90 慌てる二人 真面目な二人
それに気付かされたのは、とある日の朝でした。
私はその日、朝食の途中で、教室に置き忘れをしていた事に気付いたのです。
忘れたのは、ポケットティッシュのケースでした。
この学院には、ポケットティッシュ一つでも上品さが必要でした。
和美達の前で剥き出しの物を取り出したら、そうやって使っている生徒は居ないと言われてしまったのです。
しかし、ポケットティッシュのケースなんて物、私は持っていません。
作る事は簡単ですが、柄が何でも良い訳では無いのです。
学院に相応しいと考えると、柄や生地を追求しなければならなかったのです。
そう悩んでいると、和美がケースを一つ、分けてくれました。
普段ならケースだけになったら制服のポケットに入れておくのですが、今回は何かの拍子で机の中に押し込めてしまったのです。そして、そのまま一晩忘れてしまったのです。
ティッシュの確認をしようとして、剥き出しなのに気付いて思い出しました。
人が集まる前に取りに行こうと、私は急いで教室に向かいました。
「あれ、和美とふーりん。早いですね」
既に教室に居た二人に驚きました。この時間に会うとは思っていなかったので。
「もしかして、二人も忘れものですか?」
「そ、そうじゃないですよ」
ふーりんが妙に慌てた様子で、私の前に立ちました。
「どうしたんですか? 机に行かせてください」
「ちょっと待って。もう少しだけ」
和美も何やら慌てているので、これはおかしいと思いました。
なので、道を譲ってくれないふーりんの横腹を解してあげました。
彼女は面白いくらいに足から崩れ落ちました。
(脆い。脆すぎる)
まあ、おかげで簡単に隠されていた私の机が姿を表しました。
「花ですか? 教室に花なんて置いてましたっけ?」
種類は分かりませんが、私の机に白い花が置かれていました。
「あの、陽子さん。これは私達では無いんですよ。だから誤解しないでください」
とても必死に誤解を解こうとするふーりん。
「誤解とは? 今日から教室に花を飾る事にしたという訳ではないのですか?」
「えっと、その、あの」
聞くほどに取り乱すふーりん。何だか面白いです。
「ふーりん、ちょっと落ち着いて。陽子は全く理解してないから。だから焦らないで」
二人だけが分かっている話のようです。こうなると、気になって仕方ありません。
「私だけのけ者ですか? 友達だと言ってくれたのは嘘だったのですか?」
冗談めかして言ったのですが、和美の様子が少し怖かったです。
その反応を見て、笑い事ではない何かが起こったのだと思いました。
「あの、冗談では流せないほどの事が起こったのですか?」
恐る恐る訊ねると、和美はふーりんに対して言いました。
「これで分かったでしょ? 陽子は分かってないって」
「そうですね。では、冷静に状況を伝えた方が良いですね」
ドラマとかである場面です。こういう時は焦らさずにスパッと言って欲しいものです。
「陽子さん」
真剣な顔で近付いてくるふーりん。
「な、何でしょう。ふーりん」
二人が真剣な顔をしています。何だか怖いです。
「これはいじめです」




