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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
目覚めの光 姉との記憶
111/182

111 シスターになった日 今を越えて

 将来を思えば、穏便に三年間を過ごして卒業したかった。けれど、既に叶いそうも無い。

 今回の事で、広く浅いコネ作りも不可能となってしまった。どんな時でも、手持ちのカードで勝負する他無いのだけれど、そのカードが余りにも悪すぎる。

 このままシスターの誘いを断れば、全裸状態でジャングルをさまようようなもの。

 残り三年をそんな状態で過ごすなんて、死亡確定ルートに入るようなものだ。

 考えると、これは避けなければならない。

 しかし、このルートを回避するためには、苦渋の決断をしなければならなかった。


「……あなたなら、私の壁になってくれるって言うのね?」

 大量の苦虫を嚙み潰した表情で、ライカに訊ねる。

「そうよ。何からだって守ってあげる。シスターとはそういうものよ。だから、学院で二人も妹は持てないのよ」

「はぁ……。随分と強気な事で。ただの学校の制度だっていうのに」

「学院の歴史を振り返れば、ただの制度じゃないのだから仕方ないじゃない」

 この自信たっぷりなお嬢様が言い分は分かった。


「はいはい。それじゃあ、存分に守ってもらいましょう。ええっと、シスターになった人の事は何といえば良いんでしたっけね?」

 覚えているが、口にしたくない。だから知らないふりをした。

「お姉様よ。早速呼んでみて」

 ライカは楽しそうだった。

「はぁ。お姉様、これからよろしくお願いしますね」

 汚物に触れるような感じで、私は手を伸ばした。

「駄目ね。やり直し」

 むくれた表情で要求してきた。年上の癖に、子どものようだった。

「はぁ? あなたが言えと言ったんじゃない」

「名前が抜けているのよ。さあ、もう一回」

 駄々っ子のように、ライカは急かした。

「この性悪め。……ライカお姉様、短い間ですけどよろしく」

「ええ、可愛い妹が出来たわ。歓迎するわ、光。あ、二人の時はお姉ちゃんでも良いけど、どうする?」

 満面の笑みで、彼女は私の手を強引に握った。私は、握手と言う形で渋々これを受け入れた。

「絶対嫌です、お姉様」

 更に要求してきた彼女の願いを、私は攣った笑顔で断った。



 これが私とライカとの日々の始まりだった。

 そして、私が学院の全員から良くも悪くも注目される日々の始まり。

 騒がしく、迷惑で疎ましくも、意外に充実した日々の始まり。

 色々あったけれど、思い返すとその色々の数だけ、不本意ながらもライカとの思い出は大切なものになった。

 本当は、何時までも懐かしさに浸っていたい。けれど、いい加減、そろそろ夢から覚めなければならない。

 私の心に強く訴えかける変わり者の為に。あの日の子が、私を追いかけて来てくれたから。

 目を開け、カーテンを開ける時が来たんだ。

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