそらくこのスラム街に利権を持つ侯爵なり伯爵に買収されたか…脅されたのだろう」


あとは俺が関わる事ではない王宮に任せお開きとなった。後日聞いた話ではヨハンは伯爵家の出身であったらしく家の為、仕方なく加担したようだ。その伯爵家は取り壊しになり。その事がきっかけでスラム街や教会に暗躍していた貴族階級は一掃されたらしい



第四話 マリア・シュテルンという女


ヨハンとヨハン伯爵は王宮内にて公開処刑になり騎士団長の席が空いた。マリアという女が毎日俺を探しているらしい。その為ギルド長室に入り浸り、俺と連絡を取れとブロイに言ってくるらしいが王女絡みの通信はパ!パインズ様と一度口ごもる約束になっているので放置している。そんな時マイスターから王宮に呼び出しがあった。無下にする事もできずマイスターの部屋へ遊びに行った。先日王様として付き合うのではなくマイスターとして懇意にしてもらいたいと申し出があったのでそれは快諾したのである


「マイスター!どうした?」


「パインズ殿…マリアが貴殿に恋い焦がれておっての…わしも困っておるんじゃ」


「一度だけ話を聞いてやってくれんか?そうすれば諦めると思う」


※ブロイ…マイスターの部屋に大至急こい!


「ブロイも呼んだよ。とりあえずマイスターがそこまで言うのなら話だけ聞こう」


この手の話は極端に面倒くさがるパインズだったが連日マイスターもブロイも押しかけられて困っているなら仕方ないと諦めたのだった


「パインズ様!パインズ様ー!」


「どうした慌てて」


「会ってもらえなくて病気になる所でした」


「会った所で答えは見えているだろ」


「そうかもしれませんがもう一度お顔を見てお願いしたかったのです」


「もうすぐブロイが来るとりあえずお茶を飲みながら待とうか…ひとつ俺から報告もあるし」


「ではそうしましょう」


「今日は帝都で流行りのパンケーキなこの温かいケーキに冷たくて甘いバニラアイスが人気の秘訣だ」


「んー!!!なんとも美味しいですねぇ!」


「それで満足したか?なら諦めろ」


「いえ!話は聞いて頂きます!」


「王室に生まれたお嬢様がなかなかしぶといな」


「やる気と元気と不屈の精神なら王国一です!」


やれやれ…とマイスターと目を合わせているとブロイが来た


「ブロイ来たか…揃ったのでまず俺からひとつ報告がある!帝国の魔道飛行船が試運転をはじめた。何か?情報は入っているか?」


「こちらにはまだ何も」


「俺の使う影からの報告だから間違いない。数分前だが飛び立って国内を航行中らしい。数日でどこかに攻め込む事は無いだろうが王国としても体制は整えた方がいい。ヨハンを処刑したこの時期にタイミングが悪いがそうも言ってられないだろ」


「軍には臨戦態勢を引くように申し付けます」


「魔道飛行船が来るような事があればちょーっと行って地上に引きずり降ろすけどな。備えは大事だ」


「そんな事も可能ですか…」


「まあ問題無いだろ。飛行船を墜落させたら帝国の兵士が無傷では居られないからな。そっと地上に降ろして無力化するさ」


「そこまで戦争はダメですか」


「その話少し待って影と話したい」


※ダーク!応答しろ


※なんでしょうか?


※影を使ってそれとなくプリシアに帝国の飛行船の情報を入れろ


「フォレストならトリフ達が居るから撃ち落とす事も可能だろうが、威嚇射撃で負い払うという方向に情報操作してくれ。俺の指示と悟られるなよ」


「主!かしこまりました御心のままに」


「頼む。あと引き続き飛行船の動きは逐一報告しろ」


「待たせました」


「今のが通信機ですかな。ブロイも持ってる」


「そうです。相手を思い浮かべる事で念話も会話もできます。先日スラムに来てもらった時にマイスターの知らない間に色々手配していたのはブロイと念話してたのですよ」


「少し会話が聞こえましたがフォレストには飛行船を撃ち落とせるような兵器があるのですか?」


「弓ですよ。私が与えたものです1km先の的を撃ち抜き火をまとわせると半径30m程吹き飛ばせます」


「なんとそんな協力な武器が!」


「ただ今は私の加護を失ったので命中させる事はできず、爆発範囲もだいぶかぎられてるでしょうけど」


「で…パインズ殿なぜそんなに戦争が起こらないことにこだわるのですか」


「戦争して誰が得をしますか?」


「そら国土が広がれば富を得て国民は潤います」


「敗戦国はどうなりますか?」


「領土を失い民は虐げられます」


「だから必死に戦うと?」


「はい!指揮をとるのも王族の勤めです」


「戦争をすれば戦いは長引き、やがて軍隊だけでは足りなくなり希望しない者まで軍に取られるでしょう。運良く徴兵は免れたとしても食料も全ての財を捧げる事になる」


「そこまでして勝って得るものなど微々たるものでしかないし、負けたら隷属される。王族が処刑されるなどそんな事で責任が取れるほど民の生命は安くない」


「政治戦略の都合でどうしても争いたいならマイスターと帝国の皇帝が一騎打ちでもすればいい。それが俺の答えだ。民こそが財産だ」


「財産価値のない民もいるがな」


「なるほど…それで防衛にはチカラを貸しても良いが戦争その物には加担しないと言う事なのですな」


「パインズ様!私の話をしてもいいでしょうか」


「そうだな…その為に来たんだったな」


「騎士団長の席が空白です。何卒パインズ様に」


「却下」


「では、騎士団長には私が着きますので統括する将軍職にパインズ様が…」


「却下」


「もういいか?爵位も断ってるのに何故軍に行く必要がある…それに今の話を聞いていただろ」


「聞いていました。ですがパインズ様にはどこかの要職に着いていただいて。私をもらって欲しいのです」


「更に却下!」


「何故ですか…私の姿形も中身もその辺の町娘にひけを取るとは思いませぬ」


「ティファ!マイクとウィンクと3人か?」


「そうそう遊んでた」


「マイスターと言うこの国の王様が遊びに来いって言ってるから王宮に来てみないか?」


「いいの?みんな普通の服しか来てないけど」


「いいのいいの!ゲート開くぞ」


「マイスター!マリア!紹介するよ。これが俺の妻のティファ!上がマイク!妹がウィンクだ」


「マイク!その歳とったのが王様だよ。握手してもらいな」


「マイク殿か!パインズ殿の子だけあって凛々しいのう!」


「ウィンク!そこのお姉さんに抱っこしてもらいな」


「お姉ちゃん綺麗だね」


「俺はこの3人を幸せにする事が大事でな、俗世間の風潮に流されるつもりもなければ国家や権力者の為に何かをする気もないんだよ」


「マリア…諦めろ!」


「何故ですか!妾でも構いませぬ!」


「いや、王女を妾は不味いだろ!」


「俺は近づいてくる人間が俺に対して何を求めて要るか。それは見る目がある。お前が国を守る為とか俺を利用する為では無い事はわかっている。でもないくら王女様でも思い通りにならない事もあるんだよ」


「マリア!騎士団長になって王国の民が平穏に暮らせるように治安維持に重きを置いて頑張れ。夜道を子供が歩いても安全な街を作れよ。出かける時に鍵などかけずとも安心して居られる街を作れよ。それがマリアの使命だろ!」


「それも頑張ります。それでもパインズ様のおそばに居たいのです」


ティファが口を開いた


「以前エルフ族を助けた時にパインズの妾に5人でも10人でもめとってほしいとの申し出があったのです。私は良い話じゃないのと進めたんですがパインズは側室を設ける気は無いと申しました。その感覚は私にはわからずなぜ断るのか不思議にも思いましたが、長年一緒にいて思います。それはひとつの戒めなのだと」


「庶民が側室をとるでしょうか…結局、民の心がわからなくなってしまわないように自分に課せたルールの中のひとつなのですよ」


「私は側室をとった程度の事でパインズ様が変わるとは思いません」


「私もパインズが変わるなどとは思っていませんよ。だけどねマリアさん。例え話をすると私がまだ2人で冒険者をしている時あるパーティに出会って助けた事があるのです。パインズは薬を与え食事を与え寝る場所も全て与えました。次の日パーティの1人が一言パインズに文句を言ったのです。それを聞いたパインズは一瞬でそのパーティを置き去りにして行きました。ブロイさんはその経緯をガンツさんに聞いていると思いますが…」


「今回のエルフの件もそうです。あるエルフの兵士が人族を蔑み、自分達が最高だとばかりに攻撃したのです。その出来事がエルフを独立させるキッカケになりました。そのような例をあげると、パインズが気難しいように聞こえるかもしれませんが…人に巣食う闇を許さないと言うのがパインズの方針です」


「マリアさんの申し出を受けてしまうと同じ人間になってしまうとパインズは判断しているのです」


「道に迷ったら相談すればいいじゃないですか!パインズは妻じゃいからと、自分の認めた相手を見捨てるような事はないですよ。王女が側室になってまで忠誠を誓いたいと言うのなら。その忠誠は世界一、安心に暮らせる王都を作る事で果たせばいいじゃない?」


さすがの貫禄だなと恐れ入るパインズだった


「そうですね…ティファニーさんの言う通りです」


「父上!ご心配をおかけしました。マリアこれより更に精進してまいります。それでは失礼します」


「マリア!期待しているよ。あとこの前のようにアジトに踏み込んで壊滅するなんて時は無理しないで俺を呼べ。わかったな。独断専行は絶対ダメだ」


「かしこましました。失礼します」


「ティファ!ありがとうな」


「あって数回の女の子にパインズを理解しろと言う方が無理がありますよ」


「私は元々オートマタであなたの意思を遂行する為に生まれた存在でしたからね」


「それもそうだね。なんにしても急な呼び出しにいつも応じてもらってすまない。あとマイスターにも申し訳なかった。大事な娘を傷つけてしまって」


「いや、此度の事であいつも成長するでしょう。父親として礼を言わせてください。ありがとう」


「代わりにペンダント2つ渡しとくよ。マリアとマイスターで使ってくれ俺を思い浮かべると繋がる。あとマイスターとブロイも交信できる。それとマリアにはこのピアスを…これは髪の色を変えたり、幻惑魔法で変装できる。街の調査の時に使えと。あとマイスターにはこの黄金のタンブラーを…装飾に付けてある魔石が飲み物に何か入っていると教えてくれる」


「お心遣い感謝する。スラムまで足を運んで来た王様の誠意には誠意で応えないとな」


その後ブロイとマイスターに酒をせびられ渡して帰った。


王国の経営する商会はなんでも品揃えされていて1階2階は庶民層の比較的安価な物、3階4階は高級品を並べた富裕層のフロアとして欲しい物はなんでも揃うと評判になった。地方で取れる農作物も世界樹の滴のおかげで品質が向上し安定した供給が出来るようになった。可哀想な事だが程なくしてエルフの商会は姿を消したのだった



第五話 王都犯罪撲滅大作戦


国営商会によって順調に利益をあげた王国はスラム街の整備をし地方の生産者達の税率を下げ以前に比べ暮らしやすい国となった。バイルン公国は3つに分断され広域貴族が1点集中で権力を持てないようになったが商会の存在によって収入は安定していた為、異論を唱える貴族はなかった。実質、お飾りだった王室が中央集権に成功したのだ。地方領主も税率が緩和された為、農作地や果樹園を拡大。拡大に辺りそれぞれの地方の特色を活かしつつも他領地で作っている作物なども手がけるようになった。過疎化も進み困窮していた地方貴族もその拡大によって各所から集まってくる民を受け入れ今や軍隊も持てるように成長していた


騎士団はと言うとヨハンを処刑した時は1000人程度の陣容だったがマリアが騎士団長になったのもあり国庫の予算から治安維持の為に三倍にすると議会にかけ交渉成立3000名を有する騎士団となっていた


ある日、ティファとマイクとウィンクを連れて王都を散歩していた


「パインズ様ー!パインズ様ー!」


見知らぬ女騎士が走りよってくる


「なんですか?」


「私です!」と耳を見せてきた


「マリアか…全然別人しゃないか。団員には認識させているのか…」


「はい!団員を集めてみんなの前で装着しました」


「お前今時間あるのか?あるならそこにロールケーキの美味しい店があるから一緒にくるか?」


「ちょうど休憩です!いきます!」


王都ロールケーキとクッキーが有名な喫茶店


「なんでも頼んでいいぞ。俺の奢りだ。ティファも久しぶりでしょ。子供達と一緒にたべたら?」


「そうだね。レシピは図書にあるからいつでも作れるんだけど…頼もうかな。マイクもウィンクも一緒に食べようね」


「マリア!今日は何人出てるんだ」


「今日は2000人です」


「そしたらマリア!詰所にお前から手紙をかけ俺がクッキーをお土産に届けさせるから受け取るように。マリアからの差し入れと書くんだよ」


「そんなにたくさん申し訳ないです」


「大丈夫だ!無駄に金はあるんだよ」


「それではお言葉にあまえます!」


全員ロールケーキを頼み紅茶やジュースを頼んだ。国営の商会で売り出したコーヒーも人気になっていてメニューになっていた。2000人分のクッキーは流石に焼かないと足りないと言う事で出来たら王宮の騎士団詰所へ届けるように頼み、マリアの手紙を持っていくように預けた


「所でマリア用事はあったのか?」


「大した用事では無いのですが…組織だって犯罪をする者達はなかなかしっぽを掴ませません。だいぶ減って来ましたが…まだまだ世界一安全な王都には遠いです」


「情報がないなら俺の影が手をかそうか?証拠のある場所とアジトに同時に踏み込めばあげれるだろ」


「それが貴族絡みのヒモも多くて」


「マリア!その程度の事でしり込みするなら俺は手を引くぞ。商会に品物を降ろすのも考えものだな」


「パインズ様すみません!しがらみで動けないとかそういう事ではなくて貴族が居ても検挙する気はあるのですがこちらが内定すると情報が漏れてアジトを移動したりするのですよ」


「3倍になった騎士団も甘いなぁ」


「申し訳ありません」


「所で今、3000人いる騎士団のパトロールや配置はどうしてるんだ。訓練1000パトロール1000休憩1000といった感じでしょうか」


「俺が命令する立場にないから参考程度に聞いてくれ。まず訓練は個々にするもんだ。給料をもらいながら就業時間出する事じゃない。それをするなら週に1回とか実戦形式でやる方がいい。次に3000人の振り分けだが1日を8時間づつ3つに分けて交代制で24時間パトロールするんだ休みも必要だし、夜だけとか偏るのも良くないから1000人じゃなくてもローテーションで800人になってもそれは公平を優先すればいい。あと王都民がいつでも逃げ込めるように街全体の人口密度や治安を加味して詰所を街中に作るんだ。当然、貴族街が充実してるなど持っての他だぞ」


「なるほど…今少し聞いただけでもパインズ様の案を採用すると安全な街になりそうですね。そういうアイデアはどこから出てくるのですか?」


前世の記憶そのまんまなんだけど(汗)


「スキルでな…世界の知恵が集まった図書館を持っている」


「さすがにございます。我が騎士団もそのような仕組みを取り入れても良いですか?」


「思うようにしてくれ。あと追加でさらに良い事まで教えるとその詰め所に必ず水魔法の得意な者を置く。騎士団が魔法が苦手なら魔法騎士団に要請するか?最悪はギルドから冒険者を借りても良いだろう。それをする事で火事が出た時に素早く対処ができる」


「私も聞けばそうだなぁと思えるのですが、そういう発想を持っていません」


「生活環境を考え安全の為に何が出来るのか?それをいつも考える事だ。24時間パトロールを導入するなら騎士団員も危険に晒される事を考慮して2人ひと組にするとか…ペアも剣技を見て配置するとか…自分達を守る事も考えるんだぞ」


「わかりました。早速帰ったら提案して取り組んでみます」


「交代制のシフト作りは財務部門から人を借りるのも良い手だろうな」


「なるほど…計算に強い者に任せると良いと言う事ですね。理解しました」


「まあ…長々と引き止めて悪かったな。俺は俺で影を飛ばすから…自分達の足でしっかり掴んでみろ」


「わかりました!パインズ様!」


1ヶ月後マリアは王都50箇所に詰所を作り、パトロールを24時間体制にした。その甲斐あって強盗や暴力事件は激減し、あとは組織ぐるみの犯罪集団を抑えこめれば一区切りつくような状態にまで漕ぎ着けていた


そんなある日子供達や妖精、クールやレントと遊んでいた


※パインズ様!マリアです


※どうした?


※だいたいのアジトと薬や武器の入手ルート、裏帳簿の隠し場所など判明しました。やはり深夜のパトロールは大きな成果をあげました


※わかった…それでどうするつもりなんだ


※はい!最後の作戦を実行したくパインズ様にも会議から参加して頂きたいのです


※いつ、どこでやる?参加するよ


※明日王宮の大会議室で18時より行います


※それなら10分前に王宮の詰所の前に行く。迎えを頼む


※わかりました。では明日


「松よ!今度は何をしとるんじゃ?お前も忙しいのぉ」


「まずはテストケースでさ、王都から犯罪を無くせないか?取り組んでる」


「人は欲深いからのぉ、楽に裕福な生活をしようと誰もが隙をうかがっておる」


「そうだなぁ…なにをしても現実は堂々巡りになるだろうけど…取り組まなければ増える一方だからな」


「そうじゃな…無駄はないな」


「マリアさんが頑張ってるの?」


「ティファはマリアが気に入ったみたいだね」


「あの娘はまっすぐだし綺麗だよ」


「そうだな。明日会議をするらしいから行ってくるよ。組織的に犯罪をする一味を根こそぎいくらしい」


「お手並み拝見ね」


「丸投げされそうだけどな」(汗)


「ははは!松よ!頑張って来い」(笑)


王宮の詰所前


「パインズ様!御足労ありがとうございます」


「俺がそんな会議に参加していいのか?」


「問題ありません!と言うか…むしろ居てもらわなくては困ります」


「わかったわかった!人使いの荒いお姫様だ事」


「私の恋心を反故にした罰です」


「まあ頑張るよ」


王宮大会議室


騎士団長、魔法騎士団長、その2つを統括する者が居ないのでマイスターが代わりを勤めた。その他警備大臣や数名の議員とブロイも参加していた


「それではこれより王都犯罪組織撲滅会議を行う!議長はマイスター・シュテルン!我が行う!」


王宮としては本気と言う事か…


「みな知らない者が多いと思うがはじめに紹介しておく我がマイスターの友にして王国の守り神であるパインズ殿じゃ!知らぬ者は不思議に思うかもしれんがパインズ殿の参加は我が決めた事じゃ!」


「そして今回の作戦において作戦参謀室長に任命する!みな拍手で迎えてくれ!」


やっぱりこうなるのか…乗りかかった船だしな


「ただいま、作戦参謀室長の任を配しました!パインズと申します。ここに集われた皆様からすれば若輩者ではありますが作戦遂行の為粉骨砕身頑張る所存であります!よろしくお願いします」


「騎士団長のマリア・シュテルンです。現在の警備体制をアドバイスしてくれたのもパインズ様なのです。この掃討作戦はパインズ様無しでは考えられません。その点をどうか理解頂くようにお願いします」


「王女殿下!ここに私の腹心を1人呼び出したく思いますが…よろしいですか?」


「誰をお呼びに」


「我が影にございます。騎士団で入手した情報と我々が持つ情報すり合わせするのがよろしいかと」


「確かにおっしゃる通りです。お呼びください」


そしてダークとマリアが情報をすり合わせする事から始まった。アジトや隠れ家の場所の特定はおおよそ一致して居たがマリアの持つ情報に人数や武装についての情報はなくダークが補足した。敵の戦闘力を加味して配置をする事になった。踏み込むタイミングが重要な拠点も多数あり結局飛行船の見張り役以外の影は全員出動となった


騎士団3000名魔法騎士団1000名ギルドから応援の冒険者1000名計5000名を導入し15組織、30箇所に一斉に踏み込んだ。不意をつかれた犯罪組織は証拠隠滅もかなわず1人も漏らす事なく検挙された為、逮捕者は1000人に及んだ。王宮の地下の牢獄には幹部以上をとりあえず入れ、取り調べをはじめた。末端の犯罪者達は人数に見合う牢獄がない為、数日間、王宮の広場に繋がれた。連日裁判が行われ処刑される者、鉱山送りになる者、様々行き先が決まった。そんな中で残念な事に連鎖的に伯爵家、子爵家、男爵家から5名の逮捕者をだしてしまい、ウミを出す事はできたのだが、先日のヨハン伯爵家に続き6貴族を失った王室は混乱していた。


マイスターの部屋


「パインズ殿…まさか貴族があれほど関わって居たとは、想像も出来なかった。1人、2人は覚悟していたが今回の件で、ヨハン伯爵家を入れて6貴族となると根が深い。今後の王国運営に支障をきたす恐れがあります。パインズ殿お力をお貸しいただけませんか」


「それは申し訳ないがお断り致します。私の気持ちは変わりません。ただ乗り切る方法はいくらでもあるのでは無いですか?」


「どのようにしろと」


「マイスターもいつまでも神輿の席に甘んじてないで地方の男爵や準男爵、騎士爵の者がどのような人物なのか自分の目で判断するんだよ」


「王室に直接の攻はなくとも、民に慕われ好かれている地方貴族も居るだろう。農作物でさえ、団結力と領地を肥やそうとする情熱なくば育たないのですよ」


「そのような人材をみつけ登用して行くのが良いと言う事ですな」


「大事な事は伝統や格式、貴族家の歴史に関係なく…今、目の前にある人材に光を当てる事です」


「なるほど」


「王女殿下にもっと責任を持たすのも良いでしょう。ブロイも居ます。貴族を3代までとして、その間に攻なくば没落させるのも良いでしょう。家柄を見るのではなく、人を見る事ができれば、マイスターが問題と思う事も、さ程重要ではないと思いますよ」


「確かにその通りでありますな。では方向も決まった事です。今回のお礼も兼ねて一献お付き合い頂けませぬか」


「そういう事ならお付き合いしますよ」


すぐにマリアが走ってきた。ブロイも来た。王宮の料理がふるわれるのかと思いきや、いつかスラムの酒場で食べた料理がわすれられないと結局こちらの持ち物を出す事になったがみんな満足気であった


しばらくしてブロイは分離独立し男爵になった、マリアは将軍職に就いた。地方の有能な準男爵が子爵になったり騎士爵も新たに任命された


シュテルン王国として人事が刷新されたのである


ま…俺には関係ないけどね…ふふっ





第六巻(第二部第二巻)に続く














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