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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
入学式 お嬢様の園
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4 上級生 私は彼女を知っている

(あうう……。誰か助けて。警備員さん……)

 探すも、敷地内にそれらしい人の姿は見えません。

(警備員さんは外の方に居たから、こちらの状況は分からないみたいですね。ああ、こんな時、あの人が居てくれたら助けてくれたのかな)

 思うのは、私がこの学校に入るきっかけをくれた人。あの人が背中を押してくれたから、私は学院に入学する事が出来たのです。可能なら、あの人に会ってお礼を言いたいです。

「二人とも、その辺にしなさい。彼女、遠い目をして現実逃避してるでしょ」

 私が現実逃避で空を見ていると、再びの救いの手が。新たな登場人物の声に気付き、私は意識を戻しました。

 そして、今度こそ本当にそうであって欲しいと願い、視線を移しました。


 新たな登場人物を目にした私の瞳に、希望の灯が点りました。

「お姉様のご学友の」

「ふーりんのお姉様の友達の人だ」

 ナンパ二人組が声を揃えて言いました。今までの流れなら、この台詞を聞いた私は、組織化された一大ナンパ組織の存在を感じていたでしょう。

 ですが、今回は違います。私はこの声の人物を知っています。相手の名前は分かりませんが、知っているのです。活発で朗らかな雰囲気を持っていたこの人を。

「助けてください。しつこく付きまとわれているんです、先輩」

 やっと本当に助け人が現れたと、私は駆けだして彼女の背後に回りました。

「随分怖い目にあったんだねぇ。よしよし」

 小さい子をあやすように私の頭を撫でる先輩。家族以外の人のぬくもりに癒されたのは、あの人とのやりとり以来でした。


「誤解が重なっているだけです。彼方かなた先輩が考えているような事はしていません」

「あたしもです。困っていそうな新入生に声をかけただけだし」

 二人のナンパの話を聞き、彼方先輩と呼ばれた彼女は言ってくれました。

「とは言っても、彼女はこんなにも怯えてるよ。ねえ、あなた。あなたの話も聞かせてよ。とりあえず判断はそれからね」

 三人の話を聞いてから判断すると、彼方先輩。


 この場を治めてくれるのは彼女しかいないと思った私は、和美というナンパとの出会いから話を始めました。

 そして、彼方先輩との出会いに至るまでの流れを話しました。聞き終えた先輩は言いました。

「その事情で初対面でそれやられたら、そりゃあ警戒するわ」

「あ、あたしが悪いの!?」

 責められ、驚く和美というナンパ。

「私もおかしいと気付いたから止めに入ったんです」

 だから誤解だと繰り返すふーりん。

「緊張を解すために気さくに接しようとしたのは悪く無いと思うよ。これは彼女の事情と悪い方向で噛み合った結果の悲劇だね」

 彼方先輩は、誰が悪いというのでは無く、状況が悪かったという事で話を纏めました。


「あの、かず……みさん。私の勘違いですみませんでした」

 誤解が無くなったので、私も彼女に謝りました。

「ああ、いやいや。あたしもちょっと、距離の詰め方を間違えたかな~って思うよ。ごめんね」

 こうしてすぐに謝ってくれた彼女は、悪い人では無いのかもしれません。

「私も、あなたを追い詰めるような事をしてしまいました。ごめんなさい」

 ふーりんも続いて頭を下げました。私達は互いに頭を下げ、誤解を解いたのです。

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