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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
呼び覚ませ、お姉様!! 
50/182

50 疑問と友情と思いやり

「じゃあ次は、私の用件ね」

 一体何を切り出されるのかと、緊張で喉が鳴りました。

「今朝はごめんね。初めてだと驚くよね。色々考えるよね」

 平謝り状態になった彼方先輩に、私はきょとんとしていました。


「私はてっきり『お世話役には不適格。クビッ!!』って言われるのかと思っていました」

「ごめんなさい。そういう感じにも考えちゃうよね」

 そういうも何も、それしか考えられない状態でした。

「今の光の体ってさ、元の光なら見られるのは嫌がると思うんだ。それに、他の人がジロジロ見るようなものでも無いし。食事の事も、陽子さんが続けるのなら、何時かは知る事だけどね」

 やはり彼方先輩は、どこまでも相手の事を思いやれる方のようです。

「先輩。朝食だけでは、あのように痩せ細りませんよね? 今朝の冷蔵庫の中身もそうですが、お姉様はちゃんとした食事をしていないのでは?」

 私の言葉に、彼方先輩は頷きました。何故そうなってしまったのか、気になる所です。

「それには答えられないかな。ごめんね。陽子さんが知ったら、色々頑張ろうとするだろうから。後輩に負担はかけられないよ」


 彼方先輩は、そう言って教えてはくれません。

 その反応を見るに、私の予想は正しいようです。

 あの冷蔵庫にあるゼリー飲料だけで生きているのでしょう。

 人が一つの物を摂取するだけで生きられるのかは疑問です。

 では、私が事を荒立て良いかと問われても、私は答えられません。

 アレルギーか、病か。なんにせよ、現状から推察すると、あのゼリー飲料だけがお姉様の命を繋ぐ唯一の食事になっているようです。

「分かりました。ここは先輩の考えに従います」

「ありがとう、陽子さん」

 感謝されても、まだまだ私が無力である事実を突き付けられただけです。

 そんな私の心境を見抜いたのか、彼方先輩は言いました。


「今の光はね、分かっていると思うけど、精神的に病んでるの」

「それは何となく分かります。あの海でのお姉様とは違い過ぎますから」

「今の光は、日々の生活を綱渡りしてるような状態なんだ。私達は、そんな彼女が倒れないようにする事しか出来なかった。けれど、私はあなたならっていう風に思っているんだ」

「私がお姉様を?」

「あなたのおかげで、少しだけど光は快方に向かっている気がするからさ」

「ぐ、具体的に聞いても良いですか?」

「もう分かってると思うけど、今の光はかけられた言葉に反応するだけ。けど、時折、そうじゃない反応を見せるようになった。これはあなたの行動の結果だよ」

 それは私の違和感は、先輩にとっては光明だったようです。

「つまり、私がお姉様と交流し続けて、お姉様自身の反応を引き出し続けられれば、何時かは元のお姉様に戻るかもしれないという事ですよね?」

「そうだね。私はそうなって欲しいと思ってる」

 私の事をとても買ってくれているのだと実感しました。

 出来るなら、その期待が失望に変わらないように、相応しい結果に繋げたいと思いました。

 私としても、お姉様が元に戻るのなら、こんなに喜ばしい事は無いのです。


「出来る限りやってみます」

「気張り過ぎないでね」

「が、頑張ります」

 彼方先輩の思いを聞いてやる気が更に出ましたが、全てが手探りの状況です。

 それでも、その時が来るまで頑張ろうと思いました。

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