17 集う交流会
ふーりんの言葉に、急に眉間に皺を寄せるエミリー先輩。
何かを思い出そうとしての表情の変化でしょうか?
「おや、妙な人が居るぞ」
エミリー先輩の背後から先輩の肩に手を置き、スッと現れる彼方先輩。
「また妙な事をして、あなたは……」
呆れた様子で動じていないエミリー先輩。一方で、隣に居たふーりんは驚いていたので、その反応は対照的でした。
「お二人はお知り合いだったのですか?」
性格が対照的で接点が無さそうだったので、私は今のやりとりが不思議でした。
「彼女とは入学当初からの腐れ縁なだけですよ」
何処かで聞いた覚えのある台詞でした。
「酷い言い草だなぁ。ずっとエミリーの世話を焼いていたのに」
「あなたに焼かれた覚えはありませんが? どなたかと間違えているのでは?」
「そうかぁ~? 本当にそうかぁ~?」
ジッとエミリー先輩の目を見て問いかける彼方先輩。
「ま、まあ。時折そんな事もあったかもしれませんが」
心当たりを隠していたようで、エミリー先輩が視線を逸らしました。
「仕方ない。時折、という事にしておこうか。後輩達が居る前だしね」
意味深な笑みを浮かべる彼方先輩。二人の過去に何があったというのでしょう? 何時か聞いてみたい所です。
「それで、妹持ちがどうしてここに居るの? 新しく唾を付けようっていうの?」
「人聞きが悪い事を仰るのは止めてもらえるかしら。今日は、陽子さんを妹にしようと思っていただけよ」
「ああー、なるほど。全て分かった」
ツーカーの仲という事でしょうか? 後輩組には分かりません。
「彼方先輩がここに居るって事は、先輩には妹が居ないんですか?」
和美さんが訊ねました。
「まあね。そういうのには向かないかなって」
「そんな。私を入学式の日に助けてくれた時のように、良いお姉様になれますよ」
先輩の言葉に、そんな事は無いと、私は否定しました。
「あれはたまたまだよ」
あの海での出来事を思い出しても、彼方先輩は状況を判断して動ける、とても気遣いの出来る方だと思うのですが……。
「所で、陽子さんのお目当ては聞いたけれど、和美さんは誰か居るの?」
彼方先輩の質問で気付きました。
私は今まで、同室の和美さんが姉か妹を欲しているかを聞いていなかったと。
「あたしは止めとこうかなと。初等部の頃で学院の事は困らないくらいには分かっているし、何かあればふーりんに聞けば良いので」
「分かる分かる。私もエミリーのお姉さんが気遣ってくれてたからね。それで良いかなって思っていたしね」
「では、和美さんはすぐに部屋に戻ってしまうんですか?」
この会は絶対参加ではあるものの、抜ける時は自由なのです。
一人でお姉様を待つのは寂しいです。
「夕食を食べたら帰るかな。あたしはそれで寝る」
寝不足で今がピークだとばかりに大欠伸をする和美さん。
「手でも隠せないほどの欠伸をするのは止めなさい。はしたないですよ」
ふーりんの指摘が入りました。
「そう言われても、抑えられない衝動があたしの中を駆け巡っているのさ」
「意欲という衝動を駆け巡らせなさいな」
和美さんに、呆れた様子で言い返すふーりん。
「で、陽子さんはお上りさんみたいにきょろきょろしてるね」
「ええ。どうやら、まだお目当ての方は現れていないようですね」
先輩組が気になるくらい、私は周囲を探っていました。
どう思われても構いません。私は、光お姉様を探さなければならないのですか。
「あのね、陽子さん。昨日は言えなかったのだけれど、彼女は……」
昨日の話を突然しようとする彼方先輩。昨日なら、待ってましたと聞くのですが、今はそれどころではありません。
「彼方先輩、お話なら後程聞かせてください。ああっ、あの黒髪。あのお姿は……」
人を避け、壁に沿うように歩くその生徒の姿を見つけ、私の胸は高鳴りました。




