34 先輩達の目に、私はそう映っているのですか?
「でも、私がお父様なら、エミリーはお母様か。姑は恐ろしいぞー」
「何故そこでエミリー先輩がお母様役?」
関係図を描くのならば、エミリー先輩は絶対の敵です。私と光お姉様との間を邪魔するお邪魔虫キャラです。お母様というよりも、あと一歩の所をいつも邪魔をする腹立たしいキャラです。
「かなり疎ましく思っているのが表情で分かるよ。うんうん」
一人、全てを知っているという顔で頷く彼方先輩。
「事情通のような振る舞いをするのなら、いっそ全てを話してはくれませんか?」
映画やドラマで言えば、このような役柄は、肝心な事を言わずに退場してしまいます。そういったキャラを見た時に何時もこのように思うので、先輩に言いました。
「和美を見てるとねぇ……。陽子さんは、きっとまだ受け入れられないと思うな。というよりも、信じないと思うな」
私自身の心次第で変わる秘密なのでしょうか? 気になりますが、先輩はどうあっても話してくれそうにありません。
「と、そろそろ光を起こさないとね」
「そうでした。お姉様を寝顔から見ないと」
「それ、趣旨変わってるから」
「おはようの前からお休みの後まで、一緒に居ると決めているんです」
「うん、何も聞かなかった事にしよう」
彼方先輩は、それが当たり前のように制服のポケットから鍵を取り出し、光お姉様の部屋の鍵穴に差しました。私にとっては国宝以上に価値のあるものでした。
「私にそれをください。あ、いえ。先輩が何故、お姉様の部屋の鍵を?」
「陽子さん。たまに噴水とか言われない?」
「噴水ですか? いえ、そんな事を言われたのは始めてです」
「そっかぁ。噴水っぽいなぁ……」
先輩が何を考えてそう思ったのでしょう。私は昔から、気遣いの出来る良い子と言われてきたというのに。
「私の事は別にどうでもいいんです。鍵です。何故お姉様の鍵を持っているんですか?」
「そりゃあ、私が光の様子を今まで見てきたからさ。さっきも言ったでしょ。私達は友達だって」
確かに、三人で海に来ていたのですから、関係性としてはそう考えるのが自然です。
でも、ならどうして、交流会では他人行儀に接したのでしょう?
今はすっかり呼び捨てになっていますし。
疑問に思いますが、学院中が敵という状況の中でも、ちゃんと光お姉様を支えていた人が居たという事実を実感し、嬉しく思いました。
「今、私は色々と決壊しそうです」
感動して、涙腺が緩んでしまいそうになりました。
「トイレなら急いだ方が良いよ」
「そっちではありません」
感動に水を差され、溢れかけた涙はすぐに引っ込みました。
「さ、入るよ」
鍵が開き、部屋に入ると、光お姉様は身支度を整え、ゼリー飲料を飲んでいました。
「光、今日はもう起きていたの?」
「はい、起きていました。あら、彼方さん。後ろの方は妹?」
お姉様が私に興味を持ってくれました。それだけで今日は幸運日です。
「私は光お姉様の妹です」
「私に妹?」
そんな存在が居ただろうかという困り顔。そんな表情も絵になるお姉様は最高です。
「今のはこの子の妄想で、願望だから。気にしなくて大丈夫だから」
「そうなの。私に妹は居ないのに……。覚えが無かったから驚いてしまったわ」
今は会話が成立しているように聞こえます。
もしかすると、これは押し時なのかもしれません。
そう思った私は、お姉様の手を取るや、熱意を伝えました。
「覚えていなくても大丈夫です。私は何時でも光お姉様の妹ですから。おはようの前からお休みの後まで妹ですからっ」
何度でも繰り返す意気でした。
そんな私の言葉を聞き、光お姉様は彼方先輩の方を見て言いました。
「この子、噴き出してるわね。噴水みたいだわ」




