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『二つの炎――後章:二つの炎(1)~サルダン=ブローデン~』

1.二つの炎~サルダン=ブローデン~


 マバラードに降り立った存在。それこそは時のアプルーザン帝、オルダリア帝国の象徴でもある“サルダン=ブローデン”であった。


 産まれながらに黄金の輝きをまとっていたとされるサルダン帝。それはマバラードに降り立った際にもやはり、黄金の光を纏っていた。


 金色の瞳孔をもつ顔立ちは均整きんせいがとれたものだが、その表情変化は少なく、作り物かのように美しくも不気味である。長い金色の髪は太陽光をとおすようにしなやかで、その身にはゆったりとした白衣をまとっていた。


 長い白衣のすそを揺らがせて斜面の大通りを下る皇帝、サルダン。


 その姿を見たマバラードの人々は「なんだあれは?」と不思議がったり、「まさか……」と信じられないという表情を浮かべていた。


 誰かが発した「皇帝がなぜここに……?」という言葉。それを聞いた近くの人が「なんだって!?」と声を張り上げる。


 そこから水面を穿うがったかのように広がる人々の感情、“驚愕”。


 人々が黄金なる存在の正体に気がつき始めた頃。海岸線を見下ろせる丘から慌ただしい一団が通りを下ってきた。


「どけどけィッ、我ら皇帝直属の衛士えいし、“牙備きばぞなえ”である!! ものども道をあけんか、道を!!」


「陛下、皇帝陛下……サルダン様ッ!! お待ちくだされ、我々を置いて行かないでくだされッ!!」


 重厚に装備された軍馬を駆り、斜面の大通りを下る軍勢。それは帝都アプルーザンの王宮、その中心にある人物を守護するべく結集された剣士の一団。


 各人が“※一個小隊に相当する(=当時の軍備だと兵士10名ほど)”とうたわれる帝国の誇り高き精鋭集団である。


 それらが慌てふためいて馬を走らせていた。大通りを駆け抜ける一団はやがて通りの最中さなかで黄金の存在に追いついたが、追いついただけでそれ以上できることはない。


 ただ、「遅れて申し訳ありませんッ!」と謝罪してからそのあとをついていくのみである。そのことに皇帝サルダンはなんら反応もせず、独り言をこぼしながら変わらず歩き続けた。


 マバラードの人々は呆気にとられて呆然とした。そして遅れて駆け抜けた騎兵が揺らがせる“アプルーザンの竜蓋紋りゅうがいもん”を見て確信する。


「こ、皇帝だ……本物のサルダン帝が……この、マバラードに……?」

「す、すげぇ……本当に“金色”に輝いてる……人間じゃないんだ、やっぱり」

「た、大変だぁ……ボスに報告しないと。いよいよこの街は帝国に直轄ちょっかつされるのか……」

「近づいても大丈夫なのかな? いや、やっぱり恐い……噂によると、くしゃみをしただけで町が壊滅かいめつするバケモンだって聞くぜ?」

「だとすりゃ、マバラードも終わりだな!? ああ、どうか母なる竜よ! この地に偉大なる慈悲じひを与えたまえ!」

「馬鹿だなぁ、その母なる竜があの人なんだろ? じゃ、何に願ってもダメさ。ハッハハ……ハハ」


 アプルーザンの人たちは様々に言った。


 なにせうわさでしか知らない皇帝だ。その噂もとんでもないものばかりであるが、実際に“光り輝く”姿を見てだれもが畏怖いふしておびえた感情を抱いた。


 本来の統治者たる皇帝が姿を現したことで怯えるアプルーザンの人々。そうした雑踏の声を聞き分けつつ、されどサルダン帝はまるで何も反応しない。


 すべて聞こえてはいる。聞こえているが……それら情報に必要性を感じるものがない。だから、脳の機能をそこにさく必要はない。


 ただ、治安を乱しているという派閥に関する情報はこの時点で収集が開始されていた。数多の音からサルダン帝は情報を選別・分類して脳内において処理していく。


「まずは解体するべきか。だが、くだんの海とやらにも何かあるかもしれない。直接見てみよう」


 独り言は続いている。彼はだれにも話しかけず、自分に対してのみ言葉を発している。自分が発する言葉もまた、彼にとっては情報の1つだからだ。それは収集する。


 感情の無い機械……今も昔も人々はサルダン帝をそのように評することが多い。


 人を統べるためだけに産まれ、そしてそれを実行した人ならざる者――竜人の中で最も竜に近い存在。


 晩年のこともあって実際、そのような評価が下されるのも仕方がないだろう。いや、この時にあってすら彼を“人間として”評価することは難しいことだ。


 まるでこの世に産まれおちた制御装置かのような存在……それがこの頃までのサルダン帝である。


 この日、その時まで……だれも彼を変えることなどできなかった。まともにれることすらできなかったのである。



 “黄金の竜光りゅうこう”という隔壁かくへきを破る者など、ありはしないと誰もが――――。





「ハァハァ……よぉっし、追いつめたわよぉ~?? さぁさぁ、後ろにはもう行けないわ! 観念かんねんして私に捕まりなさいッ!!! フゥフゥ……!」


「うわ、前にがけが……。つかよ、こんなところまで追いかけてくんな! そんな息もきらして何考えてんだお前は、バカよもうっ!!」


「何考えてんだって……それはあなたを捕まえるってもうそれだけよ!! さぁ、一緒に家へと行きましょう!! お昼ご飯ですわよ!!?」


「だぁぁっ、からぁ~~!? 俺はお前んの堅苦しい飯が苦手なんだって…………ん??」


「別に堅苦しくないわよ、あなたがれてないだけです。ほら、手をつなぐからもう逃げないでよね・・・・・っえ??」


わりィな、アルフラン! なんか俺の舟に……“ロキアスペシャル”になんか知らないやつが近づいてる! ……っつか、なんかあいつ光ってねぇか? なんだあいつ……いや、なんだ?? おいマテマテ、てめぇ…………てめぇあのヤロウ!! 得体の知れない手で俺様の舟にさわるんじゃねぇッ、“金ピカヤロウ”!!!」


「ちょっと、ロキア!? …………んもぅッ! 私の頭を飛び越えるなんて無礼ぶれいが過ぎるわ! ……まぁ、いいけどさ。そういう、淑女のあつかいってものも私が正してあげないとね!!」




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