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創造主様と友達になりました【3】

トリフとプリシアも育ってきたね

第十六話 パーティは成長する


トリフとプリシアにとっては今日から本格的なダンジョン探索である。街慣れする為にギルドの通路にゲート移動する


「ステファニーさんおはようございます。昨日はありがとう」


「こちらこそ情報提供ありがとうございました。情報料とイレギュラーの討伐報酬が出てますけどどうされますか?」


「それは貯金しておいてください」


「ではギルドカードをお預かりします」


ギルドは銀行の役目も果たすカードを提示すれば他国でもギルドに行けばその国の通貨にして引き出す事が出来る。もうすぐツアーも始まるから貯金しておかないとな


「ではいってきますね」ギルドを出た。街を歩く


「2人には街の雰囲気はどう映るの?」


「どうもこうも生まれてから1度も見た事がなかったから慣れないよね。パインズが居ないと無理だよ」


「そっか…街の人を連れて行くのはどんな所がよいのかなぁ」


「結界の中で生活してたから興味がある者はどこに行っても喜ぶと思いますよ」


「女の人は旅が好きだもんなぁ。それなら1周目は各地の特産物の食べ歩きツアーなんてのが良いかもな。4人1組で何組くらい来るかなぁ」


「どうでしょうか私の見立てでは参加した者から各地の噂が広まりおじいさんおばあさんも行きたがるでしょうからほぼ全住民が希望しますよ」


「1週間に1組で考えてたけど年配層まで希望するなら4人1組ではみんなを連れては行けないな」


「そうですね、4人1組だと年に200人程度しか参加できませんね」


「不公平は良くないもんなぁ。俺が作ったピアスがあるんだけど…それを付けるとエルフの象徴になってる耳を隠して髪の色も人族みたいに出来るんだけど…抵抗はあるかなぁ」


「しきたり!しきたり!とうるさい年寄り連中も俺は好奇心が勝つと思うぜ!」


「私もそう思います。最近は父でさえしきたりとか掟とか言わなくなりました」


「誇り高きエルフの戦士長までがそんな感じなら姿を変えるのは問題なさそうだな」


「若手を序盤に固めて案内役をさせると良いと思いますよ」


「そっか…だけどそれだと色々物騒だから案内役も戦闘力を身に付けて貰わないとな。僕としては守る人が居ないと心配なんだよね」


「パインズ様は過保護が過ぎますよ。何があっても自分の責任ですよ」


「そうだぜ!パインズ!移住の時も年寄り連中は生まれ育った地を捨てるなどエルフ族の掟に反するとか言ってはじめは反対したのに…今ではどうだい、どうじゃこの街は!住み心地がよかろう!ってまるで自分達が開拓したような口ぶりだもんな」


「ははは♪いい事じゃん。さてもう着くぞ。低層は魔物は弱いが昨日の5層に比べて冒険者が多い。過度に緊張すると冒険者に攻撃しかねないから落ち着いてな」


低層のスライムやゴブリン、ウルフといった比較的弱い魔物を落ち着いて処理していく


※プリシア!ウルフがそっちに向かった気をつけろ


※楽勝!


※ゴブリンに囲まれた!


※合流する!


プリシアの動きは早い短剣を使わせてもこの程度の魔物なら確実に急所に一撃で仕留めて行く


それに引替えトリフは打ち漏らすし迷ってる間に囲まれるし…どうしたもんかな


俺は見ているだけだ


※魔石とアイテムを拾い集めて集合


「プリシアの剣術は流石だな。その調子で」


「トリフだよなぁ…短剣は使いにくいか?」


「近接戦闘ってのが苦手みたいだよ」


「かといって無数に襲いかかってくる敵には弓では対抗できないだろ?」


「そうなんだよ。流石にあの数は少し離れて魔法を纏わせた矢で広範囲に攻撃しないと無理だな」


「中層、深層に行けばそれで良いけど…戦闘経験を積んで欲しいからそれでは意味が無いんだよな」


「少しプリシアと見学するからひとりで相手してみ」


アントに遭遇する。アントは殻に覆われている為トリフの刃は入らない。もたもたしてるうちに捕まれてるがレベルは上げてあるのでこの程度では怪我もしない


「見てないで助けてくれよー!」


プリシアが走る。通り過ぎざまに1太刀で首を飛ばす


「やぱトリフは剣の刃の使い方もまだわかってないみたいだしどこを狙えば良いかもわからないみたいだな」


「もらった心眼で何となく急所はわかってるんだけどそこを切ろうとしても切れないんだよ(汗)」


「これを使ってみるか」


オークジェネラルの槍を渡してみた


「とりあえず振り回して良いからひとりでやってみて。プリシアとまた見学するよ」


トリフは素早く動く足はあるスライムを突き、ウルフを切る。槍は扱い易いみたいだ


広場に出た所でゴブリンの群れに遭遇する罠はない異変に気づいたゴブリンに捕捉され囲まれる


襲いかかるゴブリンの先発隊を槍を振り回して切り伏せる!突く!次から次に飛びかかってくる


ブンブン!振り回し切る!叩く!突く!切る!突く!


しばらくすると50体はいたであろう群れが沈黙する


「槍は上手いじゃん。良し!今日は帰ろう。また晩御飯食べながら作戦会議だ」


※ティファ!冒険者ギルドに寄ったら帰るけどトリフとプリシアもうちでご飯食べるから準備をお願いしたいのとメルとマルも連れて来といて。あと、おじいちゃんもどうぞってクールに声かけて


※はーい♪待ってるね


帰るコールか…いいもんだな


「2人が集めた魔石を換金してきて良いよ」


「よー!パインズ!」って肩を組んでくる


「ガンツさん、良く会いますね」


「そらそうだよ。眠たくなるまでここに居るからな」


「待ってる人もいないんかい!」


「5年前に死んだんだよ」


「つらい事を思い出させてすみません」


「いやいいんだもう帰るんだろ?1杯だけ付き合え!」


テーブルに着いた。査定待ちの為トリフとプリシアも席に着いた。


「3人共ビールでいいか?こっちビール4つ頼む!」


「お疲れ様でしたー!」乾杯♪


「少し重たい話になるけど聞いてくれるか」


「つらくならないんだったら聞くのは構いませんよ」


「俺の奥さんは同じ冒険者だったんだよ。5年前はまだBランクでな。今は帝国に行っちゃったけど白銀剣士団ってAランクのパーティがあった。俺はもともとそこのメンバーだったんだが幹部と反りが合わなくてな」


黙って聞いている。向こうでステファニーは声をかけるタイミングを測ってる…待たせると悪いな


「ガンツさん少し待って。ステファニーさんどうぞ」


「パインズさんこんにちは♪こちらが魔石を換金した報酬になります」


トリフとプリシアは戸惑っている


「持ってて良いよ。2人の倒した分だから」


嬉しそうにしまった


「ごめんなさい、話の腰をおって。なんで反りが合わなかったの?」


「なんというか…うるさくてな。探索の前日は深酒するなとか、女と遊ぶなとか。リーダーが厳格な人でさ。それに報酬は魔石もドロップ品も全部リーダーに一旦渡すんだよ。それを換金後に全員均等に分配される。パーティの維持費と言う名目で3割引かれてな」


「なるほど」


「最前線で生命の危険が高い前衛連中は、不公平だ!とか、そもそも換金額があやしい!とか、良く愚痴をこぼしながら飲んだんだけど嫁はその中の1人だったんだ」


「戦ってる時も妙に呼吸が合ってな、安心して背中を預けあえるそんな仲間だったし、2人が親しい仲になるのも必然でな」


「んで不満を抱えていた俺達は2人で金色の長剣を立ち上げようとしたのだが、辞めるのもパーティを作るのも幹部から妨害されてさ。予定が狂って腐りそうになってる時に2人で傷を舐め合うように結婚したんだよ。結局ブロイが仲裁してくれて願いはかなったのだけど俺は白銀剣士団を恨んだし、負けたくなくてより強くなる事に執着してな」


「あとは良くある話しさ、新しい寄せ集めのパーティが無謀なアタックをして先頭で突っ込んだ俺を庇って亡くなったんだ」


「なんか?ガンツさんごめんなさい。嫌な事を思い出させちゃって」


「もう1杯だけ付き合え!こっちビール4つな」


「いやほんとにいいんだ。さっき聞かれたから話したんじゃなくてな…昨日ギルド長室にいた時に思ったんだよ。俺がこいつほど強ければ!とか、名声や格みたいなもんにこだわらなければ!ってさ」


「そうですか…ではお会いした事もない奥様ですが、追悼の意味も兼ねて厳粛に乾杯!」


「ぷはーっ♪やぱ酒は良いなぁ!疲れも吹き飛ぶし、嫌な事も悲しい事も全部一緒に飲み干す事ができる!パインズよ、お前は俺の希望だからな!困った事があったらなんでも言えよ!お前の頼みなら召使いにでもなってやる!」


「それは買い被りすぎですよ(笑)それならちょうど良い依頼がありますよ。プリシア!ステファニーさんを呼んできて」


「なんだ?依頼って。今ステファニーさんが来たら話しますよ」


「お呼びですか?パインズさん」


「まてまて!おい!ステファニー!目にハートが飛んでるぞ!俺にもそういう目を向けろよな!」


「そんな事ありませんよ♪」


「ははは(汗)、ギルドを経由して金色の長剣に指名依頼をお願いします」


「どうぞ!お伺いします」


「話をする前にステファニーさんはもう仕事終わりですよね。僕からの残業代と言ってはなんですが好きな物を頼んでください。僕が出します」


「はい!ではお言葉に甘えて…ビールと唐揚げとオーク肉の揚げ物とミノタウロスのステーキで!」


に、肉食!そこにギルド長が来た


「ギルド長もどうぞ。なんでも頼んでくださいよ」


「はなしを始める前に2人を先に帰しますよ。ローカをお借りしますね」


と言ってゲートを開いた。


「ただいま♪」


「おかえりなさーい♪」子供達が駆け寄ってくる


「パインズ♪おかえり♪」ティファも笑顔だ


「おじいちゃん♪」


「な、なんじゃ」


「いや、言ってみたくてさ(笑)」


「ところでティファごめーん!俺はもう少し話があってさ時間かかりそうだから2人を先に連れて帰って来たんだよ。もう一度行くからあとよろしく」


「わかりましたよ♪頑張ってね」


ギルドの酒場


「戻りました!」


テーブルを埋め尽くす料理の数々


「パインズさん指名依頼ってなんですか?」


ステファニーが担当者らしく聞いてくる、ビールを飲んで肉も食べているがまだお仕事モードだ


「街の外の方に教会がやってる孤児院があるでしょ。僕もティファもあそこには良く遊びに行ったんだけど経済的支援をしようにもどうにもきな臭くて、調査を依頼したいんですよ」


「それは教会本部の対応とか、孤児院に危害を加えそうな勢力って事ですか?」


「そうです。俺の見立てでは孤児院の寄付金は吸い上げられてる気がするし、シスターを見てると何かに怯えているような。自分でも聞いた事はあるのですが何も話さなかったので」


「そんなのお易い御用だぞ!パインズ!パーティメンバーを総動員してすぐに調べてやる!」


「では報酬は言い値で!」


「水臭い事を言うなよ。報酬なんて要らねぇ」


「ガンツさん!それはダメですよ。実費とメンバーの給料とパーティの取り分もキチンと支払わせてください。要らないと言われると頼めなくなります」


「わかったよ。そういう事なら終わってから請求するよ。」


「ではステファニーさんこれを」


プリシアの杖に付けた魔石を3つ渡した


「これプリシアさんの杖に使ってる魔石ですよね?なんのドロップですか?」


「ごめん、魔物は倒しすぎてもう覚えてないんだよ」


「こ!これは!長いギルド長生活でもここまで大きい魔石は扱った事がありませんぞ!」


「大袈裟だよ♪もっと大きいのもあるけど、それはまた今度にしますね。とりあえずその魔石を換金して一旦貯金してください。そこから依頼が終われば報酬を支払ってください。ギルドも手数料を取る代わりにステファニーかマスターがしっかり情報をまとめて報告してください」


「わかりました。そのようにします。先に倉庫にしまって来ますね。流石にここに出したまま食事をするのは落ち着きません」


「どうぞ」


「では私も着替えて来ます」ステファニーが言った


「パインズよぉ…お前はでっかいなぁ」


「そんな事はないですよ。たまたま運良く戦闘力を手に入れただけで、僕はまだ幼く弱い」


「そういう謙虚な性格は理解しているけど、お前を見ていると倍以上歳が離れた俺も自分の事が幼稚に感じるんだよ」


「それは…ほめてくれてるのですか?」(笑)


「当たり前じゃねぇか!俺の新しい目標だからな!」


ギルド長とステファニーが戻ってきた。少しの間、歓談して酒場を後にした。ステファニーはミニスカートを履いていて隣に来て何かと胸を押し当てて来たり触って来たが…


これは男をその気にさせる小悪魔の所業なのだろうか!そもそも女の子がどう思ってるか?なんて男にわかるはずも無い!勘違いしちゃダメだ!勘違いしちゃダメだ!自分を戒めるパインズであった


「ただいまー♪」


みんな帰ったあとだった


「ごめんね、遅くなって」


「気にしなくて良いよ。あの2人も冒険が楽しいみたいで無邪気にメルとマルに話してたよ。お金も見せてた」子供か!


「あの後、孤児院の周辺調査を頼んでたんだよ」


「孤児院!私も気になってた」


「なるべく子供達が読み書きを出来るように先生を付けてあげたくてさ」


「ところでパインズ女の人の匂いがするね」


「ギルドの受付が隣に居たからかな…お、お風呂入ろうよ」


「今日も街からたくさん来たよ。みんなパインズが居なくてガッカリはしてたけど盛り上がってた」


「昨日さぁプリシアの裸を見て思ったんだけどあんなに綺麗な身体をしてたら普通の男は興奮すると思うんだよね。だけど子供の頃から見慣れてるトリフ達はなにも感じないみたいなんだよ」


「パインズも興奮したの?」


「ティファごめん…めっちゃ興奮した。だけど、それは俺が女の人の身体を見慣れてないからなんだよね。住人が毎日ここに来るのも悪く無いんだけど、俺は落ち着かないし…ティファの身体は見られたくないし。街に風呂を作ってみようよ。んで、男湯、女湯ってわけよう」


「そしたらエルフ族の男子ももっと女性に好奇心を持つようになって久しぶりにみた女性の身体に興奮して繁殖力が上がる気がするんだよね」


「そんな事まで考えてあげてるの?」


「考えてると言うよりたまたまね…ふと思ったの。それにさ、森にはじめて行った時はあんなに閉鎖的だった住人達もここに来てからは他の種族の文化も普通に取り入れてる。それどころか、むしろ貪欲に他の世界に興味を示すようになったでしょ」


「そうだね。確かにトリフとプリシアも今日のダンジョン探索もとても楽しかったみたいだし、他の若手は羨ましがってるとも言ってた」


「はぁ風呂は良いなぁ♪今日はギターかぁ。エルフ族の音楽はやさしくて良いなぁ。落ち着く」


「パインズの為に夜は演奏係を決めているらしいよ」


「俺の為なんだ。なんか申し訳ないな。だけどそれならその気持ちに応えてもっと一族に貢献しなきゃな」


「もう充分だと思うけど」


今日も良い一日だった。充実した日々が過ぎていく




第十七話 従魔~神の使い


連日のダンジョン探索も順調に進み俺達は40階層に来ていた。金色の長剣を超えて進むのは気が引けたのでボスにアタックはしていないがトリフとプリシアのレベルも80を超えた。2人だけでももっと深くまで潜れそうだ。


※俺はグリフォンを仲間に出来ないか試してくる。2人はいつも通り頼む


※了解!了解です!


クールの話では意思を通わせるって言ってたよな。どの個体が良いかなぁ…お!あそこに大きいのが居るな


近づいて行くと足の爪を立てて蹴って攻撃して来た。軽く受け止める。意思かぁ…今の攻撃に敵意が無いのはわかったけど…俺を試したのかな。通わせる…がよくわからないからとりあえず話しかけてみるか…


「グリフォンさん俺さぁ君を仲間にしたいんだよね。どうしたらいいかな?」


当然返事はない


「乗せてくれないかな…君に乗って大空を飛び回りたいんだよ」


身体を低くして乗れと言っているようだ


「重たくない?掴んでも痛くない?」


起き上がった!俺はグリフォンの上


「たっかー!」


バサ!バサ!


「おー!飛んでくれるのか?」


バサ!ヒュー!


「飛んでる!飛んでるよー!そうだお前はフライだ!飛ぶって事だけど俺の独断で大空を統べる者って意味だ!フライ!乗せてくれてありがとうな」


※主様…私があなたの翼となりどこまでも飛びましょう!末永くよろしくお願いいたします


※こちらこそよろしくな!


「おーい!」


トリフとプリシアはキョロキョロしている


「おーい!ここだよー!」


※フライ!あの2人に見えるように旋回してくれ


「おぉ!パインズ!」


※良し!降りてくれ


バサ!バサ!


「すごいな!乗れてたな!」


「ニューリゾートに戻って色々試したい事がある!今日は終わりにしても良いか?」


「おまかせしますよ」


※あとで召喚するから少し待っていてくれ。あと大きくなって色も変わった気がするのだけど気のせいか?


※主様…気のせいではありませぬ。主の加護を受け、話も出来るよう進化しました。それに伴って身体も大きく色も黄金色になったのです


※そっか!わかった!ともかく少し待っててね


ともあれグリフォンを従魔にした、目標だった40階層までトリフもプリシアも来れるようになった。ニューリゾートも次の段階に移らなきゃな


家に戻った。今後の打ち合わせをする為夜は2人を呼んであるが1度解散した


「ティファ!ただいま?お腹はどうだ?」


「ここに生命が宿ってるのはわかるよ」


「パインズ様おかえりなさいませ」


「家事は任せて無理したらダメだよ」


「どうしたの?こんなに早く。そうだった!グリフォンを従魔にしたからクールに用があったんだ」


「クールならさっき果樹園に行ったよ。ぶどうの収穫が始まってるから」


※代表!近くにクール居ませんか?


※ちょうどクール様とふたりで居ます


「クール!少し相談があるんだよ」


「なんじゃ?あわてて」


「すぐにわかるから最古の世界樹の前に来て欲しいんだよ」


「わかった!すぐ行く!」


最古の世界樹


「こんにちは♪」「こんにちは♪」


たくさんの妖精が挨拶をしてくれる。ほぼ毎朝ここに遊びに来てた事もあって世界樹とも妖精とも仲良くなった。


「松よ!今日は随分と機嫌が良いのう。いい事でもあったのか?」


「レント!わかる?とてもいい事があったんだよ」


「松よ!用事とはなんじゃ?我を呼び出すとはお前もいい身分になったものじゃ」


「従魔が出来たからサモンゲートを使えるようにして欲しいんだよ」


「わかった!ほれこっちに来て頭を垂れろ」


クールの手が頭を掴む


「どうじゃ?」


「多分大丈夫!」


「ところで何と契約したのじゃ」


「俺の加護を受けて進化したらしいから今ここに連れてくるよ!サモンゲート!」


呼び出しに応じてフライが来た


「こいつはフライ!大空を統べる者だ!」


「おぉ!なんとグリフォンフェアリーではないか」


「久しいのう」


「レント様!創造主様!お久しゅうございます」


「なんだよー!みんな知り合いなのか?」


「松が知らんのは無理もないがこやつはグリフォンフェアリー我の眷属じゃ」


「ん?人族的に表現すると神様の使いって事か…フライ!お前凄いやつだったんだなー」


「主様…とんでもございません。それにただのグリフォンだった私に古の縁を繋いでこの姿にしてくれたのは他ならぬ松様でございます」


「それなら話が早い!ここに来たのはフライに乗る為に鞍を作って欲しいんだよ。レントとクールならフライに負担にならずに尚且つ誇らしく思えるような鞍を作れると思ってさ」


「レント!どうじゃ」


「それは松の頼みとあればお易い御用。妖精も加護を与える事でしょう」


「そうか、お前も松が好きじゃの…創造主様ほどではないですよ」


「レント!やめるのじゃ!」


クールはレントに触れる。姿は変わらないが一体になって行くような不思議な感覚。妖精が集まってきた。これは!まさに主の御心による奇跡なのか!


しばらくするとフライの背中に鞍が現れた。シンプルだがその滑らかなラインはなんともいえない美しい流線形を描き、所々ダイヤをあしらっている。もともと黄金に光り輝くフライが何倍も神々しい。


「出来たぞ。少なくとも何も無いよりは飛び続ける事ができよう!それに、もうそやつのような眷属は他には居ないが…もしも居たらその鞍を見るだけでひれ伏すだろうな」


「クール!レント!ありがとう!従魔って言い方が好きじゃなかったから…仲間でよいんだな!」


「松は相変わらずじゃの我らからみたらお前自身が奇跡なのじゃがの。人の世を住処とする時が来たとしても変わらないで居てくれよ」


「収穫が始まってるからフライに乗ってぶどうを取ってくるよ。クールはここにも祭壇のような物を作っといてよ。妖精さん達もレントもおお喜びするよな立派なやつをお願い」


「フライいくぞ!」


大空を舞う!フライも誇らしそうで楽しそうだ


「代表!ぶどうを少しわけてください!」キョロ


「ここですここー!上ですー!」


バサ!バサ!着地


「この生き物はなんですかな?」


と代表が言った所に、最年長のおばあさんが来た。泣いている


「おぉこれは神々しい!神の御使い様!伝説ではなく本当におられたのですね。ありがたやー!」


「この鳥がグリフォンフェアリーですか。神の御使い様!私が族の代表をしていますスイフにございます」


「エルフの皆も本来の使命にもどられたのですね。パインズと名乗っているこの方が我が主ですよ」


「名乗っているとは…」


「代表には言っとくか…この世界で違和感の無いようにパインズと名乗っているけど本当の名前は松って言うんだよ。創造主に笑われてさパインズって言ってる」


「なんとパインズ様は創造主様ともお知り合いなのですか…」


「多分みんなも知ってると思うけどそれはおいおい」


「お兄ちゃーん!」メルが走ってくる


※メルも乗せていいか?


※もちろんです。それにこの者は巫女ですね。なんとも懐かしい香りがする


「パインズ様ぶどうはこちらに」


「メルも乗るか?」


「良いのー♪乗せてー♪」


「じゃあおいで。その前の手摺をしっかり捕まえて落ちないようにしろよ。スイフありがとう」


「みんなまたあとで!」


羽ばたく優雅に!高く!


「メル!空はどうだ!凄い!気持ちいい!」


「そっか!それなら少し遠回りして行こうな」


「主様!メルは手摺を掴まなくとも落ちる事はありませんよ。主様も手綱を持たずとも落ちません。レント様と創造主様がそういう風に作ってくれています」


「お兄ちゃん!そういえばここにはじめて来た時と同じ気持ち!良くわからないけど懐かしい!」


「そうか」


バサ!バサ!


「いい神殿が出来たねぇ。これが初の収穫!」


「メル!お供えして」


「レント様それに妖精達!久しぶりだね。創造主様は数ヶ月ぶりでしょうか」


「そなたはメルか!久しいのう」


「メルー♪」「メル♪」


「妖精さんイタズラしてない?元気にしてた?」


「メル♪酷いよー!メルにはイタズラしてたけど他の人にはしないよぉ…」


「ははは♪レント様も妖精達もみんな変わらず元気なのですね!」


「松よ!そうじゃな、こやつが8つになったら長老達を説得して巫女にするかのぉ…まだ幼いから体力が持たんじゃろ。プリシアには事情を話して今のうちから体力をつけるんじゃ。魔力量を増やすようにな」


「わかった!夜は家に呼んであるからその時に言っとくよ」


「こんなに立派な神殿になったんだ毎日お供えに来させたいけど…街からは少し遠いな。クールさん♪そこで相談なんだけど…」


「なんじゃ!お前は我の使い方が荒いのう」


「ここまで道を作ってさその道にそって魔力で動く椅子のような箱のような物を付けてさ。街の住人がクールの神殿とレントの神殿を行き来出来るようにしてくれないか?そして今後の街の発展はこっちに向かって進むようにしようよ」


「わかった!道は我がやるから乗り物はレントが頼むな」


「あとお供え物はなにが良いの?」


「我は創造主様と同じじゃその時の恵とか気持ちを供えてくれる事で力の源となる。創造主様の神殿と同じじゃな。ただこいつらは贅沢での」


「松ー♪妖精は甘いお菓子が好きなのー♪」


「わかったわかった!必ず甘いお菓子はお供えするように言っとくよ」


「それと松!お主の刀や装備をお供えの台座の上に乗せよ」


「これでいいか?」


「よし!ではお前達もしっかりするんだぞ」


レントが光り妖精達がまとわりつく


「終わったぞ」


「ありがとう!漆黒の装備が光に照らすと淡く虹色に光るなぁ」


「鑑定してみよ!」


黒竜の刀(創造主の加護、世界樹の加護、妖精の加護、巫女の加護)


「おーーー!なんじゃこれは!フルラインナップじゃん!」


「効果は使ってみればわかる。刀と防具で加護の働きは違うからの…攻める物守る物、本来の武具のもつ用途に添って加護はついておるからの」


「なんかとてもとてもすごい事はわかる!クールもレントも妖精達もメルもありがとう」


「さて果樹園まで飛ぶけどクールはどうする?」


「そうじゃな道を作るくらい造作もないから一緒に果樹園まで飛ぼうかの」


「それじゃレントも妖精さんもまたねー!」


「フライ頼む!メルが前俺が真ん中クールは後ろな」


「では参りますぞ!」


とても高く大空を舞う!ゆっくりゆっくりと


「創造主様乗り心地はいかがですかな?」


「我が眷属の背中も良いものじゃな。我は創造主全てのはじまりにして全てを知る者なのじゃが…最近、松のおかげで人として存在するような不思議な感覚を得てな。本来空でも海中でも知らぬ物事は無いのじゃが…大空は気持ちいいのー!」


「メル!おじいちゃんが喜んでるぞ!」


「そうですね♪松様♪」


「お前まだ古の巫女の方のメルだったのか?」


「ふふふっ♪ではまた!」


「おじいちゃんが騒いでるー♪」


「そうだね♪おじいちゃんが子供みたいだね♪」


「松よ!我の威厳をかえすのじゃー!」


なんにしても騒がしいのは良い事だ…チャンチャン



第十八話 新たなる冒険


パインズの家の前


「ただいまー♪」


「おかえり♪それはグリフォンフェアリーじゃん契約したの?」


「契約と言うか…友達になった」


「パインズは誰とでもお友達なんだね」


「フライ!普段はここに居たら良いのだけど小屋のような物があった方が良い?」


「私の住処は神殿で良いですから気になさらずとも良いですよ」


「それならお供え物と一緒にフライの食べ物も運ばせるから何がいいかな?遠慮しないでね」


「自然に生活してる時はワームや木の実を食べておりましたが人が食べる肉やお菓子なる物にも興味はありますぞ!」


「肉は焼いた物を試食してみるか?」


ミノタウロスのステーキを与える


「おぉー!なんともこれは美味ですなぁ」


「調理してあっても大丈夫って事ね。飲み水は湖で良いな。そしたらステーキを中心に色んな食べ物を持っていくように行っとくよ。もうフライもここの住人なのだから遠慮なく暮らし、要望はなんでも言ってくれ」


「わかりました主様♪新たなる魂を授けていただきありがとうございます。では!」


「パインズー!」「パインズ様ー!」


「お兄ちゃーん!」


「おお!トリフ!プリシア!メルとマルも!」


「メルだけフライに乗ってずるいよー」


「ははは♪明日、マルも乗せてあげるから。おじいちゃんに乗せてーって頼んでおきな」


「メルのが先に乗ったもんねー♪お兄ちゃん!お空はとても広くてフライがキラキラ光ってて綺麗だったよー♪」


「ずるいなー」マルは少し拗ねた


「マル。そういう時は喜ばなきゃ、可愛い妹が楽しかったんだから」


「そうだね。僕もうれしい!」




第十八話 収穫祭~新生「華麗なる森の住人」


「お疲れ様♪子供達も居るし先にご飯にしようか。少し今日はゆっくりと今後の打ち合わせがしたいから」


「そうですね♪」


「わかった」


いつもと違う雰囲気に少しトリフとプリシアも緊張している。


「酔わなければ飲んで良いぞ!」


子供達はティファのお腹が気になるらしく「ここに赤ちゃんがいるの?」とか「私の妹か?弟が出来るのかな?」とか独特の発想が見ているだけで安らぐ


相手をするティファも「弟にはならないけど幼なじみにはなるのかなぁ」とか幸せそうに受け答えしている


なんにしても俺に出来る事はないから出てくる子供の事もティファの事も自分より大事にしようとだけ決めている


「さてお腹も落ち着いたな。クールとティファは子供達と遊んでてくれないか」


「急にかしこまってどうしたんだ」


「トリフもプリシアも一族の為に独立する時が来たと思ってるんだよ」


「パインズが離れるって事?」


「それもある。だがそれだけじゃない!」


「前から言ってたように若手を育成するとか、そういう事ですか?」


「それもある。まあ聞いてくれ。それとはじめに…お前達が稼いだお金はどうするつもりだ」


「たまに2人で話すんだけど…はじめはギルドからダンジョンに向かう街並みをみて、あの服はマルににあうんじゃない?とか…たまには贅沢にお出かけしたいねとか…話はした事があるのだけど」


「それはダメだよ!という事になったんですよ。パインズ様が居て私達が得たお金ですし。なんに使うにしても相談無しではダメだという事になりまして…」


「一族の繁栄の為に全部使おうと決めているんだ!」


「そっか…それがわかっているなら計画を話そう。はじめに自分達の事を考えるようなら、また一からトリフとプリシアの代わりを育てる必要があった」


「今、思うと2人が夫婦だった事も偶然ではなかったようだ。お金を持って欲しい物が手に入る状況にあって、一生懸命に葛藤した事は2人がほかの者の上に立つ時に大事な資質になるだろう」


「それがわかってるなら話が早い。独立してエルフ族だけでパーティを作れ!人選も人数も全て任せる」


「そんな日が来るとは思って覚悟してたよ。それでこちらからも相談がある。パーティのリーダーはプリシアで良いか?」


「良いと思うよ」プリシアが高揚しているな


「ここ数ヶ月パインズとプリシアと行動を共にして来たが、戦闘力でも考え方でも俺は遠く及ばない」


「それに元々エルフ族は女性がリーダーシップを取る種族なんだ。森の生活をすると決めた時に…女性を立てると外に出て他種族と争う心配や狭い森を捨ててでも広がりを作ろうとする心配があったので長老会議を温厚な男で固める事になったらしい」


「だからパインズ頼む!プリシアを戦士長に任命してくれ!」


「俺が任命するのか?長老会議が任命じゃダメなのか?」


「ダメなんだ。さっき話した理由で長老会議は抑えにはなっても改革者にはなれないんだよ」


「そうか、わかった。50人だろうと100人だろうとパーティ登録に関する事は俺が責任を持ってギルドと交渉しよう。収穫祭をお披露目の場とするのでそれまでに隊員の選別や長老会議の根回しは頼むな」


「あとメルの事なんだがな…エルフ族には古の巫女という創世の時代に創造主や世界樹、妖精に愛され人を模した使いがいたそうなのだが…何千年、何万年と言う時を超えてメルに宿ったらしいんだよ」


「ひとつには8歳になったら巫女として創造主の使いの役をして欲しいのだが俺に少し考えもあって、どのような形でも協力を頼めるか?」


「まさかうちの娘がそのような…」


「名前も古の巫女と同じらしいぞ」


「光栄です!全ておまかせしますのでよろしくお願いします」



収穫祭


収穫祭が開催になったオープニングはフルートの音色に包まれて始まる。華やかにエルフの女の子が踊り真ん中ではぶどうでいっぱいになった桶に入り、成人したばかりの男女が踏みながら踊っている


前世に見た事のある光景だ(汗)男は居なかったかな


フライは大空を舞い、今日は大盤振る舞いとティファも協力して世界中の料理がテーブルを埋めつくし酒も各地から取り揃えたあらゆる物がならんでいる


これにお金を使ったのかティファも協力してゲートで各地を訪れて揃えたようだ


妊婦さん!大丈夫ですか…


参加してる住人を見回した。一番端でクールが少し瞳を潤わせている


「どうしたの?クール!」


「なんじゃ突然!」


「いや…嬉しそうだなぁと思ってさ」


「我も今日は素直になるかの…そうじゃこの光景がまた見られる日が来るとは夢にも思わなんだのじゃ」


「創世の頃から同じなのか?」


「全く同じではないがの、エルフ族は長い寿命が幸いして、伝承や掟のような物は代々伝わっているのじゃよ」


「そっか。そんな感無量なクールに相談があるんだけどな」


「なんじゃ!またか…お前は使いが荒いのう。我は創造主!生命の根源にして、大地の親なるぞ」


「わかった!わかった!」


「まてまてまてまて…わしそんな扱いを受ける存在ではないのじゃがな(汗)」


「ははははははは♪」遠くでレントと妖精の笑い声が聞こえる。笑い声?爆笑しとるな


「それでお願い事なんだけどな、メルの事なんだけど8歳を迎えたら巫女にする。は、わかるんだけど…それだとどちらかの人格が出てくる事になるよね」


「そうじゃな古のメルが降りた時には今のメルは眠りにつく事になろうな」


「それを回避する為にさ、オートマタを古のメルの依り代にしてさ、今のメルを2代目の巫女にしてさ、両方を存在させる事は出来ないかな」


「不可能ではない!じゃが危険じゃぞ魂魄を剥がす必要があるから幼い今のメルに耐える事ができるかどうか…最悪の場合失敗すれば命にかかわるぞ」


「それはわかってるよ!だけどやって欲しいんだよ。ここの住人の想いがひとつになれば大丈夫だろ?あとその儀式の時にはクールも力を貸してね」


「貸すのは当然じゃが…なにをしたいのじゃ」


「フライもレントも妖精達も全て使って身分を明かして欲しいんだよ。いいじゃないか創造主がいつもそばに居る街があってもさ」


「我は不安じゃ」


「全部任せてくれよ。創造主の加護に溺れて世に害をなす者があれば俺が討つし、必要以上に祀る者あれば信仰心を俺が説く。頼むよ」


「わかった!松がそこまで言うのならやってよみう」


収穫祭も盛り上がりお開きの時間が近づいた。音楽もなりやみ、みんな注目している


「わしは皆の代表スイフである!枯れた森からはなれこの地に来た!そして今日は数百年ぶりの収穫祭である!」


エルフ族全員が高揚する


「森にいる時からつたなき代表であった。願いは聞き入れてやれず、安心も与えてやれなかった!今ここに宣言する!パインズ殿を長とし我が一族は赤子に至るまでパインズ殿に忠誠を誓うものとする!」


「うぉぉぉぉぉー!!!!」怒号が唸る


聞いてませんけどー!!!(汗)


クールの番が来た


「皆の者今スイフから話があった。我もパインズを長にする事を推す!」


「そして今から儀式を行う。パインズよ、来い」


舞台にあがる。そこにはオートマタが横たわっている


「信じるか?信じないか?は皆に任せよう。だが聞くのじゃ!我は創造主である!見せよう我のチカラを!」


クールが漆黒のドラゴンとなり大空に羽ばたく


「みんな聞いてください。僕の本当の名前は松と言います。異世界で亡くなり目が覚めた時に創造主の前に居ました。みんなの前ではクールというおじいちゃんですが彼は創造主なのです。気に入られた私は様々な加護をいただき本日までやってこれました」


「時には武力を貰い、時には便利なスキルを貰いました。この星が美しく優しい星になる為にエルフ族の森にも行きました。全ては今日この時の為なのです」


「創造主が喜びに湧き!最古の世界樹もチカラを得て、守護である精霊もこの地に戻りました。神の御使いであるグリフォンフェアリーも復活しました」


「元々みなさんはこの世界で唯一妖精に愛され創造主のお世話を許された種族なのです」


「その昔、地上から澱んだ毒素に汚染され創造主と言えども窮地が訪れました。その時に創造主を守る為に地上を浄化せんと立ち上がったのが皆様の祖先であり妖精達なのです!」


「残念ながら志し半ばで挫折しました。選ばれた種族や妖精と言えども多勢に無勢…そして森に隠れるように暮らしたのです。」


「エルフ族には唯一の存在古の巫女様がいらっしゃいます。ここにいるメルが巫女様のいまの姿になります。ですが僕はメルをメルとして巫女の跡取りとし、古の巫女も古のメルとして復活させたいのです」


「今からその儀式を行います。皆様の深い想いがなければ失敗するかもしれません」


「ですが僕は信じて居ます。皆様の気高き魂を!何者にも屈しない純粋な魂を!」


「協力してください。お願いします」


住人全員が手を合わせ祈りをささげる。そこには1点の濁り無く、ただ透明な想いに溢れている


住人の瞑った目でも感じるくらいの大きな光が全てを飲み込んで行く!


メルが起き上がる。「お兄ちゃん!」


オートマタが起き上がる


「どうぞ皆様お見知り置きを!エルフ族創世の巫女メルと言います。見てください!妖精が踊っています」


そこは無限に思えるような様々な色の光に包まれる妖精の祝福だった。レントが皆に礼を言い。クールは翼を休めいつものおじいちゃんになって戻ってきた。フライもならんでいる


「儀式は成功です!長にも任命されました!皆様が今のように純粋である限り星を守護し皆様もお守りすると約束しましょう」


年寄り連中は涙し、長老連中は頭をたれ、若手は歓喜している


「やー!」「わー!」「きゃー!」


声にならない歓声がこだまする


「みんな協力もありがとう!最後に任命式をします!プリシア前へ」


「はい!」


「今よりプリシアをエルフ族の戦士長とする!まずは戦力の底上げを目指し選抜メンバーによるパーティを編成する!パーティ名は華麗なる森の住人とする!」


「慎んで大役賜ります」


「まあ…気楽にな(笑)」


「以上を持って収穫祭を解散する!」


興奮さめやらぬ住人は終わる事のない酒宴を続けている俺は精も根も尽き果てて我が家の風呂に戻っていた


「松♪お疲れ様♪」


「正確にはね、楠木松之助って言うんだよ」


「素敵♪」


「クールがさぁ、無いわぁって…んでパインズ」


「お腹の子供は元気か?」


「松♪最近お腹を蹴るのですよ」


「へぇーそれなら話しかけたら聞こえるかな?パパですよー♪」


「ふふっ♪幸せだね」


「そうだな…とても…」


今日も星空に見守られ湖が祝福してくれる。遠くからは色んな楽器の音楽が流れ。1日の終わりと明日への決意をする松であった!




第十九話 古の巫女


レントの神殿へ来た。


「おはよう♪」


「今朝も早いのう松よ」


「俺は儀式と挨拶に疲れて早く帰ったからな。もしかしてそこで寝てるのは古のメルか?」


「住人と妖精と最後の一人になるまで遊んでおったからのさっき帰って来たが、寝てしまいおったの」


「ははは♪巫女と言えどもなんとも人間ぽいな」


「巫女は使いにして我らの意思を民に伝えるのが仕事じゃからそれで良いのじゃよ。そなたの武具に与えたように加護は持っておるがお前にも松様と言うじゃろ。あくまで人なんじゃよ」


「なるほどな。フライも寝てるのか…」


「メルを連れて来て一緒に寝とる」


「昨日は収穫祭も儀式も任命式もたくさんの行事もあったし俺は夢の中に居るようだったよ。レントもお疲れ様でした。そしてありがとう」


「礼を言うのは我らの方じゃ。お前のおかげでこの星を守護するのに全てが揃ったからな」


「レントはダンジョンや地上で起こる環境の変化は感じるの?」


「創造主様よりは生態系の変化には敏感かも知れぬな」


「そっか…それなら魔物のイレギュラーを感じたら教えてくれないか?」


「どうしたのじゃ?」


「今後の事だが…エルフ族は俺がいちいち気を回さなくともやれるだろ。それに団結力は凄まじい。こちらからなにを言わなくても相談に来て必要に応じて出るだけで問題無いと思う」


「そうじゃろうな」


「だけど地上には戦争もある。獣人族のように虐げられた部族も居れば、魔族のように領土拡大を虎視眈々と狙っている種族もいる。人族の国でも孤児も入れば欲にまみれた権力者もいる。」


「そうじゃな」


「クールは創造主としては別に星の生態系が魔物で覆い尽くされたとしても何億年という星の営みからしたら小事だと言っていた。それもわかる」


「だけど…昨日のクールを見たらそうは言ってもこの星が美しく優しい世界になる事の方が嬉しいだろうと感じたんだよ」


「お主の言う通りじゃ」


「それを俺が成し遂げると言うような傲慢な事を言っている訳ではないのだが、みんなに与えてもらった恩恵を思う時にこの生命ある限りそういう事を放置するようではいけないなと思ってるんだよ」


「それは創造主様も素質を見抜き、期待もして松に恩恵を与えたのじゃろうな」


「だからさ…少しづつしか出来ないと思うし俺に何ができるのかはわからないけど…頑張ってみるよ」


「松様は英雄様なのですね」


「メル!起きたのか」


「少しレント様とのやり取りを聞いておりました」


「英雄なんておこがましいよ。たださ、1人くらいそういう事に一生懸命なやつが居ても良いと思ってさ」


「私は古の巫女として心から世界が美しくなれば良いと願っておりますよ」


「わしもそうじゃ。松よ!そなたが思うようにやれば良い。道に迷った時は我らがいる事を思いだすのじゃ」


「と言う志のもとにさ、生態系が強く変化したら教えて欲しいと思ってさ」


「わかったぞ。しっかり見ておこう」


「ところで松様♪私は今後どのように生活すれば良いですか?」


「いや、逆にどうしたいか?ききたかったんだよ」


「ここに家を建てても良いけど寂しいでしょ?」


「街までの行き来はあの箱に乗れば楽にできるけど」


「私も地上の世界には興味があるのですよ」


「危険だからなぁ。古の巫女と言えども時や土地を学ぶ必要があるのはわかるけど」


「それもあります。ですが古の巫女と神格化されるよりも私も創造主様同様に人として肌で色んな事を味わいたいのですよ」


「あ!そういう事ね(汗)」


「そういう事ですよ♪ふふっ」


「それならとりあえず家はここに建てよう。起きてる間は街に居ればいい。あとはもうすぐエルフを連れて地上の世界の見学ツアーを考えているから必ず毎回参加させてやる。それでいいか?」


「はい♪松様の仰せのままに」


全然仰せのままじゃねぇけどな(汗)


メルも参加するならギルドカード貰わなきゃな、とりあえず新パーティのメンバーを見に行くか…


草原に集合している


「皆の者おはよう!私が新戦士長のプリシアだ!収穫祭の後みんな朝方まで騒いだろうがそんな事は関係ない!魔物も敵もこっちの事情など配慮してはくれん!今より訓練を行う!」


「各隊の隊長を紹介する。それぞれ前へ!」


「盾隊 隊長アーニャ!」「はい!」


「剣士隊 隊長メープル!」「はい!」


「弓隊 隊長トリフ!」「はい!」「尚トリフは副隊長も兼任する!」「よろしくお願いします!」


「最後に魔法隊 隊長プリメラ!」「はい!」


「以上の布陣で本日より毎日訓練に入る。適性を見た上でどの隊に所属するかを決めていく」


「槍使いは剣士隊所属とし盾隊は前衛のみならず後衛の守護に回る場合もある隊全体の守護者と心得よ!」


「番号!」「いち!」「に!」「さん!」「60!」


なかなかプリシアはハマってるなぁ…隊員もみんな寝不足のようだがだらけてはいない。整列も綺麗になされていて声も大きい。女性が多いのが目立つが筋肉質な女性も多くいるな。今はそっとしておこう


レントの神殿


「メル!」


「松様!どうされました」


「メルのギルドカードを作りたいんだよ。旅行で街に入る時に必要になる。プリシア達も本格的に訓練をはじめたからツアーも間も無く開催になるから下見をしておきたいしな」


「街に行くのですね♪」


「1度家に帰ってメルの服をティファに貰おう」


パインズの家


「ティファー!ただいまー!」


「どうしたの?」


「今から冒険者ギルドにメルの登録に行くんだけど冒険者風の服を出してあげて」


古の巫女といっても日本で言うような巫女の姿では無いが神官や魔法使いにしては格式高い姿なので可愛い服をチョイスしてもらった


「ティファも久しぶりに街に行く?もう安定期に入ったし散歩がてらどうだい?絡まれても戦闘はダメだよ」


「行くよ♪」


冒険者ギルド受付


朝に来るのははじめてだ。みんな依頼の掲示板に張り付いている。新人らしい人もたくさんいて初々しい


「おはようございます!ステファニーさん!」


「ギルド長居ますか?あと登録も1人するのでついでにそちらでしてもらっても良いですか?」


「わかりました!ギルド長室へはどうぞ」


ギルド長室


「ブロイさんおはようございます」


「連絡くれても良かったのに…パインズさん今日はどうされました?」


「1人登録と…ティファははじめてでしたかね?」


「ステファニーやガンツから話は聞いていましたがお会いするのははじめてです。ティファニー様お世話になりますギルド長のブロイです」


「こちらこそはじめましてパインズの妻のティファニーと申します。いつも主人がお世話になっております」


「んでこっちが冒険者登録するメルです」


「メル様よろしくお願いします」


ステファニーが来た


「メル様こちらに手を置いてください」


「はい」


「あとこちらに記入をお願いします」


「パインズ?」


「なんで疑問形やねん!」


「ん?空気よんだんだけど」


「確かにな」ティファは笑いをこらえている


「どう書けばよいの?」


「名前の所にメルって書いて、ジョブはそうだなぁ神官でいいんじゃないかな?」


「はーい!」


「では登録してきますね。あとパインズ様のカードもお貸しください。先日の買取料を入金します」


「ところでマスターこの前頼んだ件はどうですか?」


「はい…まだ調査中なので途中経過ですがパインズ様が言ったように孤児の為に寄付をもらっても教会本部が徴収して行くようです」


「やっぱりなぁ。マスター例えばさ孤児を引き取る事は出来るの?教会本部や貴族のヒモとか狙ってる闇の組織とか考えたら潰すにしても教会ってのが邪魔になるから孤児院を私設で作ってさ」


「あと孤児達に教育と仕事もさせたいんだ」


「商店なら私が紹介状を書きますので商業ギルドにパインズ様が登録なされば問題ありません。教育も教師をパインズ様が雇うのであれば問題ないです。ただ孤児院が許可制になっておりまして表向き子供を粗末に扱う者に渡さないって事で簡単に許可が降りないんですよ」


「まあ、ごもっともな話ですね。ではそこはブロイさんにおまかせするしかありませんね」


「私ですか?」


「ギルド本部に根回ししてギルドが孤児院の許可を取るとか…僕に許可が降りるように働きかけてくれるとか…手段は問いませんのでお願いします」


「はぁ…仕方ないですね」


「ところで魔石はいくらになりました?」


「出回ってない大きさでしたので名のある貴族が全員希望しましてオークションになりました。結果ギルドの手数料を引いてもひとつ金貨1000枚ですね」


「ギルドも良い収入になったなら良かったです」


「それはもう今月はダントツに1位になって表彰されますよ」


「おぉ!おめでとうございます」


「メル様こちらがギルドカードでございます」


「あと…調査は並行して進めてくれたら良いです。孤児院の件は急ぎでお願いします。あとね新しいパーティを登録したいのですが代表、副代表はプリシアとトリフなんだけど新規加入が60人程居るのですよ。戦闘力はさておき、最大規模のパーティになるとおもうので調整が必要でしょ?併せてお願いします」


「パインズ様の案件は大きいですね」


「ダメかい?」


「いえいえ喜んでいるのですよ」


「そうだ!もうひとつあるんだ。その新パーティのご褒美も兼ねて世界食べ歩きツアーを開催するんですよ。帝国も共和国も僕が食材を買うお店は決まってるんですけど。食堂や雑貨屋には行ったことがないので…その街独自の料理を出す店とか特産品や工芸品を売っているような店は知らないんですね。そこでギルドのネットワークを利用して情報収集して欲しいんですよ」


「観光客の定番から穴場までなるべく情報量が多いと助かります。年齢も幅広く楽しめる所があればより助かりますね」


「なるほど…わかりました。ご贔屓にして頂きありがとうございます。逆にパインズ様今日は少しお時間大丈夫ですか?」


「どれくらい?」


「それがさきほど共和国側の国境付近の街道にウルフの群れが出たと行商人から報告がありまして放置する訳にはいかないのですが今日依頼を出しても間に合わないなぁと困っていたんですよ。パインズ様なら何とかしてくれるかと」


「わかった共和国側の国境近くの街道ね。報酬は後日で良いから終了報告はペンダントにしてね。ここにまた戻るまでの時間は無いと思いますから」


「はい!充分です」


「それじゃ行くか」


「あ!カードお返ししますね」


俺達3人はギルドを出て王都の通用門に向かって歩いた


「へぇー街ってこんなに賑わってるんだね」


「メルははじめてだもんな、ティファも久しぶりだしこういう雰囲気好きだもんね」


「それにゲートを使わないで歩いてるのにはもうひとつ訳があるんだよ」


「え!なになに?」


「それはあとのお楽しみ」


通用門を出たいつも通らないからこんなに警備が厳重だと言う事をはじめて知った。出るだけで戻る事は無いから関係ないんだけど


俺達は通用門を出て城壁沿いを人気のない方に進んだ


「ここなら大丈夫だな。サモンゲート!」


「お呼びですか?主様!」


「さて今日は空の旅と行こう。ティファが先頭で真ん中俺でメルが後ろね!フライ頼む」


「かしこまりました」


フライが飛ぶ


「フライ!街道が見えるだろそれを西に行けばウルフの群れが居るはずだからそこを目指して飛んで欲しい。ティファのはじめての空だから慌てないで優雅に飛んでくれたら良いよ」


「ティファどうだ?」「凄い!凄いね!」


「メルも落ちる事はないけど俺にしっかり捕まるんだよ」


「地上の空はニューリゾートとはまた違うね」


「そうだな…太陽があるしな。今日は天気が良いけど雨も降るからな」


「主様…見えてまいりました」


「少し上空を旋回して!何匹居るか?先に索敵する」


「かしこまりました」


「あの街道沿いの森だなぁ30って所か」


先にブロイに連絡しよう


「ブロイ!聞こえる?」


「はいどうぞ」


「確かに街道沿いの森の入口に30匹程度の群れが居るな…討伐の証は必要なのか?」


「いえ信用してますのでドロップは全部お持ち帰りください。また終わったらその報告だけ頂けば」


「了解!わかったー」


「フライ!200mくらい手前の目立たない所に降りて」


バサ!バサ!


「サモンゲート!お疲れ様」


「ティファとメルは先に帰って。討伐はひとりでやってくる」


「はいわかりました。なんの問題も無いと思うけど一応気をつけて」


「ありがとう!それじゃ後でねー」「ゲート!」


ウルフの群れは問題ないけど襲われてる人が居ないか気をつけないとな


ウルフをひとつの点にして線を繋いでいく神速!刀は新しい加護のおかげで思った方向に自動補正される。すばしっこいのが逃げようとするが自分で剣先を変えなくても瞬時に刃が通る。ウルフ30体ほんの数秒の出来事だった。良いなぁ。防具も途中跳ねた石が飛んで来たから避けようとしたけど自動反射したな。黒竜の刀も持ち手が俺の握りに瞬時に変形してくれるし、むしろ包み込まれるようでこれだと滑る事も落とす事も絶対ないな。補正や反射、一体感。装備がワンランクもツーランクも上がった気がした


「ブロイさーん!終わったよー!襲われてる人も居なかったよー」


「もう終わりましたかありがとうございました」


「きっちり30頭だったよー群れの頭も普通のウルフ…上位種はなしでした」


「それではまた後日報酬を!」


ダンジョンのウルフに比べると平地のウルフはだいぶ動きも遅かったな。さ、帰ろ「ゲート」




第二十話 強いだけでは何もできない


数週間が経ったギルドに報告書を貰いに行く


「こんにちはステファニー」


「あら♪おはようございますパインズ様」


「各地の名所や有名な飲食店などの情報を頼んでいたんだけど報告書は出来てる?」


「はい!マスターが少し説明しながら渡したいそうなのでマスター室へどうぞ」


「ブロイさんこんにちはー♪」


「ご足労頂きありがとうございます。どうぞおかけください」


「報告書はこれ?」


「はい。こちらになります。目を通してわからない所があれば質問してください」


どれどれまず頼んで居た飲食店からだな比較的有名なレストランは王国の王都、帝国の帝都、共和国の首都みんな大都市に集中していて、街の食堂って感じのお勧めは第2番目や第3番目の街か、共和国の東の端、帝国の西の端、王国の南の端にはそれぞれ漁港があって観光地になっている。大きな滝があったり、砂漠や岩で出来たロックウォールもあるのか。各地のお祭りもほぼ全部紹介されている


「うん。わかりやすくまとめてくれてますね。では報酬はこちらから」とカードを出す


「少しお待ちください」とステファニーが受け取りに


「この前のウルフ討伐から差し引きしてあるので中身は増えてますからね」


「どうぞお待たせしました」カードを受け取る


「あと、パインズ様孤児院の件ですが調査は間も無く終わりますが、対応には少し数ヶ月の時間がかかりそうです。結局、金色の長剣には教会に出入りする者やその正体の追跡を頼みその人物についてはギルドで調査しました」


「そうですかそれでは報酬の支払いを」


「ガンツ達はこちらから行動の指示を出しましたので支払いはギルドから済ませてあります」


「ギルドに対する全体的な報酬は報告書を提出する時に頂けば良いのですが…少し闇が深いと言うか」


「あまり俺やガンツに知られたくない内容も含まれているって事?」


「そうですね絶対的な権力を皇帝が持つ帝国と違って我が王国の王位は小さい公国や大きな領土を持つ貴族から便宜上選ばれた要素もあって常に一枚岩とは行かないのです」


「そういった政治的統治の違いは理解している」


「ですのでギルドは国の管理下を離れ世界中の3カ国には属さず独立した機関と言う事にはなっていますが各国にはそれぞれの立場やしがらみのような物はありまして…」


「なるほど…まあマスターの話はだいたいわかった。対策はこっちでも考えてみるよ。それでは今日はこれで失礼します」


冒険者ギルドを後にして報告書を持って帰った


「ただいま」


「早かったわね。何かあった?」


「んー?大した事じゃないんだけど。権力者のしがらみと言うか…世界図書では調べられないような人の世界の内面の話」


「孤児院に絡んだ話なんだね」


「よくわかったね」


「顔を見ればわかりますよ」


「そうだ!いい話もあるんだよ。これが旅行の予定地の資料!ティファとメルが2人で行先を決めれば良いよ。少し多めに下見しに行こう3人で」


「そしたらメルを連れて来てこれから2人で楽しそうな所をいくつか選んでみるね」


「うんうん♪そうして中にはハズレもあるだろうけどその為の下見だから難しい事は考えなくて良いからね。気楽に見に行こう」


「わかった!あなたはどうするの」


「俺は少しレントの所に行ってくるよ」


「はーい!それじゃあこっちはやっとくー♪」


レントの神殿


「フライもここに居たのか…フライの食事は鳥肉はどうなの?抵抗あるの?」


「主様…私を鳥と言うのは主様だけです。同族食いのような事を心配されてるのでしょうが、私は神の御使いにございますればそのような事は気にしませぬ」


「そっか…んじゃこれ!最近王都で流行ってるらしいんだよ鶏の串焼き!食べるかなぁと思って一応持ってたんだ」


「主様…いつもありがとうございます」


「ははは♪気にするな」


「レント」


「どうしたのじゃ松よ、随分難しい顔をして」


「それがさぁ。王都の外れのスラムの入口辺りに教会があるんだけどそこが孤児院なんだよ。そこの孤児達にもう少しいい暮らしをさせたいんだが…ギルドの報告では様々な権力の狭間にあるらしくてさ」


「なるほどの…いっそ武力で制圧してはダメなのか」


「子供に伸びる魔の手は裏社会だからそれで良いけど…表の権力者まで武力制圧すると結局最後は国を滅ぼす事になるでしょ」


「まあ…そうかもしれんの」


「王様の技量や性質が国の民の安寧や豊かさに繋がると言う事は多少あったとしても…それでは頭が変わるだけで本当の解決にはならないよね?」


「そうじゃな、しばらくの間は良くなったように見えても次から次へと取って代わる者が現れて結局は今と大差ない事になるだろうな」


「それで少しどう手を打ったものかと悩んでるんだよ。レントなら長生きしてるから良い知恵でも持ってないかと相談に来たんだ」


「創造主様は生態系に干渉しないのがお立場であるからの…現状を知られたくない松の優しさもよくわかるぞ」


「まあ俺は勝手にどうにかしたいと思ってるだけで責任もなければ、変にテコ入れしないでそのままにしておいた方がいいのかもしれない」


「そうじゃの…松よ。いつかお前が言ってたように誰か1人くらいそういう事に目をつぶらずに改善を目指す者は必要じゃ。方向は間違えてないからそれは我慢する必要はないぞ」


「あとは対応についてじゃな。松よ。魔物との間に問題が発生すれば武力で滅ぼせば良い。それはお前一人でも世界中の魔物を全滅させる事も容易いかもしれん…お前もわかっておるじゃろ?」


「そうだなぁ今の所深層の番人という最強モンスターでも倒すのに困る事は無いからなぁ。魔族や悪魔がどんなか?わからないけど問題ないと思う」


「だがのお前は今までもそれをしなかったしこれからもせんじゃろ…トリフやプリシアにして来たように民を育て対抗する力を与えて行くじゃろう」


「多分…そうすると思う。1人のチカラには限界があるし…」


「それにトリフとプリシアに聞いておったでは無いかお金をどう使うつもりだと、一族の為に使うと言わなければ武力を与えないと」


「そうだね。確かに自分達の事しか考えなければ武器も取り上げて戦士長にする事もなかった」


「それじゃよ…1人でも滅ぼせるのに民に戦闘経験をつませその者達が自らの手で対抗出来るように育てた、そして方向を間違えずに育ったか確認しながら手を打った」


「そう言われて見ればそうだなぁ」


「人の世も同じじゃ一気に滅ぼせぬなら、コツコツと出来ることをやるしかないのじゃ、我は知恵はあっても具体的にどうすれば良いと言う事は教えられぬ。じゃがヒントは教えられよう」


「なるほどな!何となく見えてきたよ!ありがとう」


「この程度のアドバイスは容易い事じゃし…我を相談相手に選んでくれた事喜ばしく思うぞ」


子供に手を出した裏社会は滅ぼすとして教会はもっと内情を調査してウミを出すか…貴族階級のしがらみは場面を見てって感じかな


※パインズ!聞こえる?


※ティファか?どうした?


※だいたい選別したのですが…メルが早く1箇所でも多く行きたいと騒いでるのですよ


※とりあえずもどるよ


「ただいま」


「松様!早く行きましょう!」


「わかった!わかった!順番とか色々考えるからもう少しだけ待ってな」


「もう打ち合わせはじめてすぐにずーっとこんな感じなのよ。クールもそうだけどもう少し威厳のような物はないのかな」


「そうだな、それは俺も思ったけど…この感受性が人に類を見ない優しさに繋がりクールの今の姿が結局は創造主たる姿なんだよ」


「じっと箱の中で立場を見せ物にされて人に崇められても本来のチカラは発揮できないだろ」


「そういうもんか」


「実際はわからないけど…俺はそう思うようにしてる(笑)」


「さて今日はどこに行く?メルが1番行きたいのはどこだ」


「イースト共和国の首都トーキにあるこのお餅とかあんことか見たこともないお菓子が食べたいの」


「あぁ…それな」


「あとね帝都にあるパンケーキとクレープも食べたい!それと王都にも有名なクッキーとロールケーキのお店があって…」


「わかったわかった!とりあえず今日はその3箇所に行こ!ティファは体調は大丈夫か?」


「問題なし!全部食べる!2人分だし!」


たくましいなぁ女性陣(汗)ふきふき




第四巻に続く












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[良い点] とても良い小説で、愛は万能宇宙の神から来ています [気になる点] 私も夢追い人です [一言] お互いに理解して助けましょう!
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