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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
目覚めの光 姉との記憶
113/182

113 私と振り切れた後輩

「どうしたの? 大丈夫?」

 訊ねてみるも、反応的に全く大丈夫には思えない。

「お姉様の目が覚めてます!!」

 当たり前の事を言うので、私は呆れた。

「何を言っているの。そうでなければ話せないでしょう」

「つっこまれました。会話が成立しています」

「以前にも何度か会話を成立させていたでしょう」

「え、あ、そ、そうですけど……」

 この数回のやりとりで、更におかしくなる少女。


「ええっと、ようこ……。そう、陽子さん。具合が悪くなったの?」

 体の方が遅れて目覚め、今やっと、重い手を何とか持ち上げ、彼女の顔に触れる事が出来た。熱い。熱が出ているのかもしれない。

「先生を呼びたいのだけれど、動けなくてごめんなさい」

 私の言葉を聞いた彼女は、椅子から転げ落ちてしまった。

「その反応は何!? いえ、それよりも大丈夫? 腰とか頭は平気?」

 感情も随分と仕事をしていなかったのだろう。自分が反応する度に、体力がごっそり削れていくのが分かる。

「あ、ばば……。これはひょっとして、そうなんですか?」

「そうとはどうなの?」

 陽子さんの反応がおかし過ぎて、頭の方も心配してしまう。今までも振り返ると、行動がおかしい事はあった。もしかして、今よりも前から、既に頭がおかしかったのかもしれない。

「お姉様ー!!」

 自分一人で奇怪な行動を取っていた彼女は、今度は私に抱きついてきた。

「お姉様、お姉様」

「ううっ。陽子さん、あまり強く抱きつかないで。体が壊れそう」

 実際、体から聞こえてはいけない音が聞こえていた。記憶が朧気な間に、骨まで弱ってしまったのだろうか。


「ああ、ごめんなさい。すみません。嬉し過ぎてつい……。なので、今度は優しく抱きつかせてください」

「なのでの意味が分からないわ。でも、受け入れてあげる」

 抱きつくのは止めないらしい。私が許すと、彼女は加減をして抱きついてきた。

 それにしても、ここまで喜ばれると思わなかった。これほどの反応を見せてくれると、彼女に愛着が湧いてしまいそうだ。

「そうだ。あなたも怪我人ではあるのだから、あまり興奮しないようにね」

「そんな事を言われても、出来ないものは出来ません~」

 私に身を捩らせる彼女。激しく甘える犬を想像してしまう姿だった。

 微笑ましく思い、その姿を見ていると、ドアの鍵が開く音がした。

「陽子さん、外まで声が聞こえてきたよ。光が寝てるんだから静かにしないと……」

 とても懐かしく思える顔が見えた。


「光がついに、後輩に汚された……」

 黙って抱きつかれている様子を見ての第一声がそれだった。

 この言葉から、陽子さんの私に対しての感情が振り切れている事が分かる。

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