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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
勝ち取れ!! お姉様っ
29/182

29 ムチャダメ え? 私はやりますよ

「では早速、部屋番号を教えてください」

 にっこにこで、自分でも分かるほどに緩んだ表情で尋ねていました。

 だって、こうなるのも仕方の無い事です。着実に目的に近付いていると実感出来ているのですから。

「釘を刺しておくけれど、彼女に無茶はさせない事。出来る?」

「お姉様に無茶なんてさせません。どんな時でもお姉様の傍に居て、お姉様の支えになる事を誓います」

 ジッと彼方先輩の目を見て宣誓しました。なんだか、結婚の誓いのような言い回しに感じました。

 自分で言った通り、お姉様を全身全霊で支える所存なのは確かです。

 光お姉様がとても辛い経験をされ、心に深い傷を負ってしまったと知ったからには、ほっとけません。私は、あの時の感謝を返すためにも、お姉様を守ろうと思います。


「暴走行動は強い意志の現れかぁ……」

 何やら先輩が気になる事を呟きました。

「陽子さん。今日は部屋の場所だけね。本当に時間無いからね」

「ええーっ」

 お嬢様にあるまじき声で叫んでしまいました。時間が無くとも、一目だけでも光お姉様にお会いしたかったからです。

「じゃあ、部屋に戻る。出来ない子には教えてあげません」

「そ、それは嫌です。私、抑えます。衝動を抑えますから」

 懇願に近かったと思います。これで駄目なら縋りつき、抱きつき、絡みついて頼んでいた事でしょう。

「……じゃあ行こうか」

 疑念はあるようですが、それでも私の必死な訴えは、先輩の心を動かしました。

「はいっ」

 満開の笑顔と全開の元気な声で返事をしました。


 時間が無いという事で、早歩きで移動しました。その間に、彼方先輩に訊ねました。

「お姉様の部屋は何階にあるんですか?」

「この階の一番端だよ」

「学校では各階毎に学年が纏まっていますが、この寮ではそういう事は無いのですか?」

「部屋割りはかなり自由だね。初等部まであるし、寮も何棟もあるからね。その上、シスターになったら部屋を引っ越すでしょ。別の棟からの引っ越しもあるから、学年毎に纏めるのは難しいんだよ。そう言った理由で、寮では申請を徹底させているのさ」

「そういった事情もあるんですね。でも、歴史ある寮なのに、伝統が生まれなさそうな理由ですね」

「私みたいに姉になるタイミングの遅い人も居るからね。でも、寮に伝統が無いって訳じゃないよ。シスターは、姉の部屋に引っ越すから、それを引き継いでいくのが伝統だね」

「お姉様の部屋を代々受け継ぐ……。なんだかそれって素敵ですね」

「ただそれだけで済めば良かったんだけどね……」

 複雑な表情をする彼方先輩。

 寮生活の闇の一面を思い出しているのでしょうか?


「さあ、ここだよ」

 彼方先輩がそう言って立ち止まりました。

 朝になれば一番に日の光を浴びそうな三階の角部屋という立地に、憧れのお姉様の部屋はありました。

(憧れの光お姉様のお部屋。きっと光輝くような素敵な雰囲気に包まれているはず。そう思っていたけれど……)

 現実は違いました。部屋の外見は綺麗です。寮母さんか清掃員の人が毎日掃除をしてくれているのでしょう。

 私が気になったのは空気です。

 風の通りが悪い訳ではありません。角部屋の角を曲がれば上下の階へ行くための階段があるので、行き止まりという訳でもありません。

 空気が抜けない構造という訳でも無いのに、この淀んだ感じは一体何なのでしょう?

 自分なりに推察していくと、光お姉様の部屋から出ているように感じました。

(お姉様の悲しみが部屋から漏れ出している!? これはいけないっ!!)

 すぐに助けなければと、止められていたのにドアノブに手をかけていました。


「陽子さん、話が違うでしょ」

 彼方先輩に止められてしまいましたが、居ても立ってもいられません。

「す、すみません。ですが……」

 ノブを捻るも、鍵がかかっていたため、中に入る事が出来ません。

 どうすれば中に入る事が出来るでしょう? 考えた瞬間に答えが出てきました。


「決めました。ピッキングです」

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