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『二つの炎――前章:黄金なる怪物皇帝(4)~竜の血に流れる記憶~』

3(前節).黄金なる怪物皇帝~竜の血に流れる記憶~


 サルダンという竜人は現在にいたってもなぞが多い存在だ。


 彼に関する記録や逸話いつわ虚実きょじつ入り混じりながらもかなりの量が残されている。しかし、それまでもその後にも比肩ひけんできる対象がないために「あれはなんだったのか?」という疑問がきない。


 例えば「産まれながらに言葉を話した」という疑問であるが……これには類似るいじする事例があるにはある。


 現代のアプルーザンおうであるレイヤ帝も産まれた時点で言葉を発したという。だが、それは単語を意味もつながらずにいくつか零しただけであった。明確な意思をもって“伝達”しようとして放たれたものではない。


 異国での例ではあるが、エルダランドの英雄・リィンダイト=ヴェイガードも産まれた瞬間に話した(雄たけびを上げた?)などという逸話いつわが残されている。しかし、これも自分の意志を発するだけで相手の反応をうかがうようなものではなかったらしい。


 そうすると、相手の反応を見たうえで“会話”として発せられたサルダンのそれはやはり異質なものだ。しかもこれについては目撃者が多数ある上、記録も複数に渡って残されているので限りなく事実に近いものであろう。


 このことについては現在まで様々に議論が交わされてきた。その中でも有力とされるものを2つ紹介しよう。


 1つは「胎内たいないで外の音を聞いて学んでいた」というもの。これについては本人が後にそのような発言をしており、実際これが理由として大きなものではあると考えられる。ただ、それだけで産まれた瞬間に明瞭めいりょうと会話が成せるものであろうか?


 そこで2つめにいわれているものが「言葉の由来が理由」というものである。


 そもそもとして……我々人間が用いる“言葉”というものは我々のものではない。これは竜によってもたらされたものであり、本来は竜達の言語である――とされる説が一般的だ。


 言葉とは何かなど、日常で深く考えることがないので大半の人は何も思いはせずに用いている。しかし、そうした「日常にある疑問」につまづいてしまうからこそ、学者なり探究者という存在が成立する。


 言語と竜代古典の研究者によれば竜によってもたらされた文明の、社会にともった最初の火こそが“言語”だったのだという。竜が人を導くにあたって「より簡単に成すため教えた」とする説が強い。


 ここでこれ以上深くグランダリアの言語については語らない。ここで言いたいことはつまり……“竜の血が濃く流れる存在には竜の言葉がきざまれている”という可能性についてだ。


 より広く言ってしまえば“竜の記憶”としてもよい。ともかく、そうした祖竜の記憶のようなものが力と比例して彼ら竜人に流れているのではないか……という可能性である。


 おそらく、サルダンが産まれながらに言葉を話せたのは彼が言うような「胎内学習」による成果もあるだろう。だが、そこに加えて彼があまりにも濃く受け継ぎ・現出した竜の力による影響によるものだと考えることができるのではないだろうか。


 言語は珍しいが、そうした竜人に流れる“竜の血”にまつわる逸話は多い。


 経験したはずのない感情や感覚がみょうに実感ある夢として視られたという例や、見たことのない光景がこれも夢としてやけに詳細に浮かんだという証言。それに“竜光りゅうこう”などという考えれば不思議でしかない現象だってそうである。


 そうした竜の血に備わる不思議を人々はおそれ、だからこそ彼らを“竜人”として祖竜の化身とみてあがめるのであろう。




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