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さあ、ワルツを  作者: 鰤金団
目覚めの光 姉との記憶
110/182

110 最悪なルート

「その通りよ。あなたは私に似ているから心配でね」

 こんな正解は嬉しくない。それと否定しなければならない事が出来た。

「私があなたに似ているって? 全然似て無いわ。鏡見た事があるの?」

「自分の事って分からないものだから」

 何がおかしいのか、クスクス笑うライカ。私はコネを求めてこの学院に来たけれど、こんな性悪とは違う。絶対に似ていない。

「全力で否定するっていう顔ね。嫌いじゃないわ」

 ライカは、私が何を言っても受け入れると言わんばかりの反応だ。


「学院としては親族の事で対応は変えないとしているけれど、生徒間でもそうなっている訳じゃないわ。光も聞いたか、見たかもしれないけれどね。エミリーちゃんと本郷さんの二人とクラスメイトになった事は問題じゃない。問題なのは、あの二人と仲良くするための資格があるかという事よ」

「資格って何? 上流階級の間での線引き? あの二人が優しくて、私が学院の事を知らないから親切にしてくれているだけでしょ」

「あの二人ならそうでしょうね。二人は、光の事を同等の友達だと思っているでしょうね。でも周囲は違う。あなたは中途入学で庶民。そんな吊り合いが取れていない分際だというのに、二人と親しくするなんて許せない。という人間が居るのよ。さっきも言った通りね」

「分際って、また随分な言い方ね」

 お嬢様の口から出た言葉に、内容よりも驚かされた。

「もう少し恥じらいとか、上品さを持ったらどうなの? お嬢様という生き物は、言葉と振舞いには特に気を付けているものだと思っていたのだけれど」

「恥じらう間柄では無いのだから良いじゃない」

「それはシスターになるから?」

「シスターだからよ」

 彼女の中では確定事項らしい。

 今時点でも、私はライカとシスターになるつもりは一切無かった。


「小中学校で見なかったかしら? 先生の覚えが良い生徒に嫌がらせをする子や、出来ない子が褒められた事を面白く思わない子とかね。自分の立場が危ぶまれたり、自分より良い目を見る人が現れるとね、人はやっかむのよ。時には暴走したりしてね」

「あなたの言っている事は理解出来るけど。で、さっき吊り合いって言っていたけれど、それで言うのなら、私が二人に対して吊り合えるものって何も無いんだけど」

 親戚にお金持ちが居る訳じゃないし、父親が大企業で高い地位に居る訳でも無い。

 生活ギリギリの貧乏会社の社長をしているだけだ。

 母親は私らを捨てて何処かに消え、二人暮らし。お嬢様には分からないだろうと思う程度の苦労続きの人生だ。そんな庶民に、令嬢二人が近付いただけでやっかむだなんて、お嬢様という生き物は実に暇でいらっしゃる。

 辟易していると、ライカがニヤリと笑った。

 私の考えていた事を見通しているのか、ライカは自分を指差して言った。


「そこで姉よ。私の妹なのだから、付き合いがあって当然。二人と親しくしているのも、姉が二人と繋がりがあるから。そう思わせる事が重要なのよ」

 なるほど。そういう印象付けが出来れば、あの二人と一緒に居てもおかしくない状況になるという訳だ。けれど気付いてしまった。

「それって、私はパシリに思われるって事じゃない。それと、その立ち位置と引き換えに、ルスウィンさんとは険悪な状態になってしまったのだけど」

「ああ、それなら大丈夫。彼女はね、ちょっと思い込みが強い所があるだけだから。けれど、良い子だからすぐに分かってくれる。今だって、光に酷い事をしようとは考えていないわ。私達の作戦は、彼女と和解してからが真のスタートよ」

「何が真のスタートよ。そこまで言うのなら、もっと平和的な関係を作る努力をして欲しかったのだけれど」

「だから言ったでしょ。あの子はただ言っても駄目だったのよ。私が二人とも妹にする訳にはいかなかったしね」

「制度的には何人でも囲えるようだけれど、あなたでもすけこまし扱いは嫌だったって事?」

「嫌ね。友愛の心で日々を生きてきた結果よ。私はたくさんの人に百の愛情を注げるほど器用じゃないのよ。それと両親の遺伝子ね。あなたも私と同じ、綺麗な顔をしているから大丈夫よ。個人としてあなたを応援する人は出てくるわ」

「よくもまあ、二回しか会った事の相手に愛情だのを語れるわね。妹たらし。いえ、学院たらしと言えば良いのかな。あなた、最初の印象よりもろくでも無いわ」

「だから姉妹として上手くやっていけると思うのよね」

 私も人の事を色々言えるほどに善人な思考はしていない。けれど、この人よりも人間味があると信じたい。


 いけ好かない先輩に呆れつつ、私は状況を整理した。

 ライカの話通り、私は学院のカーストで言えば最下層だ。それでいて、同級生の人気者二人と仲良くなった。ここまでは良い。問題なのは、目の前の先輩に好かれた事。相手は、シスターになる予定だったエミリーとの約束を反故にした。学院一人気のある相手の暴走。相手は入学したばかりの庶民。もう既に、略奪愛的な噂が流れているだろう。今まで私に同情的だったクラスメイト達も、冷ややかなな目で私を見る事だろう。

 うん、整理しただけでも、一番最悪だと言えるルートに入っているようだ。

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