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紅き炎が開花の時――Memory2.『もう少しだけ』:Vision2

Vision2↓


 アグゥ、セラ、サナッチの3人は現在、地域キャンプと呼ばれる場所に滞在している。


 地域にも色々とあり、彼らがおとずれているココは大地域コミュニティと呼称される。長いことその場所で発展していたり、崩れてもその場で再生される地域がこのようになる場合が多い。


 地域というものは基本的に同じ場所で長くは発展しない。何故なら地域とは国家的に見てすべて“冒涜ぼうとく的”、ようは「神の意にそぐわない/反する」存在とみなされるからだ。それは当然のことで、本来は神の庇護下にあるべき民がえて堕落し、信仰を忘れて住まっているのだから発見次第に神意がくだるは道理とうぜん


 つまり、そこには流木のような人が集っているということ。池の岸、水槽の縁で淀みが固まった箇所に過ぎない。


 管理者不在の時代にそういった箇所は目立つものだ。調整メンテナンスが行き届かないのは仕方がない。人間では人間を管理することは不可能。


 そういった当然のことではあるのだが、人はされどしぶとい。頑固な汚れのように落としにくく、落としてもまたこびり付く。それが目立って大きくなったものこそが大地域なのである。逆に小規模な地域は小地域アジトなどとも呼ばれる。


 アグゥら3人が滞在する大地域はやや北方。帝域よりはエルダランド(=中立国の1つ)に近い場所で形成されていた。


 1ヵ月前にかせいだ金貨・銀貨・その他時計など……いくらかはサナッチによる「将来の貯金」へと入ることになるのだが、大半は生活費として投入される。


 サナッチは基本的にお金や物にうるさい。よく所有権を誇示してすぐにコートの裏ポケットへと押し込むくせがある。ただ、手に入れるまではこだわるのに何故か消費のタイミングになると物欲がゆるまってしまう。


 何よりも健全で楽しく出来る限り長い人生を目標とするサナッチはしかし、どうにも今日の充実感による誘惑に弱いようだ。というよりは何かと“信念”が緩いのかもしれない。何か過去に大きなものを諦めでもして、信念プライドの基準がズレてしまったのだろう。だからいつまでたっても「将来の貯金」はポケット内に収まってしまうのである。


 穴だらけの布。頼りない天井の隙間から太陽の光を見上げている。


 サナッチは太陽の光を眺めながらつぶやく。


「実際、どうしましょうかねぇ。このままじゃぁ、また将来すばらしいみらいへの貯金エネルギーがゼロになっちまう」


 不潔な男の呟きにその横で彼と同じく仰向けに寝ころがっている少年が呟き返す。


「いいんじゃねぇの、それで。サナッチさんが生きたいならまた稼ぐしかないよ。俺はどぉでもいいが、あんたの手伝いならやるよ。どぉせ他にやることもないし」


 アグゥが呟くとそのまた横で仰向けに寝ころがっている少女が呟いた。


「私もどぉでもいい……なんて思っているのだけどね。お腹が空くのだけはどうにも我慢できない。死ぬのは別にいいけど、空腹で死ぬなんてのは嫌よ。死に方を選びたいわけじゃないけど、ともかく空腹はなんか情けないし苦しいし、イヤ」


 セラが呟いた時。


 ソレはいつの間にか人通りが少なくなっている目の前の道、その先から――



『 うぉらぁ!! てめぇ、覚悟しろよ!! やっちまえ!! 』



 ――などと、人々の怒鳴る声が聞こえてきた。


 アグゥら3人は揃って上半身を起こして通りの先を見た。サナッチが邪魔なのでアグゥは前かがみに腰を曲げ、そのアグゥが邪魔なのでセラは前のめりに四つんいになって状況を確認しようとする。


 しかし、3人のだれからも何も解らない。どうにも道の先には人混みがあって何も見えないのである。人混みがある、何かがある、ということしか解らない。


「……またかなぁ。ねぇ、どっちだと思う?」


「さぁな。まぁ、ほぅっとこうぜ。いずれにしろ俺たちには何も関係ねぇこった。ったく、つくづく暇だなここの奴らは……」


「そうね。何にしろ、見たって気分が良くなるものではないだろうし。もっと楽しそうな歓声とかだったら気になるけどさ……」


 サナッチは興味をもっているようだが他の2名はすっかり興味が無いらしい。改めて仰向けに寝そべった。


 サナッチは少年と少女の様子を見て少し迷ってはいた。迷いはしたものの、やっぱり気になって……立ち上がると鉄仮面をしっかりとかぶり、人混みの方へと小刻みな足さばきで駆けて行った。


 穴だらけの布の下。こぼす太陽の光を受ける少年と少女。


 少女が言う。


「――ねぇ、本当にもう何も食べないの?」


 少年が答える。


「くどいってお前。だからもういらねぇんだよ……」


「本当の本当? ……いつか本当に弱って死ぬわよ?」


「だから、それでもいいじゃねぇか。死ねるんだからよ」


「まぁ、確かに。だけどそう言ってて死なないものね。でも不思議だわ……」


「……あ゛? またお前、どうしてそう一々と俺の言葉に――」


「確かにあなた、食事とか本当に少ない。だけど生きてる……不思議」


「はぁ?? 知るかよ、昔ッからこうなんだよ。この紅い炎とおんなじさ」


「生まれつき? 本当はこっそり何か食べてたりしない?」


「お前……お前ってやつは本当に……ふぅ。もういい、話かけんな、鬱陶うっとうしい」


「……あら、それはごめんなさいね。でも、気になったのだから聞くくらいいいじゃない」


「…………。」


「はいはい、鬱陶しい女は黙りますよ! ほんっっっとに、態度の悪い男なんだから……」



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