『二つの炎――中章:蒼炎を帯びた英雄(4)~マバラードの怪物~』
3(前節).蒼炎を帯びた英雄~マバラードの怪物~
複数の大小派閥が鎬を削っていたマバラードの街。突如として沸いた熱気によりもたらされた社会の混沌領域。
そこに“ある少年”が流れ着いた。彼には身寄りがなく、両親を早くに失ったらしい。
その少年は街にやってきたその日の内に人数だけみれば最大とされた“マバラード守衛隊”のならず者たちを数百人ほど叩きのめした。
あまりに常識はずれなことだったので“嘘話”として信じられていなかった節もある。守衛隊がわざと弱みを見せて他の勢力を誘っている、つまりは罠だとすら言われていた。
実際にはこの時点でマバラード守衛隊は壊滅に近い状態となっており、街の情報を正確に把握できる立場にある人々は「何かとんでもないモノがこの街に紛れ込んだ」と、その話題でもちきりとなった。
ある日にフラリと姿を現した少年。銀髪の彼はそれほど体格が優れているわけでもないのだが、とにかく規格外に身体能力が高く、そして何より“乱暴”だった。
その“怪物”は少しでも目ざわりだと思うと襲い掛かってくるとされ、商人などから小銭をちょっと奪っ(うば)ていたり、弱い立場の人をちょっと小突いているだけで攻撃対象にされたらしい。
相手がだれでも関係なく、派閥の有力者だと名乗ろうが聞く耳もたずに殴り飛ばす。人数が多かろうとも関係ない。
窃盗部隊の数名が立ち直れないほどの恐怖を植え付けられたとして、マバラード守衛隊が報復行動を即座に行ったがそれは1時間ともたずに返り討ちとなった。
ロキア――そのように名乗った少年は通常でも信じ難い身体能力を備える。しかし、これが真に危険なのは武器などを持ち出した相手に対して気合を入れた場合だ。
少年ロキアは原理不明ながらその腕部、及び脚部などに“青い炎”を纏うことができる。そうなるとその部位には刃だろうが矢だろうが通用しない。
さらに該当部位の破壊力も増すとされ、威嚇として放たれた大地への一撃によってマバラード守衛隊は戦意を失い、首領は真っ先に街から逃げ去った。
蒼き炎を帯びた存在――――深い青の火を灯して戦うその姿を見て、力ある人々はそれを“怪物”とみなして関わらないようにした。
尚、ロキアに接触して仲間に引き込もうと考えた派閥もあった。しかしそれが“報酬”についた語った直後、蒼い拳が炸裂したという。
“ロキア”――後に“怪物を倒した英雄”として語られる彼だが、その少年期はとても荒くれたものだった。




