35 先輩の涙とお姉様のご飯と美味しい朝食
これを聞いた彼方先輩は、お嬢様とは思えないほど大笑いしました。
涙を流し、お腹を抱えて。小さな子供がツボに入ったみたいに笑っていました。
学院でこのように笑う人に出会うとは思いませんでした。
「堪えきれなくて。ああ、お腹痛い。やっぱり噴水だわ」
「そんなに笑っては失礼よ、彼方」
そう言われた彼方先輩は、笑いを抑えようとして、涙をポロポロ流し続けていました。
「彼方先輩、泣きすぎですよ。ハンカチ使いますか?」
「ううん、大丈夫。こんなに笑ったのは久しぶりで、涙腺が緩んだみたい」
自分のハンカチを取り出し、涙を拭う先輩でした。
「やっぱり、陽子さんに賭けたのは良かったみたい」
「またそれですか」
「それしか無かったからね」
先輩が何を言っているのか、私にはやっぱり分かりません。
「さてと、やる事を話そうかな」
落ち着いた先輩は、そう言うと行う事を教えてくれました。
「部屋に来たら光を起こす。着替えをさせて、身だしなみを整える。光はここで食事を済ませるから、食堂へは行かなくて大丈夫だよ」
「ここで済ませるって、これで終わらせるんですか?」
ゼリー飲料を指差し、私は確認しました。
「そう。それが食事」
「これで体が持つんですか? お姉様、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ」
(あれ?)
お姉様の反応が戻ったような気がしました。投げられた言葉に対応した言葉をそのまま投げ返すような反応に。
「体調についてはお医者様が見てくれているから」
「それで問題無いのなら良いですけど……」
不安はありました。昨日触れたお姉様を思い出すと、大丈夫だと言われても、不安は消えません。
「それから、その日の授業で必要な物が抜けていないかの確認。それが終わったら、教室へ向かう。それで朝は終わりね。光は朝が早いから、教室へ送った後に自分の朝食を取る時間は十分にあるよ。今日の朝食は?」
「まだです。興奮でお腹が満たされています」
「それはいけないわ。今すぐご飯を食べて来なさい」
お姉様口調で言う彼方先輩。
「で、でも、まだお姉様のお世話が……」
引き下がる気の無い私に、彼方先輩は姑息な手段を使いました。
まだ私でもしていないのに、彼方先輩は光お姉様の耳元に口を近づけ、囁いたのです。
「陽子、ご飯を食べてきなさい」
「はい、お姉様っ」
お姉様にそう言われては、行かない訳には行きません。
彼方先輩の行動は許せませんが、光お姉様に呼び捨てにするように仕向けてくれたので、後で感謝の意味を込めて何か送らなければいけないでしょう。
幸福感に満たされた私は、朝食のご飯を何度もおかわりしました。




