50 疑問と友情と思いやり
「じゃあ次は、私の用件ね」
一体何を切り出されるのかと、緊張で喉が鳴りました。
「今朝はごめんね。初めてだと驚くよね。色々考えるよね」
平謝り状態になった彼方先輩に、私はきょとんとしていました。
「私はてっきり『お世話役には不適格。クビッ!!』って言われるのかと思っていました」
「ごめんなさい。そういう感じにも考えちゃうよね」
そういうも何も、それしか考えられない状態でした。
「今の光の体ってさ、元の光なら見られるのは嫌がると思うんだ。それに、他の人がジロジロ見るようなものでも無いし。食事の事も、陽子さんが続けるのなら、何時かは知る事だけどね」
やはり彼方先輩は、どこまでも相手の事を思いやれる方のようです。
「先輩。朝食だけでは、あのように痩せ細りませんよね? 今朝の冷蔵庫の中身もそうですが、お姉様はちゃんとした食事をしていないのでは?」
私の言葉に、彼方先輩は頷きました。何故そうなってしまったのか、気になる所です。
「それには答えられないかな。ごめんね。陽子さんが知ったら、色々頑張ろうとするだろうから。後輩に負担はかけられないよ」
彼方先輩は、そう言って教えてはくれません。
その反応を見るに、私の予想は正しいようです。
あの冷蔵庫にあるゼリー飲料だけで生きているのでしょう。
人が一つの物を摂取するだけで生きられるのかは疑問です。
では、私が事を荒立て良いかと問われても、私は答えられません。
アレルギーか、病か。なんにせよ、現状から推察すると、あのゼリー飲料だけがお姉様の命を繋ぐ唯一の食事になっているようです。
「分かりました。ここは先輩の考えに従います」
「ありがとう、陽子さん」
感謝されても、まだまだ私が無力である事実を突き付けられただけです。
そんな私の心境を見抜いたのか、彼方先輩は言いました。
「今の光はね、分かっていると思うけど、精神的に病んでるの」
「それは何となく分かります。あの海でのお姉様とは違い過ぎますから」
「今の光は、日々の生活を綱渡りしてるような状態なんだ。私達は、そんな彼女が倒れないようにする事しか出来なかった。けれど、私はあなたならっていう風に思っているんだ」
「私がお姉様を?」
「あなたのおかげで、少しだけど光は快方に向かっている気がするからさ」
「ぐ、具体的に聞いても良いですか?」
「もう分かってると思うけど、今の光はかけられた言葉に反応するだけ。けど、時折、そうじゃない反応を見せるようになった。これはあなたの行動の結果だよ」
それは私の違和感は、先輩にとっては光明だったようです。
「つまり、私がお姉様と交流し続けて、お姉様自身の反応を引き出し続けられれば、何時かは元のお姉様に戻るかもしれないという事ですよね?」
「そうだね。私はそうなって欲しいと思ってる」
私の事をとても買ってくれているのだと実感しました。
出来るなら、その期待が失望に変わらないように、相応しい結果に繋げたいと思いました。
私としても、お姉様が元に戻るのなら、こんなに喜ばしい事は無いのです。
「出来る限りやってみます」
「気張り過ぎないでね」
「が、頑張ります」
彼方先輩の思いを聞いてやる気が更に出ましたが、全てが手探りの状況です。
それでも、その時が来るまで頑張ろうと思いました。




