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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
勝ち取れ!! お姉様っ
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28 二人の事より姉の事

 部屋から出てきた彼方先輩は、私の姿を見て驚いた後、全てを理解したような顔をしていました。

「和美、そういう事だったのね」

「馬鹿姉……」

 何やら画策していたようですが、それが不発に終わり、失望したような表情の和美さん。その振る舞いに、不覚にもキュンときました。

「うん、ごめん」

 どのようなやりとりを和美さんとしていたのかは分かりませんが、言葉短く、二人の間では通じ合っていたようです。

 まだシスターになってから一日ちょっとの関係だというのに、凄い事だと思いました。


「来てしまったのなら仕方ないわ。予想は出来たけれど、来た理由を話して」

 諦めた様子で、彼方先輩は言いました。

 話は早い方が良いので、私もすぐに用件を言う事にしました。

「先輩、光お姉様の部屋を教えてください」

 これに彼方先輩は驚きの速さで反応しました。

「それは駄目。では、お休みなさい。消灯時間が迫ってるから、二人ももう戻りなさい」

 捲し立てるように言うと、彼方先輩はドアを閉めました。

 ですが、黙ってそれを見送る訳にはいきません。私は即座に手と足を隙間に入れ、ドアが閉まらないようにしました。


「陽子さん、怪我をしたらどうするの」

「私の怪我より、光お姉様です。お姉様が居れば、私に薬は不要です」

「思考のタガが外れた事を言わないの。人は人の存在だけで、そんな便利な力を発揮できないから」

「いいえ、発揮します。このドアだって開けてみせます」

 私は、隙間に挟めていた足を抜くと、壁につけました。

 両手ではドアを引っ張り、足で壁を押したのです。

 彼方先輩も当然抵抗しますが、力負けしてドアが開いていきます。

「二人とも、ちょっと待って。そこまでにして。壁がミシミシ言ってるから」

 和美さんが、慌てて私達の間に入り、止めました。

 先輩は和美さんの言葉を聞き、抵抗を止めました。私は、もう一度ドアを閉められてはいけないと、すぐにドアの内側に入りました。意地の勝利です。


「壁が壊れたらどんな罰が待っているか……」

 息を切らせながら、彼方先輩は言いました。

 この学院の寮は、ルールにとても厳しいのです。

 彼方先輩も怖がるほどなので、逆に興味が湧くほどです。きっと、今の攻防でテンションが上がっているから、このように思うのでしょう。ですが、今は試したい衝動は置いておきましょう。

「さあ、彼方先輩。部屋を教えてください」

「負ければ教えるなんて……言ってない……」

 彼方先輩の言う通り、そんな勝負はしていません。

 ですが、こうなっては教えるのが当然というものでしょう。

「教えてくれるまで譲りませんよ。部屋に住み着いてでも」

 中に入って居座ろうとしました。その時、気付きました。


「彼方先輩。部屋、綺麗ではないですか」

 和美さんから聞いて、汚部屋の住人の可能性を考えていましたが、見える範囲は綺麗ですし、空気も淀んではいません。

「あっ」

「えっ」

 前後から声が聞こえました。

 私は二人にとって、とても不味い事を口にしたようです。

「お、お姉様。部屋の掃除、頑張ったんですね。あれとか、段ボールとか」

「何時かは同室になる事を考えたらね。ほ、埃を取っただけよ。まだ内装や家具の配置がね……」

 しどろもどろな二人。取って付けたような台詞で行われる三文芝居でした。


「二人とも、何か隠してませんか?」

「隠していたとして、それは陽子さんには関係の無い事だから」

「そ、そうだよ。お姉様とあたしの二人だけの問題だから」

 怪しい反応です。二人の目は泳ぎ、本当に姉妹の、いえ、双子かと思うほどに同時に反応をするので、怪しさが倍増でした。

 つっこもうと思えば更にいけますが、光お姉様が第一なので、ここは流すとしましょう。

「彼方先輩はやれば出来る人なのだという事にしておきます」

 私の言葉に、二人はホッと胸を撫で降ろしていました。

「ですが、お姉様の部屋は教えていただきます」

「いや、もうそろそろ本当に時間が……」

 気が気じゃないと、彼方先輩。これは私も危険ですが、それだけに効果のある攻め手なので引きません。


「その時は、私を返してくれないと見回りの人に……」

 私は本気の目で先輩の目を見ました。

「……仕方ないな。私の負けだわ」

 先輩の根負け。粘り勝ちでした。

「ちょ、彼方先輩っ!!」

 後ろでは和美さんが慌てていました。

「ごめん、和美。私、こうなったら譲らない人を知っているから」

 それがどのような方なのかは知りませんが、こうして理解を得られたのであれば、その先駆者の方に感謝しなければなりません。

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