57 お泊り 夢の一夜が始まります
緊張しつつ部屋へ進むと、ベッドに座るお姉様の姿が見えました。襟元がレースのシックな紺色のパジャマで、大人な雰囲気でした。
「凄い荷物ね。宅配便?」
「こんな無包装では来ないでしょ」
とぼけた事を言うお姉様に、彼方先輩が言いました。
「ほら、陽子さんが来たよ」
荷物を部屋の隅に置き、お姉様に見惚れていた私を手招きをする彼方先輩。
「陽子さん? ああ!!」
私の顔を見て表情を明るくしましたが、私だからでは無く、正体が分かったから見せた反応だと思うと少し寂しいです。
「大丈夫? 一緒に居る?」
私のメンタルを気にし、小声で確認を取ってくれる彼方先輩。
「大丈夫です。二人で過ごします」
「そう」
彼方先輩は、そっと私の背中を押してくれました。
「じゃあ、私は部屋に戻るから。後は二人でね」
「彼方さんは帰るんですね。お休みなさい」
寂しさを含んでいるのでしょうか。そんな声でした。
「二人で届け出を出したんだから、先輩がリードしないと駄目だよ。じゃあ、明日」
先輩は気を使い、サッと部屋を出て行きました。
「彼方さん、何の為に来たのかしら? それにリードって?」
お姉様は、状況を理解出来ていないようです。
「お姉様。彼方先輩は何時から部屋に来ていたんですか?」
「あなたが来る少し前だったわ。ドアの方をずっと気にしていたわね」
それを聞いた私は、先輩の優しさを嬉しく思いました。まあ、最初の酷いコントは忘れませんが。
(彼方先輩、本当に良い人だわ……)
出会ってから今まで、本当にお世話になりっぱなしです。今度、感謝を込めて贈り物を用意しようと思いました。
「あなたはどうしてここに来たの?」
感謝していると、お姉様に言われました。
その場限りの反応が基本という事は理解していますが、これは中々に堪えます。
「二人で届を出したではないですか、お姉様」
「そうだったかしら?」
思い出そうとする素振りを見せるも、お姉様が思い出せないのは分かっていました。
「そうですよ。さあ、寝ましょう」
「そうね。でも、ベッド。これしかないわ」
そうです。お姉様の部屋には、ベッドが一つしかありません。
そして、二人がちゃんと眠るための方法は一つしか無いのです。
「それは大変ですね。これは失念していました。仕方ありません。一緒に寝ましょうっ!!」
取り繕う必要は無いのですが、繕う所は繕い、本音を直球で投げました。
「一緒に寝るのね」
お姉様は、ベッドの中央に置いていた自分の枕を右側へ寄せました。
(つまり私は左側という事ですね)
受け入れられた事実に、心の中はカーニバルでした。クジャクのような綺麗な羽を背中で扇状に広げた人達が、紙吹雪の中を盆踊りをしながら進んでいきます。
私は、カーニバルで踊るという事は知っていますが、どのような踊りを踊っているのかまでは分かりません。とにかく盛大に喜ぶ時にはカーニバルなのです。脳内のパレードがおかしくても御愛嬌です。私の中で身近な踊りは盆踊りなのです。
持参した枕を置き、掛け布団を捲り、そっと足からお邪魔しました。




