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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
入学式 お嬢様の園
6/182

6 和美 戻って来たお嬢様

「なら、先に二人に学院の事を教わると良いよ」

 彼方先輩は、あの時の記憶通り、とても気配りが出来る人でした。きっかけはどうあれ、私に出来た二人の顔見知りを頼る方が、馴染みが早いだろうと考えてくれたみたいです。


「確かにそうですね。私は初等部から居るので、隅々まで説明できます。私を通し、クラスメイト達とも打ち解けられると思いますよ」

 どうやらふーりんは、生粋の学院生のようです。それなら顔も広いでしょうし、他のお嬢様達とも多少は話しやすくなるかもしれません。


「あたし、三年抜けてるけど、大丈夫かな?」

「和美さんは途中で別の中学校に行ったんですか?」

 珍しい気がしたので、彼女に訊ねました。

「うん。そうなんだ。親の仕事で海外に行ってたんだ。寮生活だから、そのまま残ってもよかったんだけどさ。良い機会だからって一緒に行ってみたんだよね。別に、素行が悪くて追い出されたんじゃないからね」

 違うと念を押す和美さんに対し、ふーりんが言いました。

「あなた、初等部の頃は結構な問題児だったじゃない」

「そんな事無いって。そりゃあ、泥遊びにハマってたりしてたけどさ」

 慌てて否定するも、内容がお嬢様っぽくありません。


 私は、ふーりんとのやりとりがおかしくて笑ってしまいました。だって、お嬢様学校で泥遊びだなんて、庶民でも今日日しませんから。

「お、笑ったな。帰還したお嬢様を笑うとは良い度胸だ。お嬢様魂を存分に見せてやる」

 そう言うと、和美さんは私に抱きついてきました。親しみやすいのは良い所ですが、やはり距離の詰め方が凄いです。

「和美さん。だから、そういうのを止めなさいと。それに、本当のお嬢様は、お嬢様魂なんて言いませんよ」

 言いながら私達を離そうと頑張るふーりん。

「あたしほどになると、お嬢様としての魂が自然と輝くものなんだよ」

「言っている事がよく分かりませんわ」

「そうですね。ふーりんさんのいう通りですよ。あっ」

 つい、フレデリカさんの事をあだ名のふーりんで呼んでしまいました。


 和美さんの手が止まり、ふーりんも驚き顔で私の方を向きました。

「ご、ごめんなさい。私も距離の詰め方を間違ってしまいました」

「いえ、気にしないでください。ふーりんと呼ばれるのは、この人以外で初めてだったので。何というか、悪くないですね」

 なんだか嬉しそうな顔をするふーりん。


「あたしが呼んだ時は文句を言うくせに。その差は何さ」

「あなたの場合は悪意を感じるからです。このたらし魔」

「た、たらし魔って何さ。私が何時たらし込んだって言うのさ」

 彼方先輩とふーりんが私を見ました。現在進行形でしているじゃないと言わんばかりの視線でした。


「ああっと、三人とも。そろそろ行かないと。遅刻扱いになるよ」

 彼方先輩に言われ、私達は学校の正面にある大きな時計に目をやりました。

「気付いたら他の生徒達が居ません」

「復帰早々の遅刻は避けないと」

「私もです。入学初日は回避しないと」

 失礼しますと彼方先輩に一礼し、私達は校舎に入りました。


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