99 親切なクラスメイト
入学式を終えると、生徒達は教室へと向かった。
ホームルームで今後の生活について説明がされた。
小学校と中学校で授業の流れが変わるように、高校でも変化が起こる。
学院は進学校としても知られ、そして一貫校。
授業の進みは早く、予習復習に手を抜こうものなら置いて行かれる。
説明を受けただけで、学院の授業ペースをまだ分かっていないけれど、受けた説明の通りなら、かなり苦労しそうだ。
私は高校からだけれど、学院の生徒は大半が初等部からの人間ばかり。
この点も私が不安に思う要素の一つだ。下地の無い私は、生まれた時から英才教育を受けているであろう生徒達の中で、どこまでしがみ付いていられるだろうか。
敷地に入った時とは違う不安が私を襲っていた。
一年間過ごす教室に入ってからも、驚きがあった。
入学式では見かけなかった顔が多い。
(これだけ見ない顔ばかりだから、入学式の会場が広く感じたのも当然か)
入学式は初等部から高等部までの新入生のみが集められ、一纏めで行われた。
既に席を置いている生徒達は、別の場所で始業式という訳だ。
一体、全校生徒が集まるような行事になった時にはどうなるのだろう。
(運良くエミリーと同じクラスになったのは良いけれど、近付けそうにないわね。彼女の家柄のせいか、私には縁遠い人種が壁を作っているし)
知り合いが居るという安心感。コネ作りのとっかかりが出来たと思うと、最初は幸先がように思った。けれど、それも束の間。自由時間になると、彼女の周りには人が集まっていた。
その人気を見せつけられると、関係を継続する難易度の高さが実感できた。
もう、彼女に集まるクラスメイト全員が、要人警護の人に見えてきたほどだ。
(週に数回だけ接する関係を目指していくかな)
付き合い方を決めた私は、放課後の予定について考える事にした。
(早めに部活を決めたい所だけど、学院内のグループ事情の把握を優先した方が良いかも。変な所だと、人扱いされないかもしれないし……)
「平野さん。平野さん」
考え事していると、エミリーとは違う声が私を呼んでいる事に気付いた。
「何でしょう?」
物好きだなと思いつつ、視線を向けると私には馴染みのある外見の人だった。
国が同じだと分かったけれど、雰囲気が学院に馴染んでいる。だから高等部から入学した人では無いようだ。
「あなた、高等部からの子でしょ? だから困ってないかと思ってさ」
一人で浮いている私を見て、親切にしてくれようとしているようだ。
上流階級の哀れみ、などと嫌味な事を言う気は無い。
エミリーと比べると、彼女は鼻に付く感じがしないから。親しみやすそうな、同級生感の強い子だと思った。
この辺りは、私の心理状況や外見による所が大きいだろう。
エミリーは、もう見た目からしてお嬢様だと分かる立ち居振る舞いをしていたから。
「そうでしたか。ですが、残念ながら中等部から居ましたけど」
親切な子なのかもしれないけれど、目的も正体も分からないので警戒し、嘘を吐いてみた。
「いやいや、それは嘘でしょ。だって全く馴染んでる雰囲気じゃないもの」
冗談に軽くツッコむ感じで指摘されてしまった。全く不快感は無かったし、友達同士なら自然と行われるような返しだった。
それにしても鋭い。もしかしたら、自分が思っている以上に、私の振舞いは不自然なのだろうか?




