47 ふーりんと人気の無い場所
「あら、陽子さん。おはようございます。今朝は早いんですね」
ふーりんからのあいさつ。彼女が言い終わる前に、私は立ち上がりました。
「ふーりん、ちょっと来て」
強引に彼女の手を掴み、彼女が入ってきたばかりの教室から連れ出しました。
「あれ、二人ともどうしたの?」
「和美さん。ふーりんの鞄をお願いします」
丁度良いタイミングですれ違った和美さんに、ふーりんの鞄を預けました。
朝礼前に話を済ませるつもりで、急いで人気の無い場所へ向かいました。
「あの、陽子さん?」
訳も分からず、朝一番に人気の無い場所に連れ込まれた事に、ひたすら困惑しているふーりん。
「ふーりん。一つ聞きたい事があるのですが」
「え? 聞きたい事?」
身構えるふーりんは、驚いていました。
「こんな校舎の人気の無い場所へ連れ込んだという事は、よほどの事ですか?」
察しが良くて助かりました。
「そうです、よほどの事なんです。お姉様の事を聞きたいんです」
「お姉……。光先輩の事ですか?」
私は頷きました。
「光お姉様って、普段どんな生活をしているのか知りませんか? 私が入学してくる前の」
「そう言われましても……。私も直接お話したのは昨日が初めてなので」
「噂でも何でも良いの」
「普通に学院で勉学に勤しんでいたのでは?」
ふーりんの反応を見る限り、本当に何も知らないようでした。
「ゼリー姫って言われているのはどうして? それが悪口だと理解しています。ですが、そうなった理由を知りたいのです」
「それは、何時もゼリー飲料を手にしているからと聞いています。よほど好きなのでしょうね」
「本当に、本当に、それだけですか?」
「今お話した事以外の情報を持ってはいませんよ。後は、周囲の方が話していたくらいですか。ですがそれは、悪意のある噂話でしかないと思いますが……」
そんな根も葉もない噂には興味はありません。事実だけを求めているのです。
しかし、ふーりんから聞ける情報は本当になさそうです。
「そうですか。いきなり連れ出してすみませんでした」
「突然の事で本当に驚きました。光先輩に何かあったのですか?」
「それは……」
つい今朝の事を相談したくなりました。けれど、きっとそれはいけない事だと思いました。
彼方先輩が普段見せない態度を取ったのです。それだけの理由があるという事です。
「ううん、ただ気になってしまっただけです」
「そうですか。他に何かあれば言ってくださいね。お力になれるように努めますから」
ふーりんは本当に優しい人です。そんな人を友達を持てた事に感謝しました。
この縁を大切にしよう。そう強く思いました。
私達は、目的を終えたので教室に戻りました。中に入ると、スマホの画面を見つめている和美さんが目に入りました。
「和美さん、先ほどはありがとうございました」
和美さんも唐突だったので、さぞや驚いた事と思います。
「お帰り、陽子。ふーりん」
とても明るい笑顔で出迎えてくれた和美さんですが、何かが引っかかりました。




