45 ちょっとしたいたずらと初お世話
「あれ、陽子さん、どうしたの?」
光お姉様の部屋の前で会った彼方先輩は、古いロボットのようなカクついた動きの私に、何があったのかを訊ねました。
なので私は、掻い摘んで事実だけを伝える事にしました。
「先輩の妹に寝かせてもらえなくて」
「夜更かししたんだ。課題? 宿題?」
大変だったねと、労う彼方先輩。正しく意味を理解していない様子。
つい、悪戯心に火が付きました。ついでに、和美さんへの細やかなお返しを閃きました。
「違います。ベッドの上で抱きしめられて、一晩中そのままで……」
そう言うと、彼方先輩は在らぬ方向に想像を働かせ、顔を赤くしました。
「ふ、二人は、そういう関係で?」
「違いますよ。ただ、気を付けてください。和美さん、一度抱きしめたら絶対に離れませんよ。本当に」
「う、あぁっ」
反応に困り、声にならない声を出す先輩。珍しい姿でした。
「では、お姉様を起こしに行きましょう。私、やってみます」
「あ、ああ、うん。じゃ、じゃあ、任せてみるね」
照れ顔が可愛い彼方先輩を横目に、和美さんへの細やかな仕返しを終えた満足感と共に、私は部屋のドアノブに手をかけました。
通算三度目の訪問になるので、中に入るのは慣れたものです。
(今日は率先してお世話をしていきましょう)
やる気満々で部屋に入りました。
中では、一つしかないベッドの上でボーッとしているお姉様が居ました。
(今日は昨日よりも早く来れたので、寝ぼけ姿が見られましたっ)
抱きしめたい衝動と、レア顔を頂戴出来た事で、私のテンションは一気に上がりました。
和美さんとの一夜が無ければ、きっと空を飛ぶ能力が、この瞬間に発現していたかもしれません。
「お姉様、朝ですよ。起きてください」
遠い目をしたまま、顔を私の方へ向けるお姉様。その姿はホラー演出のようでちょっと怖かったです。
「あら、噴水さん」
「覚えていてくれたのは嬉しいですけど、噴水ではありません。陽子です。さあ、言って下さい」
「ようこです」
変化は見られましたが、すぐに戻ってしまいました。
「おしいですけど、まあ良しとしましょう。さあ、お姉様。お着換えですよ」
立ってもらい、寝間着を脱がしていきます。
(ちょっとドキドキしてきました)
決してそちらの気は無いつもりですが、憧れのお姉様を着せ替えているのです。新たな扉が開くきっかけには十分な条件でした。
(えっ?)
ですが、そんな浮ついた気持ちはすぐに収まりました。
普段は服の中に隠れた体を見てしまったからです。




