52 過保護 私は影になりたい
「あ、あー。和美さん。何故ここにエミリー先輩が?」
やって来た理由が知りたい。と、和美さんに訊ねました。ええ、私は逃げました。
今になって首が少し痛みだしたのは、心の痛みが首に影響したせいでしょうか?
「何故と言われたら……」
どう言うべきか困っているようで、和美さんは彼方先輩の方を見ました。
「そりゃあ、ここの生徒なんだから屋上に来る事もあるでしょ。偶然よ、偶然」
「偶然? 本当に?」
違うと感じるのは、昨日の今日だからでしょうか? それとも、昨日の会話が思い出されたからでしょうか?
「安心しなよ。エミリー先輩とは普通に会話をしてただけだから」
「普通に? 会話?」
「いや、だから、その目力で見られるとさ、私、殺されそうだから」
あの人がそんな事をする訳が無い。そう思っているからでしょうか。つい、止めの一撃の練習の成果を出してしまいました。
「光先輩。普通でしたよね?」
和美さんがお姉様に問いかけました。
ゼリー飲料を食していたお姉様は、口から離すと和美さんの方を向きました。
「普通でした」
言葉に反応するだけのモードだったので、本当の事は分かりません。
「お姉様、本当に無事でした? 何か嫌な事されなかったですか? 悪口とか言われてませんか?」
「言われなかったわ。……要噴水さん?」
「要注意みたいな感じで言わないでください。私は陽子です」
「そうでした、そうでした。ごめんなさい」
駄目です。何時もの状態での反応しか返ってきません。
「普通にここで会って、四人で会話してただけだって。光先輩は話を振られないと反応無かったけれどね」
「和美さん。お姉様に対して、エミリー先輩は本当に嫌味の一つでも言ったりしなかったんですか?」
「言ってないね。それどころか、光先輩の食事を観察してたかな」
「それはもしかして、今度毒でも入れようとしているのでは!?」
光お姉様は、自分に話を振られない限りは無反応です。
そんな状態の相手が口にする物ならば、異物なんて簡単に入れられるでしょう。
なんなら、目の前で堂々と毒を入れる様子を見せつける可能性だってあります。
「ぬぬぬ……。やっぱりあの人とは相容れそうにありません。これはもう、部屋を移動し、四六時中傍に居るしかありませんね。ね、お姉様」
呼びかけに対し、お姉様は笑みで返してくれました。




