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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
勝ち取れ!! お姉様っ
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24 伝説の人 光の噂

「当事者では無いので、あくまで噂話として、こう広まっているという事を踏まえて聞いてくださいね」

 念を押すふーりん。一体どのような噂話がきっかけになったのでしょう。

「この学院には去年まで、全校生徒から愛された生徒が居ました」

「それはエミリー先輩のような存在ですか?」

「身内の贔屓目で見ても、お姉様以上でした。上級生からは妹にしたいという声が多かったそうです。下級生も、是非お姉様にと憧れる声が多かったです。本来ならば、お姉様がその方の妹になる予定でした」

「エミリー先輩の姉になるはずだった人……。もしかして、実の姉ですか? 歳の差は分かりませんが、先輩には本当のお姉様が居ましたよね?」

 昨日の会話を思い出し、私は訊ねました。


「残念ながら違います。因みにですが、エミリーお姉様の実姉。ユミリア先輩は二つ上なので、まだ在籍していますよ。ただ、現在はとある制度を利用して、大学で学んでいますが」

 私には縁の無い制度だと思い、パンフレットにもその制度については書かれていましたが、読み飛ばしていました。

 私の目的は、お姉様と同じ学校に行く事だったので、仕方がありません。

「ここの三年生は、両親の会社で実地研修の名目で働くか、受験勉強に一年を費やすんでしたね。だから授業の進みがとても早いんですよね。二年で三年分……。考えただけで気が滅入ります」

 私と和美さんは同時にため息を吐きました。


 ふーりんはフフッと笑うと、話を元に戻しました。

「実際、エミリーお姉様はユミリア先輩は、中学時代までシスター制度を利用していましたよ。私が話しているその人も、本来ならば三年生になっていました」

「そう言うという事は、そうなってはいないのですか?」

「はい。去年、亡くなられました」

 隕石が降ってきたかのような衝撃が心を襲いました。

 場を明るくしようと思い、軽くふざけてしまった自分が恥ずかしいです。

 そして、私に追い打ちをかけるようにふーりんは言いました。

「光先輩が殺したと言われています」

 全てが真っ白になりました。全ての音が消え去り、視界に映る全てが一瞬で白ペンキで塗りつぶされたような状態でした。人は隕石に耐えられるようには出来ていないのです。


「……さん。……こさん。……陽子さんっ!!」

 感覚は無事だったようで、左右に揺さぶられていた事に気付けました。

 異なる強さで揺さぶられていると、気持ち悪いという感情が蘇って来ました。

 そこで我に返る事が出来て、全てが戻ってきました。

「私……一体何を?」

 気持ち悪さのせいで私は俯き、喋るのがやっとです。

「良かった。戻って来てくれました」

「放心を通り越して抜け殻みたいになってたんだよ。もう、心臓が止まるかと思ったわ」

 時計を見て見ると、一分程度しか時間は進んでいません。そこまで長い時間では無かったようですが、二人にとっては衝撃的過ぎたのでしょう。私にとっても衝撃的ではありましたが……。


「えっと、なんの話でしたっけ? ああ、思い出しました。ですが、お姉様がそのような事をするはずがありません」

 詳しくはまだ聞いていませんが、どのような状況であったとしても、私はお姉様を信じ続ける所存です。

「安心してください。光先輩は殺していませんよ。もしそうなら、学院にはいられませんもの」

 現在、学院に籍を置いている事を思えば、ふーりんの言う通りでした。

「では、どうして光お姉様が?」

「その方が亡くなられた時、光先輩も一緒に現場にいたのです。幸い、光先輩はかすり傷で済んだようです。光先輩は、陽子さんと同じく高校からの編入生でした」

「もしかして、それだけで一般庶民への風当たりが強くなったんですか?」

 呆れるほど感情で動いている事に、怒りよりも呆れの方が強かったです。

「それだけその方の人気が高かったのです。そして、大半の生徒は、憧れの先輩を奪ったと認識していますが、それだけでは無いのです」

「それはどういう?」

「その亡くなった先輩は、光先輩のお姉様でした」

「光お姉様の? ですが、先ほどはエミリー先輩が妹になる予定だったと……」

 まさかの関係に驚かされましたが、話は見えてきました。

 どうやら、亡くなられた先輩は、予約済みだったエミリー先輩を選ばず、光お姉様とシスターになった。そのとばっちりで、光お姉様は学院の生徒から不評を買っていたようです。

 そして、先輩の死という出来事が加わり、不満が爆発した。


「ゼリー姫というのは、やはり蔑称だったのですね」

 逆恨みが過ぎると思いました。亡くなられたその先輩はきっと、光お姉様を助けようと動いただけなのに。

 自身の命をかけて守った人が、このような扱いを受けていると知ったなら、その方はとても無念に思っているでしょう。私なら、死んでも死に切れません。

「光お姉様のお話は分かりました。そして、自分が今、どのように見られているのかも」

 ふーりんのおかげで、光お姉様が学院内で辛い立場に居る事が分かりました。

「ふーりんの説明を聞く限り、現状ではこの状況を変える事はとても難しいと思います」

 在校生全員を、そっくり綺麗に新しくしない限り、この風評は尾を引き、末代まで引き継がれてしまうように思えました。

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