13 夜会 手がかりを求めて
この日の夜も、私は外へ出ていました。
「夜はまだ少し肌寒いな」
季節柄か、立地のせいか、まだ学院の夜は冷えます。
羽織る物を持って来てはいるものの、風は冷たく、冬の恰好をしたとしてもまだ寒いです。
「あの人、本当にここに居るのかな?」
私が逢いたいばかりに、幻を見たのではと不安になりました。
だって、その可能性を捨てきれないのですから。
「恋煩い? 相手はどんな人?」
「それは、去年に海で出会った、綺麗な黒い長髪の人です。ここの生徒なんです。それと、恋煩いじゃないです」
話しかけられたので答えましたが、私は誰かと一緒に外に来たのではありません。
少し経ってから冷静になると、別の意味で冷えてきました。
私は一体誰に話しかけられ、会話をしたのか。
怖いと思いながらも、勇気を振り絞り、声のした方を向きました。
「うわわっ!? 彼方先輩!?」
ちゃんと人でした。しかも、知っている人です。
「こんばんは。新生活はどう? あの二人とは仲良くやってる?」
「あ、はい。先輩のおかげでなんとか過ごせています」
こんな時間に、どうして彼方先輩が居るのでしょう。入学式以来の再会に驚きが続き、心臓の鼓動が収まりません。
「それは良かった。環境が違うと苦労するのは私も経験があるからね。友達でも同じ人が居たから気になってたんだ。それに、強引にくっつけた所もあったし」
確かに戸惑いはありました。ですが、それが結果的に良い方向に進んだと実感しています。
私が彼方先輩のように攻めの姿勢で行く事は出来なかったので、本当に助けられました。
「彼方先輩が居なければ、私は今も一人だったと思います。本当に感謝しています」
心からの感謝を告げると、彼方先輩は眩しいと思えるくらいの笑顔になりました。
「そんなに感謝されると、こっちも嬉しいよ」
「環境に完全に馴染むのはまだ先でしょうけど、楽しく過ごしていますよ。所で、彼方先輩はこんな時間にどうして外に?」
気になるので、質問してみました。
「んー。友達の所に行った帰りでね。ちょっと寄り道して、夜風に当たろうかなって気分になったのさ。そしたら、あなたを見かけてね」
「そうだったんですね。声をかけてくださって、ありがとうございます」
「畏まらないでよ。驚かせてしまったみたいだしさ」
お嬢様学校ではあるまじき驚き方だったと、自分も反省しています。
恥ずかしさに照れていると、閃きが生まれました。
「彼方先輩。先輩は去年の海の事を覚えていますか?」
「去年の海? 確かに去年は海に行ったけれど、どうしてあなたがその話を?」
一度会っただけですから、私を覚えていなくても仕方がありません。
なので、私が聞きたいのは海に行った記憶があるかどうかなのです。
「実は私、そこで彼方先輩と出会っているんです」
「そうだったの? その時と今の外見は同じ?」
「違いますね。今は肩まで髪がありますけど、あの時はもっと短かったですから。それと、少しやさぐれてました」
「髪が短くてやさぐれ気味……」
彼方先輩は目を細めたり、手を動かしたりしてその時の私を見ようとしていました。
「あっ、あの子だ。フナ虫に囲まれてた子」




