88 大団円!? 丸く収まり、私はペンを握っていました
ですが、現実は容赦無く私を呼びます。
「陽子さん。私、これ、どうしたら良いの? 心の痛みが収まらないのだけど……」
抱えていた秘密を盛大に暴露された挙句、自身のベッドの上では友達とその妹が姉妹愛を深めている部屋の主。主の問いかけに対し、私はどのような言葉をかければ良いのでしょう? どのような言葉で接すれば良いのでしょう?
困り果てたので、担当にして専門の人に任せる事にしました。
「大丈夫ですよ。先輩の隣りには、支えてくれる妹が居ます。一人じゃないですよ」
「妹……」
ショックが強すぎて、その存在を忘れていたようです。自分の肩を掴み、寄り添っている和美の存在。先輩は、やっと気付きました。
「お姉様、恥じる事は無いって。考えても見てください。知られたのは、ふーりんに陽子ですよ。ぬいぐるみを可愛がるなんて、普通に誰でもしている行為ですよ。二人の奇行と比べたら、蚊に刺されたようなものでしょう? いや、そもそも無傷ですって」
私は、和美の発言の真意を問い詰めたくなりました。
「陽子さんと、フレデリカさん……ね」
私と目が合いつつも、気まずくなるどころか、一人で納得したような反応をする彼方先輩。
これについても、ちょっと問い詰めたい所です。
「そうだね。私、恥ずかしがる事なんてしてないわ」
ここからの立ち直りは早かったです。
「私、これからは恥ずかしがらないでいるよ。部屋も前に戻す」
「いえ、それは止めてください。同居するのに片付けたのに、あたしの場所が無くなるから」
どうやら相当溜めこんでいるようです。
この部屋のクローゼットの中には、何体のぬいぐるみが詰め込まれているのでしょうね。問い詰める事は止めて、代わりにクローゼットを解き放ってみたくなりました。
「とりあえず、問題は解決したみたいですね。良かったです」
湧き上がる衝動を抑えつつ、私は建前を口にしました。
二組の姉妹の関係はより深く、強くなっていました。
その光景を見続けていた私は、どうしようもなく寂しくなっていました。
「あ、陽子。今日はあたし、この部屋で寝るね」
「私もです。今日は私も、エミリーお姉様と部屋に戻って過ごしますね」
極めつけは、同居人二人のお泊り発言。
これで私の心の寂しさは天井を超えました。
「わ、私だって、お姉様が居るんですからね。四人に負けないんですからね」
二組の仲に当てられ、負け惜しみを口にして部屋を出ました。
私が飛び出して向かう先は、一つしかありません。
「お姉様。私です。入りますね」
あの場に居なかった光お姉様の部屋へ、合鍵を使って飛び込みました。
「あら、どうしたの?」
ベッドに居た光お姉様が言いました。
「聞いてください、お姉様。私、寂しいんです。今日は一人なんです」
「そうなんですか」
「そうなんです。なので、お姉様に慰めて欲しいんです。お姉様っ!!」
「ごめんなさい。妹は居ないの」
馴染みの返しも、今日ばかりはクリティカルヒットするほどです。
「うう……。分かってはいましたけど、酷い……」
心折れ、涙がもうすぐそこまでやってきていました。
「お話、聞きますね」
耳を疑いました。お姉様が自ら行動をしてくれたのです。
顔を上げると、自分の横にどうぞと、手で自分の隣りを叩き、招いてくれていました。
「お姉様、ありがとうございます!!」
潤み、溢れそうになっていたそれを拭い、私は喜んでお姉様の隣りに座りました。
時間を忘れ、大事な事も忘れ、この日の出来事を話し続けました。
後日、私だけが反省文一枚の刑になるのですが、それはまた別の話です。




