85 始まりはノックから 礼儀から始まる不条理の夜
(あ、これ、原因知ってる反応だ……)
私は無言で和美を見つめました。
「陽子さんの反応……。和美さん、何か知っているのですか?」
目敏く私の視線に気付き、和美に詰め寄るふーりん。
「あ、あたしは知らないよ。こっちが三人になっている間、二人が部屋を行き来してた事しか知らない」
(ほとんど彼方先輩が関係していると言っているのですが……)
しかし、和美の中で確信があったとしても、私もそうだと言えるような確かなものはありません。そもそも、決めつけは良くありません。
「早い話が、彼方先輩の所へ行って確認をすれば良いのでは?」
なので、見るが早いと、最速で関係の有無が分かる提案をしました。
「さっすが陽子さん。行きましょう。今、行きましょう」
お姉様をたぶらかした泥棒猫を、白日の下に晒すとばかりにテンションが高いふーりん。
私達は強引にふーりんに引っ張られ、部屋を出ました。
「で、ここが彼方お姉様の部屋」
部屋を知らないからと、ふーりんに案内を強要された和美。似たやり取りに覚えがあり、和美はつくづく巻き込まれるなぁと、自分の事は棚に上げて思っていました。
「あ、でも、お姉様は居ないかもしれないよ。光先輩の所に行ってるかも」
「問題ありません。次は光先輩の所へ行くまでです。出会うまで何往復でもしますよ」
これはもう執念でした。何故か、少し背中が寒くなりました。
和美はこうなっては仕方が無いと諦めたらしく、溜息混じりにドアをノックしました。
部屋の方から物音が聞こえました。和美の表情が暗くなりました。
「はい、どちら様?」
来客予定が無いからか、又は前回の経験からか、ドアを開けずに先輩は対応していました。
「彼方先輩。少々お話をさせてください」
「その声はフレデリカさん? ちょっと待って」
鍵を開ける音がして、ドアが開きました。
「話って、何かあったの? あれ、二人も一緒なんだ」
「何で居るんですか。もう、何も言いません……」
諦めた表情と声で和美は言いました。
「え? いきなりどうしたの? 私、また何かしちゃったの?」
突然訪ねてきた妹に、何故そんな事を言われなければならないのか。当然、彼方先輩は分かりません。先輩は、困惑した表情で私に視線を向けました。
「何というか、心中はすぐに察せるようになると思います」
身をもって体験した方が早いだろうと、私は丸投げしました。
「え? え?」
私達の振る舞いが理解出来ない彼方先輩。そして、部屋のドアがグイっと動きました。
「フレデリカさん、どうしたの?」
自然にではありません。ふーりんがドアを開けたのです。
「すみません、先輩。少しだけ、すこーしだけ、お部屋を見せてください」
「え、急に!?」
ドアと彼方先輩の間を通り抜け、ふーりんは部屋へ入っていきました。




