48 呼び出しと種回収
その引っかかりの正体に気付けずにいると、何故か和美さんは私の頬を引っ張りました。
「和美さん?」
片方だけなので、まだちゃんと話す事が出来ました。
「これ、どういう事かな?」
スマホの画面を私に突き付けてくる和美さん。最大まで上げられた明るさが目に沁みます。
先ほどと変わらぬ笑顔のままに、背後が燃えているように見えました。
「私達、清い姉妹でいましょう?」
標示された文章を疑問形で読み終えると、和美さんはスマホを机に置き、もう片方の頬を抓ってきました。
「いひゃいのですが、かひゅみひゃん」
彼女が何故、このような事をするのかさっぱり分かりません。乙女の園での学園生活かと思いきや、ここから能力バトルものに、私の学園生活が鞍替えしてしまったのでしょうか?
だとすれば、この謎の暴力も操られているのだと納得出来ます。
「和美さん、何がどうしたんですか。手荒な事はいけないわ」
ふーりんが窘めるも、和美さんの手は緩みません。
「陽子、お姉様に話した事を一字一句そのままあたしに言ってみて」
笑顔の怖い和美さんに言われ、私は気付きました。
私の学園生活は鞍替えなどしていなかったのです。
「彼方先輩に言った何かで怒っているの? 陽子さん、何を言ったのですか?」
中立の立場で話を聞こうとするふーりん。
「言ふから手をはなひして」
このままでは正しく言えないと訴えると、和美さんは私の頬を限界まで引っ張り、そのまま離しました。
その痛みは、頬が取れたかと思うほどです。
「さあ、言ってみて?」
笑顔の怖さが増しているように見えるのは、頬の痛みがまだ消えていないからでしょうか?
「分かりました、言いますね」
私は、彼方先輩に言った言葉をそのまま言いました。
言い終えると、ふーりんは私の背後に立ち、両脇の間に腕を通しました。そして、私の腕が動かないように固定しました。そうです、羽交い絞めです。
「ふーりん!? これは一体!?」
ふーりんは何も言いません。後門のに無言のふーりん。前門は笑顔の和美さんです。
和美さんの両手が私の頬へと伸び、頬が再び摘ままれました。
上下に動かし、円運動を始めた所で、私は次のされるであろう動作に気付きました。
本日二度目であり、即座に行われるという事もあり、恐怖は増していました。
「ちょ、和美ひゃん。やめ……」
笑顔の和美さんは何も言いません。そして、最後の動作に入りました。
両頬を限界まで引っ張る和美さん。ここで恐ろしいのは、限界になった時点で指を離すのでは無く、限界になっても離す事無く、頬が戻ろうと自然に離れるその時まで引っ張り続けているという点です。
私は、開放された時に感じた頬の痛みを忘れはしないでしょう。
「あ、陽子さん。お昼休みにお姉様が二人でお話したいって。ついでに誤解も解いておいてね」
復讐をやり遂げ、すっきりした和美さんが言いました。
「彼方先輩が私に? 何でしょう?」
もしや、光お姉様のお世話役には適さないという宣告でしょうか? もしそうなら、私はどうしたら良いでしょう?
「それと、陽子。誤解は解いてね」
壺を持つ手付きで私の両頬を持ち、念を押す和美さん。
今度から、呼び捨てになった時の彼女の言う事は、ちゃんと聞こうと思います。
私の頭に、そう刻み込まれました。




