83 鋼女様誕生 無力な私は恥と共に去りました
彼方先輩は、気さくで接しやすい人です。普段の振舞いも、エミリー先輩のようにこれぞお嬢様というような感じはありません。
「彼方の名誉のために言っておきますが、彼女も必要とあればその様に振舞えますからね」
「自分で下げておいて、上げますか」
「ですが、分かりやすい例だったでしょう?」
確かに、私にとっては一番分かりやすい例です。けれど、彼方先輩の事を思うと頷くのは躊躇われました。
話を戻しましょう。狼狽えるという事は、学院の教えが守られていないという事に繋がるようです。
私としては、何度かエミリー先輩絡みで不安定モードのふーりんを見ています。なので、この教えについての実感が湧きません。
逆に言えば、ふーりんがここまで取り乱すのは、エミリー先輩に関する事だけという事になるでしょう。まあ、これも言い過ぎだとは思います。流石に家族くらい身近な人に何かあれば、ふーりんも同じように取り乱すでしょうから。
と考えている間に、ふーりんの中で答えが出たようです。
「決めました。私、これからは家族、親戚、友達にはふーりんと呼んでもらう事にします」
私の想像を越えた発言でした。
これはもう、身内に何が起こっても取り乱さないでしょう。鋼の精神を持つ女。鋼女様と、心の中で呼ぶ事にしましょう。
「では、解決したようですし、二人の世界に私は要らないでしょうから、部屋に帰りますね」
鋼女様となったふーりんは、自分の思うままに動くでしょう。そう思った私は、帰り支度を始めました。
「そんなに急がなくても良いのよ?」
ふーりんの突き抜けた答えを聞いたエミリー先輩は、動揺を隠せず、一人にされては困るとばかりに私を引き留めました。
ですが、私にはふーりんをどうする事も出来ません。無力な自分を恥じ、どうにもできないと無言で首を横に振って部屋を出ました。
この後の事は、若い姉妹二人で解決してもらいましょう。




