22 組む人、悩む人 私、決めました
お笑いコンビの自己紹介のような事を始める二人。
「あの……。二人とも、良いのですか? そんないきなりで」
「心配しなくて大丈夫だよ、陽子さん。それと暫くは部屋は一緒にしないから安心して」
「手続きが通った後もですか? 私が関係しているのなら気にしないでください」
「彼方先輩の部屋が物凄く汚いらしくて、整理に時間がかかるらしいから、それだけの理由だよ」
和美さんは、部屋が汚い事を強調しました。
彼方先輩にそんな欠点があっただなんて。人は見かけによらないものです。
「ちょっと、そんなに連呼しないでもらえる。こっちにも立場があるんだから」
ぺしんと和美さんの頭を叩く彼方先輩。
「いった。先輩がそうだって言ったんじゃないですか」
「加減というものがあるでしょ」
二人のやりとりを見て思いました。入学式と昨晩くらいしか接点が無かったと思いますが、相性は良さそうです。
「私としては、友達が部屋にまだ居てくれるというのなら嬉しい限りです」
遠慮していましたが、まだ一人で学院生活をする自信は無いので、本心からそう思います。
「なるほど、分かりました。和美さん。何か困った事があれば、何時でも私の所へどうぞ」
何を分かったというのか。エミリー先輩は、和美さんに言いました。
「はい、彼方先輩に困ったら、すぐにでも駆け込みます」
和美さんがそう言うと、彼方先輩が彼女の肩に手を回しました。
「そうね、妹が盗られないようにするわ」
行かせないとばかりに、和美さんを自身に引き寄せる彼方先輩。
「そんな、盗るだなんてっ。人聞きの悪い」
「最近のエミリーを見ていると、気付いた時には妹ハーレムが出来てそうな気がしたもので」
「そのように軽い姉ではありませんわ」
口喧嘩をしているように見えましたが、言い終わると先輩達は笑っていました。
この笑顔は作り笑顔でしょうか?
最初は仲が良いように見えましたが、実は仲が悪いとか?
それとも、今のやりとりはお嬢様同士のじゃれ合いなのでしょうか?
私には分かりませんが、このような目に見えない攻防的なやり取りは苦手です。
なので、早々に距離を取る事にしました。
「では私は食事をしてきます」
ごきげんよう、と軽く会釈し、料理が並ぶテーブルに向かいました。
「待って、陽子さん。あたしも食べる」
「じゃあ、私も。一人っ子最後の夜の食事を楽しもうかな」
和美さんと彼方先輩が私に付いて来てくれました。
「では、私達は用事が済んだのでこれで。三人とも、おやすみなさい」
「彼方先輩、二人も、失礼します」
ふーりんの沈み気味の声でのぎこちない挨拶。私とエミリー先輩との火種がまだ残っているのだから仕方が無いのでしょう。ふーりんには、とても悪い事をしました。
流石にこのままではふーりんが可哀そうだと思い、私は動きました。
「ふーりん。明日も教室でお話しましょう」
私とふーりんの間には何も無いという事を伝えたくて、付け加えました。
「ええ、明日もまた教室で」
意図を汲んでくれたのか、ふーりんの表情は明るくなり、声に明るさが戻っていました。
障害は多そうですが、直接お姉様と話す事が出来ました。
今後も交流を重ね、お姉様とシスターになってみせます。
決意を胸に、私は料理を堪能する事にしました。




