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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
呼び覚ませ、お姉様!! 
57/182

57 お泊り 夢の一夜が始まります

 緊張しつつ部屋へ進むと、ベッドに座るお姉様の姿が見えました。襟元がレースのシックな紺色のパジャマで、大人な雰囲気でした。

「凄い荷物ね。宅配便?」

「こんな無包装では来ないでしょ」

 とぼけた事を言うお姉様に、彼方先輩が言いました。

「ほら、陽子さんが来たよ」

 荷物を部屋の隅に置き、お姉様に見惚れていた私を手招きをする彼方先輩。

「陽子さん? ああ!!」

 私の顔を見て表情を明るくしましたが、私だからでは無く、正体が分かったから見せた反応だと思うと少し寂しいです。


「大丈夫? 一緒に居る?」

 私のメンタルを気にし、小声で確認を取ってくれる彼方先輩。

「大丈夫です。二人で過ごします」

「そう」

 彼方先輩は、そっと私の背中を押してくれました。

「じゃあ、私は部屋に戻るから。後は二人でね」

「彼方さんは帰るんですね。お休みなさい」

 寂しさを含んでいるのでしょうか。そんな声でした。

「二人で届け出を出したんだから、先輩がリードしないと駄目だよ。じゃあ、明日」

 先輩は気を使い、サッと部屋を出て行きました。


「彼方さん、何の為に来たのかしら? それにリードって?」

 お姉様は、状況を理解出来ていないようです。

「お姉様。彼方先輩は何時から部屋に来ていたんですか?」

「あなたが来る少し前だったわ。ドアの方をずっと気にしていたわね」

 それを聞いた私は、先輩の優しさを嬉しく思いました。まあ、最初の酷いコントは忘れませんが。

(彼方先輩、本当に良い人だわ……)

 出会ってから今まで、本当にお世話になりっぱなしです。今度、感謝を込めて贈り物を用意しようと思いました。

「あなたはどうしてここに来たの?」

 感謝していると、お姉様に言われました。

 その場限りの反応が基本という事は理解していますが、これは中々に堪えます。

「二人で届を出したではないですか、お姉様」

「そうだったかしら?」

 思い出そうとする素振りを見せるも、お姉様が思い出せないのは分かっていました。

「そうですよ。さあ、寝ましょう」

「そうね。でも、ベッド。これしかないわ」

 そうです。お姉様の部屋には、ベッドが一つしかありません。

 そして、二人がちゃんと眠るための方法は一つしか無いのです。

「それは大変ですね。これは失念していました。仕方ありません。一緒に寝ましょうっ!!」

 取り繕う必要は無いのですが、繕う所は繕い、本音を直球で投げました。

「一緒に寝るのね」

 お姉様は、ベッドの中央に置いていた自分の枕を右側へ寄せました。


(つまり私は左側という事ですね)

 受け入れられた事実に、心の中はカーニバルでした。クジャクのような綺麗な羽を背中で扇状に広げた人達が、紙吹雪の中を盆踊りをしながら進んでいきます。

 私は、カーニバルで踊るという事は知っていますが、どのような踊りを踊っているのかまでは分かりません。とにかく盛大に喜ぶ時にはカーニバルなのです。脳内のパレードがおかしくても御愛嬌です。私の中で身近な踊りは盆踊りなのです。

 持参した枕を置き、掛け布団を捲り、そっと足からお邪魔しました。

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