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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
勝ち取れ!! お姉様っ
26/182

26 開けてはいけない 私が気付いた時には手遅れでした

 後三十分もすれば消灯時間となる頃、彼方のスマホが突然鳴りだした。

 彼女は、何かと思い、手を伸ばした。

 明日の授業に関する変更ならば、遅すぎる。寮内での事故なら、外が静か過ぎる。

 では、身内で何かがあったのか。数秒の間に様々な事を予測した。

 手に取り、画面を確認しようとした瞬間、誰かが彼女の部屋のドアをノックした。

「こんな時間に来客? 誰かな?」

 時間的に、急ぎの用事だろう。彼女は思った。


 パジャマ姿だったが、そこを気にしている場合ではないかもしれないと、相手への礼儀に欠ける事を承知で立ち上がる。スマホを握ったまま、彼女は部屋のドアを開けた。

 そこには最近で来た、自分の妹の和美が立っていた。

「あれ? どうしたの? もしかして……」

 妹の表情が暗く、只ならぬ事態なのだと、彼女はすぐに察した。妹の身に? それとも彼女の友達の陽子の身に何かが起こったのか? 悪い可能性が際限無く浮かぶ。

「お、お姉様……」

 不安? 緊張? 普段とは違う、しおらしく、弱々しく、彼方を呼ぶ和美。

 冗談では無い。学院内での相手を指しての単語でも無い。自分に向けられての単語。

(何時も明るいムードメーカーなのに、これはずるい。一言で言えば、私の妹が可愛い)

 気苦労ばかりで疲れるだろうと思い、敬遠してきたシスター制度。

 しかし、先日の交流会で、去年の自分と同じ苦労をしそうな後輩の姿を見て、彼女は自身の中の一線を越えた。

 自分にしか分からない苦労があったからこそ、同じ道を行こうとする後輩の手助けをしたい。

 彼女はそう思ったのだ。

 ただの後輩とは違う下級生に対し、距離感に悩む日々だったが、初めての妹は、妹という存在は、その悩みが吹き飛ぶほどに、そう、想像以上に愛でたくなる存在だった。


(いけない。きっとこんな事を考えている状況では無いはず)

 エミリーに対し、もう一人の友人が言った「姉馬鹿」という単語が頭に浮かぶ。

 その言葉を思い出した彼方は、何時の間にか緩んでいた表情を正し、状況に適した表情で和美に訊ねた。

「部屋に入る? お茶を飲む? 場所を変えた方が良い?」

 一言だけ言葉を口にした後、物言わぬ妹を気にかける彼方。

 反応が無く、和美の表情を窺うと、何故出てきたとばかりに恨めしい表情に変わっていた。

(これはどういう事? さっき携帯が鳴っていたけど、もしかして……)

 この不可解な状況を理解する鍵になるかもしれないと、彼方はスマホの画面を見た。

 そこには”出ないで”という四文字があった。

「和美、これはどういう事?」

 理解出来ない彼方は廊下に出て、和美の肩を掴んで説明を求めた。

 その時、彼方は部屋の外にもう一人居る事に気付いた。


「先輩、来ちゃいました」

 テヘッと可愛らしく笑う少女。彼方は先程の四文字の意味を理解した。

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