創造主様と友達になりました【1】
第一話 出会いそして冒険のはじまり
これは…ドラゴンか?美しいなぁ…光沢のある漆黒の身体、ルビーのように赤く光り輝く瞳…そしてなによりもデカい
俺がなぜここに居るのかわから無いがとりあえず逃げよう
「まて人間!」
え、気づかれた?そんなに怖い顔で睨まれても、俺なんて美味しくありませんよ。聞こえないふりしてそっと…
「まて!聞いておるのか!」
完全に捕捉されたな、だけどここで食べられる訳にはいかない。と…いう気がする
口からブレスの炎がメラメラと漏れている…やばい
ええい!仕方ない
「は、はい?僕でしょうか?」
「他に誰がおる!」
「いや、探せばもしかすると…」
「貴様!舐めているのか!」
怒ってるよ。どうする?どうする?
「ひ!滅相もございません!」「ななんでしょうか」
「貴様はなぜここにいる?」
それは俺が知りたいんだよな。確か出張に行くのに飛行機に乗って気がついたら今に至るんだよな
「目覚めたら突然ここにいて…」
「そうか…異世界からの来訪者といった所か」
異世界転生なら憧れて居たので大喜びするのだけど…
「そ、そんな事がよくあるのですか?」
「あるわけが無かろう!」
ですよねー?と、言う事はこのドラゴンが閻魔大王って事なんだろうか?地獄に行くような人生では無かったはずだけど真面目に生きたくらいではダメだったのかなぁ。確かに有名でもなければ影響力もなく普通に優しい人生を送って来ただけだけど
「あのやっぱり、ここは地獄なのでしょうか?」
「地獄?地獄の定義がわからんが…人族の話に出てくる死後の世界みたいな物を言っているのならそれは違うぞ。貴様はまだ生きておる」
奈落の底と言うのが最も似合う場所…しかも相手はドラゴンだ。その気になれば一瞬で消し炭だろうな。じたばたしても仕方ないか?
「はじめましてドラゴン様、私は楠木松之助と申します。姓は楠木、名を松之助、松とお呼び下さい」
営業してる時から名乗るのは苦手なんだよな、曽祖父が付けたらしいが今時松之助ってさぁ…
「では松よ。もう一度聞くがなぜここにいる。人の辿り着ける場所ではないぞ。しかも武器も持たずそんな服装で、良く生きておったな。」
「それがですね?私も良くわからないのですよ。2023年の地球と言う星に居て飛行機と言う乗り物に乗って居たのですがおそらく事故にあい海の藻屑となったと思ったのですが。」
「なるほどのぉ。そなたのような存在を我も知らぬがわしはこの星の創造主である。」
聞く所によるとここはこの星の中心にあり無数にあるダンジョンの最下層にあたるらしい。この星自体の全ての生命力はこのドラゴンの持つ魔力で出来ていて長い時間を掛けて進化しながら今の生態系になったらしい…そう、ここは剣と魔法の世界!魔族や獣人族、エルフにドワーフ、魔物が闊歩し飛行する世界!異世界である!
「なんじゃ喜んでおるのか?」
異世界転生…これを喜ばずに居られるかー!好きだったなぁ異世界転生物、ラノベも漫画もアニメも片っ端から楽しんだもんなぁ…おかげで40過ぎても独身、仕事柄社交的ではあったけど趣味の時間を大事にし過ぎて孤独だったもんなぁ
「ありがとうございます。創造主様」
「礼には及ばん。我のチカラでここに呼んだ訳では無い。完全なイレギュラーじゃ。」
創造主様もなんとなく嬉しそうだな
「ところで私はこれからどうすれば良いのでしょうか?」
やっぱり魔王討伐とか魔物の脅威から街を救うとか使命があるのだろうか?
「好きにすれば良いのではないか?」
この世界は全ての生物、植物や家畜に至るまでレベルでステータス管理されているらしい。それぞれ職業に適したスキルも存在し商人なら鑑定やアイテムボックス、騎士なら剣術や弓術、魔術。富裕層には政策、平等と言ったような社会を構築する為のスキルを持って生まれるらしい。そして俺はと言うと
レベル1
HP10 MP10 ATK1 DFS1
スキル 未取得
なんでー?いきなり詰んでるー?ジタバタジタバタ。見事に初期ステータス。ドヤッ
これでは薬草もつめないのである
「あの…創造主様?私のステータスではここから出る事も出来ない気がするのですが。」
「そうみたいじゃな。しかしおぬしはステータスに表示されないSSR(精神力)は高いのだと思うぞ。我と話が出来るのは胆力あってこそじゃ。それにここに転生したのならまっすぐに生きてきた証じゃろ、心が醜い者には我を認識する事すら出来はせぬぞ」
SSR(精神力)というのは心の強さを示し向上心や正義感などの前向きな魂の事らしい
運は良かったって事か、それなら良いか♪
違う!違う!今はそんな話じゃない。この世界をこのステータスでどう生き抜くか?って話だ。今のままでは無数に繋がる階段のどこを登ってもそこで出会う魔物に瞬殺される
「あ、あの…創造主様?お願いを聞いて貰えたりはしないのですか?」
「良いぞ。スキルでもレベルでも武器でも欲しい物をなんでもひとつやろう」
何をもらうか…どれを貰ってもとりあえず生活するに困る事は無さそうだが…それでは面白くない。それにここはとても落ち着くし友達が居なかった俺でもこのドラゴンと離れたくないと思ってしまう。さすがに創造主という所か…
「では創造主様。私と友達になって創造主様の願いをひとつ私に与えてください」
せっかく温もりを感じたんだ。ならいっそこのドラゴンの役に立ってみようと努力するのも一興だな。友達なんて怒るのかな…それならそれでこの身を捧げよう
「面白いな人族の子よ!欲しい物をひとつやると言う我に対して我の願いをひとつと答えるか…面白いぞ!」
辺りが光で満たされていく、さらに明るくさらに熱く…どんどん強くなる。やがて光が全てを覆いそして消える
「なにをしたのですか?」
「我と松の魂を繋いだのじゃ。これで視覚、聴覚、味覚も痛覚も全て繋がった。創造主といってもここで数億年退屈しておったからの我も楽しみじゃ。言葉使いも親しい感じで良いぞ。お互いどこにいても念話が出来る。」
「なにか?やって欲しい事がある?言ってくれたらできるか?できないか?はわからないけどなんでも努力はするよ。あとなんて呼べばいい?」
「さしあたって頼みは無い。魂を繋いだって事は同じ生き物になったようなものだ。松が傷つけば我も傷つく二心同体じゃな。そのうち頼み事もできるだろう。呼び名じゃなぁ…そうだなクール!クールと呼んでくれ」
クール…かっこいいとか言う意味らしい…
って英語かよ!
「あと松?自分の名前も考えておいた方がいいぞ。この世界で松は無いわぁ」
いや俺が生きてた世界でも無いわぁだったんだけど…そのうち違和感のない名前を考えよう。どうせクールは俺を呼ぶ時、おい!とかお前!とか乱暴に呼ぶので慌てる事はない
「ところでクールさんや。とりあえず地上に行ってみようと思うのだけど装備は貰えませんか?」
「いいぞ、ほれ」
と言って腕を上げた所に宝箱が出てきた
「欲しい物を想像しながら箱を開けてみよ」
蓋を開けるとまばゆい光に一瞬照らされ装備一式がドロップした。どれどれ、黒竜の刀、黒竜の胸当て、肘あて、膝あて、靴にナックル。刀に切れない物はなく。防具に防げない攻撃はない。追加効果・装備者の基本ステータスを全て1000倍にする。ランク、レジェンド。装備者、松専用。
あれ?俺鑑定出来てる?
「それは鑑定ではなく我が鑑定した物を共有しただけじゃ」
て事はレベルもスキルも全部クールと共有出来るのか…チートにしても過ぎるなぁ。
「今後クールの能力は全部使えるって事か?」
「そうじゃな、我の意思にはなるがの。あとレベル・ステータスといった身体能力は我には無いから自分で鍛えるしかないぞ」
「装備ありがとう!そろそろ行くよ」
「もう聞きたい事はないのか?」
「意識は繋がっているんだし、わからない事があればその都度聞くよ。」
「それもそうじゃな」
「クールもなんでも気がついた事は言ってくれよ。俺達友達だろ!これからよろしく頼む」
「うむ」
さぁ…冒険の始まりだ。強い魔物にも遭遇するだろうけどクールも居るし大丈夫だろ。それに最高の装備も装着した。えいえいおー!
第二話 探索~楽園~採取(精製)
クールと離れ長く続く階段を登っている。レベルは1しかないのだが疲れない。生前の自分ならこの距離を登るには途中休憩を挟んでも遭難してもおかしくない
ステータスの恩恵か?身体が若くなっているのか?
ともかく軽くなった身体に喜びつつ階段を登る登る
上の方まで登るとクールは小さく見えるそして登り切った先からは明かりが溢れる
次の階は明るいのか?と不思議になった所でクールが話しかけて来た
「なにを戸惑っている?」
「いや明るくなってきたんだよ」
素直にと言っても思念が繋がっている以上お互い心に描いた事は理解できてしまう。嘘もつけなければ隠し事もできない。お互いに存在が異なるから思考回路は似ても似つかないだろうが念話をしてくるタイミングも内容もどうにも心地よい
「そうだな。では説明してやろう」
この星の中心に位置するのがクールの存在で全ての根源は創造主たるクールの魔力でまかなっている。その為中心に近づくにつれ濃い魔力に満たされていてその濃い魔力と汚染された魔力により進化したのがモンスターとなる。その為下層になればなるほど強いモンスターになるらしい。元々ダンジョンと呼ばれる空間も地上の大地に魔力供給する為のパイプのような通路だったそうだ。
魔力とは地球で言えばマグマのような物なのかもしれないな
モンスターと違い人族や魔族、獣人族。エルフやドワーフといった知能を持つ種族は耐性に個体差も個人差もあるものの基本的にはダンジョンに足を踏み入れると魔力酔いをするらしく環境になれながら攻略してくるそうだ。慣れれば生活も可能でダンジョン内にはいくつかの街もあるそうだ。
出会った時なぜここに居る?とクールに聞かれたのは、どうやって来たか?と言う事よりもなぜ生きていられる?という意味合いが強かったみたいだ。まぁ、なにを聞かれても答えは持っていないのだが…
到着だ
「おぉ〜♪」
世界樹のような大木があちらこちらに立っていてその周りには湖がひろがっている。森もある。空は雲ひとつない晴天で程よい光が差し込み大地は草花におおわれている。まさに楽園と言う言葉しか出て来ない
走り回る俺…
「凄いなぁ♪クール!」
「こんなに凄い場所があるんだなぁ」
興奮していると…
「なにを騒いでおる。ここが生命創造の領域リゾートであるぞ」
ここはモンスターも生息できないほどの魔力に満ちていて地上へ向けたフィルター的な役割を果たしている為、全ての植物や鉱石は生命の根源たるチカラを秘めているらしい。あかりも天井にある鉱石が発光して空のようにみえているそうだ。
「ひとまず探索するか!」
ここで刀の切れ味や防具の具合も知っておきたいし、さっきの鑑定のようなクールに借りる事ができるチカラも色々と学んでおきたい。これから無数のモンスターと戦うなら準備はやりすぎになる事はないだろう
まずは湖に近づき大地を布団に昼寝でもしよう
なんとも気持ち良いな♪ぽかぽかちょうど良い温度、優しい日差し、時折吹く風の心地良さ。
最高だ!それにこうしていると隣でクールも寝ているような感覚になる。時には同化し時には寄り添ってくれる。素敵な存在だな
「さてと…この水は飲めるのか?」
「その湖は世界樹の滴が溜まって出来たものだ飲んでみろ。」
と言うかこの水に写っているのが俺か?若いな15歳くらいか?それにイケ面だ。生前イケ面ならどんなに幸せか?と思ったもんだがそれはさておき、限りなく透明で少しひんやりするそれを口にした
「ぷはぁ!美味い」「クールも美味いか?」
なんとも不思議な感覚だがクールが喜んで居るのが良く解る
「そうか…クールにとっても初めての感覚なんだな」
「感想はどうだい?」
「そうじゃの、お前のようにチカラが溢れてくる感覚はないが…美味である。知識としてある事と触れる事は思念体のわしでも違うようじゃ」
新鮮に単純に感動している。創造主にも好奇心や向上心といったものがあるようだ。
なんにしても退屈そうだったから良かったな
「松よ、装備補正前のステータスを確認してみよ」
レベル1
HP100 MP100 ATK10 DFS10
スキル 異常耐性 自動回復 成長補正
なんですと!ステータス10倍、スキルも獲得している
世界樹さんありがとう
「所で松よ…お前の旅に同行するつもりだったのだが我はこれ以上は進めん」
「なんでだよ。」
「今わかったのじゃがここに来ただけでも魔物が少し騒いでおる。これ以上行けば生態系が変わってしまう。残念じゃがここを離れる時にお別れじゃ」
思念体にも魔力があるのか…
あからさまにがっかりしている。創造主と言えども自由が無いのは哀れだな、それに俺に出会わなければ思念体となって「水を飲む」という感覚すら得る事が無かったのにそれが申し訳ない
「ここと地上を自由に行き来する事はできないのか?」
「できなくは無いがなぜじゃ?」
「ここを拠点にすれば毎日あえるじゃないか」
「我は創造主。この星の守護者であり根源。元の場所に戻るだけじゃ気を使う事はない」
「クール。そうじゃないよ。俺が寂しいんだよ、友達でも家族でも兄弟でもなんでも良いのだよ。生前の俺は誰も信用出来なかった。はじめて損得や嘘の無い相手を見つけたのに離れたくないし、俺がしてあげられる事は限られているけど与えられるだけはいやなんだよ」
「変わったやつじゃな、だが嬉しいぞ。それならお前が考える能力を色々与えてやろう」
「オートマタは作れるの?」
「作れるがなぜじゃ?」
「この後ひとりきりでは何かと不便だから旅に仲間が欲しい、あとここに家を建てたりクールの思念体を移したり出来る器があれば便利だなと思ってさ」
「素材を集めれば可能じゃ。お前が採取すれば回収は我がしよう。切り離せば我が運べる」
そして鉱石、岩、森の木、適当に植物、手当り次第に切っていった。黒竜の刀はなんでも切れる、途中覚えた剣術スキルで斬撃を飛ばす事も出来るようになった。家の形を想像したりオートマタもイメージした。この世界を生き抜く為にあれば便利そうなスキルも色々考えていた。
「暗くなって来たな湖に戻るか」
「お帰りなさいませご主人様」
メイドさんが立っていた。家もある。想像したそのままが目の前にあった。ログハウスのように材木だけで出来ていて入ると広いリビングがありリビングには大きな調理台があるキッチン、書庫と寝室、こじんまりした夢のような家である。使用人も憧れのメイドさん黒い長髪に気品にあふれた顔、中肉中背の身体付き。オートマタとは言え話しかけるのに少し緊張する
「あの…クールさんや、この家やメイドさんは途中に俺が想像してたのを読んだのかな?」
恥ずかしい!恥ずかしいよー!
「なんか?すみません」
「気にするな我と松の仲ではないか」
無いわぁと言っていた「松」って名前も呼び慣れてクールは気に入ったらしい
「あと松が欲しいと思い描いた能力やスキルも持たせてあるぞ」
途中で即死レベルの負傷をしたらこの場所に飛んで回復するスキル「リボーン」。
どこからでも戻ってこれてまた認識出来る場所ならどこにでも行ける「ゲート」
オートマタには世界中のあらゆる事を認識伝達出来る「世界図書」無限に採取、収納が出来て。素材を変形合成、錬成、精製できる「世界収納」「世界生産」
「万能だなぁいわゆるチート生活の始まりか」
ん?クールが居ないな?
「クール!クール!」
「なんじゃ!慌てて」
家の中から声がした。入ってみるとでっかいおっさんが立っていた
「クールなのか?そんな感じにしたんだねw」
ちょっと地上に意識を飛ばして一番強そうな人間からイメージを貰ったらしい
「よし!我もこの身体を動かしてみたい。外で鍛錬するぞ、こい!」
強い…何度かかっていってもあっさりいなされ、殴られ蹴り飛ばされる。俺の打つ手を先読みされるのだから仕方ないがそれにしても強すぎる
「遅い遅い!そんな事では強いモンスターには勝てぬぞ」
スパルタだった。へばったらメイド姿のオートマタが世界樹の滴をぶっかけ回復させられる。そしてやられる。の繰り返しである
やがて朝が来て夜が来てまた朝が来た、何日たっただろうか身体は疲れる事もなければ傷もおわない。痛みだけが精神を削っていく…
このままではダメだ、もっと早く、なによりも早く
自身の思考をも超えた一撃、未来を切り裂くような光速を超える一撃
「うおー!!!」
当たった!やった!やったぞ!
「いててててて、やるではないか」
ふぅ…やっと一発当たった。はぁ両手広げて仰向けに寝転がる。なんとも清々しい
成し遂げたという充実感、いつ終わるかもわからない鍛錬からの開放感、成長を実感した満足感
経験した事の無い達成感である
「ご主人様お疲れ様でした」
メイドがタオルをくれる。そうだ湖に入ろう
「おーい!クール♪この湖は泳いでも大丈夫か?お前も来いよ」
おっさんとの水遊びも悪くない。メイドに作らせた水鉄砲でクールを攻撃する
「それはなんの技じゃ!」
と怒ったクールはブレスのように大量の水を噴射してきてすっとばされる
「ははははは♪気持ち良いな」
そして空を見上げて思う、これからどういう旅になるのだろうか…少しはこの星やクールの役に立つことは出来るのだろうか…
第三話 出発
リビングでクールと2人お茶を飲む
「メイドさんも座ったら?」
「失礼します」
「メイドさんでは申し訳ないから名前を付けなければな」
「私はオートマタです。ご主人様の道具です。防具や刀となにも変わらないので名前など」
「意思や心を持てるのか?それはわからないが相棒である事に違いはない、人として扱わせて欲しいんだよ。そうだなぁティファニー!ティファニーでどうだ♪ティファ♪うんいい響きだ」
「もったいない。有難く頂戴いたします」
「この世界の名前としておかしく無いよね?」
「一般的じゃな、ところで松よ。我との鍛錬でかなりレベルアップしておろう。確認せずとも良いのか?」
「そういえば鍛錬途中何度もブーストがかかったような感覚はあったな…ステータス!」
レベル150(装備有)ティファの主
HP15000(15000000) MP15000(15000000) ATK1500(1500000) DFS1500(1500000)
スキル 異常耐性 自動回復 成長補正 鑑定 ゲート リボーン
剣術 なぎ払い 神速切り
体術 光速突 防御補正 心眼 神速
魔法 未取得(全属性)
初期値にも成長率にも個人差があるみたいだが、俺の場合レベルがあがる毎に全ステータス10アップって感じか…スキルは経験によって得られるようだ。スキル項目は使用できるスキル名しか出て来ないが隠しレベルがあるようで俺は魔法以外はカンストしている
「クール…魔法についてと強いモンスターのレベルやステータスをしりたいのだけど」
「それは私が説明いたします。まず魔法ですが基本属性は4つ、風、火、水、土。になります。それに聖魔法と呼ばれる光を足したのが全属性になります。他に無属性の魔法もあるのですが身体強化や限界突破などスキルとして扱われています。取得条件は適正さえあればあとはイメージして発動するだけです。ご主人様ならすぐに使用できますよ。あと、モンスターの強さですが人もモンスターも植物等もレベル限界は100前後なのでご主人様が遅れを取ることは無いかと思われます」
「そっかそれならなにも問題ないな」
「その事じゃが松よ、お前は強いそれはこの世界では規格外な程にな。だが我はそれが心配なのじゃよ。地上では種族間の争いも耐えない、差別もある。王族や貴族など権力者もクズが多い。その中に行くにはお前は純粋過ぎるんじゃよ。ずる賢くなければやっていけないぞ。」
「ありがとうなクール心配してくれて、だけど俺はクールが作ったこの大地の為に頑張るよ。それに汚れた物を見て憤った時はここに帰ってくる場所もある。知恵はティファがくれる。それに利用されそうになる事も汚れた景色を見て憤るのも生きてる証だからな、俺は俺の持つ力でなにが?できるのかやってみるよ。それがクールに対して恩返しにもなるだろ」
「決意は硬そうだな…それなら止めはせんが、毎日じゃなくとも頻繁に帰ってくるのじゃぞ。あとその時はお土産も忘れんようにな」
「ティファ」「はいご主人様」
「このエリアの真ん中に黒いドラゴンの像をそしてそこを神殿に。あと鉱石や植物、世界樹の滴等地上の人々に役立つ薬や道具を作れるように大量に持っていて欲しい。それが出来たら出発だ!」
第四話 ダンジョン
準備も済んでこれからダンジョン攻略へ
はじめに一番強いモンスターに遭遇するのも変な感じではあるがそれは仕方ない。階段を登る道中ティファに教そわりながら進もう。
クールにはお土産の代わりと言ってはなんだがお風呂を作って貰うようにお願いして来た。やぱ戦闘で汚れた後は銭湯だもんなぁ…ご、ごめんなさい
長く続く階段で上を目指す
「ティファ…次の層はどんなモンスターが出てくるんだ?」
「創造主様の知恵の源から得た世界図書の記録によりますと体長30メートルくらいの様々なゴーレムですね。動きは早くありませんが魔法は効かず物理耐性が強くご主人様の刀も通るか?どうか?…やってみなければわかりません。」
「まさにダンジョン最深の番人と言う所か…倒して問題ないのか?」
「問題ありません。モンスターはリポップしますし数も多く生息していますので問題ありません。あとこれは、どの階層でもそうなのですが1対1の戦闘でご主人様が遅れを取ることはありませんが知能は無くとも群れで襲いかかって来ます。その点にはくれぐれもお気をつけください」
「ティファは戦えるのか?」
「私は最も硬い鉱石を材料に作られていますので傷をおうことは無いですが…攻撃するすべは持ちません。今後ご命令とあれば訓練しますけど…」
「それなら途中装備がドロップしたら装着して武器も色々試してみようか。あとダンジョン内では気配を悟られたくないから念話に切り替えよう」
「承知しました」
最深の番人の階層
凄い数のゴーレムだな、まさに番人
身体の形や材質、色や光沢も…ゴツゴツしたのからまるまるしたのや、宝石みたいに輝いてたり鱗や皮のような外見まで無数に生息している。
※ティファはここで待っていろ。俺が行く、魔法も試したいしな。効かない相手なら心置き無く練習台にできるしなw
※魔法のコツは?イメージはどうやればいい?
※そうですね。例えば火の玉をイメージして投げるとか炎の壁をイメージするとか…その事象の成り立ちではなく引き起こしたい現象そのものをイメージする事でご主人様ならば発動すると思います。わかりやすく魔法名を付けながらやるのもひとつの方法ですね
それを聞いて夢中になって打ちまくった
ウインドカッター!風の刃。インフェルノ!炎の大玉。水牢獄!。メテオドロップ!岩の塊を落下させるなど…一部のゴーレムにしか魔法はきかないが岩を落下させるような間接的な攻撃は有効であった。
途中ゴーレムに囲まれて殴られたら100メートルくらい飛ばされたが骨折まではしなかった。
「いてててて。油断した。」
「なぎ払い!」「神速切り!」
慌てて刀で斬り伏せたが頭や胸、腹や背中…どこかにある魔石を壊せば無力化する。砕くのはもったいない
気がしたので
「神速切り!」
魔石の無い部分に無数の斬撃を加え魔石を綺麗に抜いて回ったので思いの外時間がかかった
傷はティファに貰った世界樹の滴で作ったポーションで一瞬で回復したし…モンスター退治はなんの問題も無さそうだ。
そもそもこのポーションは死人を蘇らせるくらいの効き目があるらしいので、今後は人前で使う事を考えて他の草花から作った遅効性のポーションを傷薬と名ずけてティファに使うように指示した
「さて通行の邪魔になるのはあらかた片付いたな。魔石とドロップ品を集めてくれ」
ゴーレムの魔石は直径50センチくらいの球体で魔石の色も様々だった。ドロップに関してはレンガや短剣、盾に鎧ととてもバラエティに飛んでいた
「なんとなくダンジョンは理解したから1度戻ろうか慌てる事もないしな」
リゾートの家
「ただいまー。お風呂出来た?」
「バッチリじゃ!」
クールが作ってくれたお風呂は野外にあり、家よりも大きいひろさがあって3方しか囲っていない壁には手の込んだ彫刻が施されていた。お湯も元が世界樹の滴なので効能は温泉どころの騒ぎじゃない。シャワーはさすがに無いものの洗い場には掛け湯用の水路が上段に下段は排水と整備されていた。
「松のイメージ通りのはずだぞ」
「確かにそうなんだけど…汗」
なんでも通じてしまうのがまだこそばゆい
「今日は深層の番人の階層しか行ってないから、お土産はゴーレムがドロップしたお酒しかないけどあとで飲もうね」
嬉しそうに厳ついおっさんの姿をしたクールが笑うのをみて無邪気で可愛いと思ってしまった。
大浴場
壁に間接照明のような淡い灯りが欲しいな「ライト」天井は無いが星空が照らしてくれる
「ご主人様湯加減はどうですか?」ティファが来た
「お疲れ様♪」
心臓がバクバクしているが一緒に入りたいなぁと思ったのは自分なので平常心を装う
「私はご主人様の道具ですからどのように利用してくれても良いのですよ」
自分の理想の顔、髪、身体…理性を保つのに苦労した
「そ、そうだ。ステータスを確認しないとな」汗
レベル200(装備有)ティファの主
HP20000(20000000) MP20000(20000000)
ATK2000(2000000) DFS 2000(2000000)
スキル 異常耐性 自動回復 成長補正 鑑定 ゲート リボーン 魔法耐性 物理耐性 魔法障壁 物理障壁
剣術 なぎ払い 神速切り 神速連撃
体術 光速突 心眼 神速 部分強化 絶対防御
魔法 全属性威力上昇 効果上昇
ティファを大事にしたいと言う気持ちは相手がオートマタとはいえ俺は恋をしているのだ。理想の容姿にしちゃったからな…地上に出たら人族としてたまにはいちゃいちゃしてもらおうと決意する松であった…まてまてまてまて
リビング
ドロップした酒を注ぐ。ティファも飲食は楽しめるらしい。水魔法で作った氷をグラスに入れ、ティファがドロップアイテムを注ぐ
鑑定 アルコール レベル100 神様の涙 睡眠と睡眠による疲労回復を促す。
「美味い」
奥深い味わいでのど越しが良いのにキレもいい。口当たりの良いウイスキーといった感じか…いくらでも飲めそうだ。酒もレベル100にもなれば変な酔い方もしないらしくレベルの低い人族ならば一口で夢の世界へ行ってしまうらしい
風呂上がりにえも言われぬ美味い酒。となりにはティファがいて…向かえには友が居る。
「クール…ありがとう」
特に疲れたりはしないのだが…人と同じ生活を習慣にした方が良いと考え眠りにつく。クールは寝ないらしいのでドロップした酒はテーブルに並べておいて俺とティファは眠りについた。ティファを抱き枕にして寝るのはなんとも幸せだが…なんか?すみません
第五話 冒険者
本格的にダンジョン攻略を目指してティファと上層を目指した。深層の番人以降は定番モンスターのスライム、ゴブリンからオーク、スケルトンやゴースト、ウルフにアルミラージュ。エレファントやタイガーまで様々な魔物が生息していた。共通しているのは階層毎に同種族が生息している事と深層であればある程上位種が占有していて階層ボスとしての存在に最上位種が生息しているそんな感じだった。あと深層の番人の階層以降はワンフロアーではなく枝分かれしたダンジョンに繋がっていた。
「どの階段がどのダンジョンに繋がるか?はわからないからとりあえず適当に選ぶしかないなぁ…ティファはどの階段が良い?予感はない?」
「特にここが…は無いですけど見えている範囲で言えばどの階段に上がるのが一番強いモンスターが居る。と言うのはわかりますよ」
確かに俺も感じている。まだスキルとしては発現していないが番人を倒し終わる頃にはなんとなく強く気配を感じる程度の索敵が出来るようになっていた
これも攻略を進めたら手に入りそうだな
「ティファも成長するのか?」
「私はご主人様から恩恵を授かっていますので同じように成長できるようです」
「それなら俺の持つスキルやステータスも共有できる?」
「そうですね。装備をお借りする事は出来ませんが魔法も含んだスキルもレベルも共有する事は出来そうですね」
「それなら頼む。共有しよう」
「お待ちください」
と言って口づけをして来た「ん?」
どうやら遺伝子情報からコピーするらしい
まあ…良いのだけど。その免疫はないから…汗
「出来たか?」
「はい。あとは慣れが必要ですが使えそうです」
ティファに防御は必要ないので皮でおおわれていたゴーレムの素材で破れない丈夫なメイド服を作成させた。
「付与…魔法耐性、物理耐性」
一応見た目は大事だから靴もはかせカチューシャは頭部を守れるように魔法も付与した。傷付かないとは聞いているが安心感は大事だもんな。
「ティファ用の刀も製作してくれないか?素材は一番硬いのが良いかな?切れ味良くな…黒竜の刀が一番なら二番目になるようなやつを」
ティファはメイド服に刀を下げた。やけにかっこいい
「世界図書に着物の記録はある?」
「着物………ありますね」
「今度二人で袴姿の装いも作ろう。きっと似合うよ」
無駄話もほどほどに一番強く反応のある階段を登ってきたここのボスは…アルティメットミノタウロス。ボスを守るようにエンシェントミノタウロスが群れで生息している。数は2000~3000といった辺りか…
※ティファ…いけるか?
※了解しました。ご主人様
※よし!後方のフォローはする。肩慣らしにやってみろ!
群れの真ん中目掛けてティファが走る…ミノタウロスも慌ててオノを振り下ろす、軽くかわし群れの中へまだ走る。つられてミノタウロスが殴る、別のミノタウロスも蹴る、オノを振る、咆哮をあげる
15メートルはありそうなミノタウロスの群れの中に突っ込んだ。
「メテオライトニング!」
ティファを中心に雷鳴が怒号する。ひるんだミノタウロスを縫うように斬る!斬る!斬る!
フォローするように俺も外側のミノタウロスにウインドカッター!ファイアボール!ロックバレット!いつでも神速でかけよれるように足を踏ん張る
ティファはひとり舞うように斬る!飛ぶ!落下しながら真っ二つにする。
※落ち着いたら一旦下がれ!
ティファがこちらに駆け寄ってくる…
「インフェルノ!」「メテオドロップ!」
階層は静寂に包まれた
「助太刀ありがとうございますご主人様」
「いやあのままでもティファひとりで狩りきっただろうけど、効率良くと思ってな」
「お疲れ様♪どうだった?スキルや武器の加減は」
「問題ないように思います。ご主人様のチカラを使える事が私も嬉しく思います。常にひとつです」
恥ずかしいな…オートマタだからか?なんの躊躇もなく小っ恥ずかしい事を言うから赤くなるじゃん
「少し休んでから魔石とドロップ品の回収だけ頼むな。俺は少し散歩しながらこの階層の様子を見てくるよ」
先程の戦闘場所は開けた場所だったが迷路のようになっていてコケがひかり灯りをともす部屋や草木が生い茂った場所、水飲み場もあった。特に手を加えられたような場所は無いのでやはり知能はないのであろう
※ご主人様…回収が完了しました
※戻る!
「珍しいものはあったか?」
「そうですね。ドロップ品に肉の塊が多くありましたよ。あと角は高価な品物見たいですね。魔石は番人よりはだいぶ小さく30センチくらいでした」
ミノタウロスは牛だったからな?肉…よだれ
「そうか…アルティメット種と言うのが最上位モンスターみたいだな。この世界にはドラゴンは居ないのか?」
「そうですね。創造主様のようなドラゴンは生息しません。アースドラゴンやサラマンダーのように4足歩行するモンスターばかりです。空を飛べるのはワイバーンですがアルティメット種は存在しません。」
「なるほどな…リポップするにしてもあんまりモンスターを減らすのは良くない気がするからこれ以降は通行の妨害になるモンスターだけ仕留めるか…今日はできるだけスピード重視で進もう」
それからは階段を駆け上がり探知魔法で階段を見つけては一直線に進んだ。途中でティファの世界倉庫がカンストしてオート採集が備わった為さらにスピードを増しながら進んだ。出現するモンスターは交互に切り結び神速でほふっていった。
1000体近くは倒しただろうか階層にして70階くらい登ってきた頃、人の悲鳴やうめき声がなり響いた!
※ティファ、状況はわかるか?
※冒険者がここの階層主に挑んでボス部屋でやられてるみたいですね
※とりあえず助けるか…ティファは障壁を頼む!
40階層ボス、フェニックス!身体中が炎に包まれている為近接攻撃は難しい上に空を飛ぶ。魔法耐性も強く槍などの物理攻撃は有効だが動きが素早い。30名くらいのパーティが壊滅状態になっている。
俺はパーティのリーダーを探した。いたいた。
「冒険者さんお困りですか?助けましょうか?」
「なにを言っている。お前みたいなガキがかなう相手じゃねぇ!早く逃げろ!」
「落ち着いてください。」
※障壁は俺が代わる。ティファは傷薬で傷の手当と瀕死の者が居たらこっそり良い方のやつを飲ませてとりあえず救助するんだ
※了解しました
フェニックスが俺達目掛けて口からファイアボールを連打してくる。ビビるリーダーを見ながら障壁で防ぐ
「どうしますか?早く決めないと全滅しちゃいますよ?」
この世界のルールは知らないがダンジョンで獲物を横取りするのはルール違反だと思う
「わ、わかった!恩に着る。助けてくれ」
「ウォーターボール!」
激しく煙をあげながら苦しんでいる
「水牢獄!」
生命力の証でもある火を消され水中に閉じ込められてはフェニックスもなすすべが無い。討伐完了
「大丈夫ですか?」
「助かったよ。」
「いえいえ…お気になさらず。とりあえず部屋を出たらフェニックスの守り神グリフォンが群れで居たので、ここで治療して体制を整えましょう」
※ティファ、怪我人の数だけ世界収納からベットを出して寝かせよう。治療はどうだ?とりあえず急ぎだけ終わってるんだな?
※幸い傷は浅く火傷が多かったので傷薬を飲ませました。
※食料と飲料もいくらでもあるよな?
※はい、ここに居る30人を賄うくらいなら容易いかと
※そしたらテーブルを出して料理や飲み物を並べて。それからベンチも出してあげて。
※了解しました
「リーダーさんこんにちは、僕はパインズです。あっちは僕の仲間でティファニーと言います。危ない所でしたね」
リーダーが握手を求めながら話しかけてきた
「俺はガンツ。いや助かったよ。全滅寸前の所を助けてくれてありがとう。ひとつ聞いていいかい?」
「どうぞ、答えられる質問であれば答えます」
「ここはシュテルン王国の王都近くのダンジョンなのだが俺達は一応国で一番のパーティなんだよ。今日も未到達領域へのアタックだった。君たちはどこから来てくれたんだい?それに強さも桁違いだった」
この冒険者、クールの人型に似てるなぁ…この人を参考にしたのか
「話しても信じる事が出来ないだろうし…あんまり言いふらす事でも無いと思うので、たまたま縁あって救援に駆けつけたヒーローって事でどうですか?」(笑)
自分でヒーローって…ガンツさんも目が点になっている。
「そうだな冒険者が素性を根掘り葉掘り聞くのも無粋だな。とにかくありがとう。いつかこの借りは返すから貸しといてくれよ。」
「そんな事より薬も水も食料も置いてあります。ひとまず休憩してひと息ついてください。」
「そうさせてもらうよ。ありがとう」
※ティファ、ここを出た所にグリフォンがたくさん居るけど…グリフォンは乗り物にしたりできないの?
※そうですね。地上の山間に生息してるグリフォンなら可能かもしれませんがダンジョンのはどうでしょうか?私にもわかりません
※それなら今日のダンジョン探索はここまでにして帰ったらクールに聞いてみよ。あと帰る前に番人から酒をドロップさせて帰らないとなw
「ガンツさん、ここはいつ出発しますか?俺もティファも冒険者ギルドで登録しないと…まだ正式な冒険者じゃないんですよ」
「階層主のリポップにはまだ時間があるだろうからとにかく今日はここで休むよ。食料も水も薬もベットまで提供してもらったからな。しっかり回復するよ」
「んじゃ、明日の朝また合流しますね。街まで同行しますよ。僕とティファが先行した方が多分パーティの皆さんも楽に帰れると思うので」
「明日合流するって…どこに行くんだ?」
「ゲートで一度ホームに戻ります」
「そんなもんまで使えるのかよ…わかった。俺達は金色の長剣って言うんだ。一応俺がリーダーだ。他の者はまたそのうち紹介するよ」
その後ゲートで深層の番人から神様の涙を集めて帰宅した
「ただいまー♪クールお待たせ。退屈してた?」
「松よ。今帰ったのか、今日はどの辺まで登ったんじゃ?」
「今日は40階層のボス部屋で冒険者パーティが襲われてたから助けて、その後、神様の涙だけ取って戻ってきたよ。リーダーのガンツって人が今のクールにそっくりだったよ」
「イメージをもらったやつじゃな。強そうだったからなw」
「王都で一番の金色の長剣って言うパーティのリーダーらしいから冒険者としては一番なのかもな。冒険者らしい腹の無い良い人だったよ」
「なら良かったの、出会いは大切にするんじゃぞ」
どうも子供扱いされるのもこそばゆいけど、クールからしたら全ての生命は自分の子供なのだろうから仕方ないか
「あとさぁグリフォンを見かけたんだけどあれを飼い慣らして乗り物にできないの?」
「飼い慣らすと言うのは難しいと思うが知能の無い魔物でも意思は持っておる、松が望めば協力してくれるやつも居るかもな」
「なるほどね。酒飲んでていいよ。あとティファ世界図書で料理を調べて酒に合う料理を作ってみてよ。あとミノタウロスの肉は必須でね。俺は風呂に入るからさ」
ミノタウロスの肉、鑑定したらA5だった、ちょくちょく洒落が効いてるんだよな。「レベル管理じゃないんかーい!」って突っ込んじゃったもんな。クールの仕業なんだろうけどなw
風呂は良いなぁ、眺めも最高♪目の前に湖、空には星が輝き。身も心も癒される「ホッ」
気配を感じる…「ご主人様」
料理がはやすぎるのではー?まあティファが良いのなら、お、俺は嬉しいけど…
「今日は色々あったねー♪あ、俺は今日からパインズね。」
咄嗟の事で思わず松にしちゃったんだけど、そのままパインではなんか?可愛くなるからな
そして平和に夜はふけていく…
第六話 冒険者ギルド
「ん?ティファおはよう。」
「おはようございます。パインズ様」
「まだ早いし今日は冷えるな」
リゾートにも寒暖差はあるらしい
「少し自分の温度を上げてくれる?少しね」
ぬくぬく…ティファって抱き枕は最高なんだよな
暑いと体温を下げてくれるし、寒いと上げてくれる。裸で抱き合って寝るのもようやく慣れてきたけど欲望に飲まれそうになる事があるのが困るんだよな。ティファは察知して嬉しそうにどのように使ってくれてもって言ってくるんだけど、さすがにオートマタに欲情するのは背徳感が半端ないんだよなー。あと日に日にティファの意思を強く感じるようになってきたのだが気のせいかな
「さて、起きるか!」
クールはまたリビングで寝てんのかな?
俺達が居ない間は最下層に居るらしく、気配を感じたらもどってくるんだって。酒や料理は大変気に入ったらしくもう食事の喜びは手放せないらしい
「あとティファ今日から朝一緒に鍛錬しよう。」
俺と同じ強さなのだから鍛錬するには一番良い。
もはやそんなにレベルが上がったり大きな変化は無いだろうがスキル等新しい発見はあるかもしれないからな。あと、精神衛生的にも鍛錬は必要でしょ
カン!カカン!カン!カン!
激しく木刀が打ち合う
ビュン!シュッ!カン!
ティファの木刀が縦に鋭く切り込んでくる。紙一重でかわす。返す木刀が腹部に飛んでくる木刀を使ってすべらしながら弾く
ヒュン!
俺から蹴りをおみまいするがバックステップで避けられる
カン!
ティファの上段をいなしそのままの流れで肘を顔面に入れる。かわす。お互いが隙を見て斬り込む、同時に同じ手、お互い強く弾かれ数メートルづつ下がる
「ここまでにしよ。ティファ強いな、もう戦い方はすっかり馴染んだようだね」
「はい♪ご主人様。昨日の戦闘で感覚は掴みました」
「ティファもメイド服はやめて昨日みた冒険者みたく戦う衣装にしよう。あとご主人様もやめてパインズって呼び捨てで良い。最強コンビ結成だ」
ティファは少し抵抗があるようだったが従者をもつ身分でも無いので押し切った
ダンジョン40階層ボス部屋
「おはようございます。皆さんお加減はいかがですか?」
「よう!パインズ♪」ガンツが元気に声を掛ける
つられて昨日怪我してた人や疲弊仕切っていた人達が寄ってくる
「昨日はありがとう」「俺はシュバァ、俺はダンテ、私はシンディよ」
「いえいえ、元気になられたら良かったですね」
名前を言われても覚えられないよなぁ(汗)
「ところでパインズ、フェニックスのドロップを取っといたよ。魔石と魔法杖だ」
「それは差し上げます。」
「倒したのはお前なのにそれは出来ないよ」
「いいんですよ。あれだけやられたら消耗品は全部使い果たしたでしょうし、装備も手入れや修理が必要でしょ?パーティの維持費にしてください。その代わりと言ったらなんですが地上までの道のりは僕達2人が前衛でみなさんの道を作ります。遅れずについてきて欲しいのと、その道すがら倒すモンスターのドロップは全部頂いて良いでしょうか?収納のオートモードで勝手に収集しちゃうんですよ」
「了解した。うちもらしがあればそれだけ貰う」
「無いですよw」
では地上目指して行きましょう♪
ティファが家具類をさっさと片付け出発する
1日に10層のペース、2人なら1日で地上まで出ちゃえそうだがやはり大人数のパーティは非戦闘員も居て走っても足は早くない。体術、剣術を駆使しながら前後左右巧みな連携でうちもらすこと無くほふる。
「速い!」「凄い!」「強い!」
見ているパーティメンバーのあちこちから声が漏れる
手の内をあまり見せたくなかったがこのパーティならしがらみもないだろうと飛ばす飛ばす。
30階層
「インフェルノ!」
「メテオライトニング!」
「メテオドロップ!」
「ファイアウォール!」
魔法を連打する!通路のような狭い場所では剣術と体術。開けた場所では広範囲魔法。作戦など無くてもパインズとティファは呼応する…
「フラットアース!」
キャンプを貼れるように広場を平らにして確保する
やはり上層の魔物は弱い今日1日でも何体ほふっただろうか。経験値を取らせてあげたい気もするがパーティとしては既に装備も消耗品も底をついている。さすがにそれで戦闘は無謀が過ぎる
「お疲れ様でした♪」
ティファがさっさと家具を出し料理を出す
こちらがゲストの割には至れり尽くせりなのである
「パインズさんよぉ。全部狩られては俺達の仕事がないんだよ。」
クセの強そうなのがよってきた
どこのパーティにもこの手のやつは居るのだろう。特にガンツのように最強冒険者が作ったパーティなら自分のメリットだけを考えて加入する者は多いだろう。人は嫉妬と欲望には逆らえないと言うことか…
※ティファ、家具も料理も全部片付けろ!
「ガンツさん!俺達はここまでで。あとは俺達も勝手にするしそちらもご自由に」
「パインズどうしたんだよ?」
「どうもこうもないです。恩に着せる気はありませんがこちらは助けてあげてるんです。その恩人に対して文句を言うなんて、それは見過ごせません。それにここからなら楽に帰れるでしょ?」
「その事なら謝るよ。本人にも頭を下げさせるから」
「元々仲間でも何でもないです。寂しい言い方にはなるけど、感謝も出来ない人間に施す程僕は人間できていないので!また縁あればどこかで!」
※ティファ行くぞ
たわいもない一言である。聞こえないふりも出来た、適当にかわすことも出来た。だがパインズはそうしなかった。クールが作ったこの世界を大切にすると決めた時から王様であれ、貴族であれ、魔族や獣人族であれ利己的で醜悪な魂とは徹底的に戦い粉砕する決意をしていたからだ。
※今日中に地上に上がろう。2人なら1時間もあれば出るだろう。
※パインズ♪了解です♪
飛ばした。上層に来れば来るほど魔物は小型になって来たが群れはの個体数は増える。最速で走りながらファイアボール、ウインドカッター、ロックバレット小魔法を連発しながら突進していく。
地上
「夕日が綺麗だなぁ。ティファははじめて見る景色だろ?感想は?」
言葉にならず泣いている、まてまてまてまて
「そんなに感動したのか?」
「自分でもわからないけど涙が」(笑)
やぱ日に日に感情を持つようになってるよなぁ
「リゾートには夕日は無いもんな。俺も生まれ変わってはじめて見た夕日は忘れないだろうな」(笑)
「これからもよろしく頼むな。ティファ♪」
「急にどうしたの?」
「いや、なんとなく言いたくなったんだよ」
「ティファ、冒険者ギルドはどこだ?ひが沈む前に行かなきゃ。少し走るぞ、人に気をつけろ」
「先導します!」
冒険者ギルド受付
「間に合ったな」
「すみません。冒険者になりたいのですが」
「それではギルド証を発行しますのでこちらの魔道具に手を付けてください」
カード発券機のような平らな板の魔道具だ。それに手をおけば過去に他の街や村で問題を起こしてないか?最低限の冒険者適正はあるか?など全てわかるらしい
「はい♪おふたりとも合格です」
「あとはお名前を記入してジョブは自由に決めてください。特にジョブを決めたからといって何か?をする必要は無いので気楽にきめてもらって良いですよ」
「ちなみにジョブは何があるのですか?」
索敵、隠密にたけたアサシンや、前衛代表の剣士、盾士、格闘士。支援職や後衛アタッカーに魔法士等珍しい所では運搬士や作戦士と言ったような後方支援職まであった。俺達は一応剣士でいいかな
「2人とも剣士で良いです。」
「剣士2人のパーティはバランスが悪いですよ」
「魔法も使えますし格闘もできますし、2人とも器用な方なので大丈夫です」
「そうですか?パーティ登録はされますか?」
「した方が良いのですか?」
「そうですね…パーティのランクはありますが個人のランクもかわりません。但し依頼に大小ありましてパーティに対する依頼が出たりします。それがあるくらいで、パーティ毎にルールは自由ですしパーティの中の事はギルドでは管理しませんし…そうですね。名の通ったパーティに入ればどこの誰と言う時にわかりやすいとか…その程度でしょうか」
「それなら無しで大丈夫です。仲間を増やす気も無いですし2人が離れる事も無いので」
「仲良しさんなのですね」
「物心ついた時からずーっと一緒にいますので」
正確には数日前に生まれた時からだけどなw
「冒険者ランクはEランクからになります。Bランク以上になるとギルドからの指名依頼が行くようになります」
「ノルマはありますか?」
「特にないですね。街の事や非常事態には全冒険者に通達が行くので協力的だと好ましいです」
「魔石やドロップ品の買取はこちらですか?」
「魔石は大きさで値段が決まってるので余程量が多くない限りその場で買取します。ドロップ品に関しては鑑定士が査定してからの買取になりますので少し時間を頂きます。」
「登録したばかりですが、今、魔石の交換をお願いしても大丈夫ですか?」
「上に確認しますので少しお待ちください」
冒険者ギルドと言えばやぱ食堂や酒場が併設されてるんだな。雑音だけどこの騒がしい感じもみんな生きてるって感じがして心地よいな
言い合いしてる人、愚痴ってる人、なぐさめてる人、泣いてる人、稼ぎが良かったのか?楽しそうに飲んでる人、みんな頑張ってんなぁ♪
「お待たせしました。大丈夫ですのでお預かりします」
「ティファ♪小さい方から50個程出して」
世界収納に手を入れ取り出す
「これでお願いします」
「買取金額はこちらになります」
「ありがとうございました。またよろしくお願いしますね」
お金を受け取り冒険者ギルドを後にした
「意外と多かったなぁ」
銅貨100円、銀貨1000円、金貨10000円くらいの価値観だけど物価が安いので冒険者が宿屋生活をして食事代装備の手入れ代など全部入れても月に金貨15枚から20枚らしい。それを思うとゴブリンくらいの小型モンスターの魔石50個で金貨25枚は大金だな
「ティファ少し街を探索するか?多分メイン通りに行けば屋台もあるだろうし色んなお店があると思うよ。クールにお土産も買って帰らなきゃダメだしな。それかお土産だけ届けて今日は街の宿屋に泊まるのも良いかもよ。任せるから楽しんで」
程なく歩くと商店街に出た。屋台はこれからがメインのようで椅子やテーブルを並べている。八百屋や肉屋等は店じまいをはじめている。ちょうど昼営業と夜営業の間に居合わせたみたいだな
ティファも目をキラキラさせて街を隅々まで見ている。ただティファは欲しい物があるという事よりは生産スキル向上の為に知識として吸収している。の方がしっくり来た
※ギルドからつけられてるな
※はい。不愉快ですね
※まあ良いじゃないかw
と言いながら悪戯心が疼いた
※そこの路地を曲がるぞw
「おいおい兄ちゃん。偉いべっぴんさんを連れてるじゃねぇか…俺達にも貸してくれよ。あとさっきギルドで換金した金も置いていってもらおうか!」
5人に囲まれた
「お約束だな」
「てめぇビビってんのか?」
「どう思うんですか?お兄さん?」
※ティファ相手がかかってきたら周りの取り巻きから常識の範囲で無力化しろ
「どう思うかだと!舐めてんじゃねぇぞ!」
ティファが動く
まず一人目敵の背後から足の関節に蹴りを入れ倒す、すぐさま隣のヤツの顔面に拳。
「こいつ!」
殴りかかってきたやつの拳をかわし腹に膝蹴り。ナイフを抜いて来たヤツの腕を掴んで後ろに回し拘束。あとは俺の前の…脳天チョーップ!
「お兄さん達、恥ずかしくないのかい?」
「俺みたいなガキから女と金を取り上げようなんてさ」
とりあえずリーダー格のやつをギルドに引き渡すか
冒険者ギルド
「すみません!まだやってますか?」
「先程はどうも」
軽々足を引っ張って来たリーダー格の男を引き渡す
「5人組だったんだけど、ここからつけて来たみたいでさ。女を渡せだの金を渡せだの絡んで来たから掃除しましたよ。あとよろしくお願いします」
「それだけでは処分できないのでもう少し詳しく話を聞かせてくださいませんか?」
「処分できないならしなくて良いよ。さっきまで酒場で飲んでた人だし、常習犯だと思って連れてきただけです。俺みたいなガキ目掛けて狙って来たのを知ってて放置する他の冒険者にもギルドにもがっかりですよ。別に恨まれてもかまいませんし、しつこく向かって来ても僕達は問題ないので処分はご自由に」
「それでは失礼します」
ティファの言葉には殺気が乗っていた
「ティファ見てみ、地上の空には月もあるよ。まん丸輝いて綺麗だろ。ケチもついたし宿屋は今度にしてリゾートまで帰ろうか?」
「そうですね」
肩を抱きしめてニッコリ笑った
第七話 森の住人
今朝もティファとの鍛錬からはじまる
「もういっちょ!」
カン!カカン!
「ふぅ!」
「お疲れ様♪」
こうして毎朝、鍛錬している甲斐もあって日に日に戦闘時の連携も良くなっている。
冒険者ギルドで冒険者になり市民権を得た俺達はちょくちょく街へ出かけて人族の生活習慣を観察したり、ダンジョン探索で魔石を集めたりと言う日々を過ごしていた。特に気になったのは、戦争や冒険者の両親がダンジョンから戻らない等の理由で孤児も多く子供好きな俺とティファは教会に会いに行ってはお菓子を置いて喜ばれていた。ギルドが俺達を探しているらしい噂も耳にしたが捕まえた冒険者の事なら面倒なのでしばらくは近寄らない事にしている。
孤児の対策はダンジョンで得た膨大な魔石を換金すれば50人や100人の子供を世話するくらいは容易いのだが、教会もきな臭い所があり今は子供にお菓子と大人には食料を寄付する程度に留めている。
中でも子供はクッキーやチョコが好きでシスター達は肉を差し入れすると目の色が代わるのがなんとも人間らしくて親しみを感じるのだ。
「クールおはよう!」
クールもはじめのうちはたまに鍛錬に参加していたのだが戦闘経験は俺達の方が上なのでちょこちょこ攻撃が当たり出すと短気を起こして魔法をぶっぱなそうとするので環境保全の為朝食から合流している
「ティファ今日の朝ごはんはなに?」
「今日は柔らかく焼いたバターパンとベーコンとスクランブルエッグです。野菜も添えてあります」
食事はなるべく馴染みのあるメニューを頼んで居るがまだ米や味噌には出会っていない。大陸を東に行けば海に面した国にあるらしいがそのうち行こうと思っている。地上に出て移動するよりもランダムに階段を登れば色んな場所に繋がっている為、戦闘経験を積みながら出口を出たらその周辺の環境を観察している。ゲートも色んな所に行けるようになったので移動手段にも今の所困ってはいない。国同士の争いには冒険者不介入のルールがあり冒険者ギルドという組織は国籍を持たない。その為どこの国境も冒険者カードがあれば越えられるのだから便利なのだが各国共に名のある冒険者を召し抱えようとチカラを注いでいる。
ま、俺達はEランクだから蚊帳の外だけどね
「昨日風呂に入ってる時にふと思ったんだがこの世界でまだ音楽に出会って無いんだよなぁ」
「クールか?ティファはなにか?わかる?」
「そうじゃな、人族の国にはそのような風習はないな。」
「世界図書によりますとエルフ族は植物から楽器なる物を作ってお祭りで奏でたり歌もあるらしいですね」
へぇーエルフ族かぁ
「松よ。エルフ族に興味があるのか?」
そうだよなぁエルフ族のイメージと言えば長耳で絶世の美女ばかりってイメージだもんなぁ
「い、いや…エルフ族に興味があるんじゃなくて音が欲しいなぁって風呂で思ったんだよ。景色だけでも癒されるのだがここに音が加わればさらに良いなぁって」
「ほほう(じーっ)まあ良い。何にしても興味があるなら少し様子を見てきてくれないか?元々長寿なのだが繁殖力が弱く絶滅危惧種族なのだ。それに最近エルフの住む森に何やら異変があったようで反応が弱っておるのじゃよ」
「それは大変だなぁ」
「種族が淘汰され強い種族が残り弱い種族が絶滅する事は我からすれば大した問題ではないのじゃが。逆に誰かが助けたとしても一向にかまわん」
「そうなのか?」
「そらそうじゃよ。我はこの星の創造主にして守護者。極端に言えばダンジョンから出た魔物が地上を占領しても一向にかまわんのじゃ」
さすがに創造主ってところか…確かにクールの立場で言えば文明が栄えようと滅びようとどの生物が占有しようと小事でしかないわな…
「なるほどな。良くわかる話だったよ」
エルフ族は警戒心も強く他種族との交流もしない。ただ自然に溶け込み自然の中で生きてきた。繁殖力は弱く少数種族であるが長命の為、知恵者も多く魔法に関しては随一の才能を有するらしい。
とりあえずエルフ族が住むという森に行ってみようか。
エルフの森入口
矢の嵐
「立ち去れ!」
いきなり洗礼を受ける
「こちらに敵意はない!話は出来ないか?」
「何しに来た。次ははずさんぞ!」
「やってみればいい。その程度の矢が当たるのならな。複合障壁!」
矢は降り止まない。顔を出したのは一人だったが数十人隠れていたらしい。
ま、わかっていたけどね
数百の矢の雨が一段落した
「終わりですか?」
「くそ!一旦引くぞ。」
口笛と共にエルフ族の気配は消えていった。
第八話 森の住人2
「ティファ、矢は全部集めといてあげて。あとでもう一度会うだろうから返してあげよう。」
「はい♪」
最近なんか?ティファの感性が豊かになってくるんだよなぁ。特に子供と触れてる時も母性のような…あと俺が優しい気持ちの時には隣で嬉しそうにするんだよな。オートマタって内面は進化するのかなぁ
「あの程度の攻撃なら100人かかって来ても傷をおう事は無いだろうけど…逆に傷つけるといけないから索敵しながら早めに障壁を展開するか」
「私もそれが良いと思うよ。あなた♪」
ドキッ!なんなんだよ(汗)
歩みを進める
「結界が張ってあるな。どうする?」
「壊しても進めますし、少し回り道すれば継ぎ目もありますよ。私はどちらでも」
「いや、回り道する方で」(汗)
さらに進む。
この森…生命力が無いな。随分弱っている
「ティファ、森が弱るのは何が原因なんだ?」
「恐らくは近くのダンジョンが広がったのだと思います。魔力にはエルフ族は強い耐性を持つ為、元々この森は魔力を大量に貯えていたのだと思いますが、ダンジョンの変化による魔物の魔力汚染と竜脈の変化によって魔力不足になったのでしょう」
「そういう事があるのか…森の中央辺りに世界樹の子供のような大木があるようだけど、そこに滴を与えたら復活する?」
「一時的には可能です。ですが何日持つか」
「何にしても少し森を復活させてそれから長にでも相手してもらおうか」
エルフ族にとっては死活問題であった。生命の恵が今まさに失われそうなのである
冒険者から文句を言われた時は人族の醜い魂に反応しちゃったが、エルフ族からの攻撃にはそういう物を感じない。長年守って来たしきたりにただただ忠実なのだろう。気高いな
「お!見えてきたな家は浮かせてあるんだな。」
「エルフ族は大地を傷つける事はしません。ですので木の上に暮らして地面に生える草花の一本であっても生存の邪魔をしないと言った高潔な種族なのです」
それならパッときた若造に話もしてくれないわな
「こんにちは!みなさん僕達に敵意はありません。とりあえず今日の所は森の守護を少し元気にして帰りますね」
※ティファ、滴を頼む。あと矢もまとめて置いていってあげて
※はい♪
大量の世界樹の滴を根元に注ぐ
瞬く間に辺り一帯の森が息を吹き返した
「また来ます。とりあえず今日はこれで。ゲート」
2人が居なくなった後のエルフの森
長がみんなを集める
便宜上代表は居るが長は各世代に一人居て20代から90代まで8人の長で採決する。200年くらいの長命だが100を越えると引退するらしい
「あの人族は何が目的なんじゃ」
「そんなもの聞いてみないとわかるかい!」
「まあそらそうなんじゃが、みなどう思う」
森の入口で出迎えてくれた世代は早々と会談するべきと意見した。なぜなら俺達が害意を持っていれば既に森は跡形もなく蹂躙されていたと感じているからだ。
50代以上の長はそれに顔を歪めた
「代表聞いてください。我ら戦士一同は入口に警告しにいきました。何も出来ずに撤退を余儀無くされました。我らの放った大量の矢を先程置いていったのをみんな見たでしょ」
「確かに害意はなさそうじゃが尚の事、何故尋ねて来たのじゃ」
「彼らは森の守護に水を与え緑を復活して行きました。今にも枯れそうな我らの森に救いの手を差し伸べようとしているのでは無いでしょうか」
「だが相手は人族じゃ。長い長い我らの歴史の中でどれだけ人族に騙され裏切られた事か…そもそも人族が居なければ我らが森に結界を張ってこもる必要も無かったのじゃ」
「そうじゃ、人族がなんの見返りも求めずに我らに近づいてくるはずもなかろう。やつらはしたたかで恐ろしい」
「そうじゃな、今さらかかわりを持つ必要もなかろう」
「くっ!」若い長達は唇を噛んだ
第九話 森の住人3
今朝も鍛錬を終え汗を拭う
「さて!飯だ飯だー!」
「松は朝から元気じゃの?」
「エルフ族の件が上手くいかないんだよ。」
「上手くいかないから元気なのか?」
「そうさ!元気出してないとくじけるからな。クールにチカラは与えてもらった。この世界で起こる大抵の事は武力的には解決できるだろう…だけどそれはクールにとって問題の解決にはならない。確かに弱い種族が淘汰されていってもクールにとっては取るに足りない事かもしれない。だけど俺はこの星を差別や紛争のない優しい温もりで溢れた世界にしたいんだよ。それには俺は弱いし幼い。どこまでいってもただの若造なんだよw」
「なるほどのぉ…お前と出会った時に感じた輝きはそういう所にあるのかもしれんのう。」
「ところでティファ今日も行くぞ!子供が喜びそうなものを持っていこう。世界図書に竹とんぼってあるか?」
「無いねぇ。」
「竹はクマのモンスターがドロップしてたよな?」
「竹はあるよ」
「んじゃ、今ひとつ作るから世界生産で作れるようにしてくれ。あとお菓子もたくさん持っていこう」
「そのような事で何か?かわるの?」
「そんな事はわからんさ。だけど種族は違えど同じ人だからな。そのうち心も通じるさ」
「ゲート」村の真ん中に来た
「また少し世界樹の滴をまこうか」
「わかった」
「確か昨日俺達を覗いてた子供が何人か?いたんだよなぁ」
「パインズも気がついていたの?それでおもちゃとお菓子なのね」
「そうそう…あ!いたいた」
※竹と特級のナイフを出してくれ
※私もやっていい?
※もちろんさ
地べたに座り竹トンボを作りはじめる。ティファは細かい作業に慣れないせいか少し不器用な所が可愛い
竹をわり削っていると興味津々な子供達はそろ~と近づいてくる。目が合うとささっと隠れる
出来上がった竹トンボを飛ばす。拾い上げ微調整をする。子供達は飛んだ竹トンボを見てさらに好奇心を爆発させる
大人達も遠目に探って居るのだろうが特に何も言って来ない。森を元気にした事に関しては感謝してくれて居るようだ。
子供の方を見てちょいちょいって手招きしてみた。
恐る恐る近づいてくる。ティファの背中に隠れるように傍に来た。ティファも優しい笑顔を子供に向けている。
「飛ばして見るか?」
「いいの?」
「良いよ。両手に挟んで手を擦れば回転して飛ぶんだよ」
「それ!」
エルフ族の年齢がわからないが…5、6歳だろうか、上手いもんだ。
それを見ていた他の子供も走りよってきた
「お兄さん、お姉さん。僕達にもやらせて」
ティファが収納から人数分取り出す。
はじめの子が話しかけてきた
「お兄さん、僕に作り方を教えてくれない?病気の妹にも作ってあげたいんだよ」
「わかったぞー。でもそれは少し待ってね。その前に…みんなお菓子をあげよう」
と見せびらかす。みんな目をまん丸にして欲しそうにしている。ここでは見た事も無い食べ物だ
「食べたい人はお父さんか?お母さんを連れておいで。親が良いよって言ったらあげるからね。たくさんあるよー♪」
一目散に走り出す
しばらくすると戸惑いながら子供に手を引かれた母親達が子供と一緒に集まってきた。20人くらいの人だかりになっただろうか。一番最後に妹が病気と言った男の子が昨日入口で攻撃してきた戦士を連れて来た
ティファと一緒にこれみよがしにお菓子をほおばる
「甘くて美味しいよー♪」
子供のみならず母親達も興味津々である。そちらの相手はティファに任せる。女の人と子供は甘い物に目が無い。びっくりするくらいハイテンションだ
「ほんとだー!あまーい!」
「こんなお菓子があるんですねぇ!」
やたらと盛り上がっている。俺は戦士とその子供の相手をする
「お菓子あげていいかい?」
「す、すまん。あと昨日はいきなり矢を射ってすまなかった」
「気にする事ないよ。それぞれ立場も使命もある」
「お兄さん!このお菓子美味しいねー。メルにも食べさせてあげたい。」
「さっき言ってた病気の妹はメルちゃんって言うのかい?あとであげるから安心しな」
「俺はエルフ族の戦士トリフだ。息子はマルだ。何から何まですまん。」
「俺はパインズ、細かい事は気にしなくていいよ。それはそうとこのおもちゃは竹トンボと言うんだが妹に作ってあげたいらしいんだよ。材料とナイフもあげて良いか?危ないか?」
「それは大丈夫だ。ドワーフが鍛治に精通してるのと同じで我らエルフ族は工芸に精通している。子供でもナイフで怪我をするような事は無いが…もしかしてナイフってそれか?」
「あぁ」
「そんな高価なナイフはさすがに貰えない」
「気にするなよ。ダンジョンで拾ったドロップ品だ」
「それにお前が腰に下げてる刀とてつもなく価値のあるものだな」
「わかるのか?」
「あぁ誰がみてもわかるだろ。昨日の戦闘をみても只者ではないオーラを身にまとっていた」
「強いだけならなんの価値もないよ。その強さで何を成し遂げるか?そっちの方が大事だろ」
「お前のような人族も居るのだな。先人達の話では人族は醜く他種族を騙し裏切ると聞いている」
「人族同士でもやってるしな。ところでトリフは何歳なんだ?」
「29だ。若手の長で戦士をしている」
げっあんまりかわらないと思ってたのにそんなに歳上なのかよ
「そ、そうなんですね…トリフさん。先程娘さんが病気とお聞きしたのですが少しみてあげましょうか?」(冷や汗ダラダラ)
「なんだ急に丁寧に話して。そうだなここで話すのは他の長の手前もある。うちに来てくれ」
※俺はこの戦士の家に行く。そっちが終わったらティファも俺の気配を辿って合流出来るか?
※了解。あと食べ物の話が尽きないんだけど話の成り行きで肉や果物をあげてもいい
※食料でも酒でも大盤振る舞いしてあげな。見た所、ここの所森も枯れてたし禁欲生活してたんだろ。時間を忘れて遊べば良いよ。ティファも楽しんでな♪病人を見てくるから世界樹の滴を投げてくれるか?
飛んで来た小瓶を受け取る
※ありがとう。そしたらあとよろしくな
「トリフさん行きましょう」
「だから言葉使いがさぁ」
トリフの家
「お邪魔します」
「人族は人の家に入る時そういうのか?」
「人族と言うか…僕のクセで」
竹とナイフをマルに渡し頑張って作るように促した。
「メルの病気の原因はわかってるの?」
「年配の長達の話では森がチカラを失った事と関係ありそうだって言っているがはっきりした原因はわからないんだ」
メルは一族の中でも大きな魔力と素質を持って生まれて来たのだろう。故に環境が汚染された事に反応して自らも伏せったようだ
「薬…飲ませてみますか?鑑定スキル持ちが村に居るなら見せにいってくれていいですよ」
小瓶を奥さんに渡す
「父上なら鑑定できるだろ、見せて来い」
トリフは代表の息子らしい
「パインズすまんな。疑ってる訳では無いんだ。ただ親としての責任でどのような物を与えるかを知っておきたいんだ」
「わかってるって」
メルちゃんは一日の大半を眠って過ごしているらしい。眠りにつく時間も森が弱るのと比例して長くなったそうだ。昨日俺達が森を蘇らせた事で夜は珍しく元気に話をしたと言う
だだだだだだ!トリフの奥さんが走って来た
「あなた!これ世界樹の滴らしいよ」
「なんだって!なぜそんな物があるんだ」
「それは良いじゃないか。それよりも薬として合格か?不合格か?」
「なにを言っている世界樹の滴に治せぬ病気などない!」
「じゃぁ遠慮なくどうぞ」
メルを座らせて飲ませた。少ししてメルの顔にみるみる血の気が戻って来て
「お父さん!お母さん!身体が軽くなったよ!なんか?嫌なものに覆われてる感じだったのが晴れ渡った!」
泣きながら俺の手を取るトリフと奥さん
「ありがとう!パインズ!ありがとう」
「ありがとうございました、ありがとうご…」
声にならない
そこにティファが合流して来た
「上手く効いたの?」
「あぁ…もう大丈夫だ。すっかり良くなった」
「そっちはどうだった?」
「大変だったよ。作り方を教えてくれとか砂糖をくれとか…酒も気に入ってゴクゴク呑んじゃうし」
「ははははは♪盛り上がったなら良かったじゃないかーw」
「パインズ!何から何までほんとにありがとう。パインズの目的がわからないが今からもう一度他の長に掛け合って会談の場を設けるよ」
「トリフさん。明日にしましょう。今日は帰ります。それと言っておいてください。俺はメルの病気の原因も森が枯れた原因も知っていると」
「なぜ知っている?」
「それは…誰とは言えないのだがこの世界の事ならなんでも知ってる人から聞いたからなのだけど…まあ明日になれば全てわかりますよ」
「お兄ちゃん見てー!」
とメルの為に作った竹トンボをマルが見せに来た。メルの為に飛ばしてやると嬉しそうにメルは竹トンボを追いかけた
「じゃあまた明日ね」
軽い充実感をティファと共有し「ゲート」で帰路についた
第十話 長老会議
風呂に入っている。ひと際輝く満天の星空。遅れてティファが来る。
「今日も色々あったなー」
「パインズ♪私自分の子供が欲しくなっちゃった」
「さすがにそれは無理じゃないか?」
「創造主様に頼んだらなんとかならないかなぁ」
「どうだろ?確かにこの前神殿のドラゴンを飛ばして遊んでたし、クールならなんでも出来るかもしれないけど」
「それに私、最近感動したり悲しかったり嬉しかったりオートマタとして生を受けた時に比べると心が進化したと言うか、もともと備わってた意思がパインズと行動を共にする事で変わった気がするの」
「それは俺も一緒にいて感じてたけど」
「いや?」
「嫌じゃないよ」
「私ね、はじめはパインズの意思を汲んで、それにしたがう事が存在意義だったから…お風呂を一緒に入りたいって言うことも一緒に寝たいって言う事も指示に従う事だったんだけど、今は私が入りたいと思うし目が覚めた時にパインズが居ないと寂しいと思うようになったんだよ。それに今日みたいにパインズが優しい笑顔で子供達と遊んでいると私も心が温かくなるんだよね」
「ふ~ん。不思議な事もあるねぇ。何にしても俺は元々ティファの事は仲間として接して来たしオートマタだろうと人間だろうと何も変わらないけど。クールに相談してみたら?」
「あとで聞いてみるね」
「それより見てティファ…空が綺麗だよ」
「ほんとだね」
突然のカミングアウトに少し戸惑いは隠せなかったが元々オートマタのティファにも恋心のような物はあったから…ティファが思うようにすれば良いかな
食卓
「あーいいお湯だったー。クールは入らないの?」
「我も入っておるぞ、我は昼に入るのが好きなのじゃ。昼の日差しとそよ風の中で風呂に入りながら酒を飲むのがお気に入りじゃ」
随分俗世間の習慣に染まった創造主だとは思ったがそれはそれで健康的なのかな
「所でさぁ…エルフ族を保護したいんだけど、ここに連れてくるのは無理かな?」
「なぜじゃ?」
「一番は絶滅させたくないと思ってるんだけど、結局違う森を探しても今回のように環境が変化する可能性があるし…あれだけ閉鎖的だと森が枯れても自分達で新天地を探して移住しようとせずに最後まで故郷の森と生涯を共にしようとすると思うんだよね。あとメルって言う病気の少女が居たのだけど彼女を見てるとエルフ族がもつクールとの古の血脈みたいな物を感じてさ。ここでも生きられると思うんだよ」
「良く気がついたの、松。確かに創世の時代にこの場所を整備し管理していたのはエルフ族と妖精達なのじゃ。地上に住まう奴らが自分達の生活を便利にする為森林は伐採、発生する毒素は垂れ流ししおってのそれが原因で大量のダンジョンが発生した。そのあと地中の汚れた魔力を浴びた者共がモンスターになったのじゃ。その時は我も危うくなっての、ここに暮らして居たエルフ族と妖精は我を助ける為に地上に出たのじゃよ。おそらくそのメルという娘はこの地に深い縁をもつ者やもしれぬな」
「そんな事があったのか。多分明日エルフ族の長老会議に参加する事になると思うんだけど長老をみな屋敷に連れて来ても良いか?」
「松のする事じゃ我はかまわんよ」
「そっか♪ありがとう。あとなティファが俺の子供を産みたいから人族になりたいらしいんだけど、本人からなんか?言ってくると思うから聞いてやって」
「あいわかった。やつにも自我が芽生えて来とるからな。当然の成り行きじゃろ」
クールから様々な話を聞き決意した。ここにエルフ族の村を作り保護しよう
次の日
今朝はひとりで軽めの鍛錬をした。ティファとクールが話をすると思ったからだ。それと、ティファが人族の女の子になるかもしれないと考えると集中できない気がして。いくら仲間とは言え女の子に攻撃は出来ないのである。
「さて行くか!」
「少し待ってー!」
ティファが遅れるなんて珍しい…
「どうした?」
出て来たティファに視線を奪われた。エルフ族を招くと聞いて接待用のドレスを来て出てきたのだ。ティファの勝負服といった所だろうか
「似合ってるな」
「少し恥ずかしいけど長老会議を圧倒するなら必要でしょ。パインズはいつも通りでも夫人はそれ相応の服装で行かなきゃ」
夫人なぁ(汗)まあ…良いんだよ。良いんだけどさ
「ティファの心に感謝する!ありがとう」
「ゲート!」
エルフ族の村の広場に到着すると長老会議は待っていた。代表が挨拶する
「よくぞいらしてくれました。代表をつとめるスイフと申します。メルはわしの孫でしてな、ありがとうございました。それにお礼が遅れましたが森の守護ならびに森を復活させてくれた事重ねて御礼申し上げます。」
「いえ!自分がやりたくてやった事なので感謝には及びません」
ティファが割って入る
「スイフ様、こちらがあるじのパインズでございます。私は妻をつとめておりますティファ二ーと申します。以後お見知り置きを」
こういう場の作法のようだ。妻推ししてくるのが嬉しかったり恥ずかしかったり…てへっ
そして長老会議に招かれた。議長は代表が務める
「それでは長老会議をはじめる!今日はパインズ殿も参加されておる。みないつも通りで構わないが我らの恩人である、失礼のないように頼む」
「はじめに、パインズ殿トリフから聞いたのだがこの森が枯れメルが病気になった原因を知っていると伺ったのだがそれを教えてもらって良いだろうか」
「では長老のみなさん会議の場所を私の家に移したいと思いますがご賛同いただけますか?あとメルも連れて来て欲しいのですが。」
困惑するメンツも居たが代表とトリフの強い後押しで全面的に信用してついてくる事になった。メルの準備を待って移動した
「ゲート!みなさんどうぞこちらです」
ゲートはひとまずリビングに繋いだ一応お茶とお茶請けを出して緊張を解してもらいたいからだ
「みなさん。飲みながら聞いてください。森が枯れた事とメルの病気の原因をティファから説明します」
※ティファ頼む、俺はメルを連れて神殿に行く。一通り説明が終わって落ち着いたら全員つれて神殿に来てくれ。
「その前にメルを少し連れ出しても良いですか?心配ならトリフさんも来て良いですよ」
メルとトリフを連れて外に出る
「なんだ?ここは」「わぁー!」
トリフは戸惑いメルは素直に感動している
「連れて行きたい所があるんだよ。着いてきて」
「パインズ!ここはどこなんだ?」
「今にわかるよ」
「お父さんなんだか懐かしいね」
「メル、懐かしいってどういう事だい?」
「わからないけど…懐かしい!」
神殿
神殿に着くとクールが待っていた
「やはりその娘を連れてここに来たか」
「創造主様♪お久しぶりです」
メルが声も高らかに近寄るが像に話しかけている。人型のクールは俺にしか見えてないのか…
トリフが慌てて聞いてくる
「パインズどういう事なんだ?」
「まあ…見守ろう」
慌てるトリフを落ち着かせる
「数千年数億年の時を超えて生を受けてもまたメルという名になったんじゃな」
「そうなんだよ!創造主様も元気そうだね」
「我は歳を取らんからな」
「でもエルフ族が存続をかけて地上に出ていったかいがあるよ。このリゾートを守っていてくれたんだね」
メルはやはり今のエルフ族の先祖の生まれ変わりだった。今はメルとしての意識は無さそうだがクールとは仲良しだったようだ
「我も久しぶりに足を踏み入れたのじゃ。松が来てな」
「松?あ…パインズさんの事だね。不思議な存在に感じたけどそういう事だったのか」
「そうじゃ松が異世界から転生して来て我をここに連れてきたんじゃよ。そしてひょんな事からエルフ族を保護すると言い出してな。お前が来るだろうと思って待っていたんじゃ」
トリフは戸惑いながらも2人のやり取りをしっかり聞いている
「またお前達が戻って来たら騒がしくなりそうじゃな」
「パインズさんに感謝しなきゃね」
その昔、古の時代に唯一存在した巫女という存在が古のメルだった。クールも嬉しそうだ
他の長老達が来たらクールは姿を消しメルも子供に戻った。
「パインズ殿理由は奥方から聞き及びました。それに美味しいお茶やお菓子の心遣い感謝いたします」
「それでは本題に入りましょうか。結論から言いますとこの地に移住しませんか?地上ではどこの森に居ても今回のような事が起こります」
「ここはどこなのですかな?」
「信じ難い話かもしれませんが、古の時代にスイフ様のご先祖さまがここを管理していたのですよ。神殿に祀ってあるのは創造主様です」
「そういえばエルフ族に伝わる古来の文献によれば創造主様に世界樹の管理を任されていた。と言うような書物を読んだ事があります」
「それがここです。今はダンジョン最深部と創造主の間にあるリゾートですが古よりこの星の生態系を守って来た場所らしいですよ」
「移住となると我ら長老だけでは決めかねますが、今はパインズ殿の土地、我らが来ては邪魔にはなりませんか?」
「良いんですよ。それにエルフ族の保護と言う名目にあやかって個人的なお願いもありまして」
「ご期待に添えるかわかりませんがなんですかな?」
「ひとつにはエルフ族が絶滅して欲しくない、ひとつにはここを管理しながら農作物を育てたりもっと豊かな土地にして欲しい、最後に個人的なお願いですが、この土地に音楽が欲しいのです。家の横に風呂があったと思うのですが湖を眺め、満天の星空の下で湯船に使っていた時音楽が欲しいなぁと思ったのです」
「ははははは♪我らが気を使わなくて済むように個人的な要件まで付け加えて下さり頭が下がります。見た所まだ成人したばかりの様子なのに心根の大きさに感服いたしました」
いやいやいやいや…欲しかったんだよ…音楽
「わかりました!一応、話は持ち帰って最終的に結論を出させて頂きますがお世話になる事と思います」
数日後エルフ族は移住してきた。とても狭い集落に見えたのだが人口は2000人程居たらしく慌てて住居や倉庫などを作った。神殿を中心にしてクールの記憶を頼りに古の街並みを再現した。クールもエルフ族もみんな幸せそうである。
クールの役にたった気がした。はじめて転生した事に意味があったと思えた松であった
余談になるがエルフ族が移住して来てはじめの宴会は俺と人になったティファの結婚式となり神殿で牧師に扮したクールが執り行ってくれた。子作りはと言うと人になったティファを直視出来ずまだ初夜は迎えて居ない。ティファごめんね。もう少し待ってね♡
第二巻に続く