118 驚愕 私、する側だったはずなのに……
「お姉様、光先輩、こんにちは」
「先輩達、こんにちは」
変わらず接する二人。
「こんにちは」
「待ってたよ、二人とも」
お姉様達も普段と変わらない振る舞い。違和感が無いので、二人は役者に向いているかもしれません。
「光先輩、体調は大丈夫なんですか?」
「エミリーお姉様の様子もおかしかったので、心配しているんですよ」
それぞれ、光お姉様を気遣う二人。
「元気になりました」
病んでる時の演技がとても自然過ぎて、お姉様が戻ってしまったのかと心配になるほど。
「確かに、肌艶も良くなってますし、良かったです」
ふーりんがホッとしていました。
確かに、血色が良くなっていますが、ほんの少しだけです。それを見抜くだなんて、ふーりんの観察眼は凄いです。
(さてと、二人のあいさつも終わったみたいですし、そろそろ私も出て行きましょう)
二人がどんな表情をするのか楽しみです。
「みなさーん、遅くなってしまってすみませーん」
急いで来た風を装って輪に入ります。
するとふーりんと和美が、口々に言いました。
「不自然」
「不自然です」
それを聞いた彼方先輩は噴き出し、光お姉様は頭を抱えていました。
「え? え? 何処がですか!?」
納得いかない私は説明を求めました。
「まず、息が切れていません。急いで来たというのに服装が整い過ぎています。普段は見せない振舞い。そして何より、言葉がぎこちない。つまりは棒読みだという事ですよ」
背後からの怒涛の指摘。背後を取った人物の正体を見るために振り返ると、エミリー先輩が居ました。
「ど、どうしてあなたがここに!?」
「それは私が呼んだからよ、陽子さん」
「お姉様が!? どうしてですか?」
「後輩と同級生の仲を改善しようと思ってね」
にこりと笑顔。私に向けられていると思うと、爆発しそうになります。ですが、ここで爆散する訳にはいきません。
「この人とは顔見知り以上の関係を求めていませんよ。仲良しこよしなんてしたら、ふーりんに何をされるか……」
「私、何もしませんよっ!?」
「いえ、私の危機管理センサーがビンビンに反応しています。何かされると」
一人、のけ者的な空気になるのがいけないのか。それとも、エミリー先輩と二人だけのやりとりをするのがいけないのか。そういう時にふーりんが近くに居ると、時折身の危険を感じます。
「私を求め、私のために争そう妹達……。ちょっと良いかもしれないですね」
私達のやり取りを聞き、悪女の片鱗を見せるエミリー先輩。これは早めに手を打った方が良さそうです。
「そこの人、危険思想は止めてください。それと、私はあなたの妹ではありませんよ」
先ほどよりもフーフー言っているのは、背後の人に疲れさせられたからでしょう。
「連れないですね」
不満そうなエミリー先輩。こんな火種を持ち込んでおいて、この人は何を考えているのでしょう。
「ふーりん。気付いたんだけど、姉を取り合うよりも重要な事が起きてたんだけど?」
争いには不参加だった和美。彼女が最初に気付きました。
「エミリーお姉様の妹独占権よりも大事な事ですか? 何でしょう?」
自分の姉より大事な事って何? という表情で訊ねるふーりん。
「妹独占権って何? いや、それよりも、光先輩が普通に会話に参加してるんだけど……」
「そうでしたか? 何時もの反応では?」
「それで済まそうとするふーりんの姉信奉が怖いよ。あたしは」
私も和美の意見に賛成でした。
「エミリーもそんな感じだったわ。妹は姉に似るという事ね」
光お姉様の言葉を聞いた二人は、互いの顔を見合わせ、目を丸くしていました。
「「光先輩が喋った!?」」
二人の声がシンクロしました。




