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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
暗躍する人々
90/182

90 慌てる二人 真面目な二人

 それに気付かされたのは、とある日の朝でした。

 私はその日、朝食の途中で、教室に置き忘れをしていた事に気付いたのです。


 忘れたのは、ポケットティッシュのケースでした。

 この学院には、ポケットティッシュ一つでも上品さが必要でした。

 和美達の前で剥き出しの物を取り出したら、そうやって使っている生徒は居ないと言われてしまったのです。

 しかし、ポケットティッシュのケースなんて物、私は持っていません。

 作る事は簡単ですが、柄が何でも良い訳では無いのです。

 学院に相応しいと考えると、柄や生地を追求しなければならなかったのです。

 そう悩んでいると、和美がケースを一つ、分けてくれました。

 普段ならケースだけになったら制服のポケットに入れておくのですが、今回は何かの拍子で机の中に押し込めてしまったのです。そして、そのまま一晩忘れてしまったのです。

 ティッシュの確認をしようとして、剥き出しなのに気付いて思い出しました。

 人が集まる前に取りに行こうと、私は急いで教室に向かいました。


「あれ、和美とふーりん。早いですね」

 既に教室に居た二人に驚きました。この時間に会うとは思っていなかったので。

「もしかして、二人も忘れものですか?」

「そ、そうじゃないですよ」

 ふーりんが妙に慌てた様子で、私の前に立ちました。

「どうしたんですか? 机に行かせてください」

「ちょっと待って。もう少しだけ」

 和美も何やら慌てているので、これはおかしいと思いました。

 なので、道を譲ってくれないふーりんの横腹を解してあげました。

 彼女は面白いくらいに足から崩れ落ちました。

(脆い。脆すぎる)

 まあ、おかげで簡単に隠されていた私の机が姿を表しました。


「花ですか? 教室に花なんて置いてましたっけ?」

 種類は分かりませんが、私の机に白い花が置かれていました。

「あの、陽子さん。これは私達では無いんですよ。だから誤解しないでください」

 とても必死に誤解を解こうとするふーりん。

「誤解とは? 今日から教室に花を飾る事にしたという訳ではないのですか?」

「えっと、その、あの」

 聞くほどに取り乱すふーりん。何だか面白いです。

「ふーりん、ちょっと落ち着いて。陽子は全く理解してないから。だから焦らないで」

 二人だけが分かっている話のようです。こうなると、気になって仕方ありません。

「私だけのけ者ですか? 友達だと言ってくれたのは嘘だったのですか?」

 冗談めかして言ったのですが、和美の様子が少し怖かったです。

 その反応を見て、笑い事ではない何かが起こったのだと思いました。


「あの、冗談では流せないほどの事が起こったのですか?」

 恐る恐る訊ねると、和美はふーりんに対して言いました。

「これで分かったでしょ? 陽子は分かってないって」

「そうですね。では、冷静に状況を伝えた方が良いですね」

 ドラマとかである場面です。こういう時は焦らさずにスパッと言って欲しいものです。

「陽子さん」

 真剣な顔で近付いてくるふーりん。

「な、何でしょう。ふーりん」

 二人が真剣な顔をしています。何だか怖いです。

「これはいじめです」

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