75 迫るあれ これはまだ公表されていませんが、私には効果があります
これで寂しがりやなエミリー先輩の問題は一先ず解決です。
「それじゃあ、陽子さんが暫く来れない事、光に伝えとくね」
「な、なんでそうなるんですか!? 彼方先輩!!」
私は多少時間が減るにしても、今までと変わらず光お姉様に関わるつもりでした。
「流石に体力的に無理でしょ。それに加えて、時間も忘れての初練習。これは確実に来るね」
「く、来るって、何がですか……」
恐ろしい怪物でも来るような言い方をする彼方先輩。次の言葉を待つ私は、不安から喉が鳴りました。
「筋肉痛」
とんでもない大事を言うような雰囲気でのこの一言。肩透かしが過ぎて倒れそうになりました。
「いや、実際の所、筋肉痛の子に光は任せられないよ」
「どうしてですか。痛みくらい、お姉様の傍に居れば治ります」
「光は万能治療薬なの?」
「少なくとも私にとってはっ!!」
私の体にビタミンだのカルシウム等という栄養は要らないのです。お姉様と出会ったその日から、お姉様を摂取する事で、お姉様だけで私は生きていけるようになったのですから。
「考えている事は何となく分かったよ。けれどね、陽子さん。人はお姉様だけでは生きていけないんだよ。それに、動きが鈍くなると分かっている人に光を任せたら、どちらかが怪我をするか、両方が大怪我なんて事になる。だから私は許さないよ」
最後の一言が強い口調になり、場が静かになりました。
「ふふ、彼方も中々先輩っぽい事を言うようになりましたね」
そんな空気に一石を投じ、変えたのはエミリー先輩でした。
「これも妹を持ったからかもね」
和美さんの方を向いて、彼方先輩は言いました。
「それだとあたしが、人間的に成長しなくちゃいけないほどに迷惑をかけてるように聞こえるんですけど」
「いやいや。和美は手のかからない良い妹だよ。だからね、これでも凄く気にかけてるんだよ。そのおかげで、私も成長してるって言いたいの」
「口が上手いと言えば良いのか。けれど、ここは素直に受け取りますけどね」
和美が珍しく顔を赤らめ、照れていました。
「さてと、エミリー。今日はもうこれくらいにしたら?」
「そうですね。初日は手ごたえを感じられる程度の方が続きますからね。今日は少し張り切り過ぎました」
このやり取りで、今日の練習は終わりとなりました。
(え、私的にはもう十分やり切った感じなんですが……)
先輩二人のやり取りを聞きつつ、私は思っていました。
ですが、ふーりんが居る手前、言うに言えませんでした。
そして、皆での片付けが始まり、私と光お姉様との時間についての話は、うやむやのままで終わってしまいました。




