61 罪人私 「つい嬉しくなってやってしまいました……」
「光、何があったの!?」
彼方先輩でした。全力疾走でここまで来たのは、乱れた呼吸と肩の上下運動の激しさから分かりました。
「せ、先輩。私、お姉様に抱きついたら……」
「抱きついたらどうし……」
私の向こうお姉様を見ようと首を伸ばした先輩は、気絶したお姉様を見て言葉を無くしました。
「あなた、殺してしまったの!?」
「違います。お姉様にはまだ息があります。ほら、ええっと……。ほら、ティッシュでこうすれば」
顔に一枚のティッシュをかけました。するとお姉様の呼吸でティッシュが動きました。
「ほら、ね?」
「『ねっ』とか言ってる場合じゃないって。とにかく寝かせて。ベッドに寝かせて」
先輩は頭の方を、私は足の方を持ってベッドに運びました。
「所で、電話の光、戻ってたみたいなんだけど」
「きっかけは分かりませんが、戻っていたと思います」
「あなた、何をしたの?」
「何もしてませんよ。質問をして、反応では無く、お姉様がそれに答えてくれただけです」
「光がちゃんと質問に答えたの? 何を聞いたの?」
「ライカさんの事を」
「ライカ先輩って……。またあなたは、触れないようにしていた話題を……」
「ご、ごめんなさい。で、でも、普通に話してくれていましたよ。恨み節は言っていましたけど、それだけじゃ無かったですよ」
言葉では説明しにくく、ちゃんと伝えられているのか不安でした。
「そりゃあ、知ってるけれどね」
彼方先輩は、私の説明を理解してくれたみたいです。
「朝から賑やか……」
話をしていると、お姉様が目を覚ましました。
「光、大丈夫? 怪我してない?」
「お姉様、嬉しさの余り、やり過ぎてしまいました。申し訳ありません」
お姉様の両脇で、私達はそれぞれ話しかけました。
「謝られるような事をされたのかしら?」
私の方への質問。これはただの反応でしょうか。それとも普通の接し方?
判断が付かず、先輩と私は互いに顔を見ました。
お互いに分からず、ならばと私はお姉様に話しかけました。
「猫が台風の目で、ワンダフルにドッグランドで喫茶店のお茶を飲みに行きましょう。コーサ―で良いですか?」
「私はお水で」
飲み物の種類の部分にしか反応していません。意味不明な単語の羅列に反応しない所を見ると、今のお姉様は以前と同じ状態のようです。
とてつもないやらかしを自覚した時には手遅れでした。
「彼方先輩ぃ……」
「一度は戻ったんだから、きっと次はあるって」
慰めてはくれましたが、惜しいと思っているようで、表情に出ていました。
それから私達は、何時も通りの動きをしました。そして、名残惜しいですが、私は朝食を取るために部屋を出ました。




