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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
呼び覚ませ、お姉様!! 
34/182

34 先輩達の目に、私はそう映っているのですか?

「でも、私がお父様なら、エミリーはお母様か。姑は恐ろしいぞー」

「何故そこでエミリー先輩がお母様役?」

 関係図を描くのならば、エミリー先輩は絶対の敵です。私と光お姉様との間を邪魔するお邪魔虫キャラです。お母様というよりも、あと一歩の所をいつも邪魔をする腹立たしいキャラです。

「かなり疎ましく思っているのが表情で分かるよ。うんうん」

 一人、全てを知っているという顔で頷く彼方先輩。


「事情通のような振る舞いをするのなら、いっそ全てを話してはくれませんか?」

 映画やドラマで言えば、このような役柄は、肝心な事を言わずに退場してしまいます。そういったキャラを見た時に何時もこのように思うので、先輩に言いました。

「和美を見てるとねぇ……。陽子さんは、きっとまだ受け入れられないと思うな。というよりも、信じないと思うな」

 私自身の心次第で変わる秘密なのでしょうか? 気になりますが、先輩はどうあっても話してくれそうにありません。


「と、そろそろ光を起こさないとね」

「そうでした。お姉様を寝顔から見ないと」

「それ、趣旨変わってるから」

「おはようの前からお休みの後まで、一緒に居ると決めているんです」

「うん、何も聞かなかった事にしよう」

 彼方先輩は、それが当たり前のように制服のポケットから鍵を取り出し、光お姉様の部屋の鍵穴に差しました。私にとっては国宝以上に価値のあるものでした。

「私にそれをください。あ、いえ。先輩が何故、お姉様の部屋の鍵を?」

「陽子さん。たまに噴水とか言われない?」

「噴水ですか? いえ、そんな事を言われたのは始めてです」

「そっかぁ。噴水っぽいなぁ……」

 先輩が何を考えてそう思ったのでしょう。私は昔から、気遣いの出来る良い子と言われてきたというのに。


「私の事は別にどうでもいいんです。鍵です。何故お姉様の鍵を持っているんですか?」

「そりゃあ、私が光の様子を今まで見てきたからさ。さっきも言ったでしょ。私達は友達だって」

 確かに、三人で海に来ていたのですから、関係性としてはそう考えるのが自然です。

 でも、ならどうして、交流会では他人行儀に接したのでしょう?

 今はすっかり呼び捨てになっていますし。

 疑問に思いますが、学院中が敵という状況の中でも、ちゃんと光お姉様を支えていた人が居たという事実を実感し、嬉しく思いました。

「今、私は色々と決壊しそうです」

 感動して、涙腺が緩んでしまいそうになりました。

「トイレなら急いだ方が良いよ」

「そっちではありません」

 感動に水を差され、溢れかけた涙はすぐに引っ込みました。

「さ、入るよ」

 鍵が開き、部屋に入ると、光お姉様は身支度を整え、ゼリー飲料を飲んでいました。

「光、今日はもう起きていたの?」

「はい、起きていました。あら、彼方さん。後ろの方は妹?」

 お姉様が私に興味を持ってくれました。それだけで今日は幸運日です。


「私は光お姉様の妹です」

「私に妹?」

 そんな存在が居ただろうかという困り顔。そんな表情も絵になるお姉様は最高です。

「今のはこの子の妄想で、願望だから。気にしなくて大丈夫だから」

「そうなの。私に妹は居ないのに……。覚えが無かったから驚いてしまったわ」

 今は会話が成立しているように聞こえます。

 もしかすると、これは押し時なのかもしれません。

そう思った私は、お姉様の手を取るや、熱意を伝えました。

「覚えていなくても大丈夫です。私は何時でも光お姉様の妹ですから。おはようの前からお休みの後まで妹ですからっ」

 何度でも繰り返す意気でした。

 そんな私の言葉を聞き、光お姉様は彼方先輩の方を見て言いました。

「この子、噴き出してるわね。噴水みたいだわ」

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