紅き炎が開花の時――Memory3.『調子に乗るなよ』:Vision2
・
・
・
Vision2↓
・
・
・
文明とは、そこにある科学とは。
人の欲望と同じく果てしなく、人の欲望と共に進歩していく。
すべてのことに意味があるわけではない。当然、すべての進歩に意味があるわけでもない。
新しい技術、体験したことのない現象、理論の実践や神秘の実現。
人は与えられた素材を元にして技術を開花させていく。それだけの知能がある。
それらの素材は聖圏において“神託”とされている。地下深くに眠る女神からもたらされた、神秘の欠片。触れず、見えず、されどそこにもたらされた知見を人々は神の授け物として受心していく。
神に仕える者の中でも神託を授かり、理解を試みる者達を“神学者”と教会は定義する。
信徒として、実戦をもって神意を成す者が剣の教会に所属するように、筆の教会には彼ら学者達が集い、日夜生涯を理解と研究に費やす。
ただ筆の教会とは言うが、それは聖地にある本拠地を主に指すものだ。大体の学者は教会に所属こそするものの、各地に存在する研究所で研究を行っている。
研究所にも色々ある。研究内容もそうだが、階級も様々なものだ。
基本的に有用な成果をあげる研究所には高い階級が与えられる。もちろん、その内容もより神意に適切であるほど良い評価となる。
対して低評価にありがちなのは人間らしく欲望や興味を優先してどうでも良い研究に没頭する連中。そうした者が運営する研究所はまず、評価されない。
それでもそうした自我が良い結果を生むこともある。かつての戦火において際立った例を言えば「変質人間」であろうか。
中でも身体の大型化、つまり「巨人化」には今後も向上の余地があり、単純に質量の大きな兵士というものは戦力として期待が高い。今後も大いなる発展を望まれるものだ。
ただ、同じ変質人間でも「混成人間」は微妙だ。これはつまり人間を動物のように変えるもので、身体能力や感覚などを優れさせて強化することが目的である。問題となるのは性格や知能までも動物じみてしまう確率があまりに高く、どのような形態であってもこの辺りは解決されていない。
変異型であれば多少の制御はできようが……変異に薬剤を必要としたり、変異のたびに身体負荷が重くかかったり、変異すると結局制御ができなかったりとやはり上手くない。変異したまま元に戻らなくなる、なんてこともしょっちゅうある。つまりは研究そのものが欠陥なのであろう。
研究所内での事故なども多発したからか、混成人間への研究は下火となった。だが完全に研究が諦められたわけではなく、どういうことかソレに固執する学者もいる。物好きというやつだな。
どうやら人にとって一度求めた欲望というものは中々に忘れがたいものらしい。
――アスファラ山脈に連なる山々。山岳の麓に繁っている森林の中。
丸みを帯びた白みがかった建造物。晴れた空の下、朝霧の残りが露となって表面を光らせている。
この建造物は聖圏に属する研究所。ただし運営はされているが半分は放置されたような寂れた存在である。錆びた門が立派ではあるものの、何かもの悲しさを感じさせてくれる。
物好きな神学者が所長を務める研究所。されどその物好きは高位な聖人が親族にあるらしく、今もある程度の研究費と警備用の人材を与えられている。
「――だから、まるで無防備ってわけでもないんだよね。ええと、門の辺りに1、2、3……入口のも含めて6人いるのかぁ。情報によると他にも何人かいそうだし、こりゃぁこっそり侵入ってのも難しそうだ」
研究所の錆びた門。それを少し遠目に眺めている存在。
草木の茂みに身を隠して何かつぶやいているのはサナッチだ。黒い手袋越しに右手で顎先を擦りながら彼は零すようにしていた。
その横で座っている少年が欠伸をしながら言う。
「ふわぁぁ~~~ぁ。そんなん、最初っから解ってることだろう。というかさ、“全部で10人以上いそうだけど、まぁそこは2人で手分けしてどうこうしよう!”……って、戦闘ありきで計画を語ったのはサナッチさんじゃんか。今更こんな様子見なんてせず、さっさと行こうぜ?」
少年アグゥは門の方を見ることもなく、その辺に落ちていた小石を手の平の上で弾ませている。
サナッチは横を見て、小声で少年を諭す。
「いいかい、アグゥ。確かに正面からドカン!と当たってもどうにかなるかもしれない。だけど、どんな時だって警戒は大事だよ? 一瞬の油断でたまたま刃物が刺さってしまうこともあるし、それが命取りになるかもしれないからね。相手に油断をさせるなり、多人数を相手にする場合は何か作戦をもって挑むべきなんだ」
「そんなん言っても、あんたいつも結局は“なるべく見えにくい方角から跳びかかろう!”みたいな曖昧な作戦しか出さないじゃん。ほら、それこそ“コイツ”と会った時の前は跳び込んでみたらうじゃうじゃと出てきて……」
「お黙りなさい! いいですか、アグゥさん。どんな作戦にだって想定外はつきものなんだよ。いくら俺さんが策士だからといって、万事が上手くいくわけではないのです」
「はいはい。んじゃぁ、立派な立案を頼みますよ策士さん? ほら、どうすりゃいいですかね。指示をくださいよ?」
「えっ? そ、それは……それじゃぁええと、でも、ううんと……ちょちょ、ちょっと待ってね?」
指示を仰がれたサナッチが困惑する。すっかり黙り込んだ彼は額を手で押さえて唸り始めた。
その様子を横で見ている少年は欠伸をかく。そしてそのまた横に居る少女は少し身を乗り出してサナッチに声をかけた。
「ねぇ、サナッチさん。私はどうすればいい?」
少女セラが言う。彼女の来ている薄緑色のローブにはフードがついており、今はそれで頭までをスッポリと覆った状態だ。木々の茂みに隠れれば多少の保護色にはなっている。意図したものではないが。
セラに問われたサナッチは「ちょちょ、ちょっと待ってね?」と先ほどと同じ言葉を繰り返した。
代わりに2人の間にあるアグゥが答える。
「どうもこうもねぇだろう。てめぇはここで待ってろ、女にできることなんざねぇ。仕事は俺とサナッチさんでやるからよ」
アグゥが「ここ」と言って地面を指さす。
別に睨んでいるわけでもない。普段から目つきがあまりにも悪いことなど、とっくに知っている。
だけどセラは「ムッ」とした。それはアグゥが「お前は役立たずだ」とでも言ったかのように感じられたからだ。むしろ実際、そのようなことを言っている。
セラは少年を睨んだ。そして言い返す。
「私だってなにかしたいもの。ほら、ここって研究所でしょ? そういう場所を襲ってやるってことなら、私だってなんかしてやりたいのよ」
「はぁ? いや、だからねぇってば。何もないよ、お前なんぞができることは。っつか、そもそもここまでついてきたのも俺は不満だよ。邪魔なだけだから、さっきの宿か地域で待ってればよかったんだ」
「そうもいかないわ。だって暇でしょ、そんなの? それにあなたたち2人だけだと心配だし、ちゃんと戻ってくるとも限らないじゃない?」
「いや、ふざけんな。戻ってくるだろうが、俺とサナッチさんが仕事をミスるわけねぇだろう。いいから、今からでも遅くないからどっか行ってろ」
「嫌よ、行かないわ。というかあなたってどうしてそうなのよ? 私のことなんだと思ってるの。私だってお仕事の手伝いくらいできますから!」
「できるかよ、てめぇみたいなガキがよ? 口ばっかり多少は達者かもしれんが、こういう荒々しい仕事でやるこたねぇって。危ないだけだから失せろって!!」
「失せないわよ!! ああ、そう。そういう態度って……いいわ、やってやるわよ。ようはあの人たちを“油断”させればいいんでしょ? ようし、ならばあなたこそ“ここ”に居て? チャンスになるまで決して出てこないでね、いい?」
「な、なんだよ。何をムキになってんだ? おい、とにかくここから離れ・・・・・って、え???」
しばらく言い争った後。結果としてセラは立ち上がった。立ち上がって、セラは薄緑色のローブを下から捲り上げ、脱いだ。
胸元と腰元だけを布地で隠した状態。ほとんど全裸に近い状態となったセラを見上げる少年、アグゥ。隣にあるサナッチは未だに頭を抱えて唸っている。
ポカンと口を開いて見上げている少年の顔めがけて薄緑色のローブが投げつけられる。そうしてからセラは茂みを越えて門の方へと歩いていく。木々の枝で彼女の足に切り傷がいくつか生じた。
研究所の門には警備の兵士が2名、立っている。門から研究所の入口までは数10mはあろうかというところだが、その間にも座り込んで話しているものなど4名は姿が確認できた。
門を護っている2名。それらも何か談笑をしていたようだが、ふと、目の前の存在に気がつくと2名とも息をのんで黙った。
黙るのも無理はない。視界には自分たちに向かってゆっくりと歩いてくる少女。
黒髪の少女が下着のみの姿で近寄ってくる光景。彼女の足元からは流血がある。
「えっ、なっ……なんだ、どうした?? あの、大丈夫ですか、そこの君??」
警備兵の1名が思わず言った。いや、何か言わざるを得ない状況だったのだろう。
いつだって特に何事も起きない辺境の忘れられたような研究所。そこに配属されて以来、数か月住み込んでいるが、やることは立って景色を眺めているだけだった日々。
まるで刺激のなかった平穏な日々に、突然の異変。ほぼ裸の少女が若干にフラフラとしながら歩いてくる異常。
その若い警備兵は戸惑い、呆然と少女の姿を見ている。見とれているという表現でも良いかもしれない。
異常ではあるが興味を抱かざるを得ない光景。門を護る2名はどちらも1人の少女に気を奪われていた。
足の傷をかばいながら、フラフラと寄ってきた少女は2名の前にたどり着くと口を開いた。
「助けてください……お願いします……」
弱々しく、そのように言葉を零す少女。流れる血が白肌の足を伝っている。
2名の兵士は顔を見合わせた。見合わせた後、先ほどに思わず言葉を発した若い警備兵が少女に一歩近づいて声をかける。
「どうされましたか? 怪我をしているし、それにその恰好は……」
「…………。」
少女は答えない。ただ俯いている。
もう1人の警備兵も寄ってきて少女に問う。
「おおっ、どうしたのかなお嬢さん。もしや強盗にでも身ぐるみはがされたか……可哀そうに、お困りでしょう?」
言葉としては彼女を心配してのものだろうが、どうにも表情は緩みきっていた。ニヤけているとしてもよい。
ニヤけながら少女に手を伸ばしたので、思わず少女は後ずさった。
「へへっ、大丈夫だよ。助けてあげるからさ! ほら、この奥に建物があるだろう? そこで保護してあげるさ。食べ物も服もあるよ!」
ニヤける警備兵は尚も手を伸ばして少女の肩をつかもうとする。さらに少女は後ずさる。
見かねた若い警備兵が言う。
「おいっ、怖がっているだろう! それにお前、まさか……」
「おっと、馬鹿なことを言うない。大丈夫、安心してくれよ。ほら、怖くないから、おじさんとこっちきなさい」
「待てよ、無理に触ろうとするなって。きっと彼女はひどい目にあったんだろうから、本当にまずは話を聞いてだな……」
どうにも言動が怪しいと思ったのだろう。若い警備兵は少女の前に立ってもう1人の兵士を諫めた。
「おい、邪魔するなよアキラ。ここは俺にまかせろ、俺は先輩だぞ? 言うこと聞け!」
邪魔をされた先輩らしき警備兵は声を荒げて後輩の兵士を押しのけようとする。
そうしたやりとりが聞こえたのか。門の内側に居た4名の兵士も「なんだなんだ」と駆け寄ってきた。
そうして警備の兵士6名が門の外に出て集まった。それらはすべて“ほぼ裸の少女”に対して意識を向けている。
門の外で何やら騒がしくしている警備の兵士たち……そうした騒ぎを聞いて「ん?」と顔を上げた人がある。
「――――ありゃ、なんだあの状況。いつの間にか警備共が集まって……集まって何を…………何をって、いや、なんで!?!?」
茂みの裏で顔を上げたサナッチ。遠目に見える景色の中で集まっている兵士と、その傍に立っている少女の姿を見て驚愕した。
「あれってセラ!? ええっ、どうしたってあそこに、いや、あんな姿で……ええっ、なんだコレ!?」
状況が全く分からない。一生懸命作戦を考えて、どうにかアグゥを見返してやろうと懸命だったので何も把握できていない。だからただただ、サナッチは狼狽して両の頬を手で押さえてアワアワと口を開いたり閉じたりした。
そしてふと、横を見る。
サナッチはどうして横を見たのか。それはそこに異変があったからだ。
モウモウと立ち込めている紅い煙。おそらくもうしばらく時間が経っていれば兵士たちも気がついたことだろう。
だが、今はサナッチだけが見ている。知っている。
そこには歯を食いしばって明確な“激怒”状態の男が存在していた。
左腕からは噴き出すように紅い煙が湧き上がり、それは今に生じ始めたばかりらしい。
感情が明らかに昂っているのはアグゥ。怒りのあまり震えている少年はそのまま何も言葉を発さず、茂みの裏を走り始めた。
紅き煙を軌跡として駆ける少年。その後姿を清潔な男はただ呆然と眺めている。
門の前では兵士6名がなにやらもめていた。どうやら5名の兵士はニヤニヤとしながら少女を建物へと誘おうとしているのだが、1名だけはそれに納得せず何かを反論しているらしい。
少女を背の裏に隠して反論する若い兵士。“彼の視界”にはニヤつく5名と門、その先に丸みのある研究所が映っている。
晴天の下にある鮮明な景色。そこに、紅い風が突如として通り過ぎた。
轟音とともに吹き抜けた紅い風。熱気で思わず身をすくめた兵士は景色に違和感を覚える。
ほんの1秒前までそこにあった光景。今も門や研究所はあるし晴天なのも変わらない。
ただ、人が消え去っていた。5名あった仲間である兵士たちが忽然と姿を消していた。
ふと地面を見ると、そこに5本の黒い線。どうやら焦げた跡らしいそこからは煙が少し昇っており、高熱の余韻が感じられる。
視線を動かした。視界の左端に移った違和感へと注意を向ける。
そこには少年の姿。左腕から蒸気のように紅い煙を立ち昇らせ、自分を睨んでいる男の姿がある。
兵士は彼の視線から、人間ではない別の何かに睨まれているかのような感覚を覚えた。それほどに彼の目つきがあまりにも悪い、ということなのだろう。
状況をのみこめてはいないが、兵士は腰元の鞘から剣を抜き、構えて叫んだ。
「何者だ!? 一体、何をした!? 先輩たちをどこにやった!!?」
背後にある少女のことなどもう、意識にはない。ただそこに見た脅威に対して、訓練の成果と本能による危機管理能力によって兵士は戦闘の構えをとった。
そう、背後になど意識は行っていない。
だから気がつかなかった。自らの胸部から鋭利な刃物が飛び出して、それが引き抜かれて鮮血が噴き出す数秒間。
気がついて振り向いた時。そこには仮面を着けた何者かが居た。
仮面の人が身に纏うコート。黒いコートの前面に金のボタンが5つ、陽射しを受けて輝いている。
そうした状況までを理解して兵士の意識は途絶えた。彼が最期に見たのはそういったものだった。
心臓を一突きにされた兵士の亡骸。その脇に屈みこんだ仮面の人は「ごめんよ、ただ彼女を護ろうと思ってさ……」などと謝りながら亡骸の所持品を漁っている。
その横では薄緑色のローブを渡された少女がそれを着ながら倒れた兵士を見ていた。
少女は言う。
「サナッチさん。その人、私のこと……」
「ん、なんだいセラ? この人がどうしたって?」
「…………ううん、なんでもない。ただ、教会の人なのにそんな悪い人じゃなかったかもな、って。私のこと庇ってくれていたような気がするの」
「えっ、そうかい? そりゃ……悪いことしたかな。お話でこれから俺さんたちがやることも見逃してくれたかもしれないよね」
「そうね……でも、もう仕方ないわ」
「うん、仕方ないけどさ。しかし悪いなぁ……許しておくれよ、そこまで色々考える余裕がなかったんさ。俺さんも護らなきゃって、それは君と同じだったかもしれないね?」
サナッチは仮面を外して一度、頭を下げた。そうしてからまた仮面を着けると漁るのをやめて立ち上がる。
ローブを着た少女と、並んで立つ黒いコートの男。
彼らは同じ位置に視線を送った。
そこには少年の姿。腕を組んでどうにも不機嫌な睨み顔の少年。左腕の煙は弱まっているものの、未だに少し漂っている。
明らかに不機嫌なアグゥ。彼は歩いて近寄ってくると少女に向かって言った。いや、“吼えた”。
「バカヤロウ!!! お前、セラてめぇは何考えてんだ!? ふざけんじゃねぇよ!!!」
目を見開いて少女を睨みつけるアグゥ。掴みかかろうと、そういう風でもないのだが噛みつきそうではある。
ともかく怒っている少年。それも激しい怒りを受けた少女は……。
「ふざけてないわよ。だって上手くいったでしょう? ほら、私にだってできることあった。だからバカヤロウじゃなくって、他に言うことがあるんじゃない?」
セラは「フフン」とでも言いそうな様子。得意気に少し胸を張って少年と対面している。
アグゥはそのような少女の態度を受けて尚更に表情を険しくした。
「上手くいっただと!? お前あんな、あんなことして上手くいったわけないじゃないか!! やって良いことと悪いことの区別くらいつけろ!!」
「何よ、どうしてよ? 上手くいったじゃない。彼らは油断したし、だからこそあなたは不意をついてやっつけることができたんでしょう。危ないこともなかったわ、ちょっと足を怪我しちゃったけど……」
「危なかっただろうが!! お前な、あんな服を脱いで……そんな、そんなん見られて良いわけねぇよ!! ふざけんな本当!!」
「へぇ?? 別にいいじゃない、裸を見られたくらい。何かされたわけでもないし……というか、あなたはそんなに何が気にいらないのよ?」
「な、何がってだから!! ……そりゃ……気に食わないってことじゃなくってな? でも……悪いだろうが……」
「あっ、なるほど! さては私が思ったより役立ったものだから悔しいのね。素直に褒めたくないんだ! まったく意地っ張りなんだから、本当に困った人♪」
「い、意地とかそういう……褒めるってのもそんなわけないし…………がぁああああ!!! ちっくしょう、なんでコイツこんな解らねぇんだ!? イカレテやがる!!!」
アグゥは己の髪を掻きむしり、少女に背を向けた。そうして唸って頭を抱えている。
セラは彼の行動理由がハッキリと解りはしないが、きっと人を褒めるのが苦手なんだろうと微笑ましく思っている。
サナッチは2人の会話を大人しく聞いていた。そうしてなんとなく流れを想像した。
想像して何かを少女に言おうとしたが……やめておいた。
サナッチは言う。
「まぁ……とりあえず第一作戦成功だぜ! よっしゃ、乗り込むぞ~~☆」
そう言って門の内側へと入って行くサナッチ。その後に続くセラは振り返って少年に「ほら、置いてくわよ」と声をかけた。
少年は……アグゥは晴天の空を見上げる。
そうして1人。だれに言うわけでもなく、自分へ問うように独り言を零した。
「俺は何を……何であんなにイラついたんだ?」




