53 丑三つ時にはまだ早い 甘えさせて、お姉様!!
「いや、シスターでも無いのにそれは出来ないって」
「和美さん、大丈夫です。ちゃんと届けは出します。一週間でも一年でも」
「いやいやいや。そんな連続でなんて認められないって。常識的に考えて」
「そうだね。学校行事の集まりくらいじゃないかな。連泊の許可が出るのは」
和美さんと彼方先輩が、二人がかりで私を潰そうとしてきます。
「では、私はどうしたら良いのですか。私が飛び級すれば全て解決しますか?」
「陽子さん、この学校にそんな制度無いから」
「同学年になる可能性を探るなら、光を留年させる方が早そうだけど」
「お姉様は留年なんてしません。ねぇ、お姉様」
お姉様は私の問いかけに微笑みで返してくれました。
「彼方お姉様。実際問題、光先輩ってこんな状態なのに授業の方は大丈夫なんですか?」
和美さんは良い質問をしてくれました。私も気になっている部分でしたので。
「なんか大丈夫みたい。やる事、やらなきゃいけない事は不思議とやってるんだよね。それでも日常生活では駄目な時がたまにあるんだ。だから私が手伝ってるんだよ」
「流石、私のお姉様ですね」
話を聞き、私は自慢のお姉様が更に自慢になりました。
「いや、陽子さん。まだそういう関係じゃないでしょ」
「内縁の妹というやつですよ」
「また良く分からない新語を作って……」
和美さんは呆れ顔でした。
「あの、私を忘れてませんか?」
丑三つ時に、聞こえてきそうな恨めしい声を出すふーりん。
話の流れですっかり忘れていました。
「これからだって。これから話を戻す所だったんだから」
すぐさまフォローに入る和美さん。昔からの腐れ縁、もとい友人である事がよく分かります。
さて、ここはふーりんに話を振っておかなければならないでしょう。
「ふーりん。エミリー先輩は、どうしてこの場に居ないんですか?」
「彼方先輩から連絡が来たと言って帰ってしまいました。出会った時の事を思ったのでしょう」
今回ばかりはエミリー先輩の判断に同意出来ました。
会えば必ず険悪な空気になりますが、私は別にそれを楽しみになどしていません。
不必要な衝突は避けたいですし、そうなる原因が顔を合わせた時と言うのなら、顔を合わせようとは思いません。
そもそもの原因はあちらにあります。そして、問題がある関係が衝突を避けるにはどうすれば良いか。答えは簡単です。その原因となる出会いが起きないようにすれば良いのです。
エミリー先輩の行動はとても理に適っていました。
「そうだったんですね。にしても、エミリー先輩は不思議な人ですね。光お姉様を嫌っているというのに、昨日もですが、何故普通にこの場に居たのでしょう?」
この疑問を口にした途端、お姉様を除く全員の視線を感じました。
「どうしました?」
視線の意味が気になり、尋ねましたが、皆さんは「何でもない」と一言。
これではぐらかされてしまいました。
「お姉様、皆さんが変なんです。慰めてください。出来れば、昨日のふーりんみたいにギュッと。いえ、それ以上で」
どさくさで抱きつく私。あわよくば甘やかしてもらおうと思い、ちゃんと懐に入りました。
目論見は成功し、お姉様が私の頭にそっと手を置きました。ちゃんとした食事をしていないためか、お姉様の手は冷たかったです。
ですが、不謹慎だと思いつつも、その冷たさに幸せを感じていました。
憧れの人に触れられているのですから、仕方ありません。
「あなたも度を越してるから気にしないで」
優しい声で気にしないでと言われたので、そうしようと思いました。けれど、言葉を反芻していると、これはおかしいと思いました。
「お姉様。今、度を越してると言いました?」
私が確認すると、三人が噴き出しました。間をおいて気付いた事が笑いのツボを刺激したのでしょう。酷い話です。
「だってあなたは、よう、よう……。あ、要噴子さん」
私の名前を思い出そうと努めてくれたようですが、どんどん呼称が酷くなっているような気がするのは気のせいでしょうか?
「私、グレちゃいますよ。お姉様っ!!」
「それは大変ね」
私の訴えに、お姉様は困り顔で頭を撫でてくれました。




