58 ライカ
(ほんのりとお姉様の温もりを感じる!!)
当たり前ですが、お姉様がベッドの中に居るので、温もりを感じ取れなければ、私の方に問題があります。
「狭いかしら?」
「全く問題ありません」
ベッドは、二人が入っても寝返りを一度は打てるほどの余裕がありました。
ですが、そんな事を言っていては、お姉様に触れる事は出来ません。
落ちてはいけないと理由を付け、ベッドの中央を越え、お姉様と肩が触れる距離まで進むつもりです。
「良かった」
そう言うと、お姉様は横になり、背を向けました。
「お姉様。部屋の照明は消さないのですか?」
明かりがなければ眠れないタイプなのかと思い、質問しました。
「あなたは消す人なのね。私と同じね」
お姉様はそう言うと、照明のリモコンを操作し、明かりを消しました。
今の発言を深堀して良いものかと悩みました。ですが、これをきっかけに距離を詰められるかもしれないと思い、意を決して聞いてみる事にしました。
「もしかして、お姉様のお姉様は、明かりがなければ眠れない人だったのですか?」
辛い過去を思い出し、お姉様が取り乱すかもしれないセンシティブな質問をしました。
「ライカの事? そうね、眠った後でも電気を消したら起きるくらいに敏感だったわ。でも、普通の明るさだと私が眠れないから、お姉様が眠ったら豆電状態にして眠っていたの。豆電って知ってるかしら?」
暗闇の中、お姉様の動きを感じました。どうやら、私の方に向きを変えたようです。
「ええ、はい。明るさをそんなに求めていない時に良いですよね」
私の実家の台所では、手元が暗い状態だと豆電にして家事をしていたので、常識でした。
「素早く二回引っ張るのがコツよね」
「そうですね」
私は普通に会話をしつつ、驚いていました。
今、お姉様が自ら会話をしているからです。
(お姉様の姉の話をしたから? それとも私だから?)
後者だったら嬉しいのですが、これを確かめる方法を私は知りません。
「お姉様のお姉様がどのような方だったか、訊ねてもよろしいですか?」
もう一歩踏み込んでみる事にしました。した事はありませんが、チキンレースをしている気分でした。
「ライカの事を?」
「ライカさんと言うお名前何ですか?」
彼方先輩を名前で呼んでいるのは知っていました。
先輩を呼び捨てるという事は、それだけ親しい間柄だったという事でしょうか?
気になりますが、今は置いておきましょう。
「ライカさんは、どのような方だったのですか?」
「変わり者で、お嬢様っぽく無くてね。どれだけ迷惑をかけられたか」
恨み節が始まりました。口振りから、随分と煙たがっていたようです。けれども、言葉の端々から受ける印象では、完全に嫌っていた訳では無いように思いました。
何より、お姉様の口調が変わっています。私の知る、遠慮の無い間柄で使われるものでした。
それは私がお姉様と出会ったあの時と同じで、懐かしく、私の記憶にあるお姉様でした。
「どのような迷惑を受けたんですか?」
私は、もっと本来のお姉様に触れたくて質問を重ねました。
「あの人は言葉通り、ここの全ての人に好かれていたわ。本来ならね、エミリーがなるはずだったのに、妹に私がさせられたの。それがそもそもの迷惑の始まりよ。それはもう、在らぬ噂やら、嫌がらせがあったんだから」
ふーりんから話を聞いていたので、この辺りの情報は知っていました。ですが、意外な呼称が出て来て、驚きました。




