15 衝動 ここから始まる茨道(和美)
「陽子さーん」
先輩がとても重要な事を言いかけた所で、和美さんが急いでこちらにやって来ました。
「和美さん、どうしたんですか?」
「どうしたじゃないよ。もうすぐ消灯の時間。部屋に戻らないと」
「え!? 良い所だったのに、そんな時間ですか?」
「いけない、私も戻らないと」
どこかホッとした表情で、会話を打ち切り、彼方先輩は去ろうとしていました。
「あ、彼方先輩!? ごめんなさい、急いでて気付かなくて」
「消灯時間だもの、仕方無いって。じゃあ、陽子さん、和美さん。またね」
急いで部屋へ戻っていく彼方先輩。
「ああ、待ってください。お話の続きがまだ……」
先輩はあっという間に居なくなってしまいました。
「ほら、陽子さんも急いで戻るよ」
「でもお話が……」
あと一歩の所だったので、私は諦めきれずにいました。
「大丈夫。話をしたいのなら明日の放課後に出来るから」
「どうしてです? 明日の放課後に何があるんですか?」
「話は部屋に戻ってからね」
和美さんは、本当に急いでいました。それもそうです。消灯時間が過ぎても部屋に居ない生徒には罰が与えられるからです。
反省文に始まり、回数を重ねる毎に罰の厳しさは増していくそうです。
そして、同室の者も罰の対象になったり、噂では、最終的には学院を追い出されるとか。
私は、彼方先輩を追いかけたくて仕方が無かったのですが、欲求に押し負けていた理性が頑張り、何とか追いかけずに耐えました。それでも、後ろ髪は引かれているのは変わりません。見かねた和美さんに手を引っ張られ、私は部屋に戻りました。
「もう、規則違反するとしたらあたしだと思ってたのに」
消灯二分前に部屋に戻ると、和美さんは息を切らせながら言いました。
「ごめんなさい、和美さん。知りたかった事がもう少しで知れる所だったので……」
本当に申し訳無い事をしたと思い、謝りました。そして、今一歩という所だった事を悔やみました。
「そんなに重要な話をしていたの? でも大丈夫。さっきも言ったけれど、明日になれば話せるから」
そうです。和美さんは先ほども同じ事を言っていたので、これを確認しなければいけません。
「和美さん。明日の放課後、何があるのか教えてください」
私はとても真剣な目で彼女を見ました。
「凄い気迫を感じる……。予定を忘れるほどに重要だったって訳ね。じゃあ、教えてあげよう。明日は、上級生との交流会がある日」
全て理解出来ました。というよりも、私は必死過ぎて、頭が回っていなかったようです。
「明日、光お姉様に会えるかもしれないんですね!!」
「ひか? え、誰?」
「やったー。明日が楽しみです。和美さん、もう寝ましょう。放課後まで眠りましょう。お休みなさい」
私は急いでベッドに入りました。
「陽子さん、キャラが違うような……。というか、光お姉様って?」
私の勢いに驚き、和美さんはやや暫く部屋の中で茫然としていました。




