113 私と振り切れた後輩
「どうしたの? 大丈夫?」
訊ねてみるも、反応的に全く大丈夫には思えない。
「お姉様の目が覚めてます!!」
当たり前の事を言うので、私は呆れた。
「何を言っているの。そうでなければ話せないでしょう」
「つっこまれました。会話が成立しています」
「以前にも何度か会話を成立させていたでしょう」
「え、あ、そ、そうですけど……」
この数回のやりとりで、更におかしくなる少女。
「ええっと、ようこ……。そう、陽子さん。具合が悪くなったの?」
体の方が遅れて目覚め、今やっと、重い手を何とか持ち上げ、彼女の顔に触れる事が出来た。熱い。熱が出ているのかもしれない。
「先生を呼びたいのだけれど、動けなくてごめんなさい」
私の言葉を聞いた彼女は、椅子から転げ落ちてしまった。
「その反応は何!? いえ、それよりも大丈夫? 腰とか頭は平気?」
感情も随分と仕事をしていなかったのだろう。自分が反応する度に、体力がごっそり削れていくのが分かる。
「あ、ばば……。これはひょっとして、そうなんですか?」
「そうとはどうなの?」
陽子さんの反応がおかし過ぎて、頭の方も心配してしまう。今までも振り返ると、行動がおかしい事はあった。もしかして、今よりも前から、既に頭がおかしかったのかもしれない。
「お姉様ー!!」
自分一人で奇怪な行動を取っていた彼女は、今度は私に抱きついてきた。
「お姉様、お姉様」
「ううっ。陽子さん、あまり強く抱きつかないで。体が壊れそう」
実際、体から聞こえてはいけない音が聞こえていた。記憶が朧気な間に、骨まで弱ってしまったのだろうか。
「ああ、ごめんなさい。すみません。嬉し過ぎてつい……。なので、今度は優しく抱きつかせてください」
「なのでの意味が分からないわ。でも、受け入れてあげる」
抱きつくのは止めないらしい。私が許すと、彼女は加減をして抱きついてきた。
それにしても、ここまで喜ばれると思わなかった。これほどの反応を見せてくれると、彼女に愛着が湧いてしまいそうだ。
「そうだ。あなたも怪我人ではあるのだから、あまり興奮しないようにね」
「そんな事を言われても、出来ないものは出来ません~」
私に身を捩らせる彼女。激しく甘える犬を想像してしまう姿だった。
微笑ましく思い、その姿を見ていると、ドアの鍵が開く音がした。
「陽子さん、外まで声が聞こえてきたよ。光が寝てるんだから静かにしないと……」
とても懐かしく思える顔が見えた。
「光がついに、後輩に汚された……」
黙って抱きつかれている様子を見ての第一声がそれだった。
この言葉から、陽子さんの私に対しての感情が振り切れている事が分かる。




