62 ふーりんの部屋出 昨日も二人部屋は二人部屋でした
教室へ行くと、ふーりんの様子がおかしい事に気付きました。
隣りに居る和美さんは事情を既に知っているのか、頭を抱えています。
「二人とも、おはようございます」
挨拶をすると、ふーりんが私の方を向くなり、立ち上がって言いました。
「昨日から二人の部屋に住む事にしました」
「え? ええ!?」
何が何やら分かりません。私が部屋を出た後、何が起こったというのでしょう。
真相を知るであろう和美さんの方を見ました。
「おかげで寝不足だよ。陽子」
私のおちゃめな行為以降、私達の距離感はぐっと縮まりました。私も和美さん相手にはあまり遠慮を感じなくなりました。和美さんは私を呼称無しで呼ぶようになりました。
それはさておき、どうやら先ほどは、眠気で落ちそうになる頭を支えていただけのようです。
「あの、私達の部屋は二人部屋でしたよね。三人で暮らすには手狭では?」
机やベッド、一人用箪笥。クローゼットの中に私達の制服を掛けていますが、三人となると、スペース的に厳しいです。それにふーりんの私物もと考えると、部屋の広さが少々足りないように思いました。
「大丈夫です。和美さんの場所を半分貰いますから」
「いや、あたしのとこ、パンパンなんだけど」
「昔からの友人が困っているのです。男を見せなさい」
「あたし、女なんだけど……」
「物の例えに屁理屈を言う人は、エミリーお姉様部屋送りにしますよ」
それは罰ゲームなのでしょうか? 私にしか効きそうにありません。
いえ、そもそもの話、自分の姉を罰にするのはありなのでしょうか?
もしかすると、今回の問題の理由はここにあるとか?
「それは流石にちょっと……」
「何ですか。お姉様に何の不満があるんですか」
「いや、不満があるから飛び出したのはそっちでしょ?」
和美さんの言葉に、事情は分からないままですが、心の中で同意していました。
「それにね、エミリー先輩と同居なんて精神が削られるよ」
「でも、あの人って皆から憧れられるほどの人なんですよね?」
憧れの人と暮らせるのなら、諸手を上げて喜びそうなものだと思うので、私は和美さんに尋ねました。
「分かってないなぁ、陽子は。相手はね、全校生徒が知る超有名人だよ。そんな人と同居するって事はさ、言わば独り占め。こんなの、吊り合う相手じゃないと気苦労でげっそりしちゃうって」
和美さんの言葉に、光お姉様とライカさんとの関係が浮かびました。
(私と同じ庶民で、一切関係の無かった人気者との間で結ばれた突然の姉妹。しかも、約束を反故にしての。当時のお姉様は、和美さんが想定している以上の苦労を背負っていたのでしょうね)
私は決めました。




