迷宮品が妖精のような可憐な美女だったので、嫁にしました
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迷宮好きな冒険者と、迷宮品として出てきた女の子のお話
ここは迷宮。
完全に迷ったあああ!
冒険者である俺はこの迷宮で迷ってしまう。
(あっ、迷宮だから当然か。)
「しっかし、ここはどこだ?何回も来ている迷宮なんだが、見た事ない場所だ。迷宮の不思議あるあるだよな。」
迷宮っていうのは金になる。一回来ても何回来てもランダムに宝箱が出る。魔物を倒すと素材が手に入る。
素材をギルドにもって行くと、買い取ってくれる。もしくは道具屋に売りに行く。ついでにランクがたまに上がったりする。
俺はここの迷宮がお気に入りで、何回もいや何百回も来ている気がする。ここと住処とギルドとたまに道具屋の往復しかない。他の冒険者達は色々な場所に行っているらしい。酒屋や娼館だ。みんな凄いよな。
俺は安定安心のここの迷宮から逃れられない。
「お前の頭はイカれてる」
「ふへへ」
ギルドであった仲間からの賛辞だ。つまりは嫌味だ。普通、同じ迷宮に入り浸ったりはしないそうだ。ギルドの職員も、俺があの迷宮品しかもって来ないことを知っている。
俺は至極真面目な顔をして、ゆっくりと答えた。
「俺はこの迷宮を愛している。ここ以外には行きたくない」
仲間は何を言っても無駄だと理解したらしく、呆れたように
「他の迷宮に行けば、レベルもすぐに上がるだろうにな」
いつもこんなことを言われる。
まあ、俺は所謂ヘタレな冒険者と認定されているのね。腕っぷしもそんなに強くはないし。自分の実力はたかがしれている。SやAランクなんかには一生ご縁はない。絶対になれないだろう。せいぜいBかCランク止まりだろうなあ。
そんなヘタレの俺だが、なぜだか、この迷宮に来たくなる。何しろ綺麗な迷宮だ。ここにハマるまでは他の迷宮にも行ったりしていた。
しかし、断トツ、ここがおすすめ!造りが繊細。壁は透明。水晶。7色に光る部屋もある。
王都の観光地の中でも、この迷宮は煌びやかな名所として人気が高い。観光客が、迷宮での冒険者同行依頼をギルドに出してたりする。
それを目ざとく見つけて、さらにお金を稼いでいる。迷宮の深層部まで行きたがる観光客はいないから、入り口付近をウロウロするだけで楽に稼げる依頼だ。
(迷宮を楽しむのはいいのだが、中には心無い冒険者や観光客もたまにいる。迷宮を汚すやつ!最悪な奴らだ!
奴らが汚した後始末なんかもしている。この迷宮にはいつでも綺麗でいて欲しいからな!)
本当は迷宮は自動的に綺麗になる作用が働くみたいだが。
話を戻そう。
そんな迷宮愛がつまった俺は、絶賛、迷い中。見たことない通路を進んで行くのは、実に心浮き立つ。多分誰も通ったことないだろう。ギルドが発行している迷宮の地図にも載っていない通路だからな!
「こんな通路があったのかあ?どうやって、入り込んだんだろう」
疑問に思いながら、通路を進むと突き当たりに部屋があった。迷宮の部屋としては普通な感じだ。
目線の先に宝箱。いつもより大きい宝箱だ。
「やった~!お宝ゲットだ」
(もちろん開けるよね?)
ギ、ギィィ
なんと中身は!?
女!
「なに?!」
宝箱の中で、横に体を丸くして、白い服を着て寝ている。
長い髪は銀髪で白に近い。透けるように白い肌。
「はっはっはぁ?まじ分からないんですけど?」
宝箱に寝ていた、女?
迷い込んで寝ているのか?
もしくは、それは迷宮品?
な、訳あるか~!
女と見せかけた魔物とか有り得るな!
さあ、勇気を出して起こそうじゃないか!
ゆっくり開いた瞳は真珠のようで、白を基調として、いくつもの色が重なりあっている。彼女はサラッサラの白銀の長い髪を揺らしながら、ゆっくりと宝箱の中で上体を起こした。
「ほわああ!?」
(こっ、こんな綺麗な子、見たことないよ。えっ、妖精?
妖精だよね?)
この世のものとは思えないくらい美しい。
(睫毛長っ!バサバサしてる!)
宝箱から出てきていいの?こんな娘が?
「ここはどこですか?」
妖精みたいな女の子は、鈴のように高い、可愛い声で、俺に向かって尋ねた
えっと、何て説明したら、いいんだろう。
まずは自己紹介だな。怖がらせたら、大変だからな!
「怖がらなくていいよ。俺は冒険者。ここは水晶の迷宮だよ。」
「め、迷宮。私、なぜ、こんなところにいるの?」
白銀の女の子は困惑した顔で下を向いている。
(た、確かに存在自体が謎だ。
箱の中で、長時間生きられるわけがない!)
「ここにいる以前の記憶はある?」
怖がらせないように優しく問いかける俺。
「ここより前のこと?えっと、迷宮にはいなかったわ」
彼女は顔を青くして、両手を顔につけて、混乱しているようだ。
いつまでもここにいても仕方がない。彼女を安全な場所に連れて帰り、休ませてあげたい。
「俺の名はヒューイ。君の名を聞いてもいいかな?」
「マ、マリーです」
「そうか、マリーか。よろしく。」
俺は手を出して挨拶する。可憐なマリーはおずおずと手を伸ばす。
(うわっ、柔らかくて、白い!パンみたいだ)
動揺していて、上手い例えが出てこない。
「とっ、とりあえず、この水晶の迷宮の中から出たほうが、君の安全のためだと思う。俺が連れて行くけど、いいかな?」
俺は怪しくはないけど、マリーにしてみたら、怖いだろうな。
だが、ここにいるのも危険。なるべく早く外に出て、話を聞くなら、ゆったりとした場所がいいだろう。
マリーはゆっくりと頷いた。俺は微笑みながら、マリーを連れ帰る支度を始めた。
「ちょっと、ごめん。たぶん君のそのきらっきらの容姿は目立ってしまうからね。窮屈かもしれないけど、これで包むよ」
「きらっきら?」
マリーは動揺しているみたいだ。
俺は腰につけている収納魔法がかかったカバンから、大きな毛布を取り出す。外敵から襲われにくくなる魔導具の1つだ。
手早くマリーの体をその毛布に包む。
「その髪の毛も目立つから、頭も隠すよ?」
マリーは頷く。
頭も足も毛布に隠して、抱きかかえる。
「きやっ」
「ごめんね、動かないでね」
(顔も隠れているから、怖いよね?)
「大丈夫?急いで出るからね。走るよ?」
「は、はい」
「おっ、ヒューイ、今日は早いじゃないか?いつもは遅くまで水晶の迷宮にいるのに」
俺は、マリーを連れて水晶宮から出て、走っていると思わず、後ろから、冒険者仲間から声をかけられる。
ヒヤッとしたが、顔だけゆっくりと後ろに向けて、ぎこちない笑顔を見せる。
「ああ、今日は少し用事があってな。早めに切り上げてきたのさ。急ぐから、またな!」
頭から足まで毛布に包まっているマリーを横抱きにしている。しかも、一ミリも可憐な姿は出ていない。何かの荷物を運んでいるようにしか見えない。
しかし、油断は禁物だ。何せ、姿は国宝級に美しいからな。誰かに盗られたら、俺はへこむな。
俺が寝床としている宿屋に着き、部屋に鍵をかけて、マリーの毛布をとる。
(うわ、眩しいよ、可愛くて)
さらさらした銀髪に白い肌。白い服はワンピース。水晶をはめ込んだような七色に変化する瞳。
(うん、これは人のようで人じゃない美しさだね)
そうして、迷宮品の彼女はオレのものになり、連れ帰って、嫁になり、幸せに暮らしている。
途中、まあ、すったもんだはあったけどな。
あんだけ綺麗な姿をしていれば、目立ってしまうだろうから、これを隠すのにまた大変なことだった。
冒険者だった俺は、彼女を守るために貴族の三男坊に戻り、敷地内の別棟の屋敷を貰い、生活している。
(また、合間をぬって、迷宮に護衛と共に行く。迷宮の保守管理として雇った使用人達の働きぶりを確認するためでもある。)
気楽な冒険者という立場は無くしたが、愛する妻のためには賢い選択だろう。目立つ容姿の妻は屋敷に閉じ込めるような形となってしまった。
しかし、誰が見ているかも分からない。あれだけの容姿を持つ娘を欲しがる輩はわんさかいそうだ。誘拐されたりしないように、厳重に屋敷の中に閉じ込めないと。
少し変態じみているかもしれないが、それほど妻は美しいのだから仕方がない。傾国の美女なのだ。あれは世に出しては諍いになる。迷宮品ということがさらに神秘的。その価値は計り知れない。
だから、宝物のように大切に扱わないといけない。誰かに盗まれないように。
「厳重に保管しないとな」
屋敷の窓から夜の景色を眺めながら、呟いた。