68 窮地 ふーりんの条件
ダンスとは、社交ダンスの事を指すのでしょう。ですが、私はそんなこじゃれた行為など経験がありません。出来て盆踊りです。
「あら、陽子さんはダンスの授業を取ってはいないの?」
「この学校の入学が第一目標だったので、お嬢様になる事を目的にしていた訳では無いので」
エミリー先輩の疑問に答えると、光お姉様が面白いとクスクス笑い、他の皆さんは、残念な子を見る目で私を見ていました。
「陽子さんにダンス経験が無いとなると大変だわ。授業の変更は出来ませんし。ダンス部に今からでも入部する方が早いでしょうか。あそこなら、専門の先生が顧問ですし……」
「エミリー先輩。私はクラスでも肩身の狭い思いをしています。部活もきっと同じで、馴染むどころか水と油のように相容れない可能性の方が高いですよ」
「そうなのですか? いえ、考えればそうですね。でも、それなら余計に困りました。独学だったり、専門でも無い者の教えで変な癖が付いては困りますし……。フレデリカ、どうしてもダンスでなければいけませんか?」
「駄目です。息を合わせると言えばダンスです。二人の仲を確認するには丁度良いと思いますよ。それに、お相手が出来た時を考えると、陽子さんが学ぶ良い機会です」
「それはそうですね。ですが、年末までにお相手が見つかればの話ですけど……」
エミリー先輩の言葉は、今の光お姉様では無理だという前提での発言でした。
この場は仲の良さを見せる場だと自分に言い聞かせ、私は我慢しました。ここで「絶対に姉妹になります!!」と言って反論しては、今の苦行が台無しになってしまいますから。
ですが、この発言を除いても、お姉様の心身の状態を見ると、エミリー先輩の考えには不快ですが同意できます。
未だ頑なに拒むお嬢様に、同意してもらう必要があるのですから。
私はお姉様一択なのですが、お姉様によほどの変化が起こらなければ、シスターは成立しないのです。
お姉様を支えたいという思いがあり、今の私の原動力はほぼその思いで占められています。
これが妹になりたいという思いで動いていたら、既に心が折れていたでしょう。




