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紅き炎が開花の時――Memory2.『もう少しだけ』:END

『――――おい、どうすんだよ。サナッチさん帰ってこねぇじゃん』


『知らないわよ。はぁ、今日も天気が良いわね……お腹空いたわ』


『いやね、だからサナッチさんが帰ってこなきゃ飯も食えねぇぞ。だって金が無いものな』


『そうね、本当だわ。困ったわね……でもそのうち帰ってくるでしょ?』


『どぉ~だかね。お前が夜に言ったことがなんか、よっぽどつらかったんじゃないの? だって泣いてたんだから。そんで俺たちを置いて何処か行っちまったのかもよ?』


『えぇ、ひどいわ。私はサナッチさんに生きていてほしいから、ただ思いついたことを伝えただけなのよ? でも、それが彼に辛い想いをさせてしまったのなら謝るわよ』


『だぁ~~から。もうどっか行っちまった人にどうやって謝るんだっての! まぁ、俺は別にもう食えなくって死んでもいいんだけどな』


『またそんなこと言って……というか、私は嫌よ。ほら、どうにかしてご飯を調達しましょう?』


『はぁぁ?? だから俺はどぉでもいいって言ってるだろ。てめぇで勝手になんとかしろよ』


『…………本当にあなたって人はさ。じゃ、いいのね? 私の方がさきにここで死んでるわよ。あなたはあんまり食べなくてもしばらく生きてそうだけど、きっと私はよく食べる人だから先に死ぬわ』


『いいよ、別に。最初に言ってたしな、死にたいってよ……なら、良かったじゃねぇか』


『……ねぇ。どうしてあなたってそんな感じになっちゃったの?』


『そんな感じってなんだよ。俺の何かが気に食わねぇってのか? うるせぇよ、なんで俺がてめぇの好みに合わせる必要がある?』


『う~~ん……本当に困った人ねぇ。あのさ、そうやっていつも不機嫌だけどさ。どうしてそんなに自分も他人もすぐ死なそうとしちゃうのよ。こんな私よりも自暴自棄って、一体何があなたをそうしてしまったの?』


『だからうるさいなぁ……どぉ~~でもいいだろそんなこと。何でそんなことお前に――』


『いいわよ、きっと辛いことなんでしょう? 言わないでいいわ』


『別に……辛いも何もあったものか。つか、聞いといて言わないでいいっててめぇは勝手が――』


『じゃぁほら、人間生きていれば夢や願いの1つは抱いたりするけどさ? そういうのはまったく無い? 私はもうダメだけど……そうね、だけど毎日が安定してお腹いっぱいになる日々を過ごせるなら死ななくてもいいわ』


『だから勝手に話をだな……あ゛、夢だ希望だ?? そんなん意味ねぇだろうが。どうせ死んだら全部同じだろ。偉くなろうが金持ちになろうが、人間なんざ簡単に死ぬんだから意味がねぇよ。みんな死ぬとき“失いたくない”って顔するが、馬鹿じゃねぇの? 初めっから解っているのに意外そうな顔してんじゃねぇぜ。腹が減った、食べたい、食べられて良かった……まぁ、そういう日々の充実感?とかを求めるのは多少解るけどよ』


『うぅ~~~ん……だったらほら、その……だれかを“好き”になったりとかは? あなたも男の人ならそういうの今まであったんじゃない?』


『だれかを好きって……人間を好きってか? そりゃ好きというか気に入ってるヤツならいるよ』


『ウソ、え゛っ!? だ、だれのこと――』


『サナッチさんは好きか嫌いかで言えば好きだ。あいつはなんというか……よく解らんが気が合うってヤツか? ともかく嫌いではねぇな。だからってあいつも死ぬときは死ぬし、人間だから簡単に居なくなるモノだとも解っているから執着しゅうじゃく?だとかもねぇけどよ』


『あぁ、好きってそういう……うぅぅ~~ん。そうじゃなくってさぁ! サナッチさんは私も好きだけど、そうじゃないのよ』


『あ゛? なんだよ、てめぇは一々人の意見に文句を――』


『好きってほら……例えばね? 今までこう、愛情というか愛、恋愛……つまり恋人とかいなかったの? これからそういう人がほしいとか、ないの? あなただって男の人なんだから、そういうのにムキになったりしないの??』


『はぁ? コイビトって……恋人のことか? 必要ねぇだろうが。居ても居なくても変わらねぇよ、死んだら全部消えるんだから。金と同じようなものだろう?』


『いや、お金と恋人は違うでしょ。恋人はほら、ええと……一緒に居て、その過ごす時間が幸せというか楽しいとか……たぶん、そういう感じがあるはずよ!』


『金があれば幸せだったり楽しかったりするんじゃねぇか? 俺は思わないが、サナッチさんなんかそんな感じだぜ。それと恋人ってやつの何が違うよ?』


『そういう、ことじゃぁ……だからお金は一緒にお話したりとか、一緒にどこか行ったりとか、一緒に思い出を作ったりしないでしょ?』


『何言ってんだよ。金を使えばだれかと話せるだろうし、金を使えばどこかに行けるだろうし、金を使えば良い思い出も作れるじゃねぇか』


『だ・か・ら!! お金は使うと無くなっちゃうでしょ! 恋人は、好きな人は無くならない!!』


『いや、無くなるって。死ぬんだから、だれでも。好きだろうが嫌いだろうがそいつはいずれ死ぬ。そういう意味では金のほうが形として残るからまだ執着?し甲斐がいがあるかもな』


『・・・・・フゥッ! 解ったわよ、もう。あなたにとってはお金も人間も同じようなものなのね! だから恋人なんてものにも興味がない、と。そういうことね?? はいはい、つまんない人~~、もう知らないッ!!!』


『おいおい、何で怒ってんだ? ふざけんな、てめぇが聞いてきたからくだらねぇけど答えてやったらコレかよ? 勝手すぎるだろ、というか人を“つまらない”ってまた俺を悪く言いやがっ――』


『――ねぇ、今まで好きな人がいないってのは解ったわ。それでこれからもそういう、恋人とかはいらないと……それもまぁ解った。それならね?』


『・・・・・またかよ。あのな、お前はとにかく俺の話を最後まで――』


『さっきあなた、“日々の充実感を求める気持ちはある”って言ったわよね?』


『あ゛?? …………そんなん言ったか?』


『言ったわよ? それならね……恋人ってそれはほら、お金と同じかはともかくとして。食べ物と同じかもしれないと思ったの』


『…………人間を食べ物と同じって、お前ヤバいこと言うな』


『人間をお金と同じって、それも大概たいがいだと思うけどね。ともかく、その恋人を食べるってわけではなくてね? 日々をその人と過ごすことで楽しい、嬉しいって、そういう感情を抱くことは日々の充実感になるじゃない?』


『はぁ。なるかなぁ……サナッチさんみたいに話してて悪い気がしない感じか?』


『そうね、サナッチさんと話している時みたいに。でもサナッチさんとは違ってこう、愛情とか恋心とか……とにかくもっと暖かい気持ちがそこにあるはずよ!』


『へぇ~、想像できねぇな。つかそれならサナッチさんと話してりゃいいじゃねぇか?』


『うんもぉぉぉ~~~ッ、サナッチさんとは違うの!!! サナッチさんは恋人じゃない、友達とかそういう人! 恋人はもっとこう……手を握ったりとか、そういう感じでもっと近くに居てずっと幸せな気分になるはずなの!!』


『…………だから何で怒るんだよ。いや、だって解んねぇもの……想像もできねぇんだからイライラされても困るぜ。ただ、お前が言うようにその恋人ってぇのが日々の空腹を満たす充実感に似た感じになるなら……居てもいいのかもな。知らねぇけど……』


『え――――居てもいい、の? 恋人、ほしくなったの?』


『別にほしいってことはねぇよ。ただまぁ、居たらその日が悪くねぇ気分になるなら居たほうがいいんじゃねぇの?ってこと。お前がイライラするからとりあえず解った気になってやってるってのもあるけどな』


『・・・・・イライラしてないわよ。でも、ふぅ~~~ん……居てもいいのか。そうか、そうか……』


『…………なんだよ、てめぇちょっと気味悪いぞ。さっきから突然に怒ったりそうやってじろじろこっちを見たり……お前、腹が減ってちょっとおかしくなってるぞ?』


『相変わらず失礼な人ねぇ……解ったわよ。あっち向くから! でも、そっかぁ……悪くない、か……』


『――ったく、わけわかんねぇ女だな。まぁ、静かにしてくれるならなんでもいい。それにしたってサナッチさんは何処に――――おっ?

 ど、どうしたんだよサナッチさん?? あんた、その姿は一体…………一体、何があった!!?』






(居ても悪くない……か。いや、でも何よ……だからって私には関係ないし。

 関係ないけど…………そうね。生きてみようかな、もう少しだけ……)






…..NEXT Memory→『調子に乗るなよ』






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